勝つために一番大事なのはメンタル

梶本琢程氏(以下、梶本):さあ、それでは、別の話題に移りましょう。魚谷さんが、麻雀で勝つために今一番大事にしてることってなにかありますか?

魚谷侑未氏(以下、魚谷):うーん、心ですね。

梶本:心。メンタル?

魚谷:そう、メンタルが一番大事かなと思っているので、心というか、その日のコンディションを一番いい状態に持っていくことが大事だと思ってます。

これに書いてあることって、普段の麻雀の勝ち方なんですけど、大事な対局の日っていうのは普段の麻雀と同じ気持ちじゃダメだと思ってます。すごく勝ちたいという気持ちは強いんですけど、勝ちたいって思い過ぎても、多分いい麻雀って打てなくなるし、逆に、気持ちが入ってなかったら、まったく麻雀にならないと思ってるので、いいバランスの状態に持っていくことが大事かなと思います。

梶本:気合入れすぎちゃってもダメっていう感じですか?

魚谷:そうなんです。だから、一番いいのは、前日までは気合をすごい入れて、当日になったらそれを全部捨てて、後はいい麻雀打とうっていつも思っているんですけど、勝ちたいって気持ちはとりあえず捨てて、いい麻雀打つことに集中しようというふうに対局の時は思ってますね。

梶本:なんか心掛けてるジンクスとか、お酒を断つとか、そういうのあるんですか?

魚谷:いろいろやったんですよ。昔は、まずお参りにいくとかやったんですよ。

梶本:神社に?

魚谷:神社に。

梶本:なんか一時流行りましたよね。女流プロがなんとか神社に行くような。

魚谷:そういう流行には乗れてない人なので、わからないですけど、1回軽くお参りに行ってからやった対局でボロ負けして、それからもう1回も行ってないです(笑)。

梶本:この神様は効き目がないと(笑)。

魚谷:もう神様頼みは止めようと。それから行ってなくて。ただファンの方からお守りとかたまにもらうので、「これなにかの対局で使って下さい。」みたいな時は、それを持っていくようにはしてます。

梶本:効き目ありました?

魚谷:どうですかね(笑)。その時々……ある時ももちろんあります。

1局で気持ちを切り替えるためにしていること

梶本:なるほど。最初にも書いてありましたけど、理不尽なことでもイライラしないとかあるじゃないですか。一発勝負でそういうことも起こりうるわけですよね。

魚谷:そうですね。

梶本:実際は(気持ちが)揺れてないほうだと思います? ご自身で。

魚谷:いや、揺れていると思います。どっちかっていうと別に人に対して揺れるってことは対局中はなくて、自分に対して揺れることは、結構ありますね。

梶本:対局中、例えば、切った瞬間に「あっ、ちょっと違う」って思ったら、けっこう引きずりますか?

魚谷:1局だけで切り替えるようにはしています。はい。やっぱり麻雀、引きずってもいいことないじゃないですか。悪いように考えたら悪いようにどんどん行っちゃうと思うので、1局で切り替えるように、「切り替えろ!」みたいな感じで、ほんとは顔をパンッと叩きたいんですけど。

梶本:やべえ、パーンってやったら「大丈夫か」って心配される(笑)。

魚谷:心配されるんで、よくやるのが、手のところをグッてつかむことで、「目覚ませ」みたいな感じでやってます。

梶本:(会場に向かって)一般の人、やります、これ? 効き目はありますか? 

魚谷:効き目、痛みで「ちょっとお前目覚ませよ」みたいな感じです。顔を叩きたいのも、気合い入れじゃないですけど。でもたぶん、一般の方はやらないほうがいいです。おすすめしてはないです。

梶本:でも、切り替えることが大事。

魚谷:切り替えることが大事です、はい。

梶本:前の局は失敗したかもしれないけど、ほかの人の理不尽な上がりとかあったかもしれないけど、それはそれでっていうことか。それはやっぱり“心”に通じるね。

マナーの悪い人もきっと麻雀が好き

今は成績がちょっとマイナスとか、トントンぐらいの人が安定して勝てるようになるためにも、いちばん大事なことはそこだって言っていいんですか。

魚谷:そうですね。「いやだ」とか「むかつく」とか「なんでだよ」とか、そういう感情ってたぶん、麻雀にとってまったくプラスにならないんですよ。だから、ほかの人のために思わないんじゃなくて、自分が麻雀勝ったりとか、強くなったりするために、思わないようにする訓練は、したほうがいいかなと思います。

梶本:ある程度打ってる人って、そういうことも慣れてるっていうか。「クソ、上がられたな」とか思って、そっちにはイライラしなくなっている人って、けっこういると思うんですよ。でも、相手のマナーが悪くて、ちょっと腹が立つなとか、そういう揺らされ方っていうのは、けっこうあると思うんですけれども。

魚谷:ああー。

梶本:そういう人と、ゲストとかで行ってたまに当たることもあるじゃないですか。そういうときにはどうしているんですか。注意する?

