カヤックpresents「正しいサボり方研修」

三好晃一氏(以下、三好):今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。人事の三好です。ゆるゆると始まってしまいましたが、今から始めたいと思います。

今日のテーマは、「正しいサボり方研修<休憩のとり方レクチャー>」です。これから1時間半ぐらいかけて、ブレストと、あと今日来ていただいた西多先生から「休息のとり方」のレクチャーをしていただきたいと思います。

最初にまず、なぜこんなことやろうかと思ったのかという大前提のところを。やなさん(柳澤大輔代表)が1月最初にアップしたブログ(カヤックが考える「健康経営」の話。#面白法人カヤック社長日記 vol.2)の話を1分間ぐらいでしてもらいたいと思います。お願いします。

柳澤大輔氏(以下、柳澤):おつかれさまです。今日は外部の方もいらっしゃいますが、ブログに書いた話について改めてお話したいと思います。

健康な社員が会社を健康にする

(カヤックは)もともとクリエイターが9割の会社なので、職種をそろえて、「この仕事が天職だ」という人を集めれば、それだけで職場環境が楽しくなるし、健康でいられるだろうと思っていたんだけど、必ずしもそういうことでもない。

健康というのが、ここ最近自分のなかでも「だいぶテーマとして大きくなってきたな」と感じていたところ、世の中でも「健康経営」という言葉が言われ始めました。

たとえば会社、つまり法人という、人間が作った人工物に対しての“健康”というのは、財務の話になると思うんです。結局、利益が出ていれば健康的な会社ということになる。

ですが、そういうことじゃなく、「健康経営」と、今、言われているのは、会社のなかにいる「社員の健康」という意味で使われているんだと思います。

外部の方から見れば「会社の健康とはそういうことじゃないよ」という指摘もいろいろあるかもしれません。ただ、会社のなかにいる社員が健康じゃないと、当然、作られている会社も不健康になってしまうから、それにしっかり取り組んでいく、と。そういう決意のブログを書いたというのがここまでの流れです。

3つの軸で「健康経営」を考えていく

そのなかで実は人事部と一緒に、今、3つに分けて考えていて。1つは、まず意識を変えていこうと。健康に対して、しっかり取り組んでいくと意識を変えること。それは、たとえば、今日は西多先生ありがとうございます、こんな風に専門家の立場からお話をいただいて、意識を変えることとか。今、社員自身も自らの健康法をメルマガで紹介しあってくれたりしていて。そういうことをやってます。

2つ目は、具体的にしっかりデータを取って、科学的に健康を促進することです。KPIを立てて、人事部として指標を設けて、健康保険料を下げるとか。いろんな指標ができると思っています。そのデータを基に、ちゃんとやっていこうというのが2つ目。

3つ目は、これを今日ブレストしていただくと思うんですが、面白法人カヤックって「会社自体が面白くありたい」という会社だから、考えた健康施策が外から見ても「面白いよね」って言われるように。

実質的なほうがいいんだけど、もしかしたら、ネタになっちゃうようなものもあるかもしれない。それでも、意識があがることになると思うし。外向きに発信できるものができればいいし、なくてもいいし。そんなこともできればいいなと。

この3つの軸で人事部は考えているということで、今年1年の目標となります。

三好:ありがとうございます。

スタンフォード大学の西多先生

こんな感じで始めていきたいと思います。じゃあ、先生のご紹介を。

西多昌規氏(以下、西多):簡単でいいですよ。

三好:こういう方ですね。スタンフォード大学の精神行動科学の先生になります。今日は、休息と仕事効率のお話をしていただきます。そのあとに質問タイムも設けているので、ぜんぜん関係ないことでも気になることがあればぜひ聞いていただければと思います。それが終わったあと、20、30分みんなでブレストをして、次の施策とかを考えていきたいと思います。では、さっそく。

西多:それでは、皆さん、こんにちは。西多昌規といいます。今日は『「休めない日本人」のための正しいサボり方』。タイトルは本当にこんなのでいいのか、サボることを大々的に正当化していいのか、という問題がありますけれど。

