現役ビジネスマンが書いた『転職の思考法』のヒットの理由

北野唯我氏(以下、北野):これは、おそらく永久に言い続けるのですが……。ダイヤモンドさんで、売れたあとプロモーション担当の方がついたときのことです。今でも覚えていますが、担当のプロモーション部長さんのような偉い方が来たときに、いちばん最初に「北野さん」と。初めて会った女性の方に、「北野さん、失礼ですがこれ、ご自分で書かれたのですか?」などと言われまして。

尾原和啓氏(以下、尾原):ははは!

北野:いや、本当に失礼で。「書いたわ!」と。でも、それはおそらく、転職の本は普通売れないのに、どうしてこんなに売れていて、しかも読んでみるとかなりよくできているようだからビックリ、というような感じではないでしょうか。ダイヤモンド的には「いや、まさかこんな30歳の若造が、こんなに本を売るわけがないだろう」と思われていたんだと思いまして、密かに傷つきました。

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法

(会場笑)

横田大樹氏(以下、横田):大変失礼いたしました。

北野:いやいや(笑)、ウソです、ウソです。

横田:ただ、補足をすると、もちろん中身が本当にすばらしかったのですが、もう少し深掘りをすると、ストーリーやエモーションの部分がすごく良かったんですよね。

尾原:あぁ〜、そうですよ。本当にそうですよね。

横田:そういったところを書けるビジネス書的なライターさんは、本当に今までいなかったと思っています。

尾原:しかも、現役のビジネスマンですからね。

横田:そうですね。えぇ。

自分の付加価値を高めるギャップを狙う

北野:まさに時代の差を突くというか、専門用語で言えば、いわゆる「アービトラージ」のようなものだと思うのですが。

尾原さんもそうですが、一流のビジネスパーソンなど、ビジネスで活躍をされている方と話すと、やっぱりそういうことがお上手ですよね。例えば「アメリカではこういった事例があって、こうです」というようなことや、IT業界で言えば当たり前なのだけど、出版産業ではぜんぜん当たり前じゃないものを取り入れると、すごく付加価値が高い。

転職というのも、ひとつはそこに価値がある。すなわち、よくある普通の産業でいうと普通の技術かもしれないけれど、新しい産業ではめちゃくちゃありがたいと言う。経済学的に言うと、いわゆる比較優位のようなものだと思うんですが、それが転職の価値なのではないのだろうかという気がしています。

キャリアを作る上でも、そのギャップのようなものを狙うことがすごく大事だと思っているんですよ。だから、尾原さんのキャリアも、やっぱり20年前であればおそらく「マッキンゼーって、何それ?」というようなイメージ。

尾原:はっきり言って、うちの親父には「街金軍団」だと間違われました。

北野:なんですか、それ? 街金?

尾原:街金。「街の金融屋か?」って。『ナニワ金融道』のようなもんですよ。

北野:ですよね。そんな感じでキャリアを作っていくというのは、本づくりも一緒だと思っているのですが。そうしたギャップのようなものはないんですか?

尾原:そうですね。だから逆に言うと、去年北野さんが『転職の思考法』を出したときに「救われた」という読者の方々がいらっしゃるぐらいだから、そういった意味では、新卒の方からすれば、「新卒が最初から転職を考えているのか」という言葉を出すことの危険性。だから、たぶん2年後ぐらいに『新卒の思考法』という本を出せばめっちゃ売れると思いますね。

北野:売れますか!

(会場笑)

北野:では、ダイヤモンドさんで(笑)。

売れる本を作るための着眼点

尾原:……などと言ってしまうぐらいのズレが、今でも残っているということが大事だと思うんですよね。今だから言えますが、実際に僕も『モチベーション革命』という本も、ものすごくアービトラージで書いていました。最初、もともとは組織論の話で書こうと思っていたのですが。

モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)

北野:へぇ〜。

尾原:ところが名編集者の箕輪さんが、やっぱり今の若い方が、自分たちのモチベーションが理解されなくて困っているという話をされていた。僕からすれば「そんなの『ミレニアル世代』といって、アメリカではめちゃくちゃ研究されていることじゃないですか」と思っているんだけれども。

「あれ? こんなにレーダーが立っている箕輪さんがそう言うということは、もしかして」と思って探してみると、日本でミレニアルの本は1冊しかなかったんですよ。それを読んだら「勝てる」と思いました。

(会場笑)

そこで急きょ、『モチベーション革命』という名前に変えて、ミレニアル世代にぶっ刺す本に変えたという。

北野:もしかして『どこでも誰とでも働ける』もそうなんですか? そういった……。

どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから"の仕事と転職のルール

尾原:『どこでも誰とでも働ける』は、僕的には実は……。これ、いいのかな? こんな暴露大会、楽しい?

北野:こんな感じでいいんじゃないでしょうか。今日は。

尾原:あとでちゃんと新卒の方にもギブできるヒントをご提言いたしますので、あくまでも最初の前フリとすると、もともと僕は『1職目の教科書』という……。

北野:ほぉ! なんか聞いたことがありますね(笑)。めっちゃ聞いたことがある。

尾原:転職が当たり前の時代になるから、「『1職目の教科書』というタイトルで書きませんか、横田さん」と言ったら、「尾原さんがそんな普通の本を書いちゃダメです」と諭されました。「そんなことよりも、尾原さんはどこでもいろんな人と働いている。そちらのほうが尾原さんでなければ書けないことだから、書いたほうがいいですよ」と言われました。

世界各地を転々としながら働く「リゾートワーカー」

尾原:僕は、「リゾートワーカー」と呼ばれる職業なんですね。リゾートワーカーという言葉を聞いたことがある人はいますか? いませんよね。

北野:なんですか? リゾートワーカーとは。

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