父親の影響で料理をするようになった

――お父さんの影響って結構大きいですか?

マーク・パンサー氏(以下、マーク):大きいですね。親父の影響はすごい大きいじゃないですか、やっぱり。料理好きなのも何もかも、全部そこから発生してると思います。

――料理お好きなんですね。

マーク:料理大好きですね。あるもので作らなきゃいけない所も好きです。

――あるもので作る。1番得意な人の発言ですね。

マーク:料理っていうのは数学みたいなもので、例えば、塩を入れなきゃいけないから塩を入れるって言われるとすごく嫌なタイプ。

――誰かに習ったり?

マーク:甘いから塩を入れてすべてをバランスよくするために、全ての調味料があるって考え方だから「ここで砂糖を小さじ1杯」って言われると、「何で?」みたいになっちゃう。そこにトマト缶を入れたから、自然にお砂糖を入れるというふうな考え方だと思うんですよ。

――料理は誰かに教わったんですか?それとも自分ですか?

マーク:やっぱり親父から教わった要素が多いし、教えてもらうってよりは、見て覚える、みたいな。

――いわゆるレシピ本みたいなものは買わない?

マーク:色々買いましたよ。

――研究が好きなんですね。

マーク:研究好きですね。練習も大好きですし。

試合よりも練習が好き、賞レースにも興味がない

マーク:ゴルフは、コースにはほとんどでないでずっと練習していますね。

――打ちっぱなしで。すごいですね。やっぱりなんていうか勤勉というタイプですね。

マーク:そうですね。どちらかっていうと本当に練習好きでしたね。剣道をやってた時も、他の何をやってた時も試合嫌いでしたし。とにかく練習の方が好きで。

――実践よりも練習のほうが好き。それは実践で勝ちたいからではなく?

マーク:じゃないです。

――ただ鍛錬することが好きなんですね。

マーク:勝ち負けとかどうでもよかったです。段もどうでも 良かった。

――結構今までもそうですか?

マーク:そうですよ。

――そうですか。何か例とかあります?

マーク:例えばglobeで賞とか色々持ってるんだけれど、20年経って今やっとそういう盾みたいなものを自宅の隅から見つけ出してます。当時は貰ってぽんと捨てるような、そんな感じです。

――賞レースには全く興味がない?

マーク:そこではなかった。

――何かtwitterに書いていましたよね。

マーク:あれ、倉庫を調べてたら見つかったんですよ。ゴールドディスクみたいなのが。

――ゴールドディスク大賞もどこかその辺にぽんと置いちゃってたんですか? それが今は結構、もう自慢気に飾ってあるじゃないですか?

マーク:全然飾ってなかった。だから娘の元気を出すために、そういうふうに置き始めたのかな。

できなくても条件反射で「できる」と答えていた

――ちょっと話しを戻しますが、MTVでVJをやられてた時期の時は、音楽活動みたいなのをされていました?

マーク:何にもしていないですよ、全く。あ、どっちが先なんだろう? 僕、実は、アルバムを1個出してるんですよ。加藤和彦さんで『Ciao,l'amour…恋にさよなら』違ったかな。

――ギターですか?

マーク:加藤和彦さんっていうプロデューサーがいて、その人から連絡が来て。多分メンノン見てか、何を見て連絡が来たかわからないんだけど、フランス語で歌とか歌えるの? って言われて。

2歳からずっとオーディションを受けてる人間というのは、できないと言えないんですよ。できないって言うとオーディションには受からないから。できなくても「いや、僕は、小さい時からそれだけしかやった事がありません」くらいの嘘をついて、全てを受かるわけですよ。

だから加藤和彦さんに「歌とかどうなの?」って聞かれて「もう僕はもうお母さんのお腹の中から歌を歌ってるから、歌が大好きです」って言ったら、加藤さんから呼ばれて、歌なんか歌ったことないし楽器なんて弾いたこともないにも関わらず、とにかくおもしろいなっていうことで、やろうって。

