インバウンド対策には、現地からの口コミが有効

鈴木貴歩氏(以下、鈴木):それでは時間があと15分強ぐらいありますので、もし皆さんからご質問とかあればそちらから優先的に聞いていきますが、いかがでしょうか? なければ私から聞いていきます。

Yelpさんは、去年のBIG PARADEにもご登壇いただいて、そのときはコミュニティマネージャーという仕事がすごくバッと注目されたときだったのかなと思うんですけど。確かに最近Yelpさんを使わせていただいて、やっぱりすごくインバウンドに有効だなと思っていたので、まさに高田さんも同じビジョンを持ってるっていうことですごく納得がいきました。

実用的な部分として、日本の場所を管理する人、例えば今回のスポンサーさんの第一興商さんとすると、カラオケボックスとかも普通に情報発信ができるわけですよね。

高田智之氏(以下、高田):そうですね。カラオケボックスや、チェーン店もできます。うちはローカルビジネスが強いんですけれど(チェーン店にも)使ってもらって、自分の店舗がどこにあるかっていう情報を登録してもらって使っている会社がいくつかありますが。

鈴木:そのときの英語と日本語の使い分けっていうのはどういうふうにやっているんですか?

高田:今のところiPhoneを持っていれば自動翻訳があるので15か国語に翻訳できるんです。要するにドイツ語のカラオケボックスにドイツ人が来てドイツ語でレビューしたやつを、イタリア人がボタン1つでイタリア語にできるんです。そういうのを使って、あとは写真と点数を見ながら決めていくっていうことです。

鈴木:じゃあ、わざわざ何カ国語に翻訳して文章を載っけたりしなくてもいいってことですね。

高田:そうですね。よくインバウンドが気になっている会社の方たちは皆、「外国人を集めて英語のレビューを集めたいんだ」っていう意見があるんですけど、僕がいつも言っているのは、「いやいや、そうではなく、ローカル、要するに東京だったら東京に住んでいる人たちにすばらしいサービスをして、その方たちがレビューしていけばいいんだ」っていうことです。

鈴木:なるほど。おもしろいですね。

高田:というのは今の海外のお客さんたちも大分スマートになってきて、やっぱり東京に住んでる、東京にいる人たちが一番いいところを知ってるっていう認識なんですね。なので、観光客に人気あるところに行くんじゃなくて東京エキスパート、要するに東京Yelperがここいいよっていうお寿司屋さん、公園、カラオケボックスに行きたいと。

鈴木:なるほど。それが先ほどお見せいただいたランキングにしっかりと反映されてるっていうことですね。

高田:はい。東京タワー、スカイツリーが1位じゃなく、オモテサンドウコーヒーが1位だったのもそういうことだと思います。 

鈴木:なるほど。おもしろいですね。

アプリのポテンシャルを多角的に測定

鈴木:App Annieさんの(サービスの)アプリのいろんな状況が見れるというところで。先ほどタイのランキングで、LINEがあってFacebookがあって。4番目ぐらいにBのアイコンのアプリがあったんですけど、ああいうのは多分ローカルで使われてるアプリだなみたいなこともわかるっていうことですよね。

滝澤琢人氏(以下、滝澤):そうですね。アプリの歴史って4年、5年ぐらいしかまだないんですけども。初めはグローバルで展開されてるアプリがそれぞれのローカルでも流行ってたっていう状況が生まれてたんですけども。ローカルのパブリッシャー、デベロッパーの方が自分たちのローカルニーズを汲み取ってアプリ化していくっていう流れにだんだん、今変わってきてるんですね。

そのなかで、特に旅行とかやっぱりそういった実際の地域に根ざしたものであったりとかそこに住んでいる人たちの生活者のニーズを汲み取ったようなアプリっていうのは、それぞれの地域ごとに出てきているっていうのが、今起こってることだと思います。

鈴木:なるほど。そういうのを見るためにアップストア切り替えるの面倒くさいですもんね。そういうのを現地にも行かず、App Annie見ると一発でわかるということですね。

滝澤:そうですね、はい。

鈴木:ほかに例えば有料だとどんなデータがとれるんですか。

滝澤:基本的なデータとしてはアプリ単位のダウンロード数と売り上げをまず追究してます。アプリをまず知ってもらってそれをダウンロードしてもらって、ダウンロードしたあとにどれぐらいユーザーがいて。そのユーザーからどれぐらいの収益が生み出されてるか。

この辺の一連の指標を全てカバーしておりますので、1個1個のアプリがどれぐらいのユーザーがいるのか、ポテンシャルがあるのか。それから売り上げがあるのか。どういったユーザーがそのアプリを使ってるのか。そういったことを多面的に測ることができます。

