ベンチャーの経営はどうなっているのか

MCあまり氏(以下、あまり):それでは小泉さん、自己紹介をよろしくお願いします。

小泉文明氏(以下、小泉):今メルカリという会社の取締役をやっています。その前はミクシィという会社で取締役をやっておりまして、ネット業界では10年くらい経営をしてきたという感じです。

あまり:ありがとうございます。先ほど舞台袖でお話しさせていただいていたんですけれども、メルカリ、使わせていただいております。ちょうど本日参加されているみなさんも、メルカリはド世代だと思うんですけれども、実際にどれくらいいらっしゃいます?

(会場挙手)

小泉:いやもう、めっちゃうれしいですね。

あまり:そうですね。どういうお気持ちなのか、いろいろなパネリストを交えてお話しさせていただければと思います。

ではさっそく、パネリストの方たちにご登壇していただきましょう。株式会社アカツキ代表取締役CEO・塩田元規さん、株式会社ウィルゲート代表取締役・小島梨揮さん、株式会社キュービック代表取締CEO・世一英仁さん、どうぞ!

(会場拍手)

あまり:それでは、この4名様でお話しさせていただければと思います。

小泉:よろしくお願いします。今をときめく3社に来ていただいて、組織の話なので少し難しくなっちゃうかもしれないんですけれども、ベンチャーをどういうかたちで経営しているかをお話しできればと思っています。

まずは各社の会社説明と自己紹介をしていただければと思います。では、塩田さんからお願いします。

塩田元規氏(以下、塩田):みなさんこんにちは。株式会社アカツキの塩田です。アカツキは「感情を報酬に発展する社会」というのを会社の理念に掲げていて、世界中をワクワクさせたいとか、世界中をもっとカラフルにさせたいとか思っている会社です。

メインの事業は2つあります。1つはスマートフォンのゲーム事業をやっていて、もう1つはライフエクスペリエンス事業という、リアルな体験でワクワクするものをプラットフォームで提供する事業を最近スタートしています。

僕個人は、前職はDeNAという会社で2年半仕事をして、27歳の時にこの会社を作りました。6年目を迎え、今年上場しました。

小泉:ありがとうございます。では小島さんにいきましょうか。

小島梨揮氏(以下、小島):株式会社ウィルゲート代表取締役の小島です。私たちの仕事は、コンテンツマーケティングです。お客様のWebサイトをコンサルティングして、売上をあげていくような事業と、出版社と一緒にメディアを作って、暮らしのメディアの発信をやっているような会社です。

私は2016年で30歳なんですけれども、高校生の時にこの会社を立ち上げたので、12年目になります。Web業界ではけっこう長いということで、みなさんに若い時にどういう選択をしてきたのかを今日はお話しできるかと思うので、どうぞよろしくお願いします。

小泉:ありがとうございます。では最後に世一さんよろしくお願いします。

世一英仁氏(以下、世一):株式会社キュービック代表取締役CEOの世一英仁と申します。よろしくお願いします。

株式会社キュービックはインターネットのマーケティング、デジタルマーケティングの会社です。みなさんがふだん見られるようなインターネットのメディアを作りながら、広告のビジネスモデルでやらせていただいています。

インターネットのユーザーと、集客に困っているクライアントを結びつけることを得意としたビジネスとしてやらせていただいております。

僕個人は会社に勤めたことはなくて、10年前に大学を卒業した後に起業いたしまして、現在10年、11期目の会社をやらせていただいています。今日はよろしくお願いいたします。

アカツキのカルチャーは『ワンピース』そのもの

小泉:よろしくお願いします。では、3社ありますので、まずは僕から社長から見た時に、会社のカルチャーをなるべくコンパクトに、ひと言で言ってもらったうえで、「それはどうしてなのか」を少し補足していただければと思います。では、塩田さんからいきましょうか。

塩田:アカツキのカルチャーは、ひと言で言うと『ワンピース』です。『ワンピース』と言うマンガを読んでいる人はだいたいうちのことがわかると思います(笑)。なぜかというと、みなさん知っていますよね、麦わら海賊団。彼らはラフテルを目指しているわけです。ラフテルというのは、最終ゴールです。我々も世界最高に偉大な会社になることと、世界をワクワクでカラフルにするというビジョンがあり、そこに向かって、最高の仲間たちと冒険しているわけです。

組織カルチャーのポイントは、麦わら海賊団にいるゾロもサンジも、それぞれ目標を持っている。2人とも「ルフィ、俺の夢を叶えてよ!」っていうスタンスではないんですよね。みんながこの麦わら海賊団の船に乗って、自分の夢を持って、本気で走っていて、しかもそこにいるキャラがみんなバラバラ。能力も、嘘ついていればいいっていう人もいるわけなんです。

