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本当に「若い頃はとことん仕事すべき」なのか? 真の女性活躍を阻む思い込み

本当に「若い頃はとことん仕事すべき」なのか? 真の女性活躍を阻む思い込み

「子育てしながら働きやすい世の中を、共に創る。」をキーワードに、はたらく育児の実現を目指すiction!(イクション)プロジェクト。9月1日に開催された「iction!セミナー」では、企業の人事やダイバーシティ推進担当者に向けて、女性活躍推進の取り組みに関してリクルートの事例やノウハウが共有されました。第一部「女性活躍推進において企業が陥りがちな罠とは?」では、リクルートワークス研究所所長の大久保幸夫氏が登壇し、企業が陥りやすい12項目の「女性活躍推進の罠」について紹介。ダイバーシティ推進室なのに女性だけで構成されていることなど、日本企業のダイバーシティ施策の問題点を指摘しました。

(提供:株式会社リクルートホールディングス)

シリーズ
iction!セミナー > 第一部「女性活躍推進において企業が陥りがちなワナとは?」
2016年9月1日のログ
スピーカー
リクルートワークス研究所 所長/株式会社リクルートホールディングス専門役員 大久保幸夫 氏

女性管理職の目標だけ設定しても意味がない

大久保幸夫氏(以下、大久保) 8番目、「女性管理職目標の罠」。「これは何かな?」とみなさん思うかもしれませんが、女性管理職目標、いわゆる“ポジティブアクション”といわれるものですね。 具体的な比率の目標を設定し、いつまでにそれを達成する、と決めて取り組むこと自体はいいことだと思っています。 ご承知のように、ヨーロッパの国には「クオータ制」というものがあり。例えば、「社外取締役の4割は女性にしなければいけない」というようなルールが決まっているわけです。 これは、そうした数字上のルールを決めることによって、今までのマイナスを一気に改善しようという「ボールを1回だけ蹴る」施策と言われています。 女性管理職があまりにも少ないと先に進まない。少し時間を取り戻すために、目標設定して、やろうじゃないかと。 つまり本来、女性管理職目標設定というのはなにかというと、女性に下駄を履かせるということなのです。あまりナーバスに「女性に下駄を履かせてはいけない」と考える必要はないと私は思います。 ただ、ここで言いたいのはそういう話ではなくて、「課長の目標だけ設定してどうするの?」ということです。 数字が1人歩きするんですよ。「部下のいない課長までカウントしようじゃないか」とか、だんだん女性ポストみたいなものができて、一般的に女性ばかりが課長に就く課長職みたいなものができてくるわけです。 これでは本来の目標設定の意味がありません。もともとこの「リーダー2030」(注:安倍政権が掲げる「2020年までに女性管理職3割」を目指すという目標)と呼ばれている管理職目標はトップから降りてくるものです。 女性の経営者やボードメンバーをつくるためには、どのぐらいの部長層が必要で、その部長をつくるためには、その下にどのぐらいの課長層が必要です、と。 これは「リーダーシップパイプライン」といいますが、そのパイプラインをつくることこそが大事なのです。そのなかで目標設定と言い続けられているので、課長目標だけを作り、あとは自然に部長や役員が出てくるかというと、そんなことはない。そこで止まってはいけないというのが、8番目「女性管理職目標の罠」のお話です。