魚谷:それは難しいところで、お店の方針があるじゃないですか。

梶本:はいはい。

魚谷:大会とか、マナーを厳しくやってるお店とかだと絶対注意はするんですけど、でもどうしても、マナーをゆるめにやっているお店だと注意はできないので……。

梶本:受け入れるしかない。

魚谷:そうですね。私は別にいいんですけど、お客さまで、ちょっとイヤだって思っちゃう人もいらっしゃるじゃないですか。だから難しいなとは思うんですが、昔からやっている方ってどうしてもクセがついちゃってて、なかなか直せないとかあると思うので、そういう方もちょっと温かい心で見守って。

梶本:悪気があってやってるわけじゃないんだと。

魚谷:そうです、はい。麻雀が好きでみなさんやってるので。「この人麻雀好きなんだな」って思って、ちょっと温かい目で見ていただきたいなと。 

梶本:そっちのほうが結果的に、自分の成績もちょっと良くなるってとこにつながっていくかもしれないですね。なるほど。

さて、この本が出たのがいつでしたっけ?

魚谷:5月の23日だったと思います。

梶本:(発売から)3週間ぐらいですか。お知り合いの反応って、いかがでしたか。

魚谷:かなり好評はいただいてます、はい。超上級者の方から「真新しいことがない」とか言われたりはしましたけど、基本的に、初・中・上(級)に入りかけぐらいの方からは、「すごく参考になった」とか、あとは最初のメンタルの章がいろんな競技に通じて「同じことが大事だな」って言っていただいたりとかしましたね。

自分の成績をメモすることで強くなる

梶本:今までの戦術書のなかで、心構えっていう項目をいちばん最初に持ってくるって、あんまりないと思うんですけど、それは魚谷さんはなにか意識したんですか?

魚谷:意識したってわけじゃないんですけど、やっぱり麻雀で、私普段雀荘に勤めることが多いんですけど、みなさんと打ったりとか、お客さまを見てたりして思うのは、やっぱり心の強さってけっこう大事だなと。

で、自分自身も、偉そうなこと書いてますけど、心が揺れちゃうことって、けっこうあるんですね。やっぱりどうしても、人と接する仕事なので、嫌なことを言われて嫌な気持ちになることとか、ちょこちょこあるんですけど。

そういうときにも心を揺らさないでお客さまに接したりとか、麻雀を打つことが大事だなっていうことを日々思っていたので、それを一番に書けたらいいなと思ってました。

梶本:これけっこう新鮮でしたね、僕にとっては。あと「成績をつけて自分を知ろう」って、(これまで)書いてる人もいたでしょうけど、これはあんまりないなと思って。

(会場を見渡して)成績つけてます? あんまりつけてないですよね。

魚谷:つけてる人ー? (挙手を促す)あ、2人。

梶本:ちょっと少ないですね。ネット麻雀だと成績が残ったりするってのがありますけど。魚谷さんはつけてるんですよね?

魚谷:つけてました。

梶本:えっ?(笑)。

魚谷:つけてました(笑)。

梶本:なにそれ(笑)。ちょっと、書いてあること嘘ってことですか。

魚谷:嘘じゃない、嘘じゃないですよ(笑)。「昔つけてました」って、私そう書いてます、たぶん、はい。

ずっとつけてたんですけど、仕事の内容というか、ちょっと変わってきちゃったので、これは逆につけないほうがいいなと思ってつけるのをやめたというか。

梶本:でも長い目で見たときに、どういう楽しみ方っていうか、どういうふうに活用するかって、ありますか?

