螺旋状の歯を持つ謎の魚

マイケル・アランダ氏:進化は時に異常なことにつながります。ステゴサウルスやディメトロドンは、想像してみると非常に変わった動物だということがわかります。カモノハシも、化石記録だけしか知らなければ、なにかの冗談かと思います。

しかし、何百万年後の私たちを楽しませるためにこのような進化過程の適応が起きたわけではありません。餌を取ったり、子供を作ったり、生き延びるために環境に適合しなければならず、そのために不思議な進化過程も起こるのです。カモノハシが変わった動物に見えるかもしれませんが、お母さんはきっとカッコいいと思っているに違いありません。

同じことがこの10種類の先史時代の動物に言えます。彼らは変わっていたかもしれませんが、非常に優れた環境適応力を発揮しています。

ヘリコプリオンは代表的な時代遅れの奇妙な動物ですが、古くから語り継がれている科学の謎の1つです。

今から2億7000万年前に誕生したと言われているこの魚は、1899年にその特徴的な螺旋状の歯について指摘されただけで、他に情報はなにもありませんでした。

古生物学者たちはこの歯がなにか別のサメのものだと思いましたが、途方に暮れていました。この螺旋状の歯を魚の体のどの部分に差し込めばいいのかわかりませんでした。鼻の先端? 背びれ? それとも尾びれ?

最終的には、歯が本来あるべき顎にあったのではないかという結論にたどり着きました。しかし、螺旋状の歯がどのように適応したのか、そしてヘリコプリオンがどのようにこの不思議な歯を使ったのかが謎のままでした。

2013年、アイダホ州立大学の研究者がヘリコプリオンの顎の周りに残っていた軟骨と共に、螺旋状の歯を研究しました。化石は1950年に発見され、しばらくの間、博物館で保管されていました。1966年になってようやく詳細について明らかにしましたが、軟骨はあまりにも状態が悪かったので情報として公開されませんでした。

すると、CTスキャンをはじめとしたコンピューターモデリングが実施され始めました。最新の技術を使ったところ、螺旋状の歯はこの生物の顎の底辺部分にあったことがわかりました。さらに、ヘリコプリオンはサメの仲間ではなく、むしろラットフィッシュやギンザメのような実際に存在する魚の仲間であり、神話上の魚ではなかったことがわかったのです。

しかし、螺旋状になっている歯が役に立つなんて考えられません。おそらく、のこぎりと同じように使われていたと思います。ヘリコプリオンは、イカのように柔らかい生物を食べていたと言われています。丸い顎は電気のこぎりのような動きはしないと思いますが、口を閉じると同時に少し回転して、歯に餌を付けて、そのまま飲み込んでいたのかもしれません。

アステカ族の神の名を持つ翼竜

ケツァルコアトルスはキリン並みの大きさをした翼竜で、名前の由来はアステカ族の神です。1億4500万年前から6500万年前までの白亜紀に存在した巨大な翼竜は、翼を広げると10メートル以上になったようです。

翼竜の祖先が飛べるように進化した後でも、前脚歩行ができるように進化したようです。そのため、前足で歩けるようになったものの、最後の部分だけ羽が突き出た状態で残ってしまいました。

ケツァルコアトルスの化石からわかることはかなり断片的です。翼竜だったということと、巨大だったということはわかります。しかし、どれくらい大きくて、なにを食べていたのか、果たして本当に飛ぶことができたかどうかについては未解決の問題です。

また、体を軽くするために空気袋を体内に蓄えていたはずなので、翼竜の体重を知ることは難しいのです。

つまり、残りの化石が完全な状態で見つからない限り、体内にどれくらいの細胞組織があって、どれくらいが空気だったかがわかりません。もしこれがわかれば、ダチョウのように飛べなくなった真相もわかるかもしれません。

彼らは、陸上の肉食動物や腐食性動物として歩行能力を発揮したり、ペリカンのように顎で魚をすくったりしていたかもしれません。また、非常に長い首を持っていましたが、柔軟性に欠けていました。どうやら、地面を掃除するみたいにして餌を捕るのに最適だったようです。