ハラスメントの種類が増えた弊害

9番目、「地域限定社員の罠」。女性のなかで、現場でたいへん重要な戦力になっている人たちがいる。その人たちが仕事を続けられるように、転勤のない「地域限定社員」という制度をつくり、これまで正社員として働いてきた社員のうち希望者は地域限定社員になってもらい、仕事を続けてもらう。そんな方法を考えた会社もございます。 実際に「そういう制度をやろうと思ってるんだけど……」というご相談を受けるケースも多々あります。一種の流行りみたいなものですね。 ただ、これも変だなと思います。そもそも現場の仕事だけに限定をした、いわゆる業務職や一般職と呼ばれるような昔ながらの制度に逆戻りをしているようなかたちです。 そもそも、これだけテクノロジーが進化して、なぜ正社員を転勤させなければいけないのか? 実は、地方に引越しをともなう転勤に関するデータを取ってみると、転勤している人のなかで圧倒的に比率が高いのは管理職ではない人たちです。 私は逆だと考えています。幹部になった人で、余人をもって代えがたい人だったら、転勤というのも会社の選択としてあるのだと思いますが、一般の社員をそんなに転勤させる必要があるのでしょうか。 逆に私は、「地域限定社員制度」をつくるのではなく、一般の社員に関しては正社員の転勤を思い切ってやめたらどうかと思うのです。 これはリクルートワークス研究所が発行する『Works』という雑誌で特集を組み、賛否両論、喧々諤々になったテーマなのですが。地域限定社員ということで、昔の一般職に閉じ込めることにならないようにというのが、「地域限定社員の罠」です。 10番目、「セクハラ・マタハラの罠」。セクハラとかパワハラとかマタハラとか、どんどんハラスメントの種類が増えています。 そういう私も、厚生労働省でパワーハラスメントの定義を決めるという委員会に参加したことがありました。 ハラスメントという話が出てきて、確かに職場における環境がよくなったところもある一方で、管理職になった人たちが臆病になったと思います。メンバー個人のプライバシーの問題にはあまり踏み込んではいけない、踏み込みたくないと構えてしまっています。 ただ、実際は仕事と育児などを両立していくなかで、上司に理解してもらわなければいけない、協力してもらわなければいけないことがけっこうあるんですよね。 そういう時にも、上司が相談に乗ってくれるいいパートナーにならないのは、ちょっと違うのではないかと私は思っています。 「プレゼンティズム」といいますが、プライバシーの問題における悩みなどは、仕事の生産性に大きな影響を与えます。今の生産性議論のなかでたいへん重要なテーマになってきています。 社員のプライバシーの問題をどうやって解決するかというテーマについて、会社側がまったく無頓着でいるわけにはいかない。そこについてはどう考えるのかということが抜け落ちているような気が私にはいたします。これが10番。

優秀な人のほうがワークライフバランス志向が強い

それから11番目。これはけっこう多くの会社がはまっているのではないかと思うのですが、「とことん仕事で成長の罠」。これは、私が役員の方々に呼ばれて講演にうかがう際に、よく出てくる話です。 「女性活躍のために環境整備をするとか、長時間労働の慣習を変えるというのはわかりますが、人材育成と矛盾しますよね」と。 「だって、若いときはとことん仕事をして、それではじめて一人前になって成長するわけですよ」「そういう時間・機会をつくらないと、人材を育成できないのではないか」と、こういうふうにおっしゃる役員の方が必ずいるわけです。 でも、そうなのでしょうか? 最近、私自身も少し人材育成に対する考え方が変わってきました。 もともと会社に入るとOJTで上司・先輩の背中を見ながら仕事を覚え、アシスタント的な下働きなどで5年~10年と時間を使って、一人前に育っていく。これがスタンダードです。 もっといえば、企業社会だけでなく、日本の職人社会においても、最初の3年ぐらいは雑用しかやらせてくれず、ラーメン職人になるのに10年かかるとか、寿司職人になるのに10年かかるというふうに、それが当たり前のこととして続いてきたわけです。 でも、みなさんご存知ですよね。最近できたラーメンづくりや寿司職人の学校は半年以内ですべて教えてくれるわけです。 AIの時代が到来しています。バーチャルリアリティもある。人材育成についても、もっと育成ノウハウが蓄積されていき、もっと短い時間で一人前に育てあげるということにチャレンジしなければいけない。 若い人たちのなかにも、「自分は成長したい」と思っていても「もっと効率的に教えてよ」という気持ちを持っている人はたくさんいます。 人材育成のやり方自体も変わるタイミングにきているのかなと思います。昔ながらのやり方で夜中までとことん仕事をやって、そのなかからじんわりと仕事を覚えていくというやり方でなくてもいいのです。 以前、日本だけでなくほかの国も含めて、働いている若い人たちの意識調査をやったことがありました。 ワークライフバランスといった項目に関して、世界的にも志向・関心が強いということが明らかになりました。 最初に見た時は、「若い世代でライフワークバランスなんて言っている人たちは、あまり優秀ではないのではないか」と思ったら、反対だったのです。優秀な人のほうがワークライフバランス志向がかえって強いのです。 分析してみると、どうやら無駄なことをやりたくない。意味のない時間を使いたくないという志向が強いことがそれに表われているのだということがわかりました。 ちょっと話が逸れましたが、とことん仕事で成長させるというのは、なんとなく、そういう時代や世代に関わってきた人間にとっては自然なことのような気がしますが、ちょっと疑ってかかってみてもいいのではないかと思います。これが11番目の罠です。

