大前家の茶の間の雰囲気を再現

大前創希氏(以下、大前創希):皆さま、今日は長いことこちらのほうに勉強されに来てるんじゃないかと思いますけれども、ここから先、私と父になります大前研一です。

この2人、実は初めて登壇というか対談になるわけですけれども、今日はこの場所で、「2035年、その時デベロッパーはどう生きるか」をテーマに話していきたいと思います。よろしくお願いします。

大前研一氏(以下、大前研一):はいどうも、よろしく。

(会場拍手)

大前創希:「茶の間の雰囲気で」と言われているので、いつもの大前家の茶の間の雰囲気で話をしたいと思うんですが、そうすることによって普段とは違う口を滑らす大前研一を、私は引き出していきたいと思いますので、よろしくお願いいたしします。

それではさっそくなんですけれども、2035年、その時デベロッパーはどう生きるかの前に、いま2015年を見ていきたいと思うんですけれども。

2015年、大前創希と大前研一、だいたい先月ぐらいに撮った写真なので、お互い合ってるかなと思うんですけれども、私20年後を見てみようと思って、あるツールで20年後を見てみました。年でいうと61歳と92歳で、92歳、まだご存命でしょうかね。

大前研一:もちろん。母親が96で元気ですから、まだバイクに乗ってると思います。

大前創希:はい。私もそうあっていただきたいと思ってまして、ガッツリ毎週のように遊んでますので、たぶん92、100歳近くまでいくんじゃないのかなと、私もだいぶ長いこと、70歳ぐらいまで一生懸命サポートしなければいけない部分があるんじゃないのかなと思って、覚悟しております。実は顔を見てみました。お父さんのほうは、あまり変わらないですね。

大前研一:(笑)。

大前創希:私はだいぶシワが深くなりましたけれども、こんな感じになるんじゃないかなということで、20年後、皆さんもきっとシワが深くなって、けっこう年取ったなとなるんじゃないかと思うんですが。

20年後の世界に流れるニュースを予想してみる

そもそもこの20年後の世界を想像してみると、どんなニュースが流れそうなのか想像してみました。あるのか、ないのか、お父さんにつっこんでほしいんですけれども、まず1つ目。年金受給年齢80歳に引き上げ、あり得ますかね。

大前研一:そうね、それか年金、まったくもらえないかどっちかですね。

大前創希:私たぶん、もらえない可能性があるんじゃないかなと。

大前研一:いまの若い人はもらえないですね。1000兆の借金。このグラフはやっぱり超重要で、デモグラフィーだけは50年後までわかりますので、こんな感じですから、払う人がほとんどいなくなる。

日本の場合には、貯めたお金をもらうんじゃなくて、現役世代が負担したやつをもらうので、あれだけ就業人口が細ってきちゃうと、そうすると、こんなでかい高齢者には払えないと。若い人は諦めてもらうということ。そうするといま、怒らなきゃいけないんですけども、「ああ、そう」って感じだから。

日本という国は、恐らく世代間の抗争が勃発して、高齢者はもう切り捨て。かつてスウェーデンがそうなりましたけど、そうなるんじゃないかと思います。怖いグラフです。

大前創希:そうですよね、非常に怖いグラフですね。私も年金を払ってますよ、もちろん。ここでオフィシャルなんで言っておきますけれども、ちゃんと年金払っております。が、たぶん自分には来ないんだろうなと思いながら、普段生活をしております。

その次のニュース。アジア近隣地域から、移民の受け入れ枠を拡大。もう移民を受け入れちゃった想定ですけれども、これあり得ますかね。

大前研一:これはしないと、アジアだけじゃなくてもいいんですけども、だいたい年間80万人ぐらいが就業人口から落ちているので。

いまは本当は定年になった人もまだ働いてるんで、実際30万人だけ減ってるんですけど、そのうちにこらえられなくって、40〜50万人ずつ減ってきますから、そうすると年間それだけ入れないといけない。

大前創希:はい。

大前研一:そうすると、石原慎太郎的に言うと、「すべて新大久保みたいになっていいのか。1人も許すな」なんて言ってますけど、そうは言っていられなくなると。消防署に人がいなくなる。ましてや自衛隊にもいなくなるので、移民はもう避けられないと思ったほうがいいですね。どうやって入れるか工夫しないといけないと思います。

