大会で決勝卓に残るには「早めに攻める」

梶本琢程氏(以下、梶本):さあ、この後はみなさんからのご質問の時間を設けたいと思います。前に座っている2人、主にこちら(魚谷氏)にご質問がある方は手を挙げて聞いていただければと思います。答えられるものはすべて答えますので、よかったら。

質問者1:いろんな大会に出させていただいてるんですけど、先ほどのお話のなかで「当たり前のことをする」というのがありましたが、決勝卓に残るための当たり前のことってなんですか?

魚谷侑未氏(以下、魚谷):難しいですね。決勝卓に残るって、たぶんみなさんがいつでもできることじゃないじゃないですか。だから、その時その時で最大限のパフォーマンスを活かすことだと思います。

なんですかね、守備ばっかりしてたら決勝卓に残るのは難しいと思うんですよ。ワンデイ(1日制)の大会で勝つには、思い切りよく攻め込まなきゃいけないときがあると思うので。

難しいですけど、勝負どころを早めに持ってきて、勝負していっていいんじゃないかなと思います。

守備型の方は勝負どころがけっこう後のほうになっちゃうと思いますけど、勝負どころっていつ来るかわからないと思ってるので、なるべく早く決着をつけられる状況にいけることが大事かなと思います。梶本さんは?

梶本:僕は最近あんまり大会出てないんですけど(笑)、ワンデイですよね? 例えば半荘3回か4回で準決勝か決勝に進むという感じですよね。

やっぱり先行したときにできるだけリードを広げておくというのが大事かなと思うので、トップ目でも攻めるというか。もちろん状況もあるのでなかなかそこまでいかないと思うんですけど、リードを広げておくだけ広げておくと、2回戦3回戦目でちょっと戦いが楽になると思うので、そこは大事かなと。

まあ、負けることもいっぱいあると思うので、その原因は頭のなかに置いておいて悔やまないというのが一番いいんじゃないですかね。何度も何度も毎回出られるもんじゃないので、負けることもあると思いますし。あと自分の雀風にあってるかが大事だと思いますので、それにあわせて一番ストレスがたまらない方法で試していくのがいいと思いますね。

質問者1:ありがとうございます。

梶本:では、ほかの方いらっしゃいますでしょうか。

魚谷:(質問するのは)恥ずかしいと思いますが、そこはなんとか……(笑)。

梶本:なんとか聞いてください(笑)。

強くなるためにはなにをすればいい?

質問者2:麻雀って努力をすれば強くなれるものですか? その強さの度合いを聞きたいんですけど、例えば、魚谷さんが教えた人が魚谷さんより強くなることってありえますか?

魚谷:それはぜんぜんあると思います。

質問者2:それはなんでですか?

魚谷:難しいですね。難しい質問ですね。

質問者2:逆に、どうやったら魚谷さんより強くなれるんですか?

魚谷:魚谷さんよりどうやったら強くなれるか(笑)。難しいですね。ごめんなさい、私がそんなに強い人間だと思うわけではないですが、まず麻雀を私より好きでいてほしい。あと、私は本当に麻雀のことだけを考えて生きてきたので、麻雀のことをすごくたくさん考えてほしいというのと……難しい質問ですね。私より強くなれますかって質問は初めていただいたので、難しいですけど……。

梶本:自分で答えるのもね(笑)。

魚谷:そうですね(笑)。難しいです。「難しいです」というのは、私より強くなることが難しいってことじゃなくて、どうしたらいいかって聞かれると(答えるのが難しい)。

私が強くなるためにやってきたことは、麻雀のことだけを考えて一生懸命……ほかのことを全部捨ててきたというか、「麻雀が強くなるために麻雀だけをやろう」という環境にしてきたというか、そういうのがあるので。

やっぱり麻雀プロでも、麻雀を一生懸命やってる人は同じような境遇だと思うので、環境を作ることが大事かなと思います。これでよろしいでしょうか。

質問者2:はい。ありがとうございます。

梶本:ほかには……ん? 僕も答えるの?