ここ(カヤックオフィス)に来るのは、私は初めてですけれど、やっぱりシリコンバレーの会社とよく雰囲気が似てるなという感じですね。真似して作ってるのかもわかりませんけど(笑)。

パッと見、さらっと10分くらいみなさんのことを見てる限りでは、みなさん若くて健康そうだなと見かけでは思ったんですけれど、果たしてどうかと。というわけで、今日は30、40分くらいでかいつまんでお話ししたいと思います。

話の途中で、主にみなさんの職種向けのストレスチェックみたいなものを発見しましたので、やりたいと思います。妥当性は不明です(笑)。

「風邪でも休めない」日本人の特性

まず、このコマーシャルを見ていただければ。別に私はここの製薬会社の回し者でもなければ、この製薬会社をdisるわけでもないんですけれど。

(有吉弘行出演。「風邪でも、絶対に休めないあなたへ」というコピーのCM)

「風邪でも、絶対休めない」。これ、日本らしいですよね。有吉さんぐらいの方だったら「風邪のときぐらい休みましょうよ」と思うんですが。日本人的な。

これ、外国人だとなかなか理解できないかもしれません。風邪のときは休む。いないなら、いないでなんとかする。もうしょうがないと。

日本人はどうしても無理をして働こうとする。このコマーシャルは最近のものらしいですけど、これはいかにも日本的ですよね。

ほかにも日本だと、私はアメリカ人になったわけではないですけれど、風邪をひくと「自己管理がなってない」と(言われてしまう)。

ただ、風邪とかインフルエンザは、ウイルスと免疫、自分が弱ってるかどうかの兼ね合いですので、自己管理をしていても、どうしようもない場合があるんですね。完全な自己管理は自宅警備員に徹して、冬は外にいっさい出ないと。それは無理ですよね。だから、どうもよくない。

主に今日は「休む」とか「サボる」というお話ですけれど、休みとか休暇について大学や研究機関はいっさいそういう調査をやってないです。だから、民間会社に頼らざるを得ない。

とくに国際比較などは、調査対象のチャンネルがなさすぎるので、どうしても、WorldwideなExpediaとかに。

これを見ると、このように、予想できるありがちな展開ですけれど、日本は「支給された有休」も下のほうであれば、支給された有休の「消化率」も圧倒的に少ないという結果なんです。

医療現場も休みづらい

わたしは以前、大学病院に勤めていました。大学病院は医者がたくさんいて、休みやすい環境だと思うんですけど、会議やら雑務が多くてなかなか休めないんですね。結局、休みは繰り越し繰り越しで。だから、今日、こんなことをえらそうに喋る資格が本当にあるのかと、そういう問題もあるんですけれど。けっこう医療業界も休みづらいんですよね。

たとえば、当直がある。「風邪ひいたから変わってくれ」。なかなか言いづらいですよね。私が研修医の頃は、インフルエンザでもこっそり出勤してたり。38度ぐらい出てたり。今はないですけど、ただ、あとで「インフルエンザだった」っていうやつはいますね。若手で出てきて、全員が感染をするという。笑えないですね。

これはどうにかならんのかと。逆に(消化率が)100パーセントの国というのは、これはこれでかなり問題なんですよね。郵便物が届かないとかってことが、けっこう平気で起きます。この左2つ(スペイン、ブラジル)とか、とても僕は住みたいとは思わないですけれど。

クロネコヤマトや郵便のようにはいかないと。「(荷物が)なくなりました」って言っても、「知りません」って言われます。電話がつながらないことがしょっちゅうある。アメリカでもそうなんですよね。こういう状態があります。

サボるの意味は?

