『けいおん!』にキョンはいない

山田玲司氏(以下、山田):もう「こんなだったんだ」って思いました。だから、今回、角川春樹はともかくね、「まどマギはやるの?」みたいな感じになってるんじゃないですか。

久世孝臣氏(以下、久世):おおっと。

乙君氏(以下、乙君):まどマギはやるんですよね?

山田:ドキドキするよ。だから、何回も俺は観なきゃ。春樹さん(笑)。

久世:バランスをとるためにね。

乙君:バランスをとるために、角川春樹を見るの?(笑)。

久世:それは大事かも。

山田:本当さ、坂本龍一を見て、吉田拓郎を見て、「日本人のオスってこれだけカッコよかったんだよな」って。

久世:という、きちんと確固たる軸を持ってしながら……。

山田:0年代のアニメを見ないと、もたねえ。だから、90年代はついていけるんだよ。ヒデのやつも、押井(守)もついていけるんだよ。まだ。葛藤がリアルなんだよ。でも、俺はキョンから離れるのかわかんないけど、キョンはまだいるんだよ。教室に。でもさ、『けいおん!』にはキョンはいないのよ。もう。

乙君:そうなの?

山田:そう。キョンも居場所を失うんだなと思って。だから、どんどん男の居場所、……ライドする相手がいなくなっていくんだよ。という流れがずっと来てたんだなということが、最近やっとわかりました(笑)。「それで今、みんなカバンちゃんに乗ってるんだな」っていう。

久世:確かになんにもないですね。そういう意味では中性というか。

山田:カバンちゃんが、男だか女だかわかんないというのがすごく象徴的で。もう男ってなった時点で「もういいっすわ」みたいな。

久世:そこまでいっちゃってるんだ。

「見ている人にとって必要なものだけアニメ」の始まり

山田:うん。だから「俺のキョンに失礼な!」って思う人はあまりいないと思うんだよ。「キョンがヒーローだった」っていうやつもあまりいないんじゃないかなと思うんだよ。

乙君:どうなの?

山田:(コメントにて「人間すらいなくなった」)そう、人間すらいなくなって、ジャパリパークになったので。だから、「ライドできるキャラの喪失」ってまさにそのとおりで、なんかさみしいなあっていう。

本当に、例えばある時期まではね、『じゃりン子チエ』みたいなさ、近所のおっさんがアニメに出てたの。キャラクターの1人として。お母さんとか隣のおばさんみたいなのもいた時代があった。

久世:必ずいましたよね。昔は。

山田:のび太の頃には、お母さんもお父さんもいるし、(『サザエさん』の)伊佐坂先生みたいのもいるわけだよ。

久世:近所のおっさんね。

山田:それくらいさ、自分の。

乙君:ウキエさんがいてね。

山田:そう。自分の……。

久世:そこ広げるんや?(笑)。

山田:ええわ。

乙君:伊佐坂先家の闇があるから。

山田:伊佐坂家の闇はいいわ(笑)。

乙君:いいっすか(笑)。

山田:そんなふうにして、世界からおばさんが消えましたみたいな。おじさんも消えましたみたいな。そして、いろんなものが消えていって、先生も消えていって。『けいおん!』だとさ、女の先生だけ残ってるのね。

乙君:へえ。

山田:だから、そういうノイズカット、世界に必要じゃないものはアニメには出ませんということになっていって。「見ている人にとって必要なものだけアニメ」になっていく始まりを感じるんだよ。ハルヒにすごく。

乙君:なるほどねえ。そうか。そういうことか。

久世:おもしろいなぁ。

山田:ぎり男子がいるんだよ。なんかパラパラ。

涼宮ハルヒに見る、自意識ライジング

あれ、しみちゃん見てた?

しみちゃん氏(以下、しみちゃん):いえ、僕も見てないです(笑)。

山田:めっちゃ非属の才能の話なのね。だから、クラスにいて、完全に浮いてしまっている女の子の話。かわいいんだけど、「あいつに近寄るな」って、めっちゃチバレイに似てるんだよ。ハルヒって。うん。チバレイみたい。ハルヒって。

久世:そんな。へえ。

山田:だから、すごく自信にあふれてて、人の考えを曲げなくて、絶対的なんだけど、みんなからものすごく浮いててという。だから自意識ライジング?

久世:自意識ライジング(笑)。

しみちゃん:(笑)。

乙君:自意識ライジング?

山田:自意識ライジングだべ。おそ松さん第2期始めろっていう話の流れですよ。これ。

久世:これ、ちなみにあれですか。観たのは1話だけですか?

