「私が卒業式に聞きたかった話」をします

今日皆さんは何回もこれを聞くと思いますが、誰よりも先に言わせてもらいます。2013年卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます! 今日この日を迎える事をとても嬉しく、誇らしく思われていることと思います。私もここに戻ってこられたこと、そして今日ここに迎えていただいたことをとても嬉しく思います。今でも毎日卒業記念リングをしています。この指輪を手にした瞬間は、今でも人生の中で最も誇らしく思った瞬間のひとつです。

この日がなぜこんなに特別な日なのか。これには、いくつもの理由がありますが、私にとっての理由は、今日から皆さんは常に「合格」を目指す必要がなくなるということです。ここまで来るのに、バスケットボールでスコアをとったり、テストに合格したり、大学に入ったり、クラスを取ったり、学位をとったり、請求書を払って仕事に行ったり。今日それが終わります。人生をプランする中で一番大変なのは、これからどこへ行くのかわからない、でも少しでも早くどこかにたどり着きたい。人々は「会社をやったらどうだ?」とか「きっと君は癌の治療法を見つけるよ」だとか「きっと君はベストセラー作家になるよ」とか言うかもしれません。

でも皆さんは、「そんなこと言われてもわからないよ! ものすごい失敗をするかもしれないし!」と言うかもしれません。私は卒業の日を迎えたとき、自分が何がしたいのか全くわかりませんでした。皆さんが座っている場所に私が座っていたのは、そんなに昔のことではありません。私の卒業の時も雨が降っていました。ここで皆さんの前で話をしているなんて……。こんな風になるなんて想像もしていませんでした。

というよりも、私には将来設計なんてものがありませんでした。今思えば「卒業時に将来設計をしておけ」と言う方が無理な話だと思います。今日から皆さんが歩み始める人生と、もしも私が2006年に戻れるのなら何をしたいか、ということを考えてきました。皆さんがここにいる理由は、皆さんが賢く、真面目に一生懸命やったからということに尽きるでしょう。

しかし誰も「変化すること」が成功へのキーだということは教えてくれなかったと思います。なので、私が皆さんにお話したいのは、「私が卒業式に聞きたかった話」です。難しいことはお話しません。「テニスボール」「サークル」そして「30,000」が鍵です。「何を言っているんだ?」と思っているでしょう? 説明します。

会社を立ち上げて味わった最初の挫折

私は最初の会社を、あるチェーンレストランの座席で21歳の時に立ち上げました。共同設立者と私は今まで会社を立ち上げたことなどなかったので、市庁舎へはスーツを着ていかなきゃならないのかな? 重要書類に捺印するのに社印が必要なのかな? これは一大事だ! などと思っていたのですが、実際のところはオンラインで必要事項に記入して送信。ものの2分程度で会社を設立することができました。あまりロマンがなくがっかりしましたが、5分後には私達はビジネスオーナー、オニオンリングを食べながらSAT受験者の為の新しいオンライン講座を開設するビジネスをやることに決めました。

当時の若者は、800ページくらいある本を使って勉強しており、他社のオンライン講座にはあまり優れたものもなかったので、とてもいいアイディアだと思いました。それこそSATに出てくるボキャブラリー「Accolade」―これは名誉、賞の意味ですが―、これを使って 会社をThe Accolade Group, LLCと名付けました。この方がかっこいいと思ったからです(笑)。

チェーンレストランからの帰り道、文房具店に寄って名刺プリント用紙を買いました。会社を始めたらまずまずやることは、フォトショップでロゴをつくって、「Founder」とプリントされた名刺を刷ってカンファレンスでばらまく! そして女性を口説くキメ台詞「そうなんだ、僕は会社をやってるんだ」を練習することだと思っていました。楽しかったですね(笑)。

真面目な話に戻ると、一番楽しかったのは新しいことを学ぶことでした。毎年夏はフラタニティーハウスで過ごしました。その家の5階には屋根の上へ続く梯子がありました。私は屋根の上にナイロンの緑色の椅子とAmazonで買い貯めた本を毎週末持ち上がり、新しいことを学びました。セールス、マーケティング、企業方針、マネジメント等、私の知らなかったことすべてです。まさかフラタニティハウスの屋根の上でMBAの勉強をするなんて思ってもいませんでしたがね。

しばらくはよかったんです、でもそれから数年後事態は悪化し始めました。どんどんやるべきことが滞りはじめ、ある日思ったんです。「もうこんな数学なんかやってられるか!」と。私の何かがいけないんだ、と思いました。やるべきことをきちんとできない自分にイラつきましたし。自分の会社をやるのは長年の夢でしたが、元々私にはできるはずもなかったことなんだと思い始めました。

仕事を休んで夢中になった「ポーカーボット」

なので少し休むことにしました。皆さんがコース6(コンピューターサイエンスのクラスのひとつ)を取ったかはわかりませんが、私は取っていたんですね。コース6を休むということは、時に「ポーカーボット」を書くことと同じなんですね(笑)。

オンラインポーカーゲームをやったことがない人の為に説明しましょう。オンラインポーカーの世界では、長時間パソコンの前に座ってクリックし続けた結果、負けてお金も持っていかれるというのが常です。ポーカーボットが何をするかというと、コンピューターにゲームを任せて、負けて、お金を持っていかれる。そう、このシステムをつくったのです。

でも私は、もうこれに夢中でした。この時期に両親はニューハンプシャーのコテージで家族で週末を過ごそうじゃないか、と言いだしたのですが、私はポーカーボットの開発を続けたかった。私は彼らのところへ出かけます。「元気、母さん?」とあいさつした次の瞬間、私は車のトランクから100パウンドはあるであろうワイヤーとコンピューターを取り出して、湖畔のコテージにずるずると担ぎ込みました。ダイニングルームのテーブルは少し小さかったのでコンロの上のフライパンなんかをどかして、モニターなんかを置く場所をつくったんです。母が入ってきて、「あなた何やってるの!?」と言いました。彼女は私の刑務所行きは決定だと思ったのです。

ここでちょっと話が逸れますが、私は両親には多大な迷惑をかけました。ここにいる皆さんも、皆さんのご両親にたくさん心配をかけられたことと思います。なのでここで皆さんがここまで来るのをサポートしてくれた、皆さんのご両親、大切な人たちに感謝しましょう。ありがとう!

(拍手)

1.人生の「テニスボール」を見つけよう

好きなことを仕事にしなさい、と言おうと思ったんですが、それって実はあまり助けにならないんですよね。それは、今やっていることが自分の好きなことなんだと思い込むことがとても簡単だからです。でも考えてみると、私が知っている「幸せで成功している人」というのは、好きなことを仕事にしているだけではなく、自分の仕事に心を奪われているんです。その熱心ぶりはもう大変なものですよ。彼らにとって、とても重要な問題の解決に打開策を見つけることに心を奪われているんです。

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