西原理恵子氏と高須克弥氏が出会ったきっかけ

村西とおる(以下、村西):高須先生は西原さんをずっと思われていて。どういうきっかけで?

高須克弥(以下、高須):彼女がね、新潮社の雑誌で「下品な高須克弥と友達になりたい」って書いてて、ジョークだと思ったんだけど、本気かもしれない。それで私もね、「友達になってくれませんか?」と。すぐ返事来て。

村西:それってお手紙かなんかですか?

西原理恵子(以下、西原):ファンレターが来たんですよ。私の所に。

高須:すぐに「金ヅルができた、万歳!」って(笑)。

村西:それは何年前……?

高須:もう15年くらい前……。それでね、一番最初にね、丁寧なちゃんとした手紙が来たんですよ。「私はあなたをネタにしてくれることだけでいい。お金も美貌も何もいらない。あなたをネタにするだけで、私は幸せです。ネタにするときは必ずFAXを送って許可を得ます」うそばっかり! 黙って勝手に書いてる。

(会場笑)

高須:やりたい放題だ(笑)。

西原:いやもう、ネタ袋なんで、ネタにさせていただいて……。

村西:数年前からずっとお付き合いで、思いが深まっていったわけですね。

西原:そうですね。でも最終的には私が、ファンに手ぇつけちゃったってことですね。

(会場笑)

「やらせろよおまえ! 殺すぞ!」と怒鳴り、腹を蹴り上げた

西原:すごい元気がなくて。奥様も亡くなって、お母様も亡くなって、愛犬も亡くなって、息子は3人だけど、息子だからいうこと聞くわけないから。ぜんぜん慰めてくんないし。

ちょっとご飯も食べられなくなってたんで、「一緒にご飯食べようか」って言って、時々一緒にご飯食べてたんです。そのあと映画見たりしてて。

ある日、この人、「具合が悪い」って言って。ホテル暮らしなんで、ホテルの部屋に戻りたいって。私、酒飲みだから、部屋でシャンパンとってもらって、シャンパン飲んでたら、この人、上半身脱いで横になってて。

だから、ちょっとつまみがなかったから、乳首をつまもうとしたんですよ。つまもうとした瞬間に「パーン!」と叩かれて、「そんなつもりない!」って言われたの。

(会場笑)

西原:すっごい腹立って、そのまま腹蹴り上げて「やらせろよおまえ! 殺すぞ!」って(笑)。

(会場爆笑)

西原:「おまえ、自分からホテルに女呼んで、何度もデートして、上半身裸になって、女に酒飲まして、おま……殺すぞ!」って(笑)。

高須:いや、もう、すごい怖くて! 震え上がった(笑)。

西原:生まれて初めて女に蹴り入れられた(笑)。すっごい怖かったみたいなの。

高須:今でも蹴り入れられます(笑)。足技ものすごいんだもん。

西原:ときどきやっぱり……、ヤンキーなんでちょっとケンカ売られると(笑)。

医者はすべての患者に不利益なことを言ってはいけない

村西:(会場に向かって)先生にご質問などございましたら、どうぞ。

質問者:一番ときめいた経験ていうのはどんな経験ですか?

西原:私はやっぱり鴨ちゃん(西原氏の元夫・鴨志田穣氏)。この人は医者なんで、私が本当にアルコール依存症の夫に苦しめられてるときに、命からがら別れたのに、「もう1度、彼と暮らしてあげなさい」と。

「あなたの膝で見送ってあげなさい」と言ってくれたのが。「あなたのために」と、そう言ってくれて、家族の再生をすごくすすめてくれたのが、やっぱり思い出深いですよね。

村西:そこがキュンと来たと。

西原:キュンていうか、ものすごい嘘つきな人に対しても嘘をつかないんですよ。だから「あいつ嘘つきで、先生のお金ばかり狙って、お金も返さない人なのに、どうしてあなたはあの人との約束を具合が悪いときでも守るの?」って言ったら、「相手が誰であっても同じだ」と。変わらないと。

「私が嘘をつくかつかないかが問題だ」と。「言った約束は守る」ということで、朝から晩まで働いて、約束を守るということと、常に患者様には、良いことしか言ってはいけないと。

やっぱり代々の医者なので「すべての患者様には不利益なことを言ってはいけない」というのが。

だから、「鴨ちゃんはこのままだともう死ぬんだけれど、あなたに捨てられて、家族に捨てられて、野良犬のようになって死ぬのと、治ったから一緒に暮らしましょう、これからも家族で暮らしましょうと言って死ぬのとでは、天と地ほどの差があるんだよ」って。

「あなたのために、鴨ちゃんはあなたの膝で見送ってあげなさい」って。そうして、鴨ちゃんに「治ったら帰ってきていいよ」って言ったら、本当に重度のアル中だったのに、自分で治して帰ってきました。

本当にアルコール依存症を自分で治す人って、2割いかないんですよ。それもシャブ中とほぼ一緒の状態なので。「毎日家族といるのが楽しい」「君といるのが楽しい」って、子供が可愛いって言って。