もっと化石があれば、この生物の生態系を把握することができますし、肉食で飛べる爬虫類がなぜキリンほどの大きさまで成長したかを知ることができます。

羽で覆われて歯がない草食恐竜

羽で覆われて歯がない恐竜を想像してください。それに太鼓腹を付けて……さらにがっしりした前脚と、1メートル近い手が付いていると、まるでティム・バートン監督の映画『シザーハンズ』です。

想像した恐竜が実在のものだとは思えないかもしれませんが、それがまさにテリジノサウルスです。

テリジノサウルスは獣脚竜という種類の恐竜に属し、あの獰猛な肉食のティーレックスやディノニクスの仲間です。しかし、この白亜紀のはみ出し者であるテリジノサウルスは草食動物でした。

木の隣に座って、前脚の手を使って葉っぱなどをちぎり取ることができるだけ大きかったと思われます。大きくて立派なお腹はちょっと場違いなように見えますが、植物を消化するためには最適でした。現在の牛やマナティーも同じように丸いお腹をしていますよね。

なぜ手が長かったかはわかりませんが、そのちょっと変わった体形のおかげでゆっくりしていたのかもしれません。長い手は植物をちぎり取るだけではなく、攻撃者から身を守るために必要だったかもしれませんし、ティーレックスとは異なる巨大な前脚は長い手を支えるためにあったのかもしれません。

4つの翼を持つ小さな恐竜

次にご紹介するミクロラプトルは、名前のとおり、非常に小さい恐竜でした。

恐竜から鳥類へは単純な進化を遂げたわけではなく、今から約1億2500万年前に生きていた白亜紀の恐竜であるミクロラプトルも珍しい恐竜のひとつです。

カラスと同じくらいの大きさの恐竜は黒い羽根で覆われていましたが、4つの翼を使って滑ることはできたかもしれません。

恐竜は、飛ぶより先に羽根が進化し、初めの頃は産毛のようでしたが、第2の翼として脚や腕に非対称の矢羽を付けるため、羽は次第に非対称の形に進化しました。現在の鳥類と比べると、翼はたくさんありました。

しかし、ミクロラプトルは2つ目の翼を広げて第2の翼として安定器のように使っていました。他の鳥類はもっと効率の良い2本の翼を持っていたので、4つの翼を持ったスタイルは退化していきました。

巨大アルマジロとラクダに似た有蹄動物

グリプトドンはアルマジロの親戚ですが、現代の小型でしなやかな動きをするアルマジロとは違い、フォルクスワーゲン社のビートルと見間違えるくらいの巨大な恐竜でした。

今から約1億3000万から2000万年前の更新世では、甲羅のドームが体の大部分を覆っていて、頭と尻尾にもお皿のようなものを被っていました。尾錘がある種類もいました。

甲羅のドームはやり過ぎなのかもしれないと思えますが、頭蓋骨に穴が開いているグリプトドンの化石が見つかったことから、敵の巨大な歯で攻撃されたということがわかります。ご近所にサーベル状の歯を持った猫がいた場合、あまり甲羅は役に立ちません。

グリプトドンを巨大なアルマジロと呼び、たしかに両者は関係していましたが、全く異なる進化系統をたどっているので、グリプトドンはアルマジロではなく、例えるならタンク車みたいなものでした。

マクラウケニアはラクダに似ていますが、ラクダや象とは遠縁で、最後の氷河期と言われている約12,000年前に絶滅したとされる南米で見られた哺乳類の滑距目に属しています。

滑距目はアンテロープやラクダと同じ有蹄動物ですが、遠縁です。不思議に見えるかもしれませんが、どんな植物であっても巧みに利用することができるくらい、マクラウケニアは環境に適応しました。

葉や枝をむしり取るために胴体は役に立ち、嚙み切りにくい草をすり潰すために歯も発達しました。このような進化の過程を経ることで、南米で生き延びることができ、さらには他の滑距目も氷河期を生き延びられました。生き延びるためには容姿が少し変でも構わないということですね。

