たった2人のボーカルが、大勢のダンサーをアーティストに変えた

中田敦彦氏(以下、中田):その後、テレビに出てああだこうだやった上で、新規ビジネスを開拓しなければいけないということでやったのが、RADIO FISH (レディオ・フィッシュ)という、今日かかった『PERFECT HUMAN』ですね。あれはより多くの人間にピッチをしたわけですよね。

「音楽というものを作ってみたいんだ」と。その音楽は「お笑い芸人がやることに意味があるんだ」と。「僕らはリズムネタで出てきた芸人なんだけど、そのリズムネタをもっと研究すると音楽になるはずなんだ。その音楽をやってみないか。そうしたら、そのメリットはダンサーであるみなさんにもあるはずなんだ」と。

ダンサーは日本では地位が低いんですね。なかなか金にならないんですね。でも、アーティストになるとお金になるんじゃないかと僕は思ったんですよ。

そういうのも、三代目 J SOUL BROTHERSを見て、あのEXILEファミリーを見て。EXILE TRIBEはすごいですよね。言ってみれば、たった二人のボーカルが何人ものダンサーをアーティストにしているんだと僕は思ったんですよ。それは、HIROさんというダンサーが作ったからそうなんだと思ったんですね。

「ダンサーが作ったから、ダンサーが食っていける仕組みを作ったのか」と僕は思ったんですよ。だから、MAKIDAIさんが『ZIP!』のMCをやったり、AKIRAさんも『GTO』の主演をやったりして「でも、あの人はダンサーだもんね。歌ってないもんね」とは誰も言わないわけじゃないですか。「バックダンサーだもんね」だなんて、一言も言いませんよ。「あれはEXILEのパフォーマーなんだぜ」と言うわけです。

パフォーマーという言葉を発明したのも、EXILE TRIBEなんですよ。すごいですよね。ダンサーをいかに食わせるようにしたかというところに、僕は目を付けたわけですよ。だってあんな人数で『Rising Sun』をする必要は、本当はない。

だって本当に、4人ぐらいでもいいじゃないですか。「『Rising Sun』もうそんなに?」という『Rising Sun』。

(会場笑)

歌えない、踊れないけど、諦めない

中田:あれは、「ダンサーを食わせるぞ」という、HIROさんの意気込みの到達点だと、僕は感じ取ったんですね。それで、これはぜひやりたいと。

僕の弟がダンサーなんですよ。僕も弟の愚痴をたまに聞いていたんですね。

「兄貴、日本は本当にわかっていないよ。ダンスというのはアートなんだぜ。プレーヤーとしてもっとリスペクトされてさ、アメリカみたいにダンサーというだけで、一流の高額のギャランティがもらえるようになりてーよ」

「お前な、弟よ。日本はそういうもんじゃないんだよ。歌謡曲の文化なんだよ。だからみんなボーカルなんだよ。演歌の時代なんだぞ。演歌を歌ってボーカルだという中で、踊るやつが一番だという文化がなかなかないんだよ、演歌の国なんだから。アーティストになるんだよ。EXILEグループのようにやろうぜ!」

という話を、バァーッバァーッとしゃべって、それで始めたわけですよね。『PERFECT HUMAN』がようやく売れてきました。あれもすごい歌ですよね。僕がサビまで出てこないんですよ。

(会場笑)

そんなこと、普通あります? あれはどうやってできたかというと、実は1曲目じゃないんですよ。5曲目なんですよね。最初は、単純に二人で歌っていたんですよ。2、3曲歌ってみてわかったのですが、どうやら俺が足を引っ張っている。

(会場笑)

地獄ですよ。一生懸命「やろうぜ! 三代目 J SOUL BROTHERSになろうぜ!」と言ったやつだけが足を引っ張っている。

地獄の時間の始まりですよ。普通だったら、そこでみんなもう「ごめんなさい」と顔を真っ赤にして家で寝ると思うんですが、僕はそこで諦めなかった。

「みなさん」と言って、ピッチが始まるんですよ。「みなさんにお知らせがあります」。「正直、僕は歌が下手です。そして、僕は踊れません。でも僕は続けたいです」と。

(会場笑)

『PERFECT HUMAN』を生んだピッチ

中田:そういうところから僕は始めたわけですよね。どうしても続けたいし、ステージの真ん中にいたい。

そこで僕は考えました。いろいろ考えたんですよ。聞いてください。僕のピッチが始まりますよ、聞いてください。

「みなさんは歌える。あなたは歌える。素晴らしい。ありがとう。本当にありがとう。その上で、その上でだ。僕は真ん中にいたい。僕も普通にわかりますよ。僕も一般常識がありますからね。藤森さんがバァッと歌っているときに、僕が真ん中でこうやっていたら、あいつは邪魔だなと、いま一番思うんですよ。1万人いたら、1万人がそう思うでしょう。2人いたら2人とも思うでしょう。僕が邪魔だと。

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