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「日本人は一生懸命働く。ただ、そこにビジョンがない」 ノーベル賞・山中伸弥教授が指摘

「日本人は一生懸命働く。ただ、そこにビジョンがない」 ノーベル賞・山中伸弥教授が指摘

ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学 iPS細胞研究所の山中伸弥教授が、「人間万事塞翁が馬」と題して高校生に向けて行った講演。山中教授は自身の人生を振り返り、整形外科医としての挫折がなければ研究者の道へ進むことはなかったという。研究者として、人生の先輩として、これからの日本を担う高校生にメッセージを送ります。

シリーズ
高校生特別授業 > 京都大学iPS細胞研究所所長・山中伸弥教授「人間万事塞翁が馬」
2010年12月のログ
スピーカー
京都大学iPS細胞研究所所長 山中伸弥 氏
参照動画
「人間万事塞翁が馬」 京都大学iPS細胞研究所所長 山中 伸弥 教授
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アメリカでの研究を決意したきっかけ

山中伸弥氏(以下、山中) 研究の虜になったんですが、残念ながらこういう薬だけを使う研究っていうのは色んな意味で限界があるんです。薬っていうのは、100%効く薬はありません。大体がちょっとくらい効かないところがある。どんな風邪薬を飲んでも、すぐ風邪が治るかと言ったら、治らないですね。 それから副作用があって、違う所に効いてしまう時もあります。色々限界があるんですが、その時に遺伝子改変マウスという技術がアメリカとイギリスで誕生したんです。 gazou1 今日は研究の講義ではないので、難しいところは全然良いんですが。この頃に遺伝子を直接操作して、ネズミが持っている何万個もある遺伝子の中から1つだけ選んで、それを変えてしまう。遺伝子の機能をつぶしてしまったり、逆にある1個の遺伝子の機能をネズミの中で何十倍にもするという。こういう言ってみたら当時の僕にとっては夢のような技術が1990年頃に、イギリスとかアメリカで登場したんです。 まだその頃、日本ではそういう技術がありませんでした。ちょうど大学院を卒業したのが、そういった時期で、僕はもうちょっと研究は続けたいと。4年間大学院で研究したんですが、どんどん虜になって、まだ研究したいと。しかもまだ日本にはなかった遺伝子改変マウスという技術を使った研究をしたいということで、アメリカに行こうと思いました。

家族4人で渡米

ただ、アメリカに行くと言っても全然伝手がありませんので、何をしたかというと、色んな研究の論文が載っているジャーナル「ネイチャー」とか「サイエンス」とかの雑誌があるんです。みんなも聞いたことがあるかと思いますが。 そういう雑誌を見ますと、後ろの方に広告が載っているんです。アメリカとかイギリスの研究所で研究員を募集しているんです。ポスドクというのはポストドクトラルフェローの略です。ドクトラルというのは博士号です。 ポストというのは後ということなので、ポスドクというのは博士号を取った若い研究者がさらにもう数年、独立する前に他の先生のもとでトレーニングを続けるというシステムです。日本では博士研究員と呼ばれています。 日本でもどんどん増えていますけど、当時は日本はあまりなくて、アメリカとかイギリスしかなかったんです。大学院で博士号を取ったんですが、さらに研究をもうちょっと頑張ろうということで、一生懸命雑誌に載っているポスドクの募集広告を見て、一杯手紙を書きました。30ヶ所くらいのアメリカの研究機関に手紙を書いたところ、ほとんど返事がなかったんですが、いくつかの機関から返事をくれまして、最初に返事が来たのが、サンフランシスコにありますグラッドストーン心血管研究所というところでした。 最初に返事が来たのがすごい嬉しかったので、そこに行くことを決心しました。1993年ですね、今から17年前になりますが、家内と、大学院の間に娘が2人生まれていましたので、4人でアメリカに渡りポスドクとしての研究を始めました。 gazou2 これが当時のグラッドストーン研究所です。サンフランシスコのサンフランシスコ総合病院の中にありまして、築後30年くらいの煉瓦造りの、昔は病院だったと思うんですが、そこを改造して研究所にしているんですが、ここで3年強ポスドクとしてさらなるトレーニングを受けました。

「Vision」と「Work hard」、いずれが欠けてもダメ

その時に僕にとっては非常に大切な言葉を学んだんです。それが今のグラッドストーン研究所の、当時所長だったロバート・メイリー博士、先週京都賞のお祝いで京都に来ていただきましたけど、彼が教えてくれた言葉です。 彼はこの当時から今までVolkswagen(フォルクスワーゲン)に乗っているんです、VWですけれど。ある時、彼が僕たちポスドクを20人くらい集めて、ポスドクとして成功する、というか今後の研究者としての人生を成功するためには、この「VW」が大切だということを教えてくれました。 この場合の「VW」は車のVWではなく、「Vision」のVと「Work hard」のWです。 gazou3 「目的を、ビジョンをはっきり持って、そのために一生懸命働く」という。どっちがかけてもだめですよということです。それから十数年たっていますけど、いまだに僕がいつも思い起こして、ちゃんと「VW」をしているかなと。 日本人は、みんなもそうですけど、ハードワークが結構得意なんです。勉強を一杯する、長時間勉強することも得意ですし、実験室でも夜遅くまで研究するのが得意な学生さんたちいっぱいいます。 大人になっても一生懸命働く、土曜も日曜も働く、そういう大人もいっぱいいます。日本人はハードワークは問題ない場合が多いんですが、しかし、油断するとビジョンを失っている。 日本人の場合、僕もそうなんですが、目的がぼやけてしまって、よく考えたら何のために働いているかわからないということに陥ることがあります。みんなも関係ないと思わないで、自分のビジョン、目的がなんなんだろう、そのために僕は今何をしたらいいんだろう、ということをちょっと考える時間があってもいいんではないかと思います。 みんな勉強で忙しいと思うんだけど、よく考えてみると、テストでいい点を取るのが勉強の目的ではないはずですよね。何かやっぱり目的があって勉強をしているはずで、ビジョンというのは長期目標ということであると思いますけど、僕にとってのビジョンは何なのかと、忙しいと思いますけど、勉強の合間にちょっと考えたらどうかなと思っています。

  
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「日本人は一生懸命働く。ただ、そこにビジョンがない」 ノーベル賞・山中伸弥教授が指摘

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