不思議な形の象と、象ほど大きいナマケモノ

次の動物は実は象の一種ですが、象としては非常に奇妙です。プラティベロドンは800万年から2000万年前に生きていた象ですが、際立っています。

現代の象と同じように牙と鼻があったのですが、シャベル状の顎があり、さらに2組目の牙がありました。この動物は長年、復元状態はよくありませんでした。古生物学者は、下の方に付いていたシャベル状の顎に合うように、幅広で平らな鼻を想定していましたが、近年の研究によると普通の鼻と同じ形をしていたことがわかりました。

下の顎は餌を食べるためのものではありませんでした。幅広の歯の前面がすり減っているので、鼻で草をしっかりつかみ幅広の歯でのこぎりみたいに切り取っていたのです。これで出来上がり! あっという間に泥なしの草のお食事が完成です!

インターネットはナマケモノが好きです。彼らはゆっくりでかわいくて小さいですが、常に小さかったわけではありません。木の上で生活しているかわいい小動物は、以前は地上の草食動物でした。

メガテリウムは地上にいた象くらいの大きさのナマケモノです。

先ほどご紹介したテリジノサウルスと同じように、今から500万年~1万2000年前に生きていたとされています。

ほかの動物にとっては高すぎて取れない植物であっても、大きな前足を使って引っ張って取ることができました。前足は根っこを掘り出すためにも使われていました。

メガテリウムは前足を使って早く歩くことができなかったので、テリジノサウルス同様、ゆっくりと動いていましたが、体も大きかったので、肉食動物はメガテリウムを食べることができず、敵から逃げる必要もなくそのまま好きなようにゆっくり歩き回っていたのかもしれません。

メガテリウムと現代のナマケモノの共通点はここにあります。

2メートルのヤスデと食物連鎖の頂点にたつエビ

ぞっとするものがあまり好きでなければ、これも嫌いだと思います。アースロプレウラは2メートルの長さで1メートルの幅があるヤスデです。

僕の身長よりも長いですよ……。幸運なことに我々は化石からしかこの生物を知ることができませんが、化石の糞によると、草食動物だったことがわかります。

ヤスデがどうしてここまで大きくなれたか不思議に思っているかもしれませんが、大きくなったせいで捕食動物がいませんでした。

今から3億6000万年前から3億200万年前の石炭紀の地球の大気中には、高濃度の酸素があったため、虫やクモや甲殻類を含む他の節足動物と同じように、大きく成長することができました。

アースロプレウラには我々脊椎動物のような循環系がありません。その代わり、酸素が必要になります。酸素が少ない時は体に取り込むものが単純に少なくなるので体もあまり大きくならないのですが、逆に酸素が多くなるといよいよB級映画に出てくる巨大な虫の登場です!

5億4000万年前から4億8500万年前のカンブリア紀になると動物の生命は優位に立つようになりました。つまり、今までとは違う生物体制の出現と、食物連鎖の頂点に新しい捕食動物が現れたことになります。

「変なエビ」という意味のアノマロカリスはこの両方が当てはまります。

どれくらい近い関係かを知るのは難しいですが、現代の節足動物と関係しています。

この生物がどれくらい変わった形をしているかを知ってもらうため、古生物学者はエビのようであり、ナマコのようであり、クラゲのようであり、スポンジの上にあるクラゲのようであると表現しました。しかし、いま言った動物の化石は節足動物のうち、わずか2種類にしか当てはまりません。

その大きな眼と貪欲な口元から、カンブリア紀の海中でアノマロカリスは主要な捕食動物であったことがわかります。きっと三葉虫をおやつ代わりに食べていたでしょう。

カンブリア紀にしては珍しく、1メートル近くまで成長しました。当時としては最大の捕食動物だったと思われます。長い年月をかけて環境が変化したので、今ではこのような環境への適応は見られなくなりました。

現代にはない状況を生き抜くため適応することが求められましたが、化石が残されているおかげで、たとえ奇妙な姿だったとしても様々な方法で生き延びられたということを知ることができます。