本当に恐ろしい、今でも思い出すと吐きたくなるくらいイヤな病気でしたけど、最後に彼は普通の人間に戻って死んでいきました。それはやっぱり、先生のアドバイスのお陰で。

そうじゃなかったら、私は一生彼をクソのような奴だと思って罵って、子供にもそれを言い続けたと思うんですね。

村西:ナイスなお話、でございます。

(会場拍手)

西原:ありがとうございます。

広末涼子が典型的な高知の女

村西:今日のテーマはね、私の考えるセクシーさ、女性のセクシーさ、男のセクシーさをどういうふうに考えるかということなんですが、西原さんの考える男らしさ、セクシーさとはどういったことでしょう。

西原:私はヤンキー文化なので。高知県出身なので、鯨が来たら真っ先に鯨の頭に乗る男っていうのが代々高知の女の、憧れであって。広末涼子が典型的な高知の女ですね。鯨が来ると頭に真っ先に乗りそうだけど、ぜんぜん役に立たない男選んだでしょう。キャンドル・ジュンとかねー。

(会場笑)

西原:私も戦場カメラマンとか選んだけど、戦場じゃないとなんの役にも立たないですからね。戦場カメラマンが家にいても、ほんっとになんの役にも! 立たない!!

高知の女は、もともと男を頼るというか、男に食わしてもらうっていう気がないものですから。いざというときにモリ持って出かけてくれる男をいいと思っても、高知でもモリを持つ機会がないもんですから。

いまだにそういう文化が残ってる。沖縄と非常に似てるんですけど。黒潮文化なんでそういう男がいまだに好きです。だから役に立たなくて、浮気ばっかりしてる景気のいい男がいまだに好きなんで、いっぱい失敗してきましたね。

この歳になって、結婚するとか、子供育てるとかそういうんじゃなくて、ただの彼氏なんで、イデオロギーが違っても別にいいかなーって思ってる(笑)。

高須:監督、ずっと僕ね、かっちゃんて呼ばれて育ってきたんですよ。だけど、大人の絵本とかエロビデオとか絶倫院長ですよね。

西原:私ね、そのとき幼稚園でね。水曜イレブンずっと見てたんですよ。まさかあそこにいるスケベ医者が自分の彼氏になるとは(笑)。

(会場爆笑)

西原:しかももう使用後で、ぜんぜんスケベじゃなくなってて(笑)。出がらしですよ(笑)。

(会場笑)

高須:初めっから僕、絶倫院長じゃないんだけど、そういうキャラでおもしろいからって売り出されたもんだから、それで一生懸命やってたんです。

旦那に殴られ、子供を殴る人生は嫌だった

村西:最後のほうになりましたけど、西原先生の初恋や今日に至るまでの男性観に関して何か……。

西原:ああもう、バカなのばっかりですねー。若い男が大嫌いなのは、田舎でさえないヤンキーで、ほんとに無職が普通っていう……。

それで車に乗って、いきなり中出ししてみたいな。コンドームないからサランラップみたいな。ほんとにあったま悪い、田舎のヤンキーいるでしょ。

ああいうのが普通にかっこいいなって思ってたんですよ。ケンメリとかシャコタンとか、土禁の車でね、そういうのしか見たことがなくて、目標になる女性もいなかった。

みんないつも怒ってた。男と別れて仲居さんになったり、ホステスさんになったり。それで女の人はみんな殴られてた。で、殴られてる女が褒められた。「我慢強い」「偉い」っていって。「あんな難しい男についていったあんたのお母さんは偉かったで」って。

殴られたお母さんって子供を本気で怒るんですよ。ものすごい怖い声で怒るの。私も将来子供が3人くらいできて、やっすいアパートで洗濯機回しながら、そんな女になって、旦那に殴られるんだなーって思ったの。

周りの先輩たちもみんな16ぐらいで中出しでいきなり子供生まされちゃって、18ぐらいで次の男になって、また中出しで生まされちゃって。もうもうみんな殴られて20歳でボロボロなのね。初恋もクソもないんだ。

私、絶対将来男に殴られる、すごい怖い人生送って、しかも自分の子供を殴る女になるんだと思って。だって素敵な女性はいないし、優しい男性もいなかったから、そんなになっちゃうのが怖くて仕方なかった。

それがイヤだったから東京に来たの。東京来たらどうにかなると思って。それで新宿の歌舞伎町で、ミニスカパブで働いてたら、もっと怖くて(笑)。

(会場笑)

西原:新宿の一番街のビルのミニスカパブで働いてたんだけど、リドリー・スコットはね、ちゃんと『ブレードランナー』撮ってないなーって思ったね。近未来はこんなもんじゃなかったもん。

朝の6時にね、80歳くらいの売春婦のおばあちゃんが立ってるんですよ。大変だなーと思ってよーく見たらおじいちゃんなのね。

(会場笑)