山田:なにが? まだ1話しかやっていないんだよ。

久世:すごいね。1話で。やっぱり。

乙君:1話でそんなにしゃべれるかねえ。おもしろいなあ。

山田:ええっ!?

乙君:このおじさま、おもしろいねえ。

久世:元事務所とか入ってはるんですか?

山田:うるせー!(笑)。

(一同笑)

乙君:職業なんですか?(笑)。

(一同笑)

久世:めっちゃおもしろいわ。

キョンの目線で入っていけば、あの世界にいられる

山田:いやいや本当に。だからね、「この番組やってると、なんかいろんなものに出会えるな」という。あと、近代史。超近代史。

久世:金田一?

山田:近代史。

久世:あ、近代史か。

乙君:近代史? ああ。

山田:近代文化史ってことなんだなって改めて。

乙君:あ、現代文化史。

山田:0年代にキョンの目線で入っていくんだったら、あの世界にいれるという人たちがいっぱいいたんだなと。その人たちが今フジイちゃんみたいになってるんだろうとか思うわけ。大変だなと思うね。

乙君:でも、ひっくり返るらしいですよ。みんなコメントでけっこう。

山田:ああ、そうなの?

乙君:その設定がひっくり返るから。

山田:あ、そういうことになるの。

久世:おもしろいと。

乙君:おもしろいってことなの。

山田:へえ……。えっ、ってことは監視しなきゃいけないの? 俺。

久世:さあ、どうでしょう(笑)。どう出る、どう出る? ここでどう出る? 玲司。

山田:ハルヒまで? ハルヒまで監視しなきゃいけないの?

乙君:そこはまあちょっとね。後半なにがね。ハルヒ以上にあるか。

久世:あるかってところですね。

涼宮ハルヒを「梅宮ハルヒ」と思っていた?

山田:まあ後半ちょっと。ハルヒのリクエストがどれぐらいあるかって話と。リクエストをもらってるからね。

乙君:果たしてランキングしているのか。涼宮……ハルヒ?

久世:うん。合ってると思う。

乙君:俺、ずっと梅宮ハルヒだと思ってたの。

久世:なんで?

乙君:いや、なんかわかんないけど。

(一同笑)

久世:お前、勇気あるよな。

山田:なにをおっしゃってる……。

乙君:だから、たっつぁんの。

久世:たっつぁんの。思ってもいいけど、それ言うのは勇気あるよな。

乙君:そういう……(笑)。

久世:全員に共有する必要ある? そのしょーもない……。

乙君:まったくないけど、そういえばという感じね(笑)。

時代を席巻したコンテンツには、心に訴えかけるものがある

久世:そうだ。さっきもコメントでね、「アニメに詳しくない人しかいねえじゃねえか」って(笑)。

乙君:そうなの。この番組、唯一アニメだけが弱いという。

山田:ニコ動でめっちゃめずらしくない?

乙君:それはそうですね。

山田:アニメから置き去りにされてるおじさんたちがお送りする、ニコニコ動画(笑)。

久世:俺なー、好きだと思ってたんだけど、ぜんぜんなんだな。

山田:ハルヒ好きとしては、観てないのはちょっと待てよと言ってるのね。そうだよね。だから根拠があるんだよ、絶対に。時代を席巻したコンテンツには、みんなの心になにかを訴えたんだろう?

乙君:うん。

山田:ってことは見届けないきゃいけないの、これ? わかんないけど(笑)。

久世:どうでしょう? まだ確約はしないほうがいいですよ。

山田:そうですね。ただ、なんかうまいなとも思うわけ。あれくらいの立ち位置でいないと、あの学校に入れねーよなというのもちょっとわかるわけ。本気でスクールカーストのなかで上位争いをするのはもたねーよっていう気持ちはあるんじゃないかな。

久世:疲れちゃうよって。

山田:うん。そうすると、もうクラブ活動とかそういうのでもなく、クラスのなかの派閥争い云々でなく、「やれやれ」って見てるほうが楽という感じで。なにかシャットアウトしながら生きていかなきゃいけなかったのかなという時代を感じるので、その世代はその世代で大変だった。君ら大変だったんだねって思うよね。ナンパしなくてよかったからね、よかったけどね。そうなのよ。

岡村ちゃんは文化系オラオラを初めてやった人

乙君:結局、岡村ちゃんの話どこ?(笑)。

しみちゃん:(笑)

山田:で、岡村ちゃん……。

(ベルを鳴らす)

乙君:えっ、まだ?

