恥ずかしいときはサングラスをしろ

司会者:はい。先生方ご来場です。拍手でお出迎えくださいませ。國松淳和先生、市原真先生、ご来場でございます。

(会場拍手)

國松淳和氏(以下、國松):おー、はじめまして。

市原真氏(以下、市原):はじめまして。

國松:実は、まあまあな初対面なんです。

市原:(國松氏のサングラスを指さしてゲラゲラ笑いながら)どちらさま? どちらさまですか? 

國松:「恥ずかしいときはサングラスをしろ」という家訓がありまして。

市原:家訓が。

國松:はい、どうも。今日はありがとうございます。じゃあ、座らせていただきます。

(会場笑)

國松:はじめまして。内科医の國松と申します。今日は、よろしくお願いします。

市原:(注目を)持っていかれましたね。

(会場笑)

市原:私は、札幌市からまいりました、病理医ヤンデルこと市原と申します。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

市原:いやぁ、先生……。

國松:はい。はじめまして。

(会場笑)

國松:本当なんですよ。ああ、二人で握手を。けんかしに来たわけじゃなくて、1個だけ、ちょっと……。

市原:言いたいことが山ほどあるんです。

國松:そうです。

市原:山ほどあるんです。まず、着替えられ……。

國松:そうですね。

市原:(曲を)かけられ……。曲を選ばれ……。

(会場笑)

市原:JASRACに申請され……。

國松:そうですね(笑)。

(会場笑)

國松:いや、こういうことが大事かなと思って。

市原:とても大事です。

「一見大事じゃないこと」が大事

國松:診断というのは、病気のことだけを考えていたらだめですよ。

市原:ほお!

國松:周辺がとても大事。

市原:ええ。

國松:一見、役に立たない……。これ、しゃべっていいですか?(笑)。

市原:あなたが、まず会場のBGMを止めないと(笑)。

國松:そうですね(笑)。止まらない……。じゃあ、はじめさせていただきます。

(音楽が止まる) 

市原:はい、ありがとうございます。

國松:ありがとうございました。そうですね。それなりには気を引き締めているんですけれども、正直に言うと、あんまり緊張していない状態です。いきなりちょっと変な話で恐縮ですけれども「大事じゃないこと」が、けっこう大事かなと思っています。

市原:もう、このテンションでいいんですね?

國松:見ていると、そうみたいですよ。

市原:周辺視で見えるものとか、ゲシュタルトでフワッと掴むものが大事だと。

國松:そうみたいですよ。

市原:それをぶちこんでいいと。

國松:はい。

市原:何の遠慮もしなくていい。

國松:はい。というか、女性が多くないですか? 

市原:いやいや、一部にいらっしゃるゴリゴリの男性がバランスを取っていらっしゃいますから、何の問題もないと思います。

岩田健太郎医師と医療ジャーナリストの岩永直子氏の対談本

國松:はい。なんて言うのかな。さっそく用意してきたことを、ちょっと言っていいですか?

市原:いいですね。どうぞ。

國松:こちらは丸善出版の『新・養生訓』という本です。もう1回言いますが、丸善出版さんから出ている、最近出た本です。

この本を紹介する会ではないんですが、(『新・養生訓』は)お二人(注:著者の岩田健太郎氏と岩永直子氏)の対談というかたちで、ちょうど今日の我々も対談だなと思っています。

岩田先生はこういう対談が大好きであると、書かれています。ぜひ、これをお買い上げください。すごくおもしろいです。対談をしているとわからないこととわかることとが、わかってくるということですが、あとは……。

(会場笑)

市原:こう、人前でしゃべるということが、また。

國松:そうですよね。なれ合いじゃなくなることが、こういう対談では大事です。

市原:あー。

國松:はい。けんかするわけでもなく、仲良しで同じトークをするわけでもない。

市原:僕もその本読みましたよ。お二人が意外と仲良くやってない。バチバチなんですよね。

國松:そうなんですよね。だけどこの二人は折り合っていて、目指すところにいっているという、すごくミラクルな対談です。

市原:僕がこれを最初に読んだときに思ったのは、岩田・ 岩永の対談を編集しようと思った人が、なぜ生きていられたのかということです。

(会場笑)

國松:そうですね。

市原:どっちかだけでも死ねるのに、すごい!

