サイボウズ青野氏が10年ぶりにグループウェアの説明を披露

大槻幸夫氏(以下、大槻):みなさん、こんにちは。

青野慶久氏(以下、青野):こんにちは!

大槻:こちらのセッションでは「サイボウズ社長青野直伝! グループウェアを活用して公明正大と成果を両立させる経営術」ということで、なんとまぁ社長直々にグループウェアの製品説明をしてもらおうという。

青野:ねぇ。ふだんどうやって使っているのか。恥ずかしい。いかに仕事してないかがバレるみたいな。

大槻:グループウェアの説明は何年ぶりですか?(笑)。

青野:いや、してないしてない。10年はしてないね。

大槻:そうですよね。今日は経営者の視点というところからお話を伺えればと思います。ご紹介が遅れましたが、登壇しているのが社長の青野と、私はコーポレートブランディング部の大槻です。

この2人で今日はセッションを進めてまいりたいのですが、ちょっとしたアクシデントがありまして(笑)。このセッションは青野さんにプレゼンいただこうと思ったんですが、声どうしたんですか?(笑)。

青野:なんかねぇ、昨日の午後くらいから……聞こえますか? 大丈夫ですか? 

大槻:朝よりひどくなってますね。

青野:今日はいっぱいしゃべったから。声を振り絞ってがんばっていきますけれども、聞きにくかったらすみません。

サイボウズのPRで多忙を極める毎日 一方社員からは「社長って仕事してるの?」という声

大槻:こんな感じでお届けしていきます。さっそくですけれども、最近ある日の青野さんの1日のTwitterをちょっと見てみたんですが、めちゃくちゃつぶやいてるなと。これ、1日ですよ?

青野:やばい。仕事しないでTwitterやってる。

大槻:「仕事してるんですか?」っていうツッコミが社員からも来て。もちろんTwitterだけではなくて、最近はみなさんもご存じの選択的夫婦別姓の裁判を始められたりとか。

青野:裁判をね。

大槻:それに伴ってサイボウズのPRもありますし、別姓の件もあってテレビですね。『クローズアップ現代』とか、裁判で記者発表したりとか、あるいは全国に講演会へ行かれてますから、(この前は)沖縄にも行って。「サイボウズの青野社長が沖縄に来る!」みたいな。すごいですね。こんな感じでやられていると、社員から素朴に「仕事してるんですか?」と(笑)。

青野:ひどくない? これ。疑われてる。

大槻:という声が上がってきてですね。それを思った新人がサイボウズ式で「青野さん、仕事してるんですか?」という記事を実際に作りました。これを作ったのが入社何年目ですかね? 3、4年目ですかね。(記事を担当した)吉原くんがある日青野さんのところに行って取材したと思うんですけど。

青野:吉原くん。そうそうそう。

大槻:これをもとに今日はお話していければと思うんですが。「何をしてるんですか?」(笑)。

青野:こんなの社長に聞く!?(笑)。

大槻:あはは(笑)。

青野:社長って役職名じゃないですか。役職名が付いてたほうがやりやすい仕事っていうのがあるんですね。例えばなにか社内で決め事を決めます。社長が決めたんだから、それは全体でやらないといけないよねみたいな。こんな感じの意思決定。

今度は社外向けに「サイボウズとしてはどう思ってるんですか?」って言われたときに、まあ社長という役職が付いてたら「あ、サイボウズはこういう方針なんだな」って聞いてもらえる。社内外の広報みたいなね。そんな感じかなと思いますね。あとは人任せ(笑)。

大槻:あとは人任せ(笑)。この7対3がどれくらいかっていうところですけどね(笑)。

青野氏の仕事に対する基本方針は「公開」と「ダイレクト」

青野:私の仕事の基本方針は、公開しようということですね。わかりやすいのは、これ、私のスケジュールです。全員が見れます。私がどうしてもこれだけは見せたくないというようなスケジュールがあったときだけ隠しますけど、この1年間で1個も思い出せないくらい、スケジュールは基本的にはオープンになっています。

もっと言うとね、登録するのも僕じゃないんですよ。メンバーが「青野さん、ここ空いてるやんけ、時間くれ」みたいなね。登録してくれたりするので、私はそれに沿って働いていくということになります。

大槻:だいたい空いてたら入れますよね、社員(笑)。これ見たら隙間がない(笑)。

青野:こういうところにねじ込んでくるのよ(笑)。いつトイレ行くねんっていう話ですよ。

大槻:だいたい被ってますからね。

青野:これね(笑)。本当調整してからにしてよっていうね。こんな感じですよね。だから、まあまあ仕事はそれなりには詰まってますよね。

もう1個あるのは、やっぱりダイレクトにっていうのが(大切にしている考え方)。社長とかね、秘書を置いたりする人が多いですよね。私には秘書っていう概念がないです。「青野の秘書は?」って言われると、「いない」と。

