お客様に寄り添って事業拡大を考える

東博暢氏(以下、東):ただいまご紹介に預かりました、日本総研の東です。私のほうでモデレーターを務めさせていただきます。

では、私とみなさま方の自己紹介を兼ねて、簡単にお話させていただきます。

私は、ハッカソンやクールジャパンなど、様々なところで新規事業開発をやっていますけれども、今回はこのようにモデレーションを務めさせていただきます。さっそくですが、パネリストのみなさんのご紹介ということで、滑川さんからお願いします。

滑川広治氏(以下、滑川):三井住友銀行成長事業開発部の滑川です。

簡単に自己紹介させていただきます。入社して20年になりますが、その間、東京の八重洲、渋谷、名古屋で、約1,000社ほどの会社様を担当させていただきました。

とは言いながらも、銀行の看板でお客様に会っていますと、ほとんど「この会社さんはどういう会社さんなんだろう」といったところに意識がいっておりました。3年間だけ、三井物産戦略研究所というところに出向させていただきまして、そこではお客様との対話のなかで、お客様を判断するのではなく、どうやったら三井物産の機能を使ってお客様と一緒に発展していけるか、つまり、事業をどうやって拡大していくかという観点で仕事をさせていただきました。

それが非常におもしろくて。また銀行に戻って、いろいろなお客様とお会いさせていただいて、どうやったら目の前に対峙しているお客様と一緒に寄り添って事業を拡大していけるのか、ということを考えてやったら、非常に仕事がおもしろくなりました。

今は成長事業開発部におりまして、この春まで東京、静岡、九州と担当して、主にベンチャー企業様、大手企業の新規事業開発様、あとはベンチャー支援者、つまりベンチャーキャピタルや○○市といったところとお会いさせていただきながら、頑張っておりました。

この4月からは西の担当になりまして、これからは大阪、関西全域、北陸、中四国と、いろいろ回って自分の引き出しを増やして、いかにこのベンチャーマーケット、及び大手企業様の新規事業開発を盛り上げていけるかということに注力していきます。

それと、簡単にSMFG(三井住友フィナンシャルグループ)の紹介でございますけれども、「成長段階に応じて」というところは、ここにおります東さんも所属する日本総合研究所、それからSMBCベンチャーキャピタル、SMBC日興証券、三井住友ファイナンス&リース等々と連携し、それ以外でも、日本政策金融公庫、産総研、理研等とも外部連携してやっていっております。

外部ベンチャーキャピタル等との連携につきましては、もちろんSMBCがLPとして資金を供給していくこともありますけれども、それ以外にも、ベンチャーキャピタルが実際に投資をしているベンチャー企業がどうしたら事業を拡大していけるのか、そういったことにもお役に立てるように橋渡しの機能を使って務めております。

オープンイノベーションミートアップに関しましては、大企業とベンチャー企業の出会いの場を銀行が提供しています。ここ1年間では、オムロン様、リコー様、三井化学様、JR九州様、東京電力ホールディングス様、そして阪急・阪神ホールディングス及びアシックス様と、ベンチャー企業の出会いの場を、SMFGで提供しております。

最後に、アライアンス提案ですけども、こちらは、大企業とベンチャー企業の出会いの場を、昨年1年間で約400件くらい、銀行が引き渡し役を担って、盛り上げております。

少し長くなりましたけども、紹介は以上です。

:ありがとうございます。では、続きまして、アスラボさんからご紹介いただこうと思います。

1つの成功が、街全体を活性化していく

片岡義隆氏(以下、片岡):アスラボの片岡と申します。よろしくお願いします。

我々がなにをやっているかと言いますと、一言で言うと、地方創生をやっています。地方創生でもいろいろな領域があると思いますが、とくに最近メインで注力しているのは、シャッター商店街の再生です。

シャッター商店街の再生というものが、地方の至るところにあるんですけれども、我々は補助金には頼らず、自己資金を使って、あとは借り入れをして、まず投資をして、それを起点に、横丁のようなかたちでビルやその場所自体を再生するということをやります。次に、その成功事例を見て、地元の若者達から「自分たちでもなにかやってみたい、やってみよう」といった動きが起こります。

甲府で実際に起きたのが、(スライドを指して)これはクラフトのお店なんですが、このようなお店ができたり、シェアオフィスができたり、デザインスクールみたいなものが起きたり。あとは、近隣の空き店舗などもどんどん活性化するようなことが起きています。