魚谷:わからない(笑)。どっちでも……。

梶本:魚谷さんより強くなるには? 例えば、魚谷さんの教え子が魚谷さんより強くなるかどうかは、これはわからないですよね。魚谷さんとだけじゃなくてほかの人とも麻雀打つだろうし、そういう対局も経験して、それがより強くなるきっかけになるかもしれない。

まあ、素直な人は伸びるだろうし、負けず嫌いは伸びるだろうしというのはやっぱりありますね。悔しがらない人、負けてても「しょうがないか」で全部済ませちゃうのはよくないと思いますし。いろんなことを振り返って、いろんなことを取り入れて。

たぶん麻雀で知らないことってまだいっぱいあると思うんですよ、「こういうことがあるんだ」っていうのは。とくに今は情報をいろんなところから仕入れられると思いますので、そこで「言ってることは腑に落ちた」というのをどんどん集めていって取捨選択することで、どんどんレベルアップしていくんじゃないですかね。

あとは戦いの場をどんどん増やすことで越えられるかもしれない。越えられないかもしれない。この人(魚谷氏)も相当強者なんで、越えるのはなかなか大変なんじゃないかなと思います。

緑一色に関わる牌が好き

梶本:さあ、ほかには。どんどんお願いしますね。

質問者3:好きな牌とかあるいはラッキー牌とかがあれば、教えてほしいと思います。その理由もできれば教えてください。

魚谷:はい。期待されちゃうかもしれないですけど、私は中ではなく發が好きです。私は緑一色が一番好きな……実戦的でない役のなかで一番好きな役なので、緑一色に関わる牌は全部好きです。ただ、4ソー6ソーよりは2ソー8ソーが好きですね。

梶本:なんで?(笑)

魚谷:え? だって待ちになったらうれしいから。2ソー8ソーのほうが。真ん中のほうが待ちになるとアガりにくい。

梶本:8ソーはともかく、2ソーは安目もあるじゃないですか。待ちによっては。2・5ソー待ちで(5ソーが場に出て)「ロン、2,000点」なんて。

魚谷:いや、絶対アガらないですもん。そんなの。

(会場笑)

梶本:わかりました(笑)。じゃあ僕のも一応言いましょうか。僕は7マンです。理由は、盲牌したときにチクッとするのがちょっと気持ちいいかなと。まあ中でもいいんですけど、中よりは7マンかなという。とくになにかアガったとかそういうのはないですけど。そんなところですね。

質問者3:ありがとうございました。

梶本:じゃあ次。いいですね、どんどん(手が)挙がってきましたね。よかった。誰も挙げてくれなかったらどうしようかなと思ってた。

魚谷:前の時(イベント)は、みんないやいや挙げてくれてたんです。2人くらい。

梶本:サクラみたいな人が?(笑)

魚谷:サクラじゃないと思いますけど(笑)。平林さん(刊行書籍の編集者)が挙げてくれてた。

今一番興味があるのは佐月麻理子さん

質問者4:女流モンド杯のご自身の対局とかは観戦されると思いますけど、ほかの男性プロのテレビ対局とかは観戦されるのでしょうか。また、好きなタイトル戦があったら教えてください。テレビ対局で。

魚谷:モンドは基本的に結構見てます。やっぱりモンド杯は好きですね。テレビ対局限定で話すのでしたら、名人戦よりもモンド杯のほうが同世代……よりもちょっと上の方が多いですけど、同世代の方のバチバチの気持ちとかも伝わってくるので。

前回のモンド杯も、決勝とかで井出(康平)さんとか村上(淳)さんの熱い思いみたいなのが伝わってきやすいかなと思うので、対局自体ももちろんそうなんですけど感化されるというか。そういう意味で好きですね。

梶本:あ、僕もですか(笑)。僕は基本的に先に見ちゃってて答え(結果)も知ってるので、実は初回放送なんかはあまり見ないんですけど。

逆に言ったら、名人戦なんかは決勝以外は解説をやってないので、新鮮味があって見るかなという感じですし。今年から女流モンド(の解説)は僕じゃないので……言っちゃダメ?