ただ言い換えると、私にとっては全員秘書です。例えば、私に依頼事とかが回ってくるわけですよ。今日でも名刺交換しましてね、「青野さん、kintoneおもしろそうなので、ちょっと営業を紹介してくれませんか?」とかって言われるわけですよ。それを私は掲示板のスレッドにペタッと貼りまして、「営業部よ、あとよろしく!」って(笑)。

大槻:めちゃくちゃ無茶ぶりですね。これ(笑)。

青野:(スライドを指して)無茶ぶりスレッド。

大槻:無茶ぶりって書いてある(笑)。

青野:なんか来るたびに私はペタペタ貼って。これはメールじゃないんですね。大事なのはメールじゃないっていうことです。メールだったら、私とその人しか知らないわけですけど、このスレッドに貼ることによって、全社員が見ることができる。私がもし(仕事の)振り先を間違えてたら、ほかの人につないでくれるっていうね。

大槻:確かに確かに。現場の人からしてもこれはありがたくて、なんでこの仕事を振ってきたんだろうっていうのが途中で抜けないんですよね。経緯がわかるので。

青野:あ~なるほど。経緯が全部見えるからね。

大槻:気持ちよく仕事ができます。

青野:そういう意味では仕事履歴そのものですよね。

大槻:そうですね。確かに。

青野:僕の仕事も全部シェアしちゃってるという、そんなイメージです。

サイボウズの企業理念を守り通すことへのこだわり

大槻:なるほど。こうしてると、吉原くんから「社内無職に?」というよくわからないコメントがつくんですけど(笑)。じゃあ一番青野さんが力を入れてやっていることは何になってくるのかなっていうところなんですよね。

青野:そうですよね。僕もこれを吉原さんに言われたときに、何が一番自分のこだわりかなと思って。(スライドを指して)やっぱりこれですね。サイボウズの価値観、もっと言うと企業理念、これを守り通す。

どんなふうに守るのか、何を守るのかと言うとですね。シンプルに言うと、「チームワークあふれる社会をみんなで創ろうね」「チームワークあふれる会社にしようね」と。それを言い続けてやり続けて、やってない人がいたら「おい、お前ちょっとやってよ」って言うと。

もうちょっと細かく言うとこの4つ。みんなこの理念に共感してね、こっちに向いて活動しようね、いろんな人がいてもいいよね。嘘つかない、隠さないでいこうね。1人ひとり自立して議論しようねと。こんな感じ。この4つのパラメータですよね。これを守っていく。これが僕のメインの仕事かなと思いますね。

大槻:なるほど。この中で今日のテーマである「公明正大」をちょっと深掘りしていこうかと思うんですが。

「正しい」と大きな声で言えるか? 多様な個性をまとめあげる「公明正大」という言葉

青野:これが僕らで言う公明正大の定義ですよね。公の明るいところに出たとしても正しいって大きな声で言える。非常に定性的であいまいです。それは公明正大なのかってよく社内でも議論になったりしますけれども。胸に手を当てて聞いてみてください、それは正しいって大声で言えますか? と。そんな感じね。

大槻:だいぶ社員の中でもこの言葉が出ますよね。最近は当たり前のように。

青野:出るねぇ。なんかあるたびにね。「公明正大かな?」と出ると。これをなんとか守りたい。なんでかと言うと、僕たちは多様な個性を大事にしたいわけですよ。そうするとある意味働く時間もバラバラだし、場所もバラバラ。普段顔を見ない人と一緒にやってる。それこそ大槻さんの部署とかすごいよね?

大槻:そうですね。リモートワークが当たり前なので、1週間のうちに会うことがない人も。最近サイボウズはフリーアドレスも入れましたから、違う階にいたりして。集中席とかにいたら出社してても会わないっていうこともありますし。

青野:そうするとどんどん仕事をオープンにしてもらわないとね。

大槻:そうですね。わかんないですよね。

青野:わかんないよね。大槻さんとか、メンバーもね、オープンにしてくれないとわかんない。ちゃんとそれを「大事だよ」っていろんなところで言い続ける。どうしても自分が失敗したりしたら「隠したいなぁ」みたいな気持ちも湧いてくると思うんですけども。そういうときこそ思い切って共有しようねみたいなね。

(スライドを指して)あ、これ最近あったやつやね(笑)。

大槻:そうですね。

青野:これとかもすごかったよね。

大槻:見えますかね?

