富士通が導入した「ジョブ型雇用」

西舘聖哉氏(以下、西舘):「ぶっちゃけ、これから日系とか外資の働き方はどうなっていくのか」というところを話したいです。今日の登壇者4名の企業でも、最近いろんな取り組みが話題になっているので、そこを深掘りしていこうと思っています。富士通さんからいってみますか。「ジョブ型雇用(注:仕事に対して人材を割り当てる雇用方法)」については、僕も注目していました。

松本国一氏(以下、松本):これね。こんなニュースが出たんですよ。みなさん、認識されていますか? けっこう話題になったんですよね。

西舘:見たという人は?

(会場挙手)

松本:いますね。これ、最近になって各社ともに新卒採用で数千万円払うという話が出ていたじゃないですか。うちだけじゃないですよね。NECさんも確か言っていましたよね。

西舘:言っていました。

松本:これ、みなさんどう思います? ネットでとある人から言われたのが、私みたいに今いる社員からすると怒るべきなんじゃないかと。新卒に4,000万円を払うと言っているけど、今いる社員たちにはそんな給料は払わない。だから「差別されているんじゃないか」「お前ら使えないと言われているぞ」と言われたんですね。

実はこれ、ニュース自体が間違っているんですよ。うちの新しい社長の時田(隆仁)さんが言いたかったことって、こうじゃないんです。要は「ジョブ型雇用に変えて、3,000万とか4,000万を、社内にいる人間でもちゃんと働けるんだったら払うよ」と言ってるんですよ。

藤田祐司氏(以下、藤田):新卒に限らず。

松本:新卒に限らず。だから、「新卒」というところと「3,000万」というキャッチーなところを組み合わせてニュースにしたかったんだろうな、と正直思いました。

NECとか周りの会社も同じようなことを言ったじゃないですか。だからそれでひとくくりにして、「富士通も言ったよ」と言いたかったんだろうなと思ったんですよね。

働いた分、それなりの給料をもらうべき

松本:みなさんどう思います? 新卒じゃなくても、ジョブ型に変えて3,000万、4,000万をもらえる時期がくるとなったら、みなさんがんばろうと思うわけじゃないですか。がんばれないことはないわけですよね。

藤田:そうですよね。

松本:ただ、がんばれないと割り切るんだったら、そりゃ給料が下がっちゃうという話も当然ながらあるんですよね。この働き方が正しいかどうかと言われると、私はもうそろそろ正しい時期に来ているんじゃないかと思っています。

人材が不足してきているじゃないですか。そうなると、正直言うと企業って金を出すしかないんですよ。金を払わないといい人材って取りようがない。だから「金を出すよ」とみんな言い始めたわけですよね。だったらやっぱり、金をもらうためにはみなさん努力しましょうよ。自分の持ち味を生かして何かやっていきましょうよ、と。

私なんか、あちこちでしゃべっている人間と思われてしまっていますけれども、そういう話じゃないんです。しゃべっているのもちゃんと、意図があるわけじゃないですか。みなさんに製品を買ってもらいたいし、「富士通ってこういう会社なんだ」と理解してもらいたいというのもあるんですよね。そのために会社が給料を払いますよと言ってるんだから、それはそれなりの給料をもらわなきゃと、個人的には思います。

西舘:そもそもだいたい4,000万ぐらいですか?

松本:いやいや、そんな。うちのボスは「1億ぐらい」とかって冗談で言っていますけどね。社長の給料ランキングが出た際に、前の田中(達也)社長が1億ぐらいもらっているんですよね。

澤円氏(以下、澤):安いね。

松本:意外に安いですよね。

:安いね。話にならないぐらい安いね。

松本:ですよね。

:やっぱり外資のトップは、まず取締役とか役員がめっちゃ少ないというのもあるんですけど、50億とか100億とかってざらにいますからね。

松本:ですよね。

:これはもうランキングで出ているから知ってる人も多いと思います。フォードとかそこら辺の社長とかも、100億とかざらです。そんな中、トヨタの社長の報酬額を聞いてあまりの安さにびっくりしちゃって、みんな腰抜かしましたよ。

松本:桁が2桁違う。

:ざらにいますね。

松本:孫(正義)さんが、「あれだけもらっているのか」と一時期たたかれたじゃないですか。あれ、そういう意味だとそんなにもらっていないですよね。

「3日も休める」ではなく「4日でどれだけ成果を出せるか」

藤田:ありがとうございます。次のテーマは「週休3日」です。

:これもちょっと違うんです。週休3日ってある意味正しいんですよ。でも社内のアナウンスは、「週勤4日」だったんです。

藤田:週勤4日、合わせて7日。

:「4日のビジネスデイしかないけど、ゴールは下げないよ」なんです。つまり20パーセントの労働時間を削るけれども、バジェットは下げない。つまりは「20パーセント分、より効率的に働かないといけないよ、さあどうする?」という問いなんですね。

藤田:週勤5日なのか、4日なのか、選べるということなんですか?