(会場笑)

予定調和の対談はたぶんつまらない

國松:(笑)。それはすごいと思いましたね。なので、今日のトークのところと被るなと思います。

市原:なるほど?(笑)。

國松:診断というのが一応のテーマです。こうやって言うと私が臨床医で、市原先生が病理医ということで、診断という共通点があるじゃないですか。だから(来場者のみなさんは)同じような話でサクサクと、「そうだね」「そうだね」でいくことを想像しているんじゃないかと思うんです。けれども、そうはならないと思うんですよね。

そして、それではたぶんつまらないと思っています。かといって、……。ちょっと、すみません。私の好みで言うと「内科医の立場から」とか「病理医の立場から」という、「立場」という言葉があまり好きじゃないんです。なんか「俺はこれを言うから、あなた、どうぞ」みたいな感じの感覚で。同じ平地に立っているのに、それもないなという感じがします。

市原:今、聞いていて思うのは「囲碁」で、「負けるに決まっている囲碁」を見ている感じ。

(会場笑)

「ここも止められた」「ここも止められている」みたいな。

國松:いやいや、すごい……(笑)。ごめんなさいね。ちょっとハードルを逆に設定しちゃって……。

市原:先生。もう1つハードルと言うと、今日は取材がいくつか入っているんですけれども、ログミーというところが入っています。

國松:はい。知っています。そうですね。

市原:他にもちょっと取材があるかもしれないんですけれども、僕がなんでログミーを知っているのかというと、(ログミーは)「書き起こしをするメディア」ということでやっています。

國松:あー。

市原:それこそゲシュタルトの話とかね。

國松:だからすごく耳触りのいい、「うん、うん」って言うような会話じゃなくて、ちょっと本当に、何ならオーディエンスの一部がイラッとするような話ですら、もうありかなと思います。

市原:いいですね。

「診断」は医者にとっては範囲が広すぎる言葉

國松:ただその一方で、診断というのはすごく広いテーマじゃないですか。ちょっと、すみません。本当にすみませんが、あえて「素人」という言い方をさせていただくと、「素人」の方はたぶん「診断って医療全体の一部じゃない?」と思っているんじゃないかと思うんです。

市原:なるほど。

國松:私たちからすると、診断というテーマを与えられたら、「そもそも何を話せばいいの?」って話じゃないですか。

市原:確かに。

國松:「診断とは」とか、「診断をつけるべきなのか」とか。なんか、「診断は誰がすべきか」とか、切り口によってはドツボにはまって、帰ってこられない。

市原:「診断」という言葉は宇宙みたいなものですからね。広大すぎて。我々医者からすると「経済について語ってください」と言われたら途方にくれますが、それくらいの。

國松:そうです。それぐらいの単語です。

市原:ですよね。

國松:それは診断のプロだからだと思うんですよね。「診断って、何?」って設定しておいて広大なところに今、入り込んでいます。

市原:ちなみにテーマを決めたのは誰ですか?

國松:いや、なんかノリで……。

市原:あなたでしょう!

(会場笑)

診断をテーマにした「プロと素人の違い」

國松:そうなんですよ。

市原:そうですよね。

國松:絶対、そうなんですよ。

市原:診断に関するテーマ。

國松:最初は、ちょっと最低かもしれませんが、「究極の診断」という感じにしようと思っています。

市原:その話、しましょうよ。

國松:そうですね。「究極の診断」ですよ。

市原:「究極の診断」。まじか。僕からいきますか?

國松:そうですね。……とか言って(笑)。

市原:(躊躇しながら)いや、どっちからでもいいんですけどね。

國松:「究極の診断」。なんか方向性が散逸しなければ、さすがにいいのかな。

市原:「究極の診断」の方向性が?

國松:違うんです。「診断」をテーマにして……。

市原:あ、トークの方向性が。

國松:そうそう。いいですよ。そんなのは、編集が勝手にまとめますよ。好きにやればいい。

(会場笑)

すみません、ありがとうございます。

市原:というか、ここに来て「究極の診断とは」のテーマを下ろさないでくださいよ。

國松:なんか、さすがに……。あ、思い出した。(「診断」をトークテーマにするのは)「一般の方がいるからやめとけ」みたいなことです。でも今日思ったことですが、1つには、(自身は)プロだと思っているんですけど、プロの診断医というか医者から見て、「プロと素人の違い」というものをしゃべれば、ちょっとは(来場者を)巻き込んだことになるのかなと思ったんです。それが1つです。

市原:先生は優しい! 会場のことを忘れないですね。

國松:もう1つは、完全にマイペースにお互いのことや、聞きたいことをしゃべればいいだけのことだと思います。これでどうですか?

市原:いいと思いますよ。

國松:これでじゃあ……(笑)。

市原:一応、(来場者に)気を遣いつつも、最終的には我々が好きなことをしゃべるという場にしましょう。

國松:そうです。完全にそれでいいのかなと思います。

市原:じゃあ、先生。ちょうど場が暖まってきたところで……。

國松:はい。ありがとうございます。