――会った時にはそこは正直にお話ししたわけですね。

マーク:だって歌ってみたら歌えないんですもん。

――得意なほうではなかったんですか? 歌自体は。

マーク:興味もなかったですから。でも遊びまくってたんで音楽が大好きなんですよ。もう8歳からとにかく六本木のクラブで遊びだしていましたから。

――なかなかすごいですね。8歳で六本木のクラブって。

マーク:ひどいですよ。8歳から煙草吸いだして、酒飲んで。六本木はクレオパラッチで遊び、渋谷はキャンディキャンディのオープニングから遊んでた子どもですから。

鳴り物入りで出したアルバムは8000枚しか売れなった

マーク:とにかくロックとレゲエが大好きで。ボブを神様と思うくらい好きで、また、60年代のロックを聴きだすと止まらないような人間でした。そんな話を加藤さんとしたら、すごいおもしろいから何かやろうってことになって。

フレンチポップっぽいことやりたいって言われて、フレンチポップ全然興味ないんですけどとか言っていましたね。

他の作曲家とかプロデューサーにYMOの高橋幸宏さんとか細野さんとかニックデカーロさんとか全員が来て、今やワーナーの社長の石坂さんがその当時がプロデューサーだったりとか。今、ユニバーサルの多分トップになった近藤さんが当時のディレクターとかしてすごいアルバムができたんですよ。

――すごいメンバーですね。

マーク:すごいの。ジャケットのデザインとかアルバムの名前忘れちゃったけども、当時のすごいデザイナーがジャケットをデザインし、すごい物ができたんですよ。でも、8000枚くらいしか売れなかったんですよ。何だよこれ、もう俺もトップになったなとか思って。「俺もこれでロックスターだ」とか思ったら8000枚くらいしか売れなくて。

――その時は、音楽は違うなとか、自分の中で思われたんですか?

マーク:別にそこから続くことはなかったんですよ。そこから多分そっちが先で、それでMTVに入って音楽はかじってるしレコーディングもやってるし、すごく興味も持ち出してるし、何とかなるということで音楽というとこに入っていった。

当時は英語もしゃべれなかった

マーク:1番の勉強はやっぱり、MTVの武者修行のような全世界の音楽を毎日調べなきゃいけないという所だったと思うんですよね。英語なんてしゃべれないんですもん。当時俺。

――あ、当時英語しゃべれない。

マーク:英語しゃべれるの? ってオーディションで聞かれて「当たり前じゃないですか、だってアメリカで生まれてんですから」ってそのくらいの嘘をついてるんですから。フランスで生まれてるのに。で、いざガンズ・アンド・ローゼズをインタビューしてきてとかいって、インタビューできないんですよ。全然しゃべれないんで。

――その時に実際ガンズ?

マーク:もう東京ドームでスラッシュと。

――インタビューしたんですか?

マーク:そしたら向こうも「お前フランス人? おもしれーな。MTVフランス語でやっていいの?」みたいになり、フランス語もしゃべれるし、また、MTVでの英語はほとんどカタコトでしたね。

内容よりもコミュニケートする事が大事だと思っていました。コミュニケーションさえできれば、言葉っていうのは通じるっていう事に気が付いて。そこでもう猛勉強ですよ。言葉も勉強、音楽も勉強。もう必死に1年半くらいそこで勉強するんですよね。

「街で起きる悪いことも恋も、全てのことが勉強だった」

――さっきまで学生時代って不良だって話で、あまり勉強は好きじゃなかったんですか?

マーク:うん。だから学生時代も僕は目の前に起こる事、全てが勉強だと思ってるんですよ。街で起きる喧嘩も、街で起きる悪いことも、恋も、全てのことも、全部当時は勉強だったような気がするんですよ。

僕が嫌いな勉強は「じゃあこれです」って出されるのがダメなだけであって、実はそこじゃない社会勉強っていうのは、ただ過ぎさっていくものではなく、脳に刻み込まれていく様に、1個1個が全て勉強だったような気がするんですよね。

だから、その不良時代が終わり、MTVになっても度胸があり、あらゆる遊びができるんですよね。だからそのアーティストとも遊べれば、当時周りにいる人達とも遊ぶ事も何でも出来る。

――ロック、レゲエがメインで聴かれてた中で、いろんなジャンルを聴くわけですよね、MTVは。そういうのは新鮮でしたか?

