2人のリーダシップのかたち
仲山進也氏(以下、仲山):今日のテーマは「チーム」ということなんですけど、チームというと社内のイメージが強いと思うんですが、働き方に共通点がある2人という流れで言うと、これからの働き方って、社内の人だけじゃなくて、社外のいろんな人と集まってプロジェクト的にチームを作るというのがどんどん増えていくような気がするので、そこまで含めた感じで話せればと思います。
伊藤羊一氏(以下、伊藤):そうですね。2人のスタイルの違いということだけちょっと言っておきたいんですけど。仲山さんは「ニヤニヤしながら見守る引っ張らないリーダーシップ」という。
仲山:僕のほうがどちらかというとマイノリティーなスタイルなので、羊一さんからのほうがわかりやすいかと思いますが。キングダム本のAmazonのレビューを昨日眺めてたんですけど、「伊藤さんは人の心に火をつけられる数少ない人である」というレビューを書いてる方がいらっしゃいましたね。
伊藤:そうなんですね。僕はそのレビューとか読んだことないんですよ。なんか嫌なことが書かれてたら恥ずかしいじゃないですか。だから読んだことないんです。そうなんですね。
仲山:いいレビューいっぱいありました。
伊藤:人の心に火をつけるリーダシップかはさておき、でも僕も、リーダーシップというときに、会社の中で「これやろうぜ!」とかってあまり言ったりしないです。ビジョンは示しますけど、あまり「一緒にやろうぜ!」ということは言わない感じなんですが、とはいえ、熱く語るってことはしますね。
だから時間あれば今日も、なんでこういうところにいっぱい僕はよく出て……ほぼ毎日出てるんですけど、なんで出てるかというのは語りたいと思いますが。まあ、語ることは多いですね。
引っ張るリーダーから引っ張らないリーダーへ
伊藤:引っ張るリーダシップかどうかというのは、昔は前職にいた頃はもう「ついてこいよ!」みたいな感じでやってたんですけれども、それをやっていたら、みんな疲れちゃったので。
仲山:疲れちゃった?
伊藤:はい。なんか「もう無理ですよ」、「いや、それでもやるんだ!」みたいな。「夢があるじゃないか。俺たちには!」って、阿部(寛)ちゃんの真似をしながらやってる感じ、『下町ロケット』の佃航平みたいな感じでやってたんです。
でもあれは、オーナー企業だからそれが通じるわけで、やっぱりなんか普通のオーナーじゃない人が「技術ってもんがあるじゃないか!」とか言っても「いや、それはそうかもしれないけど、会社はあんたのおもちゃじゃないんだ」って、そんな感じもあったんです。
最近は、引っ張らない。引っ張らないで、ただなんかこう、あれやこれや手を尽くして自然とみんなが動くようなかたちを。エネルギーをかけて、知らずのうちにやっぱり「自分の頭で考える」というチームづくりをしてますね。だからちょっと(仲山さんに)近づいているのかもしれないです。
仲山:なるほど。
伊藤:だから、僕はテーマが「自立」なんですよ。自立なので「俺がリーダーとして、熱く行こうぜ!」「みんなついてこい!」ということはぜんぜんやらなくて、みんな一人ひとりが自分自身の人生に目覚めて「がんばろう」と思って、そのがんばるエネルギーはもう「どうせチームなんだからここに一緒になったほうがいいよね」という、そんな感じになってきてますね。
仲山:ああ、たしかに近いですね。
「考えさせる」リーダーと「考えさせられる」人たち
仲山:僕のことをよく知ってくれている店長さんが、別の店長さんに僕のことを紹介するときに「この人はなにも教えてくれないよ」って言われることが多くて(笑)。
伊藤:なるほど。
仲山:(スライドを指して)本当にここに書いてあるとおり「この人ニヤニヤしながら見てるだけで、なんにも教えてくれないよ」って言いながら、「でもこの講座いいよ」って勧めてくれたりするんです(笑)。
伊藤:それは、「自分たちで気づく」というのを目指してる?
仲山:そうですね。気づきやすい環境をつくるというか……。よく「部下が自分で動けるように、考えさせるようにしてます」という表現をするじゃないですか。その「考えさせる」というところが僕はちょっと引っかかるんですよね。
こっち側から「考えさせてる」わけですよね。あっち側からすると「考えさせられてる」わけで、それって「考えてる」のとはちょっと違うよな、という。
伊藤:だから構図としてはグイって(引っ張って)やるのとあんまり変わらない。
仲山:「考えろ」という指示に従って考えさせられてるだけみたいな関係性な気がしていて。こっち側も考えさせているという、結局はコントロールを手放してないという感じがするんですよね。
そういう指示・命令型じゃない、メンバーみんなが自分たちで考えて動けるようなかたちのチームを僕は理想としています。なので、「考えさせる」ってリーダーが無意識に言っている、その「使役形多用型」の口癖が、逆にみんなが自由に動きにくい状態を確固たるものにしていると思っています。
あとは、こういうセミナーみたいなものに参加された方が「考えさせられました」ってFacebookとかに書いてあるのを見るんですけど、「考えさせられた」もなんか引っかかるワードだと思って(笑)。
伊藤:今日はみなさん、なにかFacebookにあげるときは「考えさせられた」という表現はダメですね(笑)。
仲山:たぶん、ふだんから自分で考える習慣がある人は、「考えさせられた」という表現よりは、ニュアンスとしては「考えるきっかけをもらえてよかった」という感じだと思うんですよ。
伊藤:めんどうくさいですね、仲山さん(笑)。
(会場笑)
仲山:めんどうくさくてスミマセン(笑)。僕、そういうのけっこう気になるんですよね。
気づかせるより、気付きやすい環境を作る
仲山:だから、その「考えさせる」「させられた」って言ってる人がどういうニュアンスで言っているのかは、「この人どういう人なのかな?」という全体を見て、「この人やばいパターンのほうかな?」とか「この人は大丈夫なほうだ」とか、そういうところを見ますね。
伊藤:要するに「自分の頭で全部、自分の人生をコントロールせい」ということですね。
仲山:そうですね。
伊藤:一言で言えばね。
仲山:そう。「支配したい」とか「支配されたほうが楽だ」とか、そういうオーラをまとってる人は、やばいパターンだ思っています。そういう人をニヤニヤして見守りながら、「さっき使役形になってましたよね」「言われたことやったほうが楽だと思ったでしょ?」みたいなことをちょこっとフィードバックというか、棒でつんつんするみたいな係です。
伊藤:それはね、一人ひとりで相対すると、当然そうなってくれたほうがよくて「気づけよ」と。こっちが気づかせるんじゃなくて、一人ひとりが自分で自立するということを目指すってすごくわかりやすいんですけど、それをチームでやるというのは、ちょっとよくわからなかったりするんですよね。
チームのみんなが一人ひとり自立して、自分で思うがままに生きるけれども、なにかを共有しているっていう状態を目指すという感じなんですか?