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「大事なのは、明日の売上よりも“信用”」中国で100年間生き続けるセイコーブランドの秘密

「大事なのは、明日の売上よりも“信用”」中国で100年間生き続けるセイコーブランドの秘密

中国での導入実績が700社を超えたサイボウズ。中国法人立ち上げから10年という節目の年に、上海にて「Cybozu Days Shanghai 2017」を開催しました。基調講演では、サイボウズ代表の青野慶久氏が登壇。中国での導入実績がある日本企業のトップを招き、「壁を超える」というテーマについて対談を行いました。セイコーウオッチ中国董事長兼総経理の吉村等氏は、中国で100年生き続きてきた秘訣と、日本とは異なる経営理念について語りました。

(提供:サイボウズ株式会社)

シリーズ
Cybozu Days Shanghai 2017 > 基調講演「壁を超える」
2017年7月21日のログ
スピーカー
サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久氏
ベネッセ中国 董事長 兼 総経理 松平隆 氏
セイコーウオッチ中国 董事長 兼 総経理 吉村等 氏
極楽湯 董事長 松本俊二 氏

100年以上中国で事業を続けるセイコー

青野慶久氏(以下、青野) それでは続きまして、セイコーウオッチ中国様のお話をうかがいたいと思います。今日はセイコーウオッチ中国の董事長をされている吉村様にお越しいただきましたので、ご登壇いただきたいと思います。大きな拍手でお迎えください。 (会場拍手) 青野 今日はお越しいただきましてありがとうございます。私も、ちょっと……(腕時計を見せながら)かっこいいでしょ? ブライツ(セイコーのブランド)を今日は選ばさせていただきました。 吉村等氏(以下、吉村) ありがとうございます。 青野 これは本当に便利なんですよ。時計が2つありましてね。私たちも今グローバル展開をしているので、グローバルのメンバーと時間調整するのに非常に便利に使わせていただいています。 (セイコーウオッチ中国が)非常に伸びているというお話はうかがうんですけれども、よろしければ、少し簡単に事業のご紹介をしていただけませんでしょうか? 吉村 はい、わかりました。まずは私の紹介と、中国のセイコーの紹介をさせていただきます。 20150103-DSC00066 私はセイコーに入って1年です。大学を卒業してから39歳までJT、日本たばこにいました。そのあと自分でマーケティング会社をやりまして。まあ失敗したんですけど。そのあと大正製薬に行きまして、8年間。そのあとはカルビーに4年半いまして、1年前にセイコーに入ってきました。 SEIKO 今は55歳です。もう30年ぐらい仕事をしていますけれど、中国での仕事が26年です。 青野 長いですね。 吉村 はい。なので、どちらかというとFMCG、中国のマーケットに対しての商材を販売することについてずっとやってきました。1990年からやっています。 次は中国でのセイコーについてです。ここにもあるとおり、実はセイコーが最初に中国に入ってきたのは1905年。もう100年以上前なんですね。代理店から始まったんですけれども。第二次世界大戦の前には、この上海に工場も作っています。 青野 へえ、早いですね。 吉村 早いです。セイコー自体が136年の歴史がありまして、中国にも相当早く入ってきている。戦争が終わって戻って、再入場してきたときも、どこよりも早く入ってきたんですね。 ただ、伝統的な日系企業なので、中国でどうしていいのか非常に大変だったんでしょう。ということで、1年前に私がこの会社に入ってきました。 2番目のところにも書いてありますけれども、170都市に販売しています。実際に売ってはいます。ただ、今、私が注力してるのはそこではなくて、eコマースです。 青野 eコマース? 吉村 そうです。なぜ私がセイコーに来たかというのも、セイコーでこの1年、私がやっていることは2つ。 1つは、事業の軸をeコマースに置いてること。それはセイコーが私を採用した理由の1つです。もう1つは、カルビー的な経営をしています。働き方改革はまさにカルビー的なことをしています。