山田:岡村ちゃんが、だからなんで言ってたかというと、やっぱり生々しく恋愛をずっと体張ってやってる人間の色気がある。

久世:うんうん。それはある。

乙君:岡村ちゃんって体育会系じゃないんですけど、オラオラなんですよ。

山田:どっかね。

乙君:俺と志磨ちゃんのなかで、文化系オラオラというのを初めてやった人。初めてというか、まあ最近ではみたいな意味は。なんか上から来るんですよね。

山田:いや、だから、作ったんでしょ。あれを。

乙君:たぶん。

山田:作ったんだと思うんだよ。攻撃的。

乙君:だって、一緒に遊んでる連中が、吉川と尾崎ですよ。オラつくでしょ。

山田:もうおかしいよね。

久世:オラつくでしょうね。

山田:自意識ライジング止まらないもん。

山田玲司は吉川晃司が好き……?

乙君:かたや水球の選手ですからね。

山田:そう……えっ、関係ねえんじゃない。そういうこと?

乙君:玲司さんは吉川ね。

山田:なにが?

乙君:大好きだったって。

山田:大好きじゃねーよ!  なんで、なんで? なんで俺がサンクスモニカになってるわけ? なんで?

(一同笑)

久世:そこまで言ってない。そこまでは言ってないし。

乙君:この間、本番前にめっちゃ歌ってじゃないですか。『モニカ』。

山田:歌ってねーよ! なんのデマなんだよ?(笑)。

乙君:「Thanks, Thanks」って言ってたじゃないですか(笑)。

山田:もうダメダメ(笑)。

久世:私服もね、それに近いものを着てますしね。

山田:そう? やってみる? 肩パッド。

久世:どんどん嘘つきましょう(笑)。

山田:いやいや、ちょっと待ってよ(笑)。

黒船来航的にデビューした、吉川晃司

いや、吉川晃司っていうのは出てきた時も、今だからこの番組、50代の方も見てるんだけど、あいつに持ってかれたのよ。ああいうやつがいなかったんだよ。

乙君:いなかったんですか?

山田:いなかったの。

久世:へえ。

山田:背が高いという。めっちゃ背が高くて、肩幅あって、足長くて、垢抜けてた。

乙君:広島から来た。

山田:その同世代というか、その当時人気があったのが「たのきんトリオ」だからね。だからちょっとファンシーなんだよ。どこかもっさりしてるんだよ。『ハイティーン・ブギ』なわけ。つなぎ着ちゃってみたいな。マッチみたいなところに、あいつ登場なんだよ。だから、上條先生の『TO-Y』あるじゃん。もうまさにあんな感じの。新風って感じだったんだよ。

それで、一発目から『すかんぴんウォーク』でしょ。知ってる? 映画主演から登場だからね。

久世:ああ、そうだ。

山田:それからの『サンクスモニカ』じゃん。なんかぜんぜん違うところから、黒船来航的な感じであいつが現れた。あいつだけ、本当にハルヒのように浮いてた。

乙君:ああ、そうなんだ。

山田:うん。そして、マッチに乗れなかった俺たち若者……。本田恭章というのはすぐ次に出てくるんだけど、岡村さん系譜で出てくるんだけど。ビジュアル系のね。とにかくマッチになれなかった人たちは、とりあえず吉川にならなければいけないってなり、全員肩パットになるわけですよ。本当に。あんな踊りをするわけです。

久世:ズバッと。

山田:それを桑田佳祐が『ミス・ブランニュー・デイ』で批判するというのが流れになってて、懐かしいなみたいな。

「男たちよ、セクシーを取り戻せ」

ただ、あいつら、俺の世代、やっぱりみんなガーって失速していって。死んでいくやつも多かったし。相も変わらずみたいなのはうれしい。

乙君:だからこそ、今サバイブしてる人たちは。

山田:サバイブしてる人たちはセクシーでイイという話。

乙君:うんうん。

山田:「男たちよ、セクシーを取り戻せ」って俺は言いたい。それは、あのおじいちゃん……。

乙君:なるほどね。夏に向けてね。

山田:そう。いや、「無理っすよ」って。わかってるよ、わかってる。「無理っすよ」はわかってる。もう無理を言わない。いいよ。ジャパリパークでも。だけど、俺たち日本人はそもそもそんな色気を持っていたんだなというのを思い出しちゃって。

乙君:いや、でも、それなんかアメリカコンプレックスもあったり、本当の日本人の色気とはなんぞやということになると……。

山田:はーい、じゃあ語ってもらいましょう。本当の日本人の色気とは?

乙君:いや、語らないですけど。

久世:お願いいたします。

乙君:語らないです。もう時間ないので。これは今度やりましょう。