:これはテストだったので、「4日でやれ」なんですよね。

藤田:確かに。週休3日と言うのと、週勤4日と言うのではイメージが変わりますね。

:響きが違うよね。

藤田:響きが違いますよね。メッセージも変わりますよね。

:「3日も休める。わーい」じゃないんですよ。「4日で仕事を片付けなきゃいけない」だから、すごくきついんですよ。

藤田:「やれるの?」という話になってくる。

:そう。外資系というのは、数字にめちゃくちゃ厳しいです。これはセールスだけじゃないんですよ。ありとあらゆるものが全部数字で管理されていて、結果を出せているか出せていないかというのは、その数字で絶対的に判断する。

それを4日でやらなきゃいけない。だから、相当無駄なことを省かなきゃいけない。でも、うちのような外資系でも、Boxさんもそうだと思いますが、グローバルでジョブ・ディスプリクション(職務記述書)というのが明確にあって、あなたがこれをする人、というのは同じなんですよね。その状態で全世界でビジネスをやっているんだけど、その中で日本人はやっぱりめっちゃ効率悪いですよ。

おもしろいデータがあって、もうオープンになっているのでみなさんに申しあげると、まず、3レイヤー以上の役職の人間が出ているミーティングが多すぎる。わかりやすく言うと、部長・課長・一般職という3レイヤーが出てるミーティングが多すぎる。

要するに「ピアになる」という言い方をして、部長だったら部長、課長だったら課長の連中で決めればいいじゃん。なんで3レイヤーも出てくるの、という話なんですよ。なんなら、一般のレベルの人間に権利を委譲して決めさせればいいじゃん。これが日本が一番遅れてる。

もう1つは、宛先に入っている名前の多さ。これも日本がダントツなんですよ。25パーセント多いと言っていたかな。

藤田:だいぶ多いですね。

:多すぎると、情報が錯綜する。これを半分皮肉で「仲のいいチーム」と言っていますね。「みんな仲良しだねー」と。

藤田:皮肉ですね。

テレワークは仕事の効率を上げられるか?

:週勤4日となると、「効率悪いのでミーティングを減らしましょう」と提案した。僕なんか対面のミーティングは0にしちゃって、全部オンラインにしました。

効率よくやるためには、何を削ればいいと思います? 一番手っ取り早いのは、移動時間なんですよ。移動時間ってほとんどの人は何もできないですよね。満員電車に乗りながらキーボードを打つってかなり難しいですよね。

そう考えると、移動しなきゃいいんですよ。なのでテレワークをするなり、どこかに居場所を1ヶ所決めてしまって、そこにこもってひたすらやればいいんじゃないかという、1つの提案だったんですよね。

藤田:うまくいったんですか? 

:……と思いますけど、すみません。僕、もともとろくすっぽ会社に行っていないので。

(会場笑)

藤田:そこを聞こうかなと思ったんですけど、さっきの話だとあんまり関係ないなと。

:そう。ちなみにこのとき、僕のチームメンバーがこの週勤4日プロジェクトのリーダーをやっていたので、「澤さん、なるべく遠くに行って」と言われた。

(会場笑)

それで「よくSNS投稿しているでしょ。なるべく遠くに行って、『遠くに行ってるよ』アピールをがんがんして」と。8月に2回、沖縄に行くことになりました。

松本:行ってましたよね。

藤田:むしろそのために行ったぐらいの勢いなんですね。

:行く話が決まる前の月ぐらいに、沖縄の人から連絡があったのを思い出して。「いや、自分はチームメンバーから遠くに行けと言われていて、沖縄行くんですよ」と言ったら「だったら久米島に来てください」と沖縄の人に言われたんです。

「久米島にコワーキングスペースがあって、ちょっと記事にしたいので、そこに来てください」と。その場で久米島行きの切符を取って、なぜか久米島まで行って、古民家を改装したコワーキングスペースで何日か仕事をしていたんです。すごくおもしろかったですよ。

松本:Facebookに上がってましたよね。

:そう。

松本:ものすごくいいなと思いましたよ。

藤田:そんな背景があったんですね。

:なにひとつ滞りはなかったですよ。普通にグローバルのミーティングにも出ましたし。

松本:これって1ヶ月間やったっていうことですよね?

:そうです。

松本:今後どうするかは、それを元に考えていこうと。

:そうですね。今まさにそれを分析している最中ですね。どれくらい効率よくやったかというのを、僕のメンバーが分析しているところ。

1時間も会議するのは日本だけ

安達:僕は、澤さんの会社の方とパートナーシップをやっているので、いろんな人の話を聞いて、移動時間も参考にしたし、ミーティング時間を標準1時間から30分にした。

:そう、30分に減らしたね。それもあった。ミーティングを1時間で設定する数は、日本が世界ナンバーワンだったんですよ。ほとんどの国はだいたい30分なんです。

藤田:日本だと基本は1時間になる。

:1時間になるじゃないですか。かつ、これもよく僕が言っている話で、みんな1時間しゃべろうとするでしょ。会議に出てる人みんなで1時間しゃべろうとするんですよ。だから会議に出てる人数かける1時間なんですよね。みんながそのつもりになっちゃうから。

松本:すごいですね。

:だけど、我々の会議だと、早く終わったら早く終わらせちゃうんですよ。1時間取っていたとしても、30分で終わったら、これを「30minutes back to you」と言うんですね。30分返します。

だから「時間というのは、貸し借りしているものだ」というマインドセットが、グローバルでは徹底されているんです。もらっているわけでも、ましてや会議のオーナーが確保しているわけでも、それをコントロールする権利を持っているわけでもなくて、借りているんです。

借りているから返さなきゃいけない。でも30分使ったんだとしたら、それは返しておかないといけない。だから30分を使っただけの価値を共有しないといけない。となると、一番大事なことは相談なんですよ。場合によっては人間関係を濃密にする雑談なんですよね。

一番いらないのは報告です。こんなものは、どこかのダッシュボードを見ればわかる状態にしておけるので。「そんなものに会議の時間を使うな」というのはかなり徹底されています。

安達:この4人絶対に共通しているのが、報・連・相の重みが圧倒的に相談に寄っている。

:報・連は、僕はまったく興味もない。連絡ぐらいは興味をもってあげないとかわいそうですけれどね。「今日病気で休みます」「知るか」というわけにはいかないので。

(会場笑)

それはもちろん「ああ、お大事にね」とか言いますけど、報告はまったく興味ないですね。過去に起きたことなんていうのは、見ればわかります。