ダイバーシティ推進室の多くが女性メンバーなのは問題

最後となる12番目は、「女性ばかりのダイバーシティ推進室の罠」です。 この3年ほどで、ダイバーシティ推進室を設置する会社が本当に増えました。それ自体は推進力を高めていく上でいいことだと思いますが、だいたいどの会社もダイバーシティ推進室長は女性で、そこに数人いるメンバーも多くは女性です。 これは変だと思いませんか? ダイバーシティですよ。多様性をつくるための組織なのにぜんぜん多様ではありません。 ダイバーシティ推進室を女性だけでやると、女性の権利主張をしているように、社内から受け止められやすい。だから、本当に「女性のために……」と言うときは、実際には男性が言ったほうが効果があります。 そして、もちろん価値観としても、女性だけで議論するよりも多様な人たちがいて議論したほうが、ダイバーシティ推進のための多種多様な施策が出てくると思うんですね。 なぜかダイバーシティ推進室ばかりが、たぶんほとんどの企業が女性だけで構成されていると思います。これはもう変えた方がいいのではないかと思います。 今、12個ざざっとお話をしましたが、みなさんの会社は何個かあてはまるものありますか? 「いや、1個もあてはまらない。うちの会社はそんなものはどこもクリアしているよ」という企業があればおそらく10,000社に1社のレベルの会社だと思います。 まだこの女性活躍について、いろんな試行錯誤をどこの会社も続けている。日本のなかで女性活躍の先進企業と呼ばれている会社でもまだ試行錯誤の途中であります。早くこの次の段階にいきたい。 国では「ダイバーシティ2.0」という議論が最近始まっています。この問題に足をすくわれている状況から早く脱して、次の段階の女性活躍にいきたいと。 今議論しているのは、ダイバーシティとか女性活躍という状態を、どのようにして株主に伝えるのかということです。どのようにして顧客も含めたステークホルダーに伝えていくのか。あるいは、女性だけではない、多様な男性も含めた組織づくりにどう展開していくのか。こういう話がダイバーシティ2.0として議論されはじめました。 そこにいくには、やはり私が今日ご紹介した「12個の罠」といったものを早く乗り越えて、もっと先のところに歩を進めることが大事なのではないかと思っております。 この12個のテーマは、簡単なようでいて、実は難しいところがあります。 なぜかというと、悪意をもって「女性に活躍してほしくない」と思ってやっているならむしろ簡単ですが、みんな本当に心の底からよかれと思ってやっているわけですよね。 その結果としての項目なので、本当にもう1歩深いレベルで、どうやって女性活躍ができるのかを考えることでしか乗り越えていけないところだと思うので、ぜひチャンレンジをしていっていただきたいなと思っております。 「そんなこと言うけど、リクルートはどうなんだ?」とみなさん思われるかもしれません。それについてはこのあと伊藤(第二部の登壇者、伊藤綾氏)のほうからお話をいたしますので、悩みながら推進していることもお話ができるのではないかと思います。 ご清聴ありがとうございました。 (会場拍手)

  
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