魚谷:まず最初に自分の成績を付けることで自分がどのぐらいのレベルなのかを知ることができるじゃないですか。で、麻雀ってそこから強くなっていくことって楽しいと思うんですね。それまで勝てなかった相手にちょこちょこ勝てるようになったとか、いつも勝てるようになったっていうのは、すごく楽しいことだと思うので。そういうのを、つけていくことによって(把握できる)。

たぶん成績って、つけている人は下がっていくことってないと思うんですね、長い目で見たら。

梶本:ほー。

全員が勝つことに貪欲になれば世間からの評価も上がる

魚谷:はい。ただ、つけてない人はそれがずっとわからないから、下がっちゃったりすることもあると思うんですよ。つけてる人っていうのは、それに対して一生懸命だから、私はたぶんつけてる人が下がってくことはないと思うので。

梶本:ちなみに、なにを書くんですか。成績? 持ち点と順位みたいな?

魚谷:基本的に順位が一番大事ですかね。平均順位がだいたい物語ってくれるかなと思うので。できればポイントも書いていいと思うんですけど、それはすごい細かいことできる方向け。

梶本:合間合間にスマホのメモに順位だけ書いて。

魚谷:そうですね。めんどくさい人はそれだけでいいと思うので、はい。

梶本:さあ、というわけでフリータイムの時間もあとちょっとっていう感じになってきているんですけど。魚谷さん、女流プロとして今回初めて、戦術本を出されて、ついにって感じはあるんですけど、女流プロの世界が今後どうなっていくっていうイメージとかありますか、魚谷さん自身で。

魚谷:どうなっていく……。そうですね、うーん、難しい質問ですけど、最近たぶんテレビ対局とか増えましたよね。いいことだと思いますし、女流プロの人数自体も、ここ数年? 10年ぐらいですごく増えたと思うんですね。

で、女流プロを目指したいって思う人もたぶん、麻雀やっている女性ではすごく増えたと思いますし。まずその世界が、みなさんからみて憧れの世界だといいなという思いがありますし。

あと、私がよくいろんな方に評価していただくのは、私が出てきてから女流プロが「勝たなきゃダメだ」と思うようになったっていうふうに評価してもらえるんですね。

私はほんとに勝ちにこだわって、ずっと麻雀プロとして生きてきて、勝つことが自分の存在意義かなと今でもずっと思い続けてやっているので、勝つことに全員が貪欲になると、たぶん競技としてのレベルも上がっていくと思いますし、そうすると世間からの評価も上がっていくんじゃないかなと思っています。

全員が一生懸命にやっていれば、評価としても上がっていくかなと思っているので、そうやっていくために、自分がそれを引っ張っていけるような存在になれたらいいなと思っております。

梶本:トップリーダーみたいな感じで。

魚谷:そうですね。

梶本:魚谷さんが女流プロになった時代って、女流プロ全体で何人ぐらいいたんですか。

魚谷:ごめんなさい、ちょっとわかんないですね。でも私がいたときは、けっこういたと思います。

梶本:すでに3、400人ぐらいはいた?

魚谷:200人ぐらいはいたかなと思います。

梶本:今どれぐらいなんですか。

魚谷:イメージ的には、倍ぐらいいそうですけど。

梶本:400人ぐらいか。いそうな気がする、確かに。

魚谷:いそうな、気はします。ちょっと(正確な数字は)わかんないですけど。

富樫義博さんに漫画を描いてほしい

梶本:あの、二階堂さんたち(亜樹・瑠美姉妹)が出てきたときはたぶん、せいぜい2、30人ぐらいでしたよね。

魚谷:そうですよね。

梶本:1つのリーグぐらいですか。(現在は)10何倍ですよね。

魚谷:二階堂姉妹のお2人が、この世界を、ぽんと上に押し上げてくれたと思うので、自分もできることなら、麻雀界のためにそういうなにかができたらいいなとは思っています。

梶本:「これやりたい」っていうのがあるんですか? 普通に対局に出る、本を書く以外に、麻雀プロとしてちょっとおもしろいことやってみたいっていう、なにかそういうビジョンを。

魚谷:これはまったくただの夢なんですけど、ただの夢ですよ? 拡散しないでくださいね。 ジャンプとかサンデーとかマガジンとかの、麻雀漫画の原作になりたい!

梶本:あー、原作! 拡散したらいいじゃないですか、拡散したら仕事来るかもしれないですよ!