大前創希:私のほうで1つ、今の現状でもやはりアービトラージといいますか、仕事は安いほう安いほうへ流れていってるところを、やはり皆さんと共有したいと思ってこちらの図をお持ちしたんですが。

すでにペーパーワークなんかとか、ITワークに関してはインドに渡って、さらに安いフィリピンなんかに渡るという現象もあったりします。こういった現象というのは、もっと拡大していくんでしょうかね。

大前研一:そうですね、アメリカの電話会社なんかは、ファシリティーごとインドに行っちゃって、インフォシスとかウィプロとか、ああいう会社にどんどん移ってっちゃって、アメリカのほうは、もう電話会社の中身は建物ごとインドに行っちゃうという時代ですね。

だから世界的にコストの安いほうにネットを通じていくと。最初の現象はアイルランドにアメリカの仕事が移っていった。そういうときがいまから20数年前にあったんですけども、これは世界的に知的ワークも平準化するということですね。

フィリピンがいまインドよりは廉価になってますけども、コールセンターはほとんどフィリピンにいま集まってます。英語のコールセンターは。

理屈はインドのコールセンターの人はアクセントが強くて、アメリカの銀行のコールセンターで、インド人のアクセントだと「どう言ってるんだ?」と非常に怒り出す。フィリピンだとアメリカじゃないことに気が付かないので、いまマニラのマカティというところに、すごい数のコールセンターの人が集まってきてますね。

大前創希:5年前か、6〜7年ぐらい前に「フィリピンのマカティがいいぞ」と大前家の茶の間で話をしていまして、私は3年ぐらい前にマカティにオフィスを立ち上げたんですけれども、よく見たらビジネス・ブレークスルーの英会話と近いところに立ち上げまして、ニアミスですけれども。

大前研一:(笑)。

iPhoneが自動でSMSの返事を送る可能性も

大前創希:そういった会話が普段行われてます。なので今日みたいな会話も、普段の中で話してたものをまとめた形の内容になってます。わりとディベート、ディスカッションの多い家庭ですね。

次なんですけど、これ私が勝手に想像したニュースです。国土交通省、高速道路における人の運転を全面禁止に。あり得ますかね。

大前研一:これは、もう遅いかもしれないけど、こうなるでしょうね。全部自動運転のところの中に1人だけ人がいると、変な追い越しをしたりして、邪魔だから、あれはだめだと。事故を起こしたのはあいつのせいだとなっちゃうんじゃないかな。いい線いってる、これ。

大前創希:はい。私も、こうしていただけると非常に高速道路での運転、スムーズになるんじゃないかなと感じますね。

大前研一:ただ、僕みたいに周りを見て警察がいないと、シューッと行って、パッと行く。

大前創希:そこで止めてといてください、その話は(笑)。

大前研一:はい。

大前創希:オフィシャルには、できない話かもしれません。

大前研一:はい、すいません。

大前創希:そうですよね、車を運転するのが好きな方は、自動運転にならないほうがいいのかなという話でした。その次ですね。なんとiPhone 26、ワトソンによる自動SMS返信機能を実装。あり得ますかね。

大前研一:あるね。僕は、うちの奥様との会話も、これでやっていただくとありがたいなと思ってます。

大前創希:ワトソンが(笑)。

大前研一:ワトソンが非常に賢くなってね、言い訳も全部考えてくれて、「言い訳の通じる家庭がいいわけないよ」なんて、そういうジョークまで入れてくれると、いいんじゃないですかね。

大前創希:だいぶ家庭の雰囲気に近づいてきたようですね。では次に、人類最後の野球審判、本日引退。これあり得ますかね。

大前研一:これ、いい点だね。僕はテニスなんかはもう。いまアメリカのベースボールはいちゃもんをつけるとビデオ判定になって、半分ぐらい覆ってますね。だから審判の人は神聖であるというのが、全然神聖じゃなかったってばれてきて、統計的にも半分以上だめだったとわかってきた。

大前創希:申請すると覆ると。

大前研一:そうですね。いいジョークです。それで僕はこれはもっと早く起こると思う。テニスもそうですね。オブジェクションするとだいたい覆る。

今後20年間で人間の仕事の5割が消滅する?