社員も知らないYelpのレコメンドシステム

鈴木:アイ・ビー・エムさん、インバウンドに向けてWatsonというのがありましたけど、Watsonでどんなことができるのかについて、もう1回話をしていただいていいですか? はっきり言って人工知能ですよね。

蜂屋雅司氏(以下、蜂屋):アイ・ビー・エムはコグニティブ・コンピューティング、認知型コンピューターっていうんですけども。

鈴木:なるほど。かっこいいですね。

蜂屋:そうですね、Watsonができること。事例ですと、海外で医療の現場を助けるためにいろいろWatsonを使った医療文学の学習をさせてお医者さんの診断をサポートするっていうようなシステムができていたり。

鈴木:例えば手術の内容でこうやりなさいみたいなこととか、こういう治療をできますよみたいなことですかね。

蜂屋:そうですね。アメリカの事例ですけれども、医療の文献っていうのが毎月たくさん出てきていて。それを全部お医者さんが読み込むには本当にたくさんの時間が要るんですけども、サポートするシステムとして活用されていると聞いています。

鈴木:その膨大な情報から必要な情報を引き出すっていうことで言うと、Yelpさんでも結構レコメンデ―ションっていうところって重要だったりとかするんですか。

高田:そうですね。いろいろな世界にあらゆる口コミサイトがあるんですけど。Yelpで優れているところというと、リアルな情報が、本当に信頼度の高いレビューが詰まってるってことでここまで伸びたと思います。

その理由っていうのは、Yelpが独自開発したレコメンデーションソフトがあって。レビューされた全てのレビューがページに表れるのではなく、75パーセントぐらいのレビューがお勧めレビューとして表れます。残りの25パーセントはお勧めできないレビューとして別ページに行かないと見れなくなっています。

これは人が、「これは便利だ」「これは便利じゃない」って言ってるわけではなく、Yelpが開発したソフトがその判断をしてくれます。

鈴木:そういう有用なレビューも増えないといけないってことですかね。

高田:そうですね。そのソフトがあるおかげでやらせレビューっていうのが比較的少ない。たくさんレビュー書いてるけど、「なぜ俺のレビューは全部お勧めできないにいっちゃうんだ」っていう人を見てみると、実はそのお店で働いてる人がどんどんレビューを書いてたり。

鈴木:なるほど。そういうやらせレビューの排除とか信頼性の担保ということをそのレコメンデ―ションエンジンがやってるということですかね。

高田:そうですね。そのアルゴリズムっていうのは僕たち従業員にも知らされていないアルゴリズムで。何かの理由、何かを使って独自のテクノロジーを使って、「この人は信頼できる」「できない」っていうのを判断していきながら、それを自動的に行われてるっていうのがうちのレコメンデーションソフトです。

鈴木:じゃあ自らの情報発信もやりつつ、そういったレビューをちゃんとしたユーザーに書いてもらうっていう努力も必要になるっていうことですよね。

高田:そうですね。なのでさっき言ったイベントとかやるのも、Yelpエリートっていう、Yelpで活躍しているユーザーたちをYelpエリートって言うんですが、エリートしか招待されないイベントパーティーなども月々行われていると。

鈴木:この中にYelpエリートの方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

いた。いました、Yelpエリート。結構Yelpエリートのイベントも増えてきて、かなりコミュニティ化、活性化してる感じはありますよね。

高田:はい、おかげさまで本当にすごく。ほかの国と比べてみると、一番伸び率が早いんじゃないかと言われているのが日本なので。さすがやっぱりモバイルがすごく強い国っていうことがその理由だと思ってます。

海外の市場や動向にも目を向ける必要性

鈴木:App Annieさんはインバウンドの切り口でお話しする機会っていうのは結構あります?

滝澤:いや、初めてです。

鈴木:意外にこういう使い方してもらうといいんじゃないかなっていうの、ないですか?

滝澤:そうですね。やっぱり結構日本のアプリを作られてる会社さんって、海外がどうなってるかっていうのはそれほど自分たちのビジネスには影響ないってご覧になられたりするんですけど。モバイルの世界ってみんなが同じプラットフォームが普及してる状況になってきてて、その障壁っていうのは本当になくなってきているんですよね。ますます海外の市場を見ていく必要性っていうのは深まってきていて。

インバウンドっていうとどうしても日本に来たユーザーに対してどうするかみたいなことなんですけども、じゃあ世界ではどういうことが、どういう消費行動が、どういうものが受け入れられているかみたいな部分ってなかなか視点としてはなかったのかなと思ってまして。そこにぜひ着目していければなと。