魚谷:ほんとですか?(笑)。じゃあ拡散してもらおう。

梶本:原作をやりたいと思ったのは、なんでなんですか。

魚谷:近代麻雀の漫画は、すごいすばらしいものがいっぱいあると思うんですけど、そうじゃなくて、麻雀知らない人が麻雀をその漫画で知って「ああ、麻雀ちょっとおもしろそうだな」って思うような。

いま流行りの「3月のライオン」とか「ちはやふる」とか、ああいう知らない人が見ても「これおもしろい」って思えるような原作を書きたい。

梶本:じゃあまず(新刊と版元が同じ月刊誌)「裏モノJAPAN」の麻雀特集で原作を。

魚谷:はは、ちょっと(笑)。いや、大丈夫です。

梶本:でも、そういうのあったんですね。

魚谷:『咲-Saki-』みたいな麻雀漫画、もっとほしいじゃないですか。

梶本:そうですね、新しいファン層、国内だけじゃなくて国外にも広がっていきますからね。

魚谷:そうなんです。私じゃなくてもいいんですけど、いい麻雀漫画が出てきたらいいなーって思ってます。

梶本:どっちにしても、この部分もちゃんと取材で載りますんで。拡散されますんで。 いいっすね、「原作・魚谷侑未」。誰に書いてもらいます?

魚谷:え? じゃあ富樫(義博)さん。

(会場笑)

休日は寝てるか人狼やるか

魚谷:休載されちゃうかもしれない。

梶本:まあ夢はね。そんなことを目指していく感じで。

お仕事けっこう大変ですよね。今でどれぐらいなんですか。月何日ぐらい働いてるんですか。

魚谷:月に、雀荘に行くのはたぶん12から15ぐらいで、あとは対局と、勉強会が週に1回あるのと、あとちょこちょこレッスンの仕事とかもあって、なんかいろいろやって結局、うーん、月の休みが2日ぐらいですかね。

梶本:その日はなにしてるんですか。

魚谷:寝てますね。寝てるか「人狼」をやってます。

梶本:人狼。寝てるか人狼。

魚谷:いや、麻雀のセットもやりますね。

梶本:麻雀漬けですね。

魚谷:麻雀のセットか、寝るか、ゲームやるか、人狼やるか、ぐらいですね。全般的に。

梶本:数少ない休みで、体壊さないように頑張ってください。

魚谷:ありがとうございます。

梶本:さあ、そろそろカンペが入って、「何切る」(手牌から切るものを選ぶゲーム)に入ってくださいということなので、ちょっとみなさんと一緒に何切る問題をやりたいと思います。

後ろに問題が、いま出ましたね。

2人のプロが解説する“何切る問題”1問目

梶本:魚谷さんが作った問題ですか。

魚谷:(全2問の)2問目は実践譜で、1問目はインターネットで拾ってきた問題です。

梶本:そうなんですね。(1問目の問題について)マンズで1メンツ(3・4・5マン)と両面(2・3マン)、ソーズで3・5・5・7・7、1個空くみたいな。そしてピンズがリャンメン、タンツ(単子)2つ。さあこれで……。けっこう難しいっすね、これ(笑)。

これちょっとみなさん、「俺ならこれ切る」みたいなの理由付きでお答えいただける方。

魚谷:手挙げてもらえばいいですから、3ソー切る人とか。

梶本:ああ、なるほどなるほど。じゃあまず、なにから行きましょうか。3マン切る人。

魚谷:ゼロ? 1人? 2人? あ、3人?

梶本:ちょっと、はっきり挙げてもらっていいですか(笑)。

魚谷:1、2、3、4、5。5人。

梶本:次、ソーズの3ソーを切るって人。

魚谷:いない。

梶本:へえー。黒5ソーを切る人。けっこう多いですね。

魚谷:そうですね、5ソーはそうかなって。

梶本:14人ぐらいっすね。野鳥の会に調べてもらうと。野鳥の会知ってる?

魚谷:知ってます。こうやって(カウンターを使うまね)数えるの(笑)。

梶本:7ソーを切る人? おー。意外! これ。

魚谷:えっ、こんなにいると思わなかったんですか。

梶本:だってだって、ソーズ3・5・5・7だよ! むしろこっから形をよくしていくような形なのに、あえてそっちに持ってく。

魚谷:いや、いいと思います。いや7ソー切り、すごいいいと思います。推します。

魚谷プロが切る牌は……

梶本:7ソー推し。ピンズ、これ3ピン4ピン切る人いるんすかね。

魚谷:いや、さしご(3・4・5)があるから……。

梶本:6ピン7ピンを切る人は? いらっしゃいますね。結構割れますよね。

魚谷:ほかの牌切るって人いますか? いない。それはいない。

梶本:そうですか。理由とか聞きます? いいですか? 「俺、絶対これ切りたいんだけど」っていう人は……。

魚谷:理由を言いたい人います?