マーク:新鮮ですよ。もう、そこでフレンチラップにも出会うし、あらゆるものにそこで出会うんですよ。ポップもそうだし、アンダーグラウンドのものもそうだし、もうR&Bもそうだし全てそこで出会って。

それがただ好きではなく、歴史から、そいつがなぜそこにいて、そいつが何をやっていてっていうことも全部を調べなきゃいけなくて。それをネタにしゃべらなきゃいけないんで。

U2のボノが何をやっていて、アダム・クレイトンがなんで捕まっちゃって、彼が誰と付き合っていて、何で黒人反対運動をやっていて、とかそういう事を全部調べながらしゃべっているから、超勉強になりましたよ。

――そこは番組的に、全部知っている先生のようにしゃべらなくちゃいけない?

マーク:そうです。でも、そこでは先生のように「です」「ます」調でしゃべると怒られるんですよ。「自然にしゃべれよ。カメラは友達だと思って自然にしゃべんないか」です。「はい」「です」を言ってしまって、もう1回カット。もう1回とかってやらされるんですよ。小栗っていう超怖い奴が1人。

――厳しかったんですね。

マーク:すごい厳しくて。それがのちのちglobeの映像プロディーサーになるんですけど。

さまざまな出会いが、小室哲哉との出会いにつながる

――その頃はいろんな出会いがあって。

マーク:出会いすごかったですよ。

――さっき言ってたフレンチラップに当時出会ったんですね。

マーク:出会いますね。当時GuruっていうのがあってMCソラーとかそういうのがいたりして。

――ラップ自体は、それまであんまり自分で触れることはなかった?

マーク:なかったです。全くない。全くラップに興味がなく、どっちかっていうとラガもその時始まりはじめて、ちょっと興味を持ち始めるんですけど。

――レゲエが好きな流れの中でということですよね?

マーク:しゃべってリズム刻んでっていうよりも「もっと魂込めて叫ばんかい」的な考えだったのが、それが段々勉強していくうちに、その詩の内容も全てすごい魂を込めてやっているのに気がついていって。だからMTVの途中に小室さんから電話来たんですよ。

――ここがいわゆる小室さんとの出会いになる。

マーク:そうそう。

―― それまでには出会ってはない。

マーク:全然ないですよ。全く興味ないですもん。僕、だってデュラン・デュランとかカジャグーグーとか全く興味ない世界ですもん。

――小室哲哉さんからお電話がかかってくる。

マーク:そうです。多分、事務所に電話がかかってきたんだと思うんですけど。MTVは当時、お金を持ってる人が見ることができたんじゃないのかな? そういった音楽プロデューサーとかスタジオとかに「オシャレ」という意味合いでMTVを見れるようにしてたんだと思うんですけど。

そうすると、1日中、僕かはなちゃんがMTVで流れていて、そうすると、自然に「こいつなに?」みたいになったんじゃないんですね。メンノンのモデルだったしみたいな。

小室哲哉の存在を全く知らなかった

マーク:豊橋かなんかのキングアンドクイーンでKOOちゃん、まだTRFやってなかったんじゃないのかな? そこに小室さんに呼ばれましたね。 

実は、行きたくなかったんですよ。どっちかというと。

――なんで?

マーク:世界が違うから。そのTM NETWORKっていうのを調べて。だから僕にとっては全く違う世界だから。80’Sの中でもアダム・アントとかそういう世界ではなく、どっちかっていうとデュランデュランみたいなカジャグーグーとかボーイ・ジョージとか。ホモっぽい世界だったんですよ。

――小室哲哉さんのことは、あんまりその時はご存じはなかった?

マーク:全く知らないですよ。

――あ、そうなんですね。

マーク:すごい全然興味ない世界で。TMっていうものは知ってたんですけどね。

取材協力:シネマズ by 松竹

制作協力:VoXT