パソコンをいちいち開けているのは時間の無駄

青野 ありがとうございます。中国で100年という長い歴史なんですが、あまりうまくはいっていなかったんですか? 吉村 そうですね。昔から中国でセイコーのブランドというのは認知はされています。一番最初に入ってきた海外のブランドもセイコーでした。 ただし、中国というのは、みなさんも中国でお仕事されているので感じると思いますけれども、ビジネスの動きが早いですね。あと、パワーゲームだったり。きちんと日本的なことをやっても儲からない。儲かる仕組みというのはやはりビジネスのスキームをどう組み立てるかが非常に大事で、そこが日本的なやり方だとまず成功しないだろうなと。 そういう意味で、今の私のやり方は完全に日本人じゃないですから。 青野 組織のマネジメントなども変えられたんですか? 吉村 組織も変えました。要は、部門がたくさんあると部門ごとのコミュニケーションをしますよね。それは時間の無駄なんです。 青野 部門ごとのコミュニケーションは時間の無駄? 吉村 無駄です。時間の無駄=お金のロスです。会社は金を儲けるための組織なので、そういう意味では、組織は部門が少なければ少ないほどいいです。なので、11あった部門を3つのグループに分けました。 青野 シンプルに。 吉村 それで、グループウェアを導入したんです。 青野 ありがとうございます(笑)。ああ、そうなんですか。 吉村 なので、社内では「メールでのやりとりは基本的にするな」と言っています。 青野 なるほど。 吉村 みなさんご存じの、こちらだと微信、WeChatみたいな。社内のグループのコミュニケーションですよね。サイボウズさんでもありますけれども。1つの決裁で、すべてやりとりができるので、非常に便利です。 青野 そうしますと、今は吉村さんがいろいろ出張されていてもワークフローが回るようにスピーディにIT化されているんですか? 吉村 そうですね。基本的には、スマホで仕事ができるように。 青野 やはりスピード感が。 吉村 パソコンでやっていたら、パソコンをいちいち開けているのが時間の無駄なので。 青野 やはり、もうとにかく組織をスピーディに。会議なども減らされたりしたんですか? 吉村 ええ。基本的に会議はしないです。 青野 しないんですか? すごいな(笑)。 吉村 しないです。カルビーの松本会長もそうでしたけども、「ノーミーティング・ノーメモ」ということで、「会議はするな。資料は作るな」、これが原則です。 青野 うわ、すごいな。 吉村 とは言いながらも、実際に会議はします。何の会議をするかというと、「今度の注文をどうしよう」「これについてどう対応するか」とか、きちんとした案件について対応をするだけで、会議の議事録を作る必要のあるような会議はしないです。 青野 なるほど。 吉村 なおかつ、定例会議のようにみんなで集まって何かを持ち寄って、というものは、紙を作る時間が無駄だし、会議をする時間も無駄なので、何もやらないです。 青野 なるほど。本当に売上が上がるところにフォーカスして、活動をシフトさせたわけですね。 吉村 そうですね。

売れないものを一生懸命売ろうとしてもコストがかかるだけ

青野 すごいですね。また、時計というのはある意味模倣されやすいものだと思うんですが、どういった時計がこちらで売れているんですか? 吉村 これも私の改革したうちの1つなんですけれども、今まではドレッシーな時計ですね。中国の人はプレザージュというスーツに似合うような時計が大好きなんですよ。なので、それを中心に売っていました。 ところが、まずは基本的なマーケティングの4Pでいくと、Productはどうするのかと。今はもう、みんなスーツを着て仕事しているような感じではなくて、けっこうカジュアルですよね。そうすると、カジュアルな時計のほうが合うだろうなということで、弊社の場合で言えば、ダイバーですね。ダイバー用の時計。 青野 ダイバーウォッチ? 吉村 ダイバーウォッチです。防水機能があって、水がついても当然大丈夫なんですけど。うちの価格帯は日本円で10万円以下なんですよ。ロレックスとかは50万円以上するんですね。 青野 桁が違う。 吉村 そう。同じ価格帯でブルーオーシャンなんです。競合がいないんです。 青野 なるほど。競合がいない。確かになかなか作れないかも。模倣が難しいかもしれませんね。 吉村 ええ。技術がいります。模倣物はすぐ水が漏れますから。 青野 なるほど。 吉村 商品戦略はまずダイバーに特化する。チャネルはeコマースに特化する。できるだけ早く売れ筋商品を作ること。メーカーは商品を作ることに特化すればいいと思うんですよ。売れないものを一生懸命売ろうとすると、広告宣伝費がかかったり、販促費がかかったり、家賃がかかったり、コストばっかりかかる。そこにお金をかけるぐらいだったら、売れる商品を作ることに特化する。 青野 売れる商品。 吉村 ええ。ダイバーウォッチは、おかげさまで今ものすごく売れています。もう在庫がないです。 青野 ブルーオーシャンを発見されたわけですね。 吉村 そうです。もう来るのを待っている状態ですね。 青野 そうですか。日本側もびっくりしているんじゃないですかね。 吉村 びっくりしていると思いますね。「どうしてこうなったんだ」という状態です。