つまり、我々は「1つの成功が、街全体を活性化していく」ことをやっています。1番のポイントとしては、「横丁」というと、飲み食いする場所のようなイメージを持ちがちなんですが、とにかくやる気がある若者にチャンスを与える。お金がなくても、やる気があれば起業させるということを中心にやっていて、つまり、インキュベーションの場所という考え方をしています。なので、さっき言ったようなクラフトラボができたり、スクールができたり、次々に起業が起きているという流れになっています。

甲府では2年ほど前からこの事業をやっているんですが、現在は全国でやっていこうということで、特に今年は九州中心にやっています。九州全域にこの事業を展開して、まずは九州で成功させようというのが、今のフェーズです。

イメージ的には、九州全県に、先ほどの横丁なり、様々な事業が立ち上がって、これを一旦、博多に持ってくるということを考えています。次に、これを東京に持ってくる。つまり、次は地方で活躍する若者を東京に来てもらって、東京で活躍してもらおうというのが、私たちの事業になります。

その先は、東京の横丁で、いろいろな映像を使って地方のプロモーションをしたり、食べたものを買ってもらったり、コト消費をモノ消費につなげていくということもやっていこうと考えています。

僕らの最終的な目標としては、これを海外に持っていきたいなと。インバウンドがもっと増えたらいいなというようなことを事業としてやっています。

:ありがとうございました。では、続いて、ユニファさんお願いいたします。

子育てプラットフォームで保育士不足を解決

土岐泰之氏(以下、土岐):ユニファの土岐と申します。今日は、よろしくお願いします。我々の事業の内容について、簡単にご紹介いたします。

我々は、家族というものをテーマにして、家族のメディアを作りたいという思いで事業を立ち上げております。具体的には、保育園で全く人が足りていないという問題や、子供が朝から晩まで保育園にいて家族のコミュニケーションが希薄になってきているという問題を解決していきたいと思い、園内の写真の事業やヘルスケアIoTの事業を、いろいろ立ち上げていっています。

例えば、写真は昔ながらの壁張りで売っている園がまだ多くて。こういった部分も、インターネット上に写真を載せて、インターネット上であれば、ママだけじゃなくて、パパ、おじいちゃん、おばあちゃんも、そして、写真だけじゃなくて動画も載せられる。それから、「いいね」やコメントを付けて、コミュニケーションも楽しんでいただけるというかたちです。

あとは、デジカメで写真を撮るとそのあとにいろいろ手間がかかっており、月500枚くらい写真が撮れるので、SDカードからのアップロードも大変だというところが多いので、保育所の方にタブレットをお渡ししまして、専用のアプリを作りました。

タブレットを渡して写真を撮ったら、あとは全自動で、「撮った3秒後にはサーバーにある」というかたちで、保育士が劇的に楽になるという仕組みを作りました。

また、写真の枚数が増えてしまうので、画像認識の技術を使って、1,000枚くらい写真があったとしても我が子の写真と思われるものが勝手に上がってくるような仕組みを作りました。

ビジネスモデルとしては、保護者がたくさん写真を買っていかれるので、保育園は完全に無料でシステムを使えます。写真の一部の代金を、保護者からお金をもらって、その一部を園にも少し還元していきましょうというかたちでやっております。

そういうかたちで、保育士の方が圧倒的に楽になるというものをやっています。今、全国でだいたい1,500施設を超える施設でサービスをご利用いただいておりまして、子供の数だけでも10万人を超えてきている状況になっております。

その上で、我々が今考えているのは、写真を通じて見えてきた保育の現場にはそれ以外にも深刻な課題がありまして。赤ちゃんが寝ている間の死亡事故というのが、年間で100件以上発生するんですね。SIDSといって、うつぶせ寝の間に息が止まってしまっているような問題があります。

先生方も怖いので、現状は(スライドの)左上に書いてあるように、先生方がお昼寝中に5分おきに子供がどっち向きに寝ていたかを全部手書きの矢印で書いていまして、ものすごく手間がかかっています。さらに、1日3回くらい体温を測ったり、連絡帳なども全部手書きで、とても手間がかかっているという状況です。

先生方に聞いても、「こういう手間がありすぎるから保育士になりたくないんだよね」と、だいたいみなさんおっしゃる。そこで我々は、手書きの連絡帳は全部アプリで、今日の写真やランチになにを食べたか、全部タップでポンっと入れられるようにするということもやっています。

