4人中3人は、入社前と入社後のギャップを感じている

中村直太氏:今回のテーマは「3ヶ月チャレンジ」です。前回の放送で「リアリティショック」という話をさせていただきました。

リアリティショックは、「入社前に抱いていた働くイメージ」と「入社後に体験する現実」との間に、なにかしらのギャップを感じることです。入社1年目から3年目の1,700名を対象とした調査では、実に4人のうち3人は、そのリアリティショックを感じているということでした。

このリアリティショックに関連する話として、「入社してしばらく働いていくうちに、やりたいことがわからなくなってきた」という話がよくあります。説明会で聞いた企業の経営理念がすばらしい。選考過程で出会った社員がすばらしい。人の役に立つ、なんて意義のある仕事なんだ。そんな期待に胸を膨らませて入社をします。

しかし研修を終えて実際に現場に配属されてみると、もちろん入社前の話が間違っていたわけではないけれど、日々経営理念を実感して働ける会社ばかりではないし、良くも悪くもいろんな人が働いているし、地味で泥臭い仕事もたくさんあるわけです。

そんなギャップを前にふと、「あれ? 私は本当は何をやりたかったんだっけ」と、4人に3人がそう思い返すわけです。でも、そこから始まるんだと思います。入社前に抱いていた「やりたいこと」は、ある意味幻想に近いものがあるので、それもそのはず。働いたことがない自分で思い描いた「やりたいこと」なんですから。

だからそれはそれで大切にしていきながらも、そこにとらわれることなく、今この瞬間からやりたいこと探しを始めたほうがいいのではないかと思うんです。

自分の世界を広げるための「3ヶ月チャレンジ」

では、どのようにしてやりたいことを探していくか。ようやく今日のテーマ、3ヶ月チャレンジに戻っていきます。3ヶ月チャレンジは、いったん3ヶ月という期間を区切りとして体験するテーマを決めて、実際に行動してみることです。やりたいことを探していくために、とにかく行動して知識や経験を増やし、自分の世界を広げていこうという作戦です。

知らないことはそもそもやりたいことの候補にも挙がらないし、例え知ったとしても、やってみると意外とおもしろくなかったとか、逆に思ったよりハマりそうということがたくさんあるからです。

行動し世界を広げない限り、狭い世界の中からやりたいことを無理やり探すことになってしまいます。テーマは仕事に関連する・しないは問いません。例えば、「この前仕事で困った資料作成について、とにかくこの3ヶ月間は勉強してみよう」でもいいでしょうし、「最近話題のジェネレーティブAIがどうしても気になるから使い倒してみよう」でもいいと思います。

とにかく世界を広げることが目的です。アクションの種類も、本を読む、コミュニティに参加する、講座で学ぶ、実践者に会いに行くなど、いろいろあると思います。そのテーマの本質や楽しさをつかめる目安として、まず3ヶ月はどっぷり浸かってみる。興味を持てば続けるし、そうでなければきっぱりやめる、そんなイメージです。

シンプルですが、とにかく行動して知識や経験を増やし、自分の世界を広げていこうと決めるのが3ヶ月チャレンジです。もちろん目の前の仕事をしっかりやることが前提です。それに、「今は目の前の仕事に集中したい」という場合は、それでよいと思います。

ただ、「あれ? 私は本当は何をやりたいんだっけ」と悶々としながら日々を過ごしている場合には、3ヶ月チャレンジで地道に世界を広げていくこと。短期的にも中長期的にも、働くコンディションとパフォーマンスが良くなっていくと思うので、お勧めします。

メンバーのチャレンジを後押しする、マネージャーのあり方

では最後に、マネジメントする側の立場からはどんなことができるでしょうか。それはチャレンジを後押ししてあげることです。「まず目の前のやるべきことをしっかりやっていればいい」。そんな発想になることもとても共感できますし、重要な考え方だと思います。

同時に、「目の前の仕事だけをやっていると、数年後の仕事ができなくなる」という危機感や、「人生の貴重な時間を投資する仕事だからこそ、やりたいと思えることをしたい」という思い。これを持ちながら働いて然るべき時代に差しかかっています。

仕事でも仕事以外でも、夢中になれること、「自分の成長につながることをやる」というメンバーの気持ちを尊重したいものです。

もう1つは、その上で見守ってあげることです。ただ見守るのではなく、なにより関心を示してあげることが重要だと、私は思います。ふとした瞬間に、「そういえばこの前話してくれたチャレンジ、うまくいってるの?」。そんなふうに語りかけるだけで、十分ではないでしょうか。

もちろん仕事に関連が強いものであれば、1on1などで進捗確認をされるんだと思いますけれども、そうでなかった場合もぜひ関心を示してあげてください。あなたの大切なメンバーが大切にしているチャレンジです。あなたが大切にしない理由はないはずです。今回も最後まで聞いていただき、ありがとうございました。