犬が濡れた体をブルブル震わせる理由

ハンク・グリーン氏: 犬が体を乾かすために全身をブルブルと震わせる、スローモーション動画を嫌いない人はいないですよね? 犬の肌が上下に動き、近くにいる人に水しぶきを浴びせてしまう、あの動きです。

しかし、みなさんはなぜ犬が体を震わせる動きをするのか、科学的な根拠を考えたことはありますか?

動物の毛皮は、乾いている時にしか動物の体に触れる空気の層を捕えて断熱の役割をはたすことができません。よって、体を早く乾かすのは生死に関わる問題なのです。

寒い天気の中濡れた状態が続くと感情の減退、または気分の沈滞を引き起こしてしまうのです。

そして進化の過程で、野生的な震えから完璧に体を乾かすメソッドに磨きをかけて行ったのです。

2012年に発表された論文によると、高速ビデオカメラを用いてスローモーション映像を見たところ、アトランタ動物園の16種類の哺乳類は体を乾かすために体を震わせていることがわかりました。ネズミ、ヤギ、トラ、そしてクマ、それから5つの犬種においてもこの体を震わせる動きが見られました。

映像を分析し、それぞれの動物を比較するため、研究者たちは彼らの肌の1秒あたりの振動数を数えました。どれくらい水滴を飛ばせるのかを研究するため、彼らはロボット犬まで作成しました。

白い尻尾をもつ鹿の毛皮を持ったロボットが、ぐるぐる回るパネルの上に糊付けされているという状況を想像してください。科学者たちはロボットを濡れさせ、異なるスピードでパネルを回転させて研究をしていくというわけです。本物の動物が行う行為より、かわいさは半減しますね。

研究では、動物たちは使用するエネルギーとどれくらい乾くかのバランスを取るため、それぞれ特定の頻度で体を震わせていることがわかりました。

力というのは、質量と加速度によって決まります。もしあなたの質量が少ない場合、ある事柄に十分な力を作り出すためにはより多くの加速度が必要になります。したがって、小さな動物は体を乾かすためにはより早く体を動かす必要があるのです。

ネズミは体を乾かすために1秒に27回体を震わせるのに比べ、ジャイアントパンダといった大きな動物は1秒に4、5回体を動かすだけで済みます。

また、肌が上下に動くことにも役割があります。素早く肌を動かすことで水をより早くはじき出すことができます。

科学者たちはこのプロジェクトによって、濡れている犬が体を震わせる行為を理解することは、精密機器から水を取り除くのにどれくらいかかるのかを特定し、そしてより高性能のドライヤーや洗浄機器の作製に役立つだろうと考えています。

ですが、なぜ人間は犬のように体を震わせる行為をしないのでしょうか?

生物学者たちは、常に自分を乾燥している状態に保つ毛皮の層を持たなかったので、自分の体を自分で乾かすテクニックが進化してこなかったのだと言っています。私たちの肌は毛皮ほど水分をとらえないので、その水分を蒸発させるための体温が発達したのですね。他に毛皮のないまたは少ない哺乳類動物も体を震わせることはしません。

研究者たちは毛の少ないモルモットを観察しましたが、犬たちのように震わせることはなくただ単に寒さのために震えていただけでした。ラッキーなことに、私たちには毛皮がありませんが、タオルのその穴埋めをできますね。