ビールで乾杯、ハイタッチ

田中研之輔氏(以下、田中):ほかはどうですか? 聞きたいことを聞いてください。

(会場挙手)

質問者9:須藤さんのインタビューの記事を拝見させていただいて、そこで、社会人に対して、どよーんとしたものを感じていると書かれていて、自分もそういうふうに感じてるんですけど。それに対する須藤さんの理想の社会人のイメージが、スーパードライのCMみたいな感じって書いてあって。それがどういう感じなのか、すごく不思議に思っていて。

須藤憲司氏(以下、須藤):乾杯するシーン。

田中:福山の?

須藤:福山じゃない、そのもっと前。

質問者9:どういうイメージかなっていうのがすごく気になって、それが聞きたいなと。

須藤:乾杯する。今は福山がやってるけど、その前、まぁでも福山も乾杯してるよね?

田中:イメージはたぶん変わってないね。

須藤:変わってない。昔のスーパードライのCMって、とにかく乾杯するシーンの連続なんですよ。たぶん仕事が終わって、打ち上げな感じで、みんなが乾杯ってやるシーンなんですよね。

あれはすごくいいなと思ってて。要はさ、なにかを一生懸命みんなでやって、「おもしろかったね、大変だったね、苦労したね、乾杯!」っていう毎日を過ごしたいなということですよね。

僕が思ったのは、みなさん電車で通ってると思うんですけど、電車の中で、超おもしろそうにしてる大人いねぇなって思ってたわけですよ。ちょっと疲れてるなとか、かっこ悪いなとか。

田中:疲れてるよねー。

須藤:それはやっぱり嫌だなと思ったっていうのが、そこに書いてあることで。じゃあなんなのって言ったら、毎日朝起きて、よっしゃ今日はなにをやろうかなと思って仕事に行って、毎日毎日ワクワクして、おもしろかったね、大変だったねって言って、みんなと一緒に飲みに行ったりとかっていう、毎日を過ごしたいなと思って。

田中:今はそれ、できてます?

須藤:うん、できてる。

田中:乾杯するシーンがよくあげられるね(笑)。

須藤:僕はハイタッチをしますね。

田中:ハイタッチ?(笑)。

須藤:ハイタッチすると、気分良くないですか? こうやって。

(須藤氏と田中氏がハイタッチ)

田中:なんだっけ、ハイファイブか。

須藤:そうそう、英語で言うとハイファイブね。

田中:もう1回いいですか?

(もう一度ハイタッチ)

須藤:あれ? 写真!?(笑)。

田中:構えたから(笑)。すみません(笑)。

(会場笑)

須藤:さすが、メディア慣れされてる。

モチベーションはどこからくるのか

田中:2人がどんどん言ってくれるから、それでうちのブランドが上がるからね。どうですか、質問。どんどんいきましょう。

(会場挙手)

質問者10:すごく気になったのが、リクルートに入ったときに3,000億を3兆円にしたいとか、そういうのって普通じゃないじゃないですか。そういうモチベーションって、スドケンさんは、内発的に来るって言ってたんですけど、内発的なのかなってすごく気になって。原体験として、そういうのは小さいころからあったりしたんですか? どこからそのモチベーションはくるんですか?

田中:あー、いい質問。

須藤:それは、どっちのほうがおもしろいかじゃないですか。例えば、「3,000億を3,300億にします」って言うほうがおもしろいのか、「3,000億を3兆円にします」と言ったほうがおもしろいのか、どっちに挑戦したほうがおもしろいですかってこと。できるか、できないかとか、誰かから評価されたいと思ったら、そんなこと言わないよね。

仮に、3兆円にできる方法をわかってたとしても、「いやいや、6,000億にしますよ」って言って、蓋を開けたら3兆円になっちゃいましたとか。人って、人から評価されたいと思ったら、そっちをやるよね。わざとファインプレーみたいな。絶対間に合うんだけど、とりあえずちょっと派手な感じにしようかなって(笑)。

僕はそれに興味がないんですよ。できないかもしれないけど、挑戦したら自分はおもしろいんだろうなって思うことのほうが、はるかに興味があるから。でも、そうやって言われると、「どうすんの?」って思うじゃないですか。聞きたいじゃないですか。

「僕はこう思うんです」ってしゃべるでしょ。それができるかできないかなんて、どっちでもよくて、僕のアイデアがワクワクして、おもしろくて、人の心を動かしたら、本当に変わるかもしれないじゃないですか。さっき自分のキャリアの話とかしてたけど、自分がいたら世の中が変わったかもしれないことを、僕はやりたいわけです。

それは、社長でも、一社員でも、なんでもいいんです。そのことに携われたら最高におもしれぇだろうなって思ってる派なので。できるかどうかはわからないけど、それは確かにおもしろそうだ、聞いてみたい。聞いてみたら、なかなかおもしろい。と思ったら、なにか動いていきますよね。

“不発弾”みたいだった学生時代

質問者10:それって昔から、自分がなにかやったら変わるというのは、小学生とか幼稚園くらいから?