梶本:「俺のイチオシの理由はこうだ」みたいな。(挙手なし)意外とね。これね。なかなか言いづらいもんなんですけど。

魚谷:梶本さんは先になにを切りますか?

梶本:僕ね、マンズを落としたいんですよ。でも対子が3個見えるんでどうかな……両面多いしなあ。うーん。まあ一応3マンということで。2マンでもいいかなとくらい思ってる。七対子もしたいし。とりあえずはタンヤオで赤赤だし、という感じですかね。魚谷さんは?

魚谷:私は3マンを切ります。梶本さんと同じでした。

梶本:その心は?

魚谷:赤赤じゃないですか。とりあえず、タンヤオにすると3,900点は確定してると。私はこの手を仕掛けベースで考えたいと思ってるので、タンヤオにするなら3萬2萬のところが仕掛けるためには不確定プラス、さしご(3・4・5)の三色の目を残すと満貫まで見えるので、そこは残したいなということで3マンから切ります。あと、次に6マンを引いたらさすがに3メンチャンなので。そしたらたぶん7ソーを切ると思います。

梶本:7ソーを切る発想というのは、6ソーが埋まらない限りはもう1個7ソー切って、最終的には5ソーを雀頭にするというイメージですか?

魚谷:そうですね。どっちかというと。まあ、途中で4ソーを引いたりどっかで頭ができたりとかしたら変わる可能性はあるんですけど。さっき梶本さんが「7ソー切りが衝撃」って言ってたんですけど、7ソー切りって5ブロックの発想ですよね。本に結構書いてあるんですけど、7ソー切ると5ブロックになりますね。5ソー切りは6ブロックですね。

この場合さしごの三色があるので、6ブロックが絶対悪いわけじゃない。どっちもアリだと思うんですけど、7ソー切りはすごくいいと思います。これも推したいと思います。

梶本:僕の印象はやっぱり5ソー切りが、三色もあるし多そうなイメージだったんですけど。

魚谷:手役派はたぶん5ソー切りかな? 5ソー切りが一番多かったですよね、たしか。

梶本:今日、僕が一番衝撃を受けたのは7ソー切り。

魚谷:えーっ、そうなんですか?(笑) だったらピンズのほうがわかります?

梶本:うん。

魚谷:そうなんですね。

梶本:2度受けが嫌だからってのもあるし、マンズが両面だけどタンヤオが消える可能性があるっていうのが嫌だからっていうのもありますけど。勉強になりました(笑)。では、次の問題いきましょうか。

“何切る問題”2問目

次は南3局親番、13,800点持ち。ずいぶん少ないですね。まあでも親で。8ピンを引きました。これは7ピン8ピンの8ピンを重ねたんですね。

魚谷:7・8・8になりましたね。

梶本:打牌候補としては、3マン・4マン・7ピン・8ピン……?

魚谷:くらいですかね。

梶本:じゃあいきましょうか。

魚谷:(ホワイトボードが)見えます? 大丈夫ですか? 後ろの人は立っていいですからね。

梶本:みんな決めました? じゃあいきましょう。まず3マン切りの方。

魚谷:おお、すごい! 圧倒的。

梶本:僕も。

魚谷:梶本さんも(笑)。

梶本:4マン切り。

魚谷:おー。4人。

梶本:7ピン切り。

魚谷:おー。7ピンも多い。7ピン切りだとタンヤオ確定ってことだね。

梶本:8ピン切り。ツモ切りですね。

魚谷:2人……3人。3マンと7ピンがマジョリティと。三暗刻を残す。

梶本:やっぱり対子系の手役がね。三暗刻、次に四暗刻があるということなんですけど。魚谷さん。

魚谷:私の回答を言う前に、「この牌姿知ってるよ」っていう人います? ……いない。さすがにいないか。この牌姿は私の運命を変えた牌姿だと思ってるので。今は場況なしでみなさんに聞いたので、本来の私の意図がちょっと伝わらないと思うんですけど。これは一番最初に女流モンドに出たときの準決勝で、上2人に入らないと決勝にいけないという南3局の親番なんですね。

2問目は魚谷氏の運命を変えた牌姿

梶本:上2人って、2位以内に入らないとっていう?