大前創希:はい。これらのニュース、実は大元になるところはどこから考えたのかをお伝えしますと、前にニュースなりました「今後20年間で、すべての仕事の47パーセントが自動化される可能性がある」という話。仕事の5割が消滅するという衝撃的なニュースとして、ネット界隈をかけめぐった話ではあるんですけれども。

その中で失われるであろう、人間がやらなくなるであろう仕事の大きいところ、代替される可能性が高い仕事、こんなことがあるというリストがありました。これ一部なんですけど、例えば受付、レジ係。これすでにペッパー君に取って代わられるんじゃないかという不安があるわけなんですが、いかがでしょうか。

大前研一:そうね、受付はやっぱり、かわいい女の子がいたほうがいいと思うな。

大前創希:ペッパー君が、かわいくなるということですかね。

大前研一:余計な話をしても、ちゃんと答えてくれるのがね。いま派遣の人っていうのは顔つっぱっちゃって、こんなになっちゃうからね。某会社の社長さんが受付行ったら、わからない人が聞いて、ここに(名前を)書いてくださいって言われて、僕も一緒にいたんだけど、自分の会社でも書かないと入れなかったっていう。そういう派遣の人が来てるぐらいだったら、ペッパーのほうがいいですよ。

大前創希:はい。ペッパー君のほうが、顔を覚えてくれるかもしれないですね。

大前研一:覚えると思います。

大前創希:そのあと融資担当者とか保険鑑定士、ここら辺はどうでしょうね。

大前研一:そうだね。これも全部できる。そのとおりだと思います。これオックスフォードのデータ? 

大前創希:はい、そうです。

大前研一:オックスフォードね、だいたいこんなもんじゃないですか。

大前創希:はい。オーダーを組み立てあげるスタッフとか、ラインスタッフも、これ鴻海では、すでに始まってますよね。

大前研一:それで、この中でおもしろいのは、やっぱり税務申告、会計士、その他。いまエストニアに行くと、イーガバメントの中で進んでて、結局全部イーバンクとカードを通じてやっているために、年間終わるとチャリーン、税金いくらって来ちゃうんで、税理士がいらなくなっちゃった。

それで税理士の協会とか、会計士の協会から文句が出なかったのかと聞いたら、そういう頭のいい人は、もっとほかに仕事が我が国ではいっぱいありますので、業界が動くことはありませんでしたって言ってて、もういまはすでに仕事がないんだよね。

その話を、この前税理士の集まるところで言ったら、ものすごい嫌がってたな。日本の場合には抵抗があるんじゃないかな。そういう意味では、ここには書いていないけど、お医者さんもかなりの部分、いわゆる診断は、こういうのを使ってやっちゃうようになると思いますね。

1995年に出版された大前研一著『インターネット革命』

大前創希:はい。ここまでが現状、想像し得る話で、いまお話をさせていただきました。2035年、その時デベロッパーどう生きるかの前に、実はこのセッションの中では、少し20年前をさかのぼってみようということを、テーマとしてお持ちいたしました。

実は、お父さんすごいなと、私はお父さん先見の目があるなと、すごく尊敬してるんですが、なんと1995年に『インターネット革命』という本を書いてるんですね。

今日、この日があるんじゃないかと予見して、1995年に出版されて、すごいなと思ったわけですが、この本の中で。

大前研一:この本はインターネットが、それまではパソコン通信ぐらいしかなかった。そしてロータスの、いわゆるクローズなユーザーグループで、ずっと社内の会議とかデータ共有をやり始めた時ですよね。

その時にインターネット革命で、こんな世の中になるんじゃないの、仕事はこう変わるんじゃないのって書いたけど、30万部、この本は売れたんですね。

その時ほとんどの経営者は、「大前さん、僕たちが生きている間は、こうならないよね」と言っていたんだけど、Windows98が出てきてから、もうガクっと来て、生きている間どころか5年後には、まるでこの本自体がもう遅れてるとなった。革命的な時代でしたね。

Googleができたのが1998年ですから。そういうことを考えてみると、1995年と2000年の間が、ものすごい大きな転換点になってたと思います。

大前創希:そうですね。私この講演が決まってから、この本を読み直してみまして、ものすごいなと思ったんですが、20年前予見できてなかったことも、たくさんあるんだなと感じました。

例えば、VOD、ビデオオンデマンドの話が、この中でも書かれてるんですけれども、その中で、消費者におけるVOD、ビデオオンデマンドは、まだまだ時代が早いという話があったんですが、現状で例えばAWSを使ってるネットフリックスであったりとか、ビジネス・ブレークスルー大学というのはオンデマンド通信をやっていると。

そこにおいて、やはり20年前から予見できなかった今の時代というのは、どうお考えですか?

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