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「科学技術は投資対象ではなかった」研究者である男を起業家に変えた“博士号を取っても働けない”現実

「科学技術は投資対象ではなかった」研究者である男を起業家に変えた“博士号を取っても働けない”現実

2017年6月7日に行われた「IVS 2017 Spring」のセッション「IVS DOJO」で、リバネス丸幸弘氏が登壇しました。大学院生のみで起業し、「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化させた丸氏。自らを“研究者”と名乗り、かつ「研究者は商売が嫌い」と話す丸氏を経営の道へ駆り立てたものはなんだったのか。そこには「知識と知識を組み合わせて、新しい世界を作っていく」という思いがありました。

シリーズ
IVS(Infinity Ventures Summit) > IVS 2017 Spring Kobe > IVS DOJO 2017 Spring Kobe
2017年6月7日のログ
スピーカー
株式会社リバネス 代表取締役 CEO 丸幸弘 氏

科学技術は人の生活を豊かにする

丸幸弘氏 こんにちは。残念ながら私、研究者です(笑)。経営者だと話し足りないんですが、研究者ですのでちょうど10分で話したいと思います。 みなさん、世の中ってなにでできているかわかります? ITじゃないですよ、研究です。科学技術により人間の生活が豊かになります。今日はそんな話をしようかなと思っています。 この話を真面目にすると、1時間半の基調講演になりますからね。今日は研究者でありながら、経営をやっている僕の方から少しだけお話をさせていただきます。 あ、リバネスがどんな会社か? それはあとでググってください。 (会場笑) 最初の質問です。「最先端の出前実験教室。この事業を僕はやりたい。さぁ、みなさん投資をしてください」。しますか? 最先端の科学の実験教室ですね。答えはどうでしょう? IMG_6210 (1) 2つ目、(スライドを指して)なんか聞いたことありますね。「ミドリムシで世界を救う」。ちょっと興奮した人?(笑)。 IMG_6213 (会場笑) いろんな人がいらっしゃるかもしれません。どうでしょう? 今のは投資してくれるかもしれませんね。さぁ投資しますか? 答えは2つとも、リバネスを創る15年前、そしてユーグレナを創業した12年前、答えはNOでした。科学技術というのが世界で進んでいるのにもかかわらず、当時の日本ではこの2つに投資はしてくれませんでした。これが、これから僕が解決していきたい課題なんですね。 リバネスは今では10倍になっています。当時は、たった15人の大学院生が作った会社でした。科学技術を発展させて、もっと世界に貢献したい、そういう思いでやりました。今では、出前実験教室には、のべ10万人の生徒が参加し、たくさんの教員とともに事業化することに成功しています。 (スライドを指して)これは有名なユーグレナですね。時価総額1,000億円になりました。僕は立ち上げから技術顧問として、自分自身の研究をそこに活用してきました。 IMG_6218

「誰も見たことも聞いたもないことをやりたい」というアイデンティティ

ちょっと、幼いころの話をしたいと思います。僕は幼稚園から小学校3年生までシンガポールにいました。おもしろい国ですよ、ぜひ来てほしいです。 シンガポールというのは多様な国です。シンガポール人、マレーシア人、インド人、もちろんイギリス人、日本人。たくさんの人種がいました。僕がそこで一番びっくりしたのは学校の授業です。生徒はどんどん手を挙げて発言をしていきます。いろんな意見が出ました。 日本に帰ってきたときにびっくりしました。みんな黄色い帽子とランドセルですね。授業中もずーっと先生の教えているのを見ているんです。授業では「先生の言うことを聞きなさい」「テストをとにかくがんばりなさい」。これが日本の学校教育でした。 子どもの時、すでに僕はシンガポールと日本の2つの文化を比較することができました。「やはり多様性の価値というのは、世界では当たり前の共通言語なんだ」と学びました。そのあと日本に帰ってきて僕は大変なことになります。当たり前が通用しないわけですから。 こんな僕はバイクという、工学的な技術を学びました。マフラーを変えるか、電気系統をいじらなければならない。まぁ不評でしたよね。不評でした。でも、すごく速くなりました。黙っておいてくださいね。そんなわけないでしょ、って(笑)。
 
これが高校時代です。そして大学に入ると、バンドを始めまして。研究者の人って技術だったりミトコンドリアだったりの話にこう……自分一人の世界に入ってしまうじゃないですか、こうやって人前に立つと。
(会場笑) なぜ僕がステージ慣れしたか。バンドです。CDを出していましたし、一応ギターボーカルだったんだけど、当時はモテモテでした。人と違う曲を作ったりするのが好きでした。 そして大学時代はひたすら旅をしました。 自分の自己紹介をしていて、なにを伝えたいのかというと、昔から「誰も見たことも聞いたもないことをやりたい」。これは僕自身のアイデンティティだと思ってます。

