接着剤のにおいは危険?

ハンク・グリーン氏:1990年、空っぽのプールの中で2人の従業員が意識不明の状態で発見されました。急いで病院に搬送されたので無事助かりましたが、なぜプールの中にいてそこで何をしていたかの記憶はありませんでした。しばらく話すこともできませんでした。

調査員の話では、プール底にタイルを貼り付けるために使っていた接着剤の臭いが、プール底の穴から漏れ出ていたことが原因ということでした。従業員はもとより、知らず知らずのうちに接着剤の臭においをしばらく吸い込んでしまっていたということです。

接着剤やペンキの注意書きに「蒸気を吸わないでください」と書かれているのを見たことがあるでしょう。意図的に蒸気を吸い込むことは、吸入剤乱用とも言われていますが、非常に危険な行為です。危険であり意図的に吸い込まないための注意書きなのですが、ハイになるために吸い込むのはとても馬鹿げています。

吸い込むと人を少しの間だけ気持ちよくさせますがその反面、呼吸困難や窒息、発作に昏睡死を引き起こす危険性があります。問題の原因となるのは、トルエンという化合物です。トルエンは炭素と水素からできている炭化水素であり、溶媒として接着剤などに使われています。

トルエンは短期間のうちに、身体の中枢神経に影響を及ぼします。トルエンを吸い込むとまず、ドーパミンの生成を促し強い高揚感をもたらします。ドーパミンは快楽や報酬系に関与する神経伝達物質です。しかしそれはまた興奮して好戦的になったり、無気力や吐き気、その他愉快な気持ちとは言えない症状がやって来ます。

そしてもちろん、中毒性もあります。吸い込みすぎると、発作や死といった深刻な症状になってしまうこともあります。しかしたとえ少量であっても、トルエンは吸引を積み重ねることによって健康を害する可能性が非常に高いです。

先ほど吸入剤乱用は非常に危険な行為と話したかもしれませんが、ここでもう一度言及しておいたほうがいいでしょう。何より吸入剤乱用が慢性化すると、決して脳やその他の身体の部分によろしくないであることが容易に想像することができると思いますが、神経を取り巻く神経鞘という膜を傷つけることもあります。

あらゆる認知的問題や認知症にも発展しかねません。慢性的な吸入剤乱用はとくに、心臓・肺・肝臓・腎臓に疾患をもたらすでしょう。だからこそ故意に接着剤を嗅いだりするとそれが常習化し、徐々に全臓器を蝕み、場合によっては死を招くことがあるので危険なわけです。

何度も言いますが、ハイになるために吸入剤乱用を利用することは馬鹿げています。これで接着剤の注意書きの重要性が理解いただけたでしょうか。