鈴木:私自身に近い領域のところに引き寄せると、音楽のストリーミングサービスのセッションを、この前にやっていたんですけど、結構国ごとに人気のあるサービスが違っていて。北欧だとSpotify一強でSpotify1社の売り上げで北欧全体の音楽市場の半分ぐらいのインパクトがあったり。かと思えばフランスではDEEZERっていうサービスがすごい人気で。イギリスではいろいろ使われていてみたいな。

そういう独自性があるっていうのが結構おもしろいですし、それがやっぱり市場にどうインパクトがあるのかってのがすごく僕らも研究してるところなんですけど。なので市場の違いっていうのがすごく情報としては重要なのかなと。私のいる会社(ユニバーサルミュージック合同会社)は外資系なのでそういう情報とかも結構入ってくるんですけど、なかなか自分で取りに行かないとわかんないですもんね。

世界と日本の音楽市場の違い

滝澤:そうですね。前、打ち合わせしたときに、「日本の市場って音楽業界から見たら何が違うんですか?」っていうところが、結構興味深かったので、ちょっとその辺ぜひお話しいただければ。

鈴木:日本の音楽市場に関しては、いろんな方と会うと「やっぱりCDってもう大変でしょう?」みたいなことをおっしゃっていただくんですけど。まだ市場、マーケットの値、7割から8割がCDの売り上げから出ていて。デジタルっていうのは2割か3割ぐらいというところ。

あと、よく僕が本社の外国人に「日本にはレンタルCDっていうシステムがあるんだよ」って言うと、「そんな便利なのがあるの?」みたいなことで驚かれるんですね。レンタルCDってほぼ日本だけしかなくて。昔、イギリスの一部であったとかってくらいで。レンタルCDと再販価格制度みたいな部分の制度だったりとか、そういう違いが市場をかたち作ってるっていうところがあるので。

それ裏返すと、先ほど見せていただいたタイとかのアプリチャートにもそういうのってすごく色濃く反映するんじゃないかなと思ってるんですよね。

滝澤:そうですよね。全世界で見るとデジタルが今半分を超えたっていうニュースが出てたんですけども、日本はまだ全然違うと。

鈴木:そうですね。ただドイツも7割ぐらいがまだCDで。フランスが大体6割5分ぐらい65パーセントぐらいになってて。でもその3国に共通して言えるのは母国語があるっていうことと、国土がそこそこ小さめみたいな。アメリカほどでかくないっていう意味ですけど。

なので流通とかがそんなに大変じゃなくて。日本人の感覚でいうと発売日にCDがほとんど日本全国のCDストアに届くっていうのが当たり前ですけど。アメリカではそんなことはないので。発売日とかっていうのはもうバラバラで。

一応決まってはいるんですけど、そのときにウォルマートとかのスーパーに届いてるかっていうとそうでもない。そういういい意味でのゆるさがあったり。多分そういうところでの多様性とか共通性みたいなものが、音楽の売れ方を見てるだけでもわかってくるということですかね。

アイ・ビー・エムさんの場合はそういう各国の連携とかつながりの中で、何かおもしろいファインディングとかありますか?

蜂屋:そうですね。やはり先ほどの医療ではないですけれども、アメリカで進んでいることであったりヨーロッパで進んでいることっていうような事例ベースっていうものは、どんどん情報交換が社内ではされていて。やはりいいところはどんどん日本にもというような精神で私も勉強しております。

鈴木:何か日本とは感覚値が違うなみたいなことってあります? これはアメリカすごい盛り上がってるけど、日本には持ってこれないなみたいな。

蜂屋:事例ベースですとスポーツとか。このスタジアムを何かITを使って良くしようとか、そういったのが結構進んでるなっていう印象は受けたりしますね。

鈴木:高田さん、そこはスポーツ、IT。

高田:スポーツ、すごい大好きなんです。アメリカンフットボールが好きなんですけど。アメリカンフットボールチームのITの使い方っていうのはすごいですよね。きっとWatson使うんじゃないですか、NFLのチームも。

蜂屋:使っていただけると何かおもしろいのが出るかもしれないですね。

鈴木:確かにそのITの活用度合っていうのはあらゆるジャンル。アメリカの場合はやっぱりあらゆるジャンルに結構拡大してて。みんな好きっていうか、使ってますよね、インテリジェンスが。

もう時間もなくなってきましたので、今日はこの辺で終わりたいと思います。ぜひ皆さん同士で、ネットワーキングしていただければと思いますので、名刺交換、ごあいさつをしていただければと思います。

高田さん、滝澤さん、蜂屋さん、今日は本当にありがとうございました。

制作協力:VoXT