尊敬する先生からの「研究者になれるよ」

まぁ、こうなるとですね、大学3年生のときに不幸が訪れます。さぁどんな不幸か? これは就職活動ですね。自由に生きようと考えていた仲間たちが「ロックンロール!」とか言いながら、みんなね、スーツを着て、就職活動をやるんですね。 「おかしい。ロックに生きるはずだったんじゃないのか」「バカな?」と。みんなは「普通に生きるために就職をするんだよ」と。僕には本当に無理で、すごく悩みました。なんで働く意味がわからないのに働かなきゃいけないのか。 その会社で働けば、本当に日本が変えられるのか? ではなぜ、人と同じ考え方で動かなければいけないのか。これを思っていました。 そして、出会いがあります。(スライドを指して)この写真を見て「おお~」という人は研究者です。これはカルビン・ベンソン回路っていう……今日、こんな話でいいんですかね?(笑)。大丈夫ですか? いいんですか? まだ6分12秒ですから、時間はあります。 (会場笑) カルビン・ベンソン回路って、実はノーベル賞をとっている光合成のメカニズムなんですね。これを解明したベンソン先生って、もうお亡くなりになりましたけど、当時約80歳、彼の講演を聞いたときにすごく僕は感動しました。 彼は言うんです。「僕はね、毎日朝起きる時にすっごくワクワクしてる。今日はもっといい研究ができるかもしれない」。こんなことを若い僕に教えてくれます。そして「僕はなんでこんなことに悩んでいるんだ」と気づきました。 いろいろディスカッションして、先生は「君は研究者に向いているよ」って言うんです。「研究者は人と違うことが好きだから。君は就職する必要は別にないよ。研究者になれるよ」。 すっきりしました。「よーし、研究者になろう」って。そして僕は東京大学の大学院に研究者になるために入ります。研究者になる。大学の教授になったら、次はノーベル賞をとるくらいになりたいと思っていました。

知識と知識を組み合わせて、新しい世界を作っていく

そしてそこで大きな課題にぶち当たります。 (スライドを指して)これです。科学技術で世界はできているにもかかわらず、東京大学の一番いい機器を使っているのにもかかわらず。博士を取った後に働けていない、この日本。そしてもう1つ。僕みたいに科学や技術が好きで理系に進む人が減っていくこと。 僕は教授に言いました。「どうやって解決すればいいんだ?」。大学や大企業の社長に言いました。「どうすればいいんだ?」。答えはこうです。「わからない」。 「じゃあこれから、誰が解決するんですか?」。 それが実は15人の学生で、会社を作った理由です。ビジネスモデルは決まってません。なぜなら僕らはビジネスマンじゃないから。15人の学生がビジネスモデルはなく、お金もなく、信用もなく、事業を作ったこともなく、ただ単に「自分たちが活躍できる世界こそが、世界を変えていくんだ」と。それでさまざまな事業を展開していきました。 今ではその考え方をシンガポール、マレーシア、アメリカ、イギリスで広げ、同じような法人ができました。そして、世界各国の科学技術が活用されていないということが、全世界で共通してあることがわかったんです。知識と知識を組み合わせて、新しい世界を作っていくことをみんなで、世界でやるようになりました。 なぜビジネス経験のなかった僕に、事業ができたのか?  僕らは「商売」という言葉が大嫌いです。お金を儲けることは研究者の中では悪なんです。でも、事業は作れるんです。商売っていうものはですね、悪というのは言い過ぎかもしれませんけど、ほとんどの研究者はそう思っています。 商売は、ラーメン屋でももちろんそうです。「自分じゃなくてもできることなんじゃないかな?」と。研究者は人と違うことがしたいからやっているんです。事業というのは自分じゃなければできない。自分のコア技術こそが世界を変える。この世に存在しないといけない。 そして、商売は疲れるんです。将来、なくても変わらない。 ユーグレナができて変わったことがある。事業があるとないとじゃ、大きく変わる。事業は楽しい。 みなさん、ぜひ「世の中にインパクトを起こす」ということをやっていただきたいと思います。そして、人と違うことが、世界を変えていく。その考え方が研究者的な視点であると、今日覚えて帰っていただければと思います。 IMG_6232 ご静聴ありがとうございました。

  

【主催】インフィニティ・ベンチャーズLLP

インフィニティ・ベンチャーズ・サミット(IVS)はインターネット業界の経営者同士が高い視座を交流し合う目的で2007年からスタートし、現在は国内最大級のインターネット業界経営者のコミュニティとなりました。新サービスを6分間でプレゼンし競い合う、スタートアップの登竜門「Launch Pad」に加え、様々な試練を乗り越えた経験者が次世代の経営者らに語り次ぐ場「IVS DOJO」などを通し、IVSはこれからの産業を担うリーダー達のコミュニティ形成と起業家の育成・啓蒙を提供する真のベンチャー・プラットフォームを目指しています。

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「科学技術は投資対象ではなかった」研究者である男を起業家に変えた“博士号を取っても働けない”現実

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