中国のEC市場での戦い方

青野 ただ、ECで売ろうと思っても、もういまやECなんてある意味どこでもやっているわけで、出したから売れるようなものでもないと思うんですけれど、どんな工夫をされているんですか? 吉村 このあとアリババさんもいらっしゃると思いますけれども、ほとんどの方はみなさんアリババさんなどでお店を開いていると思います。開いてももう売れません。かなり多くの人が来るので、どうやってそのお店にたどりつくかというのが大事です。 たどりつくためには、当然、そこまでに来る経路ですよね。それにはお金がかかるわけです。何百万、何千万、何億の広告宣伝費をかけて呼び込もうとします。が、私はそれを一切していません。 青野 でも、ECでお店を出しても、なにかしないと人が入ってこないですよね? 吉村 ええ。なにをするかというと、人がやらないことをするんです。コンテンツを作るんですね。 青野 コンテンツ? 吉村 コンテンツ。eコマースって、アリババさんですから、スマホです。スマホのショッピングをする。ただショッピングするために来るんだったらおもしろくないから、例えば日本だとジャパネットたかたみたいな、誰かが出てきて紹介する。 そのときに、紹介するだけではなくて、例えばワケあり商品だったら、ワケあり商品の実際の漁港まで行って、「あ、こんなんで品質がいいんですね」と見ますよね。そのドラマを作るんです。 青野 すごいですね。もうテレビを作っている感じですね。 吉村 テレビを作っています。それを、セイコーといえば東京の銀座4丁目、和光からライブで配信します。 青野 生中継で?(笑)。 吉村 生中継です。 青野 すごいですね。 吉村 生中継で。もう即売会みたいな。その時に生中継をしながら、工場の話をしたり、ミュージアムの話をしたり。そういうかたちでコンテンツを作ると、プラットフォームのアリババさんなどが、「こんなことがやりたいんだ」といって、無料でものすごく人が来る場所に置いてくれる。 青野 なるほど。アリババさんもそういうユニークなコンテンツは、ある意味モールとしての集客力になるから、目立たせてくれるわけですね。 吉村 そうですね。なので、今年の主流はライブです。ライブをやることによってより多くの人が、テレビを見るんじゃなくて、あとはスマホでどこかの愛奇芸(中国の動画共有サイト)とか、ほかのものを見るんじゃなくて、「ああ、やっぱり天猫に行こう」とか「京東に行こう」とか(天猫、京東はいずれも中国のECサービス)。そこでもおもしろいものがあったら来ますよね。プラットフォームさんはそういうコンテンツが欲しいんですよ。 お金のあるメーカーは、億というお金で有名な芸能人を呼んで、人が真似できないようなことをします。でも、ほとんどの人はできないわけですよ。なので、我々がお金をかけずにそういうものをやると、ドーンと紹介してくれる。そうすると、みんながそれをやれば真似できますよね。 青野 有名な芸能人を使わなくても、アイデア1つで集客できる。 吉村 使わないです。そうです。 青野 すごいですね。 吉村 なので、思った以上に売れちゃって、物がない状態です。 青野 それまた大変ですね(笑)。でも、やはりECならではの戦い方ですね。

新しいものはお金がかからない

まさに中国だからこそ、これだけのECが発達していて、だからこそみんなスマホで見るようになっていて。そこをまさにターゲットとして、時計をライブ放送で売るんですからね。やはり発想の転換が必要ですよね。 吉村 セイコーは全世界で売られていまして、おかげさまでいろいろなところで人気があるんですけれども、通常のセイコーの広告、もしくはプロモーションはどういうものかというと、当然、ジョコビッチを使ってワールドワイドの広告を打ちます。 あとはグランドセイコーなどを組み立てる、黄綬褒章をもらっているような方を(呼んで)、ワールドツアーを回ってそのときにイベントをして集客をするというようなかたちが、従来のアナログ式のプロモーション。 今、私がやっているのは、誰も来なくていい。広告はすべてやめました。 青野 うわ、すごい。 吉村 なにをするかというと、中国のインフルエンサーですよね。男と女をセットにして、日本に彼らに行ってもらって、実際の黄綬褒章の人のところに行ってお話をする。工場だったら、工場のラインの中に入って技術者とお話をするというものを、スマホでライブで見せます。 青野 なるほど。まさにデジタルインフルエンサーとセットにして今までのコンテンツを活かすわけですね。 吉村 そうです。 青野 なるほど。うまいですね。でも、今年はライブ放送と申されましたけど、またなにか新しいネタも考えておられるんですか? 吉村 ええと、考えていません。 青野 (笑)。 吉村 なぜかというと、今年の年間計画は作りました。当然、このぐらいの予算というのがあるんですけれども、アリババさんなどの新しいテクノロジーが出てくるのが、年単位じゃないんです。 青野 なるほど。 吉村 3ヶ月単位で更新します。なので、今考えたものを今年の11月にやろうとしても、ひょっとしたら遅いかもしれない。 青野 もう時代が変わってしまっている。 吉村 変わっているから、古いものになるかもしれない。 青野 なるほど。 吉村 今が7月なので、ちょうどW11(中国で毎年11月11日「独身の日」に実施される販促イベント)のときは今ぐらいでいいと思いますけど、来年の1月以降はまた新しいものが出ていると思うので。今考えているものはおそらく使い物にならないと思いますね。 青野 ものすごいスピード感ですね。やっぱりこのネットのスピード感で計画を立てて、コンテンツも作って出していく。おもしろいですねえ。 吉村 新しいものって、お金はかかりません。たぶん誰もやっていないからそれほど高くないんですよ。能力があればできるんですね。それをいろいろな人が真似るからだんだん高くなって、いろいろな人が間に入ってくるからコストが高くなってくる。 青野 なるほど。もうデジタルのまさにダイレクトなところをうまく使って、できるだけ安くたくさんの人に届けると。 吉村 そうです。