魚谷:いえ、いいと思いますよ。「ガーン」って顔してる方がいたので。

梶本:そろそろ放送されると思いますけど。

魚谷:あれ? 公式で発表されてないですか?

梶本:わかんないです。なので、逆に視聴者として楽しみかなと。(実況の)土屋(和彦)さんじゃなくて、ナビゲーターの方に「うーん、甘いな」とか偉そうなこと思ってるかもしれないですけど(笑)、そういった楽しみはあります。

質問者4:ありがとうございます。

魚谷:時間は大丈夫ですか?

梶本:時間はまだぜんぜん。じゃあどうぞ。

質問者5:先ほどのトークのなかで、今現在女流プロが多くなっているというのがありましたが、そのなかで魚谷さんと梶本プロが「今後この人はくるかな」とか、「この人の打ち方・打ち筋が興味あるな」とかいう人は誰かいますか?

魚谷:私は、最近だとかなり一択なんですけど……たぶん私のTwitterを隅から隅まで見てる人は、私が誰に興味があるかがわかると思うくらいに興味があるのは、佐月麻理子さん。

梶本:ほおー。

魚谷:わからない方もちょっといるかもしれないですけど、現女流雀王ですね。協会(日本プロ麻雀協会)の方なんですけど。こんなこと言ったら失礼かもしれないですけど、私が初めて女流桜花を獲ったときの麻雀の打ち方とすごく似てるので。

仕掛けを多用するタイプですけど、仕掛けて全部いくとかでもなく、もちろん面前で全部いくとかでもなく、臨機応変な感じがして。ちょっと興味があるというか、見たいな、おもしろいなという打ち手かなと思います。

梶本:僕はこれから出てくるというタイプの選手を見る機会が非常に少なくて、どっちかというと……今、夕刊フジ杯の実況を関西でやってるんです。西日本リーグの実況をやってるので、そっちの選手のほうが見る機会が多くて。そうなるとなかなか出てくる場っていうのが少ないんですけど、意外と麻雀がしっかりしてきてるので。

ご存知かどうかわからないんですけど麻生ゆりさんとか、可南さんという夕刊フジ杯のチーム戦の決勝に出てくる人がいるんですけど、この辺は一応打てるかなというところです。ただ、それくらい打てる子はいま東京で活躍してる人にもいっぱいいるので、たぶんそこで勝ち抜いていかないと厳しいかなというところですね。

質問者5:ありがとうございます。

東風戦は押し引きの練習になる

梶本:ほかにいらっしゃいますか?

質問者6:最近、東風戦の大会に出ることがあるんですけど、親番のときに鳴く・鳴かないの判断が難しくて負けちゃうことも多いんです。どういう感じで鳴いたらいいとか、そういうのは決めてたりするのかなと。その辺を教えてもらいたいと思います。

魚谷:私はもともと東風戦出身なんですね。

梶本:おっ(笑)。

魚谷:あっ、そんな変な……変なという言い方はアレですけど、歌舞伎町とかそういうところじゃないですけど……。

(会場笑)

梶本:そこは言わんでいい(笑)。

魚谷:いいですか(笑)。普通に東風戦出身で最初はすごくやっていたので、自分のキャッチフレーズとかも「最速マーメイド」という名前になったと思うんですけど。東風戦をやっていた時に私が一番大事だと思ったのは、「全局参加する」ということですかね。

例えば見てるだけで1回りしちゃうと、だいたい3着とか下手したらラスで終わっちゃうこともあるんですね。

だから東風戦って自分が全部アガるとか、人に放銃しないようにただテンパイを取るとか、そういう深い部分の押し引きがうまくなるとけっこう勝てるかなと私は思ってます。

ただ、親番に関して言うんだったら、半荘戦で絶対鳴かないようなところでも(鳴く)。もう1局やることが大事だったりもしてくるので。細かいアガリを積み重ねていくことで、毎回トップが取れなくても2着とかにつけられて、どんどんプラスになっていくと思うので。