西原:女装して泥酔客拾ってるし、ホストは生ごみと一緒に捨てられてるし、上半身裸で黒いタイツ着た太ったおばちゃんがこっち見ながらにやにやしてションベンしてるし、もう怖くて怖くて(笑)。「この中のどれかになっちゃうんだー」って思って、毎日泣きながらそこを通ってたんだけど。

やっと優しい、私のお金を目当てにしない、殴らない人と付き合えた

西原:そういう私がやっと美大に受かったのに、付き合う男は無職の男なんですよ。平気で無職の男に惚れちゃうの。1人が怖いし寂しいし、自分を相手にしてくれるのはそのレベルだから。

上に行こうとかそういう意識がないので、すごく自己評価が低かったんだと思います。で、その男が、大学行って、水商売して働いてる私のお金を平気で取っていっちゃっても、別になんとも思わない。みんなそうだったから。

だいたいそういう生活を何年か続けてるうちに、東京で漫画で売れ始めると、やさしくて、知的で、教養があって思いやりがあるという、ツチノコのような男がけっこういるとわかり始めて。

でも結局、生まれ育ちなんでしょうね。鴨ちゃんが好きになって。戦場カメラマンで、アル中で、ものすごい苦労して、やっと彼を見送って、人に戻して見送ることができて。今、やっと優しい、私のお金目当てにしない、私を殴らない(笑)。

高須:殴られるけど、僕(笑)。

(会場笑)

西原:こんな人と最初から出会える女性って、この世にいるんだな、素晴らしいなって思いますね。そんな人がいるなら、私の娘はどうなんだろうなって思うんですけど、でもまあ1回くらいはそんなイヤな男のちんことかくわえとかないと、幸せがわかんないじゃない? ありがたさがね。

「トイレットペーパーがない!」って言って怒鳴る男を経験しないと、ペーパー勝手に買ってきてくれる男のありがたみってわからないじゃないですか。

実際、東京で「なんでうちの人、稼いでこないのよ」「給料低いのよね」って話す女性に会ったときに、「じゃあ、おめえが稼いでみろよ」って思うんですけど。

だから昔からの苦労が、やっと今幸せに結びついたかなって思ってて。なんかすみません、日本昔話みたいな。

(会場拍手)

西原:生まれて初めて幸せなんです。

ハワイで370年の懲役を食らった

西原:ちなみに村西さんは前科は何犯なんですか?

村西・わたくしは恥ずかしながら、7犯でございます。

西原:あー、素晴らしい。高須克弥は、前科は1犯でございます。所得税法違反。

(会場笑)

西原:名古屋国税で、今までで最高の個人金額を脱税で、追徴金で上げられました。いまだにその記録を破られたことはないそうでございます。刑務所の中は入っちゃったんですか?

村西:私はね、らしい所へはハワイでちょっと入ってましたけど。

西原:ハワイでちょっと。

村西:ああいう所はね、入るもんじゃありません。特にね、ハワイなんかにいると、本当にハワイ中の悪漢、悪党が入ってきますからね、小錦とか曙みたいなもんですよ。

シャワーなんか入るとね、こいつら来るんですよ。もうこれ以上お話できないんですが。

(会場笑)

村西:恐怖で発狂しそうになっちゃうんですね。まだまだその頃若かったので、おいしく見えたんでしょうね。ああいう中ではね、シャワールームみたいなのに常時40人くらい一緒に入るんですけど、誰でも、いつ入ってもいい。

私が捕まる前に山口組の組員が2人捕まって、懲役20年くらい。刑務所みたいな、拘置所みたいなとこに捕まっててね、「いやー、さすが山口組だなー。こういう所に20年も懲役食らわなきゃいけないのか」って。その後、私が捕まったときは、370年。

(会場笑)

西原:出られて良かったですねぇ……。

村西:今でも忘れないんですけど、カメラマンがだーっと向かってね、セスナ機ぶっ飛ばしてセックスを上から撮る、そういう作品を撮ったんです。それが鬼畜米英の閣下のFBIにとっても気に入られて。

(会場笑)

村西:300年か400年か、頼むからアメリカに居てくれないかって。

西原:監督の一番名物の駅弁ですが、腰をいわしたりしなかったんですか?

村西:それはですね、熟女のおば様に教えてもらったから。その頃はホストみたいなことやってたから、もう、頭の中に福沢諭吉がいましたから、腰が痛いのカユイの、なんて言ってられませんよね。駅弁に救われて今日までやって来られた、といってもいいと思います。

高須先生、最後に何かお一言ございましたら、お言葉を賜ればと思います。

高須:監督、僕、めいっぱい広告になっちゃうんだけど……「YES高須クリニック!」。

村西:西原先生も最後に何か一言……。

西原:みなさんが幸せになっていただければと。

村西:ありがとうございました。高須先生と西原先生でございました。拍手でお送りくださいませ。

(会場拍手)

村西:ありがとうございました。こうして皆様と楽しいひと時を過ごしてまいりまして、命の洗濯のひと時となりえたでございますでしょうか。

皆様、本日は心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました!

(会場拍手)

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