そして「サボる」と。私はこの数日、「サボる」をちょっと研究したんですけれど、wikipediaで(笑)。論文検索しても「サボる」ってないんですね(笑)。

これは「仕事などを怠ける」という意味ではあるんですけど、ご存知の方いるかもしれないですけど、もともとはこういう意味なんです。

「過失に見せかけ機械を破壊する。仕事を停滞させるなどして、経営者に対して損害を与え、事態の解決を促進しようとする労働争議の一種」であると。

すごいですね。こういうのをやられたら、三好さんはたまったものではないですね。

三好:そういうのは困ります(笑)。

西多:こういうことはしないようにしましょうね。条件闘争とか。

フランスのサボタージュ(sabotage)を動詞とした、ちょっと過激な言葉だと。日本ではそれを動詞に活用して「サボる」と。

さらに、「過重労働の割に効率がさっぱり上がらない日本の労働環境をサバイバルするために、有志が独自に編み出した生存戦略」というのはWikipediaには書いてなくて、私が勝手に考えたものです。Wikipediaじゃないですよ(笑)。

これは今後生きていく上でけっこう大事ですよね。過重労働、あるいは過重労働じゃなくても、どうも効率がさっぱり上がらないと。

ここにいるみなさんは20代、30代、40代の方もいるかもしれないですけど。健康に関心は……。今、グルコサミンとか買ってたら、そっちのほうがやばい。たぶん、のちのち効いてきます。

あとやはり、このぐらいの年代の方が、気をつけなきゃいけないのはメンタルですね。体はあと10年、20年後に来ますけれど、若い人の死因で1位なのは自殺なんです。「メンタルを気にする、うまくやっていく」ということは大事です。

「効率よくサボる」というのを取り入れて、考えないと。いかに生産的にサボるとか、生存戦略。こういう考え方もあっていいんじゃないかなと思います。

これを病院研修なんかで言うと、袋叩きにあうような定義ですよね。怖い看護師さんが読んだら、「なに考えてんだ?」みたいな。

今日の主題は3つ

今日の話は主に3つになります。「休むほうが仕事がはかどる科学的根拠」と。

申し遅れましたが、私のもともとの職業は精神科の医者なんです。サブで睡眠研究というのをやっていて、それを今、少し余裕をいただいて、アメリカで睡眠の研究をしてるんです。裏の顔でビジネス・商売をやっている。そういう人です。

エビデンスとして「レベルが少しあるかな」というものを、今日は簡単にご紹介します。

2つ目が、「疲労・ストレスの都市伝説」。あとで話しますけれど、疲れると乳酸が溜まると。乳酸というと、ヨーグルトのような酸っぱいものが筋肉に溜まってきて、いかにもだるくなりそうなイメージを抱かせるんですけど、実はそうでもなさそうだとか。

そして、最後にかなり不安ながらも、どうしたら休めるかという本当に一般論的なアウトラインだけを示すと。

「休む」について取材を受けても、「どうやったら連休が取れるんですか?」とか、「上司にどう言ったらいいの?」とか、いろいろ言われるんですけれど、そんな方法が簡単にあったら、なかなか困らないです。

大枠を知っておいて、そして、試行錯誤でなんとかサボって、自分の時間とか、そういうのを編み出していく1つのきっかけになればと思います。

休んでいる時にこそ脳は働いている

左上は、いわゆるぼーっとして太陽浴びて原っぱにいる。あんまりなにも考えてない状態です。こちら(右下)はいわゆるお仕事と。

一見すると、こちら側(仕事)のほうが、脳のエネルギー消費量が多いように見えますよね。脳研究だと、計算させれば脳は活動するとか、モノをパッと見せれば脳が反応するとか、そういう研究が主体だったんです。脳のあちこちが活動するだとか、変な脳波が出るとか。

ところが、それが、最近はむしろ活動の低下なんだと。ぼーっとしているときに活動している脳「Defeault Mode Network」が最近の概念なんです。これは聞いたことあるかもしれませんが。

なににもしてないときに活動している脳というが、実に脳にはこれだけ。これは脳をこちら(頭頂部)からみたやつです。これは前頭葉ですね。これが前のほうですね。少し後ろの脳幹部分とかあって、主には前頭葉なんです。

ここ(黄色部分)が、ぼーっとしているときでも実は活動していると。逆に言えば、なにか仕事をしたり計算したり、用事をしていたりメール打ったりしているときはそっちのしょぼい活動に取られて、この活動が妨害(Disturb)されてると。そういう見方もできるんですね。

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