絶対に「逃げちゃダメ」な展開
山田玲司氏(以下、山田):そして、1話目。ここから褒めます。「よくできてんなぁ」と思うんだけど……。
志磨遼平氏(以下、志摩):乙君はガンダム好きじゃない? ファーストガンダム。
山田:はいはい。
志磨:……というのは語り尽くされてるからもういいか、別に。今更。
山田:いや、ガンダムとの違いがあるんですよ。
志磨:ほう。
山田:やっぱりガンダムのアムロもお父さんに乗せられる。
志磨:ですよね。
山田:お父さんはちょっとイカれてて。でも、お父さんが作ってるんだけど、「乗れ」みたいな感じではない。でも、ゲンドウは強引に乗せるみたいな感じで、やや会話もないみたいな。アムロのほうはぶつぶつ言いながらも、自分の意思で乗るみたいな展開になっていくんだけど。
なかば、モチベーションの問題ですけど、シンジ君、やっぱりあれだよね。怪我する美少女が「私が乗る」というのを目の前で、しかもストレッチャーに乗って点滴受けてる状態でガラガラって運んで、「いきます」みたいな(笑)。
そこにもう1回ズドーンと来て、それでも行く。それで、「あなたどうするの?」。目の前にいる美少女にかっこいいところを見せるというところで、絶対に男の子が動かなきゃいけないという場面をセットしてるんだよね。
乙君氏(以下、乙君):そうそう。
山田:ここもうまいよね。だからしょうがなく「僕はやりたくないんだ」というのをマックスで生きてる男の子が乗る理由は「モテたいからです」と。最初に宣言してるという。
乙君:まあね。カッコつけたい、と。逃げちゃダメだというね。
胎内回帰願望の象徴?
山田:そうそう。もうあの時点ですげえ全部揃ってんなというのと。あと、いろんな人が言ってるけど、セックスの象徴なんでしょう?
志磨:えっ?
山田:だから乗り込むときに……挿入なんでしょう? あれって。
志磨:ああ。
山田:それであのあと羊水みたいなのに浸かるという。あれはいわゆる典型的な胎内回帰願望をやってるんでしょう?
乙君:LCC?
志磨:LCL。
乙君:LCL?
志磨:うん。
山田:それが体内に満たされて、「うわ、どうなんだ」って。あれって要するに、母親の体内に戻りたいという男たちの永遠の憧れを、第1話、最初のラストにやってしまっている。
志磨:玲司先生、それね、最終話まで観たらみんながわかることを、よく3話目までで気づきました。
山田:え、そうなの?
志磨:そうそう(笑)。
乙君:それはすごい。
志磨:そうなの?
乙君:てか、まだ1話目やん。
山田:だってあれは羊水じゃん。完全に。
志磨:そうそう。
山田:ただ、そのあと同級生が一緒に乗っかってくるシーンが3話目であるんだけど。
志磨:あ、そっか。
山田:あいつらは羊水に入らないの? 入ってるの?
乙君:あれは入ってるってことになってるんですよ。
山田:でもゴボゴボみたいのはないってことなのね。
乙君:あれカット。
エヴァ発進時の謎
山田:じゃあ、そういうのはないことになってるんだ。なるほど。いや、1話目でドリカムみたいな。
(一同笑)
山田:Dream Come Trueが行われるわけですよ。おもしろいなと思ったのが、そこからサンダーバードになるんだよね。
乙君:ああ。
山田:サンダバードって、出発するときに壁にピタッと張り付くんだよ。それで壁がガタンってひっくり返って。
志磨:あれかっこいいいですよね。ピシって。
山田:そうそう。エヴァもちゃんと壁にくっつくのね。そこからこういうふうに行きますよってすごくわかりやすくなって(笑)。
志磨:射出っていうね。
山田:射出っていうさ。
乙君:あれなんで途中で曲がるのか、ずっと疑問なんですよ。
志磨:ああ、確かに。
乙君:「スピード落ちるやん」思って。
山田:あそこに配管があるんだよ。でっかい(笑)。
(一同笑)
乙君:構造上の問題?
山田:大江戸線が通ってるんだよ。
志磨:ああ、そっか(笑)。
山田:避けなきゃいけないという。
志磨:いろいろね。
山田:そう。いろいろ向こうの事情もあったりとかしてじゃないかな。すげーなーと思って。
志磨:なるほど。
2話「見知らぬ、天井」で描かれた世界
山田:それで時間がないので、パッパと言いますけど。
志磨:うん。
山田:2話で……「見知らぬ、天井」。
志磨:見知らぬ、天井ね。
山田:天井。日常を始めるといって。その時の80年代感みたいな、これがまた懐かしくて。
志磨:DATで、聞いてるやつね。
山田:そう。
乙君:あれね。
山田:いろいろとおもしろいんだよね。ここは合ってる・合ってないみたいな。やっぱり公衆電話がたまんないよね。
乙君:いや、たまらないノスタルジー。俺も見返したら「懐かしい」みたいな。
山田:公衆電話が未来にもあるんだっていう。あれがなかなかちょっと。
乙君:ケータイもガラケーだし。
山田:そうそう。
志磨:(笑)。
山田:あのペンギンはあとも出てくるんですか?
志磨:ペンペン?
山田:ペンペン。
志磨:ペンペンはまだ出ますよ。
山田:出てきますか。
志磨:うん。
山田:ああいう滑り方もちゃんとしてたんだなと思うと、ちゃんと庵野さん好きになってくるね。
乙君:ああ。
『シン・ゴジラ』と通じるシーン多数
志磨:でもまあ、そんな……。
山田:やりがちなことなんだけど。
志磨:でもキュゥべえとかみたいにめちゃ噛んでくることはないですけど。
山田:そうだね。やっぱりだから「あれは活きなかったな」みたいな感じの。
志磨:とりあえずバーッとね。広げて。
山田:そうそう。あるなと思って。そのあと3話。
志磨:うん。
山田:蒲田くん、登場ですね。
志磨:え?
山田:だから、あの3話で出てくる人で、ほとんど蒲田くん状態の人が表れる。使徒が現れてくるよね。だから、同級生が一緒に見に行くみたいな。
だから、「あ、そうか」って思うとやっぱり1話目の冒頭シーンで、海が光ってるって、戦車があって、戦車の銃砲に鳥がとまっている絵は、もう『シン・ゴジラ』とつながりまくってるのね。
乙君:うん。
山田:だから『シン・ゴジラ』がエヴァにつながるんだということも、「なるほど1、2、3話観てると納得」みたいな感じ。
乙君:逆ですけどね。エヴァから(笑)。
山田:そうなの? そうですけどね(笑)。
志磨:(笑)。
山田:それから、蒲田さんエアプッシャーだけど、やっぱりエヴァも最初からプッシャーなのね。
志磨:えー、そうだっけ?
乙君:プッシャー?
山田:1話で初号機に乗ったシンジ君が。
乙君:頭貫かれて。
山田:プッシャーですよ。
乙君:血がプッシャーですよね。
山田:うんうん。「ああそうか」みたいな。
あれ実は『パシフィック・リム』でやるんだけど、シンクロする動きというのは。それをもう一手間加えたというか。
あったんだよね。こんなふうにロボットって運転できるのかって問題を解決するために、いろいろな人たちがいろんなことをやってきて。体の動きに連動させるとか、いろいろ装置つけるとか。ここにするというのがなかなかの、これにみんな発明にワーってなったんだなとかって思って。