須藤:原体験はなにかあったのかなぁ。あったのかもしれないですけど、わかんないですねぇ。でも別に、僕はガキ大将みたいなのでもないし、普通に落ちこぼれ。ぜんぜん勉強しないんで、ダメなんだけど(笑)。

僕の中では、そういう原体験とか成功体験があったからそうなったんじゃなくて。逆で、学生時代、なんかつまんないなって思ってた。遊んでもおもしろくないし、サークルの幹事長とかやってたんだけど、あんまりおもしろくないなと思ってた。

すごく仕事がしたい、なにか打ち込めるものが欲しいと思って。不発弾みたいな感じで、なんかモヤモヤして。やったりしてましたね。

質問者10:もっと楽しくなるために、なところがパワー、原動力。

須藤:そうそう。例えば、遊びに行ったりするじゃん。その瞬間はおもしろいんだけど、帰るときとかはちょっと虚しい。オールしようぜとか、今はもう眠くなっちゃうんで、帰っちゃうんですけどね(笑)。オールして、朝帰るとき、「これなんだった?」とか思いません? 超楽しかったけど、うーん……って。なにをやってもそんな感じだったんですよね。別に、音楽やってもそうだし。

田中:不発弾(笑)。

須藤:ぜんぜんおもしろくなくて、たぶん仕事に打ち込めたら、超おもしろいだろうなって。自分の人生を豊かにするために仕事してるので。

田中:今この距離で聞いてて、けっこうわかってきたことがあって。いろんな話を聞くじゃないですか。社会の仕組みや構造、それを変えるのってけっこうストレスなんだけど、そのストレスに対して、喜びを感じる人ってけっこういて。その層とイノベーティブな層って、ほぼ一致するんですよ。

戻ると、だいたい義務教育のなかで、なんらかのフィットしない人ね。要は、義務教育で「こういうことやりなさい」って言ったら、こういう社会の中で、それに合わせていくんだよというふうに純粋培養されていくんだけど、そこにだんだん居心地の悪さとか、不燃感が現れていって。それが小学校、中学校のときに、非行とか変な行動に出なかったんだけど、フツフツ感はずっとあって。それの放出源が、ビジネスだったら社会を変える、ビジネスだったら自分の思った社会を描ける、って思ったのかなぁって感じるね。

須藤:そう思う。

田中:ほかはどうですか?

(会場挙手)

田中:どうぞ。

親切にすれば親切は返ってくる

質問者11:インタビュー記事を、私も拝見させていただきました。仕事量を3倍に増やしたっていうのを見て、仕事をもらえるっていうのは、信頼されてないとできないことかなって思って。OB訪問とかも、すごくたくさんの人のところに行っていて、それも信頼関係というか、「この人となら」と思ってもらえないと、できないんじゃないかなって思うんですね。対人関係で、どんなことを気をつけているのかとか、コツを聞きたいなと思います。

須藤:信頼関係って、(僕たち)初対面じゃないですか。初対面だから、別に信頼関係とかないじゃないですか。でも、第一に、親切にすることだと思うんですね。信頼関係があってもなくても親切にしたら、そこに信頼関係って、ちょっと生まれるじゃないですか。

例えば、人が物を落としたら普通は拾うじゃないですか。当たり前のこととしてずっとやってると、誰かは見てる。第3者は見てるし、その親切って1対1じゃなくて、実は、ほかにも波及してるから。「あの人に親切にしてもらって……」って、誰かに言ってもらうかもしれないし。

よく小さい頃だと、お天道様は見てるっていうけど、俺はそれを本当だと思ってて。別に、普通にしてればいいんじゃない。親切にしてれば、信頼関係はなくても、逆に親切にしてくれる人にきっと出会うし。スピリチュアルな意味ではぜんぜんなくて、普通に、原理原則で、人に親切にするとか。嫌な気持ちにさせないとか。そういうのは普通のことなのかなと思います。

あと、信頼関係みたいなものを作るのってすごく難しいから。手っ取り早い方法ってやっぱりないので、嘘をつかないとか、ありがとうって言うとか、そういうことじゃないかなと思う。

だから、すごく複雑なことじゃなくて、例えばOB訪問も、電話がかかってきたら普通は受けるんだって。そこにちゃんと遅れずに行くとか、普通じゃん、そんなの。ありがとうございましたとか、普通じゃん。普通でいいんじゃないかって。たぶん、自分が思ってるより自分が大人になって、そうやって来た人に対して、絶対不親切にしないから。わりと性善説なので。