睡眠中の様子も、特殊なセンサーを使った「スマートベッド」というもので、睡眠中の体の傾きや、子供の呼吸が止まったら、誰でもすぐ気づけるようにしましょうというのを作ります。今、開発中で、ちょうど夏にリリース予定ですね。

最終的には、子供の体温データや、睡眠のデータ、排便サイクル、これを全部つなげて、ベテランの保育士だったら気づけるような、いろいろな子供の体調変化に誰でも気づけるようにしていきましょうという、子育てプラットフォームを作っていこう、見守りのAIを作っていこうということを考えている会社です。

そんなかたちで、保育士不足の問題を解決しながら、現場に入り込んで子供の健康情報というものを得たうえで、その情報を家族のみなさんに共有して、その先に自治体や子育て支援企業のみなさんに集まっていただくプラットフォームを作っていきたいと考えております。

最終的には、こういったいろいろな家族向けメディアを作っていきましょうということで、最近はいろいろなベンチャー向けのコンテストにも出させていただいていて、海外展開も含めてがんばっていきたいなと思っております。

保育業界、子育て業界そのものを変えていきたいと思っておりますので、そのなかで大企業のみなさんや自治体のみなさんとどう関わっていくべきかというところをお話できると、大変ありがたいかなと思っております。以上でございます。

ベンチャーが大企業や自治体と連携する難しさ

:ありがとうございました。では、これから、それぞれのパネリストの方々を交えて、ディスカッションをさせていただこうと思います。

今回いただいていたテーマは、ベンチャー、大企業、加えて銀行の役割になってくるかと思いますが。今までベンチャー2社さんのお話を聞いていて、1つは日本の地方創生、もう1つは日本の保育の問題という重要なイシューについて取り組まれていて、それを海外に出していくことをされていくと、やはり大企業や、厄介なのが公的機関という自治体ですね。こういうところとの調整が大変になってくる。

せっかくですから、お二方に、大企業と組むところで今までの障壁や自治体との困難というところからお伺いできればと思います。まずは、アスラボさんから順番に。

片岡:僕の場合、キャリアは不動産の投資だったので、例えば不動産デベロッパーなどの方々とは簡単にコンタクトは取れるんですけど、地方創生となると、当然まず地元の偉い方々がいらっしゃったり、それこそ地域によって、いろいろな産業の特色があったりしますよね。

そこで、「どう一緒に取り組めるか」というところで、なかなかリーチできないという。仮にご挨拶に行ったとしても、「誰だ、お前は?」から始まって(笑)。なかなか本題にならないということは多くあって、「どうすればいいのかな」ということは、ずっと課題としてあります。今も、当然エリアによってはそういう課題はありますけども。

やはり、ベンチャーというものは、ベンチャーだと格好つけても、言い換えれば中小企業ですから。なかなか大企業の方と話せる機会だったり、深いコミュニケーションができるチャンスが少ないというのは、常にある話で。

成長するうえでブレイクスルーしなきゃいけない。そういうところは非常に大きな課題だと思っています。

:ユニファさんは、どういうところでご苦労されていますか?

土岐:我々は保育園をテーマに事業をやっておりますので、例えば保育園を管轄している自治体の方、○○市役所の子育て課などにコンタクトしたり、保育園も、大手の上場企業で運営をしているところがどんどん出てきておりますので、そういった大手の保育園事業社の責任者にコンタクトするとかですね。あとは、我々が医療機器を扱おうとすると、経産省や厚労省もいわゆる利害関係者になってくるということで。

こういった、リアルな産業自体を変えていこうとすると、昔からの偉い人たちがたくさんいる業界なので、今もそうですけど、やはりそれなりに特別なコミュニケーション能力が求められるかなとは思っていますね。

:私どもも、どちらかと言うとベンチャー支援をやっていますが、成長しているところは、大企業との取引や、役所、自治体の巻き込みを国内のベンチャーだけではなく海外でも優秀な方が担当していらっしゃる。

シリコンバレーからも、日本に来たら、大企業調整とか自治体調整、国の調整って、けっこうロビーをやっていらっしゃって、うまくやっているというところがあります。この部分は日本のベンチャーが、1番大変な障害になるんですけれども、まずはファーストクライアントを作るというところですね。

そこから、今日のテーマの「プラス銀行」というところで銀行がくっ付いているわけです。