見てる(だけの)局を減らすって意識が大事かなと思います。

そうすると、今度は相手との間合いを測るのがうまくなってくるので、押し引きの練習にもなると思う。東風戦をやると、けっこう強くなるんじゃないかなと思っています。

質問者6:ありがとうございました。

梶本:魚谷さんの本でいったら、第5章がおすすめです。東風戦は。

ゆーみんの現代麻雀が最速で強くなる本

魚谷:仕掛け。

梶本:仕掛け。僕が一番おもしろかった、いいなと思ったのは164ページの「価値のない手は仕掛けてテンパイを取ろう」。これ結構見切りが大事なんで。アガれそうかどうかわからないけどアガったら安いなと思ったときは、アガリとテンパイがそんなに変わらないんで、早めにパッと動くことが大事という。仕掛けの章はけっこう参考になることが多いと思うので、ご覧いただければなと。

魚谷:ありがとうございます。

梶本:さあ、あと1問くらいですかね。

魚谷:最後になにかありますか? ない?

仕掛ける麻雀はバランスが難しい

質問者7:はい。

魚谷:ありがとうございます(笑)。

梶本:むしろこちらがお礼を言う感じで(笑)。

質問者7:魚谷さんの麻雀を前から見させていただいていて、これは僕の印象なので違うかもしれないんですけど……「最速マーメイド」というニックネームはありますけど、どちらかというと最近は面前のほうに寄ってるんじゃないかと、最強戦とか見てても思うんです。それはそういうふうに意識されてるのか、その辺を教えていただきたいんですけど。

魚谷:だいぶ意識はしてますね。仕掛けて勝つ麻雀を、初めてタイトルを獲ってからたぶん2年くらいはずっとやってたんですけど、仕掛ける麻雀ってバランスがけっこう難しいんですね。とはいえ、仕事とかで打ってる麻雀は相当仕掛けるほうなんですけど、競技麻雀においてはすごくバランスが難しくて。

例えば仕掛けることによって相手に「鳴かせないぞ」って絞られたりとか、出る牌が出てこないことが不利になる。競技麻雀だと、それが普段打ってる麻雀よりは多い印象なので。

そのバランスで麻雀を打っていくのが、結構……しんどいってわけじゃないんですけど、先々で自分がやってるルールで勝っていくためにはそうじゃないほうが得なんじゃないかと思って、仕掛けのバランスでいうと仕掛ける率は減ったんじゃないかと自分でも思ってます。

ただそれは「勝つためにこっちのほうがいいんじゃないかな」とちょっとずつ改善していってる段階なので、もしかしたらまたすごく仕掛ける麻雀に戻るかもしれないんですけど、今はそういうバランスで麻雀をやってます。

質問者7:ありがとうございます。

梶本:初めに見たとき、初めに女流モンドに出たときも、聞いてたよりは仕掛けないなと思ったんですよ。

魚谷:あっ、そうですか?

梶本:もっと、常に毎回3副露くらいしてるようなイメージ。

魚谷:コバゴー(小林剛プロ)みたいな。

梶本:(笑)。そういうのがあったんですけど、だんだんスタイルが変わってきましたよね。やっぱり打点との(兼ね合い)、トータルポイントで上にいかなきゃいけないって勝負なので。素点が大事とかそういうのを意識されて、面前とかリーチとか裏(ドラ)とかを活用するというイメージに変わりましたけどね。

魚谷:いつかモンドで裸単騎やりたいんです。夢なんですよ。

梶本:目立つから(笑)。

魚谷:いやいやいや(笑)。そういうわけじゃないですよ。

梶本:そのときに僕がいたら「夢がかないましたね、魚谷さん」って(笑)。「一度やりたいって言ってたんですよ」。

魚谷:1,000点とかじゃやんないですけどね。満貫くらいの裸単騎やりたいですね。

梶本:字一色の裸単騎やってくださいよ。

魚谷:この前やったんですよ。Twitterにのせたんですけど、字一色の裸単騎やってアガれなかったんです。

梶本:ずうずうしいですよね(笑)。

(会場笑)

梶本:というわけで、質問コーナーは以上となりました。ありがとうございました。