37億年以上昔の化石が発見

ハンク・グリーン氏:進化生物学の分野では数ヶ月おきに興奮する発見があります。研究者たちは気の遠くなるほど昔の生物の証拠を発見し続けているのです。

例えば、今年の3月にはケベック州で、古代の熱水噴出孔の跡から37億年から42億8千万年前の小さな化石が見つかりました。これまでに見つかった化石の中で最も古いものです。これまでは10億年前程度と考えられてきました。

途方もない過去の生物の決定的な証拠を今も探し続けていますが、先日、デンマークのグループがそれらしきものを発見したのです。一部分がグリーンランドの西側、イスア・グリーンストン・ベルトと呼ばれる、岩が帯状に形成された場所に埋まっていました。

1970年、地質学者が地球上で最も古い37億年前のこのベルト地帯を見つけました。研究者たちはこのベルト地帯から太古の生命の痕跡を見つけようと、長年にわたり調査を続けてきました。

2016年にはストロマトライトと呼ばれる、細菌が重なって沈殿した層のとても古い化石の跡が見つかりました。

波打った形や模様は、他のストロマトライトとよく似ています。ですが、細菌という有機物によってできたことを示す十分な証拠はありません。

しかし研究者たちはその証拠を、少なくともさらなる手がかりを見つけたのです。

ネイチャー誌に投稿された論文の著者は「振動スペクトラム分析」という手法を使って、グリーンランドの岩石中にある小さな空洞の分布を調べました。

とくに高温高圧で岩石中にミネラルが閉じ込められたガーネット(ざくろ石)に注目しました。ガーネットの内部には有機物が残された小さな空洞があります。

そこに赤外線を照射すると、すべての分子や原子は固有の周波数で振動し始めます。

この周波数から何の原子がそれぞれ結合しあっているか、炭素が窒素、酸素、リンと結合しているかがわかります。そして、これは生命の可能性を示しているのです。

岩石の調査はさらに続ける必要がありますが、こうした化石はこれまで見つかった中でも最も太古の生命の証拠になり得ます。

二酸化炭素濃度の上昇を防ぐ科学

地球で最古の生命を調査している一方で、生物が生きていく現在の状況に注目する研究者もいます。カリフォルニア工科大学の研究者チームは、通常であれば数千年かかるような海中における化学反応のプロセスを加速化させる方法を見つけました。この技術は海の酸性化との戦いに一役買います。

大気中の二酸化炭素濃度は年々上昇し、気候変動の原因の最たるものになっています。ですが、二酸化炭素濃度が最も高いのは周りの空気中ではなく、海中なのです。

二酸化炭素は可溶性なので、水中に簡単に溶け込みます。しかも大気中の二酸化炭素量が増加すると水中にも溶け込みやすくなります。海に溶け込むと、二酸化炭素は水分子と反応して、炭素イオンと水素イオンに分かれた炭酸になります。

そしてここに複雑な化学反応によるバランスが潜んでいます。

炭素イオンと水素イオンは、酸性がいくぶん弱い重炭酸塩を作ります。これによって水が酸性化する危険は緩和されます。ですが、重炭酸塩はとても不安定なため、元の炭素と水素に分かれてしまいます。

pH濃度を一定にするこのはたらきを重炭酸緩衝といい、同じ現象が血中でも起こって体の調子を整えています。

現在では大気中の二酸化炭素濃度が上昇し、海中へ溶け込む量も増えているので、この重炭酸緩衝が不安定になっておりこうした化学バランスに頼って生きている生物にとっては大きな問題です。

ですが、この新しい発見によって、これまで科学者が見逃してきた解決方法が見つかるかもしれないのです。

海底には炭酸カルシウムの塊であるサンゴやプランクトンの死骸が膨大に眠っています。数千年にわたってこうした死骸は海中に炭酸イオンを放出し、重炭酸緩衝を起こしてきました。しかし今では海の酸性化が進みすぎているため、自然の中和反応のスピードではまったく追いつかなくなっています。

体内には炭酸脱水酵素という、重炭酸緩衝を触媒させる酵素があるので、数千年にわたって反応を起こす必要はありませんし、そもそもできません。そこでカリフォルニア工科大学の研究者チームは、この酵素を使って海底でも同じ反応を起こせるのではないかと考えたのです。

研究室で幾度も実験が行われたあと、炭酸カルシウムが分解される緩慢な反応を500倍に早められたのです。

酸性化を止める魔法の杖ではありませんが、海の制酸薬を作るための最初の一歩となる研究です。重炭酸緩衝の効果を高められれば、気候変動の大きな原因と戦えるようになるでしょう。