過去の成功事例は、成功事例じゃない

青野 どうですか、みなさん? このセイコーさんというこの歴史のある会社がこのスピード感で(ビジネスを)されているということにびっくりするんですけれども。日本からなにか言われたりしないんですか? そのあたりのやり方などで。 吉村 ないです。 青野 ないですか。 吉村 ええ。この会社に入る時に3年契約で入ってきまして、3年間は私に任せていただくということで。当然、入る前にプレゼンもしました。「こうやってやりますよ」と。売上は、普通の会社だと対前年の20パーセントとか30パーセントって……30パーセントも上がったらいいほうですよね? 青野 そうですよね。 吉村 私は倍々です。 青野 すごいですね。 吉村 でも、おそらくそれ以上になると思いますね。 青野 そうですか。 吉村 中国の人が求めていたんでしょう、と思います。 青野 じゃあもう日本がなにを言おうが、中国に最適なやり方で、中国のスピード感で、中国のやり方で勝負して。それである意味、日本もそれを見て勉強するかもしれませんよね。「ああ、もうこういう時代だな」なんて。 吉村 逆輸入ですかね。 青野 逆輸入ですよね。日本のほうもたぶんビジネスモデルはどんどん変えていかないといけないでしょうから、逆に成功事例がこちらから出ている感じがしますね。 吉村 そうですよね。とは言いながらも、私がいつも社員に言っていることは「過去の成功事例は、成功事例じゃない」って。「他人がやっていること、競合がやっていることも、もう成功事例にはならないから」「右も見るな。左も見るな。決して後ろは振り向くな。前だけ見て仕事しろ」と。 青野 なるほど。 吉村 明日なにが起こるだろうということを考えて、正しいだろうなと思うことをやればいいんです。そしたら、ベネッセさんもお話ししてましたけど、いっぱい失敗します。 過去にやったことを焼き直しても絶対に成功しません。やったとしてもコストがかかるだけ。他人がやっていることもコストがかかるだけ。なので、誰もやっていない、前に起こることを考えてやるんです。それが一番いいことですね。 なので、「中国での成功事例はなんですか?」といって本社に言おうとしても、「中国のことは参考になりませんから。大事なことは前を見て仕事すればいいんです」と。 青野 なるほど。「もう真似した時点で遅いですから」と。 吉村 遅いです。 青野 ということですね。すごいです。最後に、今後の展望についてお聞かせいただけませんでしょうか? 吉村 セイコーの中国についてですけれども、当然eコマースで売上を伸ばすというのはこの数年の話なんですが、私がセイコーに入るときに服部社長と話した時に「今後100年間、中国でセイコーはブランドとして生きていたいんだ」ということを言われました。なので、100年間中国で生きてきましたけれども、今後も生きていくために一番大事なことは信用です。 青野 信用? 吉村 明日の売上、明後日の売上よりも、信用ですね。信頼を裏切るようなことは絶対にやってはダメです。そういう意味では、売ったら終わりじゃなくて、売ったあとに会員制にして会員に対して時計のメンテナンスの仕方、アフターサービスの仕方、それを作っていくこと。それがこの中国で100年間生き続けるために必要な今後3年のポイントだろうと思います。 青野 なるほど。(スライドを指して)これ、20都市に修理拠点というのも、なかなかお金のかかる大変なことだと思うんですけれども、これもやっぱり長期戦略に立てば大事なことということになるわけですね。 吉村 そうですね。 青野 ありがとうございます。それでは時間になりましたので、ここで終わりとさせていただきたいと思います。もう一度盛大な拍手でお送りくださいませ。吉村さん、ありがとうございました。 (会場拍手)

  
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