魚谷:そうですね。少なくともその卓のなかで2位に入らないと。それまでの持ち越し点数があるんですけど、それも加味した上で上位2名に入らないといけないということですね。すごく大事な親番なんですけど……巡目が10巡目くらいだったかな。場況はまったく書いてないんですけど、実は6・9ピンが激薄で、6ピンが2枚、9ピンが3枚飛んでるんですね。

梶本:なるほど。それをふまえたら答えが変わる方はいらっしゃいますか?

魚谷:みんな変わっちゃいそう(笑)。

梶本:6・9ピンが安いってことは、6・9ピンの両面が結構厳しいから……。

魚谷:そう。厳しいんですけど、逆に使えてる人がいなさそうな感じの6・9ピンではあったんですね。私の答えを言うと、4マンを切ったんです。巡目的にもう形式テンパイを取ろうと思って、9ピンが打たれたらチーしようと。10巡目ではまだだけど、3段目に入ったら取ろうと思ってましたね。

覚えてる人がいるかわからないんですけど、この後の局面の話をすると二階堂亜樹さんからリーチが来ます。たぶん二階堂亜樹さんは2着目とかで、私よりも上にいたんですね。そのリーチが1・4マンなんです。で、次に2マンか5マンを引いてテンパイが入って、6・9ピンがすごく薄かったので3ピンと8ピンのシャンポンでリーチを打って……あれ? これ(7・8・8じゃなくて)7・7・8ピンだったかな。

梶本:(ツモ牌が)7ピンですか?

魚谷:まあいいや。シャンポンでリーチを打って。4マンをその巡目で切ってないと、すぐ当たりになっちゃってて。だからピンズに手をかけてると4マンでロンされて、私はその年に女流モンド杯で優勝できなかった。本当にどれが正しかったかはわからなくて、私にとって思い出の牌姿じゃないですけど、結局二階堂亜樹さんから直撃で12,000点をアガるんですね。裏3になって。

それが決定打になって決勝戦に進めて優勝することができたので、思い出の局だったという話をしようかなと思いました。今のを聞いて「そういえば」って思った人います? あっ、ありがとうございます! お2人いらっしゃいましたね。

梶本:何年前ですか? 5年くらい?

魚谷:いや、そんな前じゃない。4年くらいですよね。

梶本:え? まだ4年しか経ってないの?

魚谷:そうですね。4年? 3年? それくらいです。

梶本:4年で本まで出しちゃうの。すごいですね。

魚谷:ありがとうございます。

4マンを切ったおかげで今がある

梶本:ここでマンズに手をかけてないと、4マンが捕まってたということですね。まあ、3マン切っておくと2マンがツモ切りになるから、まだ(わからないけど)。

魚谷:その後のツモがどうだったか忘れちゃったんですけど、3マン切っておけばその後のツモ次第で可能性はありましたね。ピンズだとたぶんダメです。

梶本:ここで4マンを切ったおかげで、今の魚谷さんがあるという。

魚谷:そうなんです。よかったら、それをふまえてまた女流モンドを見る機会があったら見てみてください。

梶本:たった一打で変わるんですね。

魚谷:本当にそう思います。

梶本:その年の女流モンドで優勝して、今みたいになったということですもんね。……これ、普通にというか状況がなくて、例えばよーいどんの25,000点持ち親番で10巡目だったらどうします?

魚谷:もしかしたら3マン切るかもしれないですね。

梶本:夢があるじゃないですか。

魚谷:三暗刻系で、四暗刻までありますもんね。

梶本:普段はそういうのはあんまり意識しないんですか?

魚谷:手役ですか?

梶本:手役というか……まあそうですね。

魚谷:手役は結構見るほうで、手役派かなと思ってますよ。……誰か笑いました?(笑)。

梶本:だって、満貫以上の手は狙わないって……(笑)。

魚谷:いや、満貫は手役大事じゃないですか。

梶本:満貫まではね。

魚谷:満貫以上はそんなに見ないですけど。ただ、個人的な趣味としては役満が好きなので、役満は狙います。

梶本:なるほど。じゃあ3マンか7ピン、ここでいうと7ピンですか。

魚谷:そうですね。

梶本:わかりました。今の1問目2問目で「それはないだろ」っていうのあります? (1問目で)「どうしても3マン切りは許せん」という、あるいは下(2問目)で「4マン切りはないわ~」っていう。

魚谷:……ないそうです(笑)。

梶本:いいですよね、ここまで言われたら(笑)。ということで、何切る問題ありがとうございました。