そうやって、いろんなカラフルな人が集まって、ピュアに本気で夢を追っている。アカツキそのものかなと。なので、『ワンピース』を読んでください(笑)。

小泉:なるほど(笑)。『ワンピース』を読んでなさそうな人がポカーンとしていますね。

塩田:そうですね。『ワンピース』を読んでない人が多いので、外した感はありますけど(笑)。

小泉:そうですね。見ていて思いますけど、やはりアカツキはキャラがわかりやすいですよね。

塩田:そうですね。みんなピュアで、青臭くて。会社に入られるとみなさん「何々しなきゃいけない」「何々できるわけない」とか、そういう会社も世の中にはあると思うんですよね。僕らは「できないとか関係ない」「やるんだ!」という。自分たちが信じていることをやらなくてどうするんだ、ということです。

周りのメンバーも、ほかのメンバーの夢を実現したいと本気で思ってるし、アカツキの船を本気で最高にしたいと思っています。だからけっこう青臭く、ピュアにやっていると思うんです。最高ですよね。

なにより、ベンチャーはそもそもアドベンチャーなんで。ベンチャーで冒険しないのは、ありえないということです。

小泉:だんだんのってきましたね(笑)。

塩田:はい、すいません(笑)。

青春の延長線上にあるようなウィルゲート

小泉:小島さん。このあとやりづらいと思いますけど……(笑)。

小島:うちの会社は、全国大会を目指すスポーツチームみたいな会社です。なぜそういう会社になっていったのか。もう1人創業者に吉岡というのがいて、僕と彼は小学校からの幼馴染で、そういう人と立ち上げているんです。

僕らが小学校の時は彼がキャプテン、僕が副キャプテンというかたちで、そこから生まれた会社でした。会社が生まれた時からずっと、「全国大会を目指したいね」という思いでやっているんです。そういう、青春の延長を伸ばしていったようなチーム感を持っている会社です。

小泉:なんのスポーツをやっていたんですか?

小島:当時は、ドッジボールで、そのあとはバスケットボールです。

小泉:ぜんぜんイメージになかったですね(笑)。

(会場笑)

小泉:では最後に世一さんよろしくお願いします。

世一:はい。うちの会社はひと言で説明することはあまりないんですけれども。学生のインターンが100人おりまして、正社員の数よりも多いんです。

「若い人に仕事を任せてやってみよう」というのをおじさんが見守る。おじさんといっても、30歳を超えるとおじさんに分類されちゃって、僕ももう立派なおじさんであるわけですけれど。

おじさんがしっかり若い子に仕事を預けて、任せて、裁量を渡して、それをしっかり後ろから支援することを意識している会社です。

小泉:キュービックって、どういう思いで作られたんですかね?

世一:最初は、僕は弁護士になりたくて。大学卒業した後フリーターで、司法試験の勉強をやっていたわけなんですけれども、受からなくて。「今さら就職もできないし、独立して自分で仕事をしよう」と思って始めた会社なんですね。

だから、今のよくあるスタートアップベンチャーの、ビジョンをバッチリ決めて資金調達をきちんとやって……という思いで始まった会社ではないんです。だから、本当にベンチャーとして思い切り一皮むけて頑張ろうというのが、ここ3年くらいでしたね。

ここ3年くらいでしっかり成長していくと志し始めた、そんな会社になっています。

なにを組織の軸にするか、はっきりさせる

小泉:ウィルゲートというのは創業から13年、波がすごくあったと思うんです。創業から振り返ると、どんな12〜13年でした?

小島:2回、大きな波がありました。立ち上げた当初は苦労するんですけど、そのあと投資家の方に1億くらい、僕が20歳の時に集めました。そのあと「よっしゃ!」となって、アクセルを踏んだんですけれども。

そこから私の後に入ってきた人たち30名くらい。みんな30〜35歳くらいの人たちなので、本当に未熟な経営者なのにそんな方たちがたくさん入ってきて。でも、まとめられなくて、借金だらけで会社がつぶれそうになって、というのが大きな波ですね。

小泉:1億くらい?

小島:そうですね。借金は2億弱……。

小泉:(笑)。そのあとは?

小島:そのあとは……。組織としてなにを軸に行動していくか、理念、価値観、行動指針とか、いろんな組織ごとに大切な事柄がありますけど。それを明示して、「みんなの目指すものを目指して頑張っていこうよ」っていうことをして、「がっ!」と成長したんですけれども。

そのあともう1回、個人情報漏洩で事故を起こしてしまって。いろんなものが重なって、組織をもう1回組み直すことになって、それが2013年くらいでした。そこからさらに立て直して今もう一度、「がっ!」と、きているという感じですね。

人の成長は、今の能力と関係ない

小泉:はい。アカツキはもう7年くらいですかね。今、どんな流れですか?