青野:ラウンジってみんなの憩いの場みたいなところで、ガラスにガッて傷がついてたんですよね。入り口のガラスのドアのところに傷がついててね。誰がやったか出てこなかったんですよ。僕がやりましたって言ってくれたら話は終わってたんですけどね。それが出てこなかったから、「おい、ちょっとどうだ?」みたいな議論がありました。

大槻:これを「kintone」のピープルでつぶやいていらっしゃって。

青野:そうですね。

公明正大が社内に根付いているかどうかは、“寝坊の報告”でわかる

大槻:今までの話も青野さんががんばってるよっていうことだったかと思うんですけれども。聞いてるみなさんの中には、まあ社長はそうでしょうと。そうおっしゃるでしょうと。本当に社内に根付いてるんですか? っていう疑問があるかなぁと思うんですけれども。

青野:そらそうよね。

大槻:青野さんの中でどうですか?

青野:これわかりやすいやつよね。これも本当によく出てくるんですけど。

大槻:寝坊の報告。

青野:サイボウズでは公明正大の1つのかたちとしてね、寝坊のとき大事よねっていう言い方をしててね。寝坊したらやっぱり隠したいわけですよ。明らかにアホだから。でも寝坊したら「寝坊した」ってちゃんと言おうねと。

隠すのはダメなことだけど、寝坊したって言うことはぜんぜんダメなことじゃない。アホだけども嘘はついてないからいいよみたいな。そうすると毎朝グループウェア上に寝坊報告がブワッと上がってくる。

大槻:あはは(笑)。別に電車が遅れたとか言ってもいいのに、寝坊しましたってちゃんと書いている。

青野:(スライドを指して)「ちょっと寝坊しました」。

大槻:程度とかいらない(笑)。

青野:(スライドを指して)「がっつり寝坊しました」(笑)。なんだその報告みたいな。

大槻:これすごいですよね。「1時間くらい……」と時間まで入って、対策として「あまり疲れが溜まらないように工夫したいです」(笑)。これをみんなが見える場所に書いている。

青野:そうそう。検索したら普通に出てくるね。みんなこんな感じですね。

大槻:これがすごくおもしろいなと思うんですよね。先ほどの経営とは? 公明正大とは? という壮大なテーマから急に具体的に寝坊の報告っていう。この感じをぜひ味わっていただければと思うんですけれども(笑)。

青野:サイボウズの中でこういうことよくあるよね。現場ではこういうことがいっぱいあるね。

大槻:こういうところで響いているかどうかは見えてくるっていうことですね。

青野:逆にこういうところで出てこなくなったら怖いよね。

大槻:たぶん社員からしたら公明正大というキラキラワードがあって、でも寝坊したことをみんなが嘘ついていたら、なんだ違うじゃんって、日々ちょっとずつズレていっちゃうでしょうね。

青野:そうだね。モヤモヤが大きくなるね。結局浸透してないっていうことになってくるよね。本当ですよね。

「僕のアホさがよく出るよね」 経営会議の議事録は全社に公開する理由

青野:(スライドを指して)これなんかもおもしろいよね。これは私が毎週主催している経営の会議なんですけども。議事録が公開されます。議事録を共有するのはよくあるのかもしれないですけど、サイボウズの議事録がおもしろいのは、誰がどのタイミングで何を言ったかまで(笑)。

大槻:そうですね。これ怖いですよね~(笑)。

青野:全部議事録にあげられる。誤字脱字は多少目を瞑って、その日のうちにあげちゃう。

大槻:うちの部長発言してないじゃんみたいなのも全部丸見えになっちゃう。

青野:あ~そっかそっか! 大槻さんとかはあれだよね。

大槻:マーケのところはちゃんと絡んでないと。

青野:「大槻さん、そこ言っといてよ!」みたいな。みんな見てるみたいなね。

大槻:出席者はマネージャーしかいないんですけど、ある意味みんな社員が見てるっていう感覚。

青野:最近これ、リモートでビデオ会議の参加にもなりましたからね。場合によってはその場で見てたりしますよね。すごいよね。

大槻:誰でも参加できる。

青野:時間が合わない人もこうやって議事録見てね。

大槻:これなんかもすごいですよね。今まさにやっている中期事業戦略ですね。ここから3年くらいのサイボウズというのを一生懸命みんなで考えてるんですけど。これって本当に経営の課題であって、きっと大きな会社であれば普通の社員の方々には、決まってから下りてくるみたいな感じですよね。

それがディスカッションの途中から、青野さんもいろんなマネージャーから突っ込まれながらですね(笑)。そうだね~って言いながらやっているところも全部丸見えになっていると。

青野:そうよね。けっこうこの中期の戦略ってなると、僕のアホさがよく出るよね。

大槻:あはは(笑)。

青野:言って、突っ込まれて、言って、突っ込まれてみたいな(笑)。

大槻:これがなんで大事なのかというところですよね。

青野:そうですね。これですね。結局私は中期の戦略の意思決定するのが仕事なわけですけど、やっぱり精度を上げたいわけですよ。もっと言うと、みんなが納得してそれをやってほしいわけですよ。そのためにはどんどんオープンにしといたほうがいいと。それが思うところなんです。