塩田:そうですね、今6年ですね。僕が20歳の時に「世界でもっとも偉大な会社を創る。起業をする」と決めていて。アカツキなんで夜明けという意味で「世界を変える会社になる」という感じで始めた会社なんです。

創業した時はお金もないし、気合と根性しかないので、基本的には24時間徹夜で仕事をするブラック企業からスタートするわけですよね。そこから、ワイワイ、ガヤガヤ、アカツキらしくピュアに目標に向かってやっていったんです。

ピンチの時は、3年目くらいでした。シンプルに自分の経営者としての未熟さが原因だったんですが、採用の際にスタンスとかカルチャーフィットなどを見落として採用してしまったことがあるんですね。

結局、人間が成長するかどうかは、今の能力とは基本的に関係ないわけです。人間として成長する覚悟とウィルがあって、苦しいことも含めて真摯に向きあっていく、そういう人間であれば成長するわけです。

そういう真摯さのある人でないと、僕らのカルチャーにフィットしないと思いますし、働いててもキツくなってきますね。そこが合わない人を採用して、陰でいろいろ文句が出たり。経営者あるあるの一例なんですけれども、そういうことも起きて大変でしたね。

ただ、大変だった分、人や組織にのあり方に本質的にしっかり向き合って、より素晴らしい組織になってきたんだと思います。かなり端折って話しましたがそんなところです。

利益追求ではなく「価値を与えること」

小泉:3社とも、今は事業として成功していると思うんですけれども。今になって、事業の作り方でこだわりがあったりしますか? 塩田さんからどうぞ。

塩田:そうですね。僕たちの会社は比較的、みんな地頭いいし、ロジカルだと思います。しかし、目に見えないもの、ロジックでは説明できないものに時間を投資するというのは先に決めています。

なにかというと、売上とか利益とか大切なんですけれども、「なぜ売上を上げるのか」「なんで利益を上げるのか」はもっと大切なわけです。僕たちがやってることはなんでやってるのかをちゃんと問い続ける、それを組織の文化として大切にしています。それも目に見えない、数字の先にあるものの1つですよね。

他に目に見えないものでは、例えば、僕ら3ヶ月に1回、1泊2日で合宿に行います。そこで、文化や哲学といった目に見えない大切なことを話したり、お互いを理解し、信頼関係を構築するためのコミュニケーションを行ったりします。

朝活として5~6人で輪になって、ボールを持って、24時間以内にグッドなこと、ニューなことを毎朝共有しあったりもしていますね。

こういうことは経営側から見たら、ロジカルでは説明しにくいことなんです。でも、僕たちは会社はお金だけではないと思っているので、目に見えないことを考え続けるのが文化ですね。

小泉:「最初に無駄を許容しよう」となったのはなぜですか?

塩田:背景は20歳の時に遡ります。僕が大学生の時、人生に悩んでいまして。僕の父親が37歳で亡くなっていて「37歳で人生が終わるんだな」と感じたんです。それで、いろんな人に「人生とはなんですか」と聞いて回ったんですね。

その時に、いろんな経営者の方に人生についてお聞きしまして。経営者に直接電話して、「○○大学の塩田なんだけれども、経営者を出してくれ!」「人生について聞きたいんだ!」と。

半分くらいの人は窓口で「は、お前誰だよ?」と言われるんですけれども(笑)。半分くらいの人は熱意が通って経営者に直接通してくれるんですよね。そうすると、「塩田君、経営とか人生とか、そういうのってなんだと思う?」と聞かれて。

その時に2つ3つ言われたことがあります。会社ってWikipediaとかで調べると「利益を追求する団体」と出てくるんです。でも、「それは違う。利益というのは価値を出してからもらうものなんだよ」と言われました。

世の中の人に笑顔を与えたりワクワクさせたり、価値を与えた時にお金をもらうわけです。

経営者の仕事も、売上とか利益を追うんだけれども、それだけではない。人間関係とか、人とはなにか、信頼関係はなにか。そういうことに時間を投資した会社が、結果的に中長期で偉大になると言われたんですね。

僕はピュアボーイなので、そういうものを信じて経営しようと思っていたのです。

ただ難しいことは、売上がいい時はかっこいいことを言えるんです。売上が悪い時にそれができるかなんだろうなと思ってます。

僕はぎりぎりの時はすごく迷いましたけど、最初に決めたことだから、そこはやり続けてます。やると決めたことをやり切ったから、比較的困難は超えてきてると思っています。