クールジャパンの次のステージとは

司会:続きまして、パネルディスカッションに移りたいと思います。ご登壇の皆さまはそれぞれお席のお移動をお願いいたします。

パネルディスカッションのテーマは「クールジャパン、次のステージへ」。ここからの進行はA.T カーニー日本法人会長の梅澤さまにモデレーターをお願いしたいと思います。皆さまご準備よろしいでしょうか?

それでは梅澤さま、よろしくお願いいたします。

梅澤高明氏(以下、梅澤):パネルセッションに入らせていただきます。

このあとの懇親会で皆さまいろんな情報交換をしていただくということなので、その前のちょっとしたアトラクションとそれからクールジャパンで特に最近取り組んできていることについて少しだけご紹介をさせていただく場ということで、4名のパネリストの方にお集まりいただきました。

最初にそれぞれのパネリストの方からクールジャパンでやってこられたこと、あるいは特に外からの目線でなにをおもしろいと感じていらっしゃるか、このあたりについて1人ずつお伺いをしていきたいと思います。

最初に楠本さん、こちらにご紹介がございますけれども、楠本さんとそれから一番奥の夏野さんはこの1月から6月にクールジャパン戦略推進会議という内閣官房のもとで行われた会議の委員でもございました。

まず、このお2人からこの6か月でこの会議のアウトプットとして提案をしたこと、それから現在取り組んでいること、このあたりを中心にお話を頂きたいと思います。

食、そしてライフスタイルとして

じゃあ、まず楠本さん、食分野のところを中心にお願いできますでしょうか?

楠本修二郎氏(以下、楠本):はい。カフェ・カンパニーという会社の代表をやっております楠本と申します。よろしくお願い申し上げます。

まず、最初に今日のご列席の方々のなかにも食に関しては僕がこういう場に立つまでもなく、本当に大先輩の方々、プロフェッショナルの方々が多数ご参加されていらっしゃいますので、このような場で申し上げるのは非常に僭越至極なんでございますけれども。

僕はカフェという切り口で、食の分野で現在海外合わせて100店舗ぐらいの店舗を経営してるんですが、カフェという性格上、食だけではなくて衣食住、ライフスタイル全般をどういうふうに1つの空間としてインテグレートするか、そういったことを生業としております。

おそらくクールジャパンでお役に立てるとしたら、食を中心とした衣食住全般を生態系としてとらえていく、キーワードとしての生態系というのは今年の1月から採用されたキーワードでもございますけれども。

それぞれの分野が縦割りではなくて、一体として考えていくのが先ほど川上さんからもお話がありましたが、文化の発信としてのクールジャパンではないかという観点で食を担当させていただいたんだろうなと理解をしております。

日本に食の発信基地を

今、世界で非常に日本での食の世界の人気が高いといいますか、求められているということは言うまでもないことだと思いますが、一方でいくつかのこういうチャンスな時期だからこそ、整備しなければならない課題があるなということを議論してまいりました。

1つには今日は辻さんも来られていますけれど、2010年にアメリカのCIAというフードビジネススクールで日本のシェフの方々が皆さん、プレゼンテーションをしました。非常に大盛況であり、そして多くの感銘を受けて、そういったことが日本の食として広まってきたきっかけになったことは間違いないと思います。

一方で、日本の食を世界に広めていくための拠点として、世界でプレゼンテーションするだけではなくてやはり日本に拠点を作っていくこと。日本から世界の食を考えていく発信基地を作っていくこと。

こういったことが非常に大切ではないかということで、日本にも食の経営、大学院、ラボというような、そういうものが日本にあって、世界中の日本の食を求める、あるいは学びたい方々が日本を訪れてそこからその世界に発信していく、こういった拠点作りが大事ではないかという論点から1つの議論をいたしました。

もう1つは、これだけ日本のレストラン、シェフの方々が世界で有名になってこられてるにもかかわらず、一方で食を農業から外食まで合わせて考えますと、農業という見地からの世界への発信性ということが比較的弱いのではないかと思います。

もちろん個々の農産品としては非常にブランドが立っている部分も多いんですけれども、例えばドイツであればオクトーバーフェストというのが本当に数十万人の動員を誇っている。あるいはスペインであればトマト祭りだったり、フランスはパリ納涼祭だったり。

いろんな世界に出ていく農業、そして食の祭典というものを、もはやクリエイティブ競争が食を中心として起きてる現在のなかにおいて、各国ともにそういったそのイベントでの海外ブランド展開ということをやっています。

日本はどちらかというと国内の消費者向けの農業イベントが非常に多いので、世界に向けたそういった発信イベントなり、そういった継続的なブランディングということが大事であろうと思っています。

僕らは東京ハーヴェストというイベントを11月に開催しているんですけれど、3年前から始めたイベントで毎年、毎年人数が増えております。ここを1つの核にして海外と食を結ぶ活動を続けてるというのが今の現状でございます。

梅澤:あとでまた地方と食のつながりについてもお話を頂ければと思います。

楠本:はい。よろしくお願いします。

“日本”を求めているのは誰だ?

梅澤:じゃあ夏野さん、食以外の分野で夏野さんが特に重要と思われるところをピックアップを頂けますでしょうか?

夏野剛氏(以下、夏野):慶応大学の夏野と申します。

この会議自身も今この場自身がインターネット、ニコニコの生放送で放送されていて、「ちっともクールじゃない」という意見が多数を占めておりますんで、事務局側の今後はクールに見えるようなセットをぜひお願いしたいと思うんですが。まあそれは置いといて。

コンテンツに関してはもちろん戦略会議でたくさんの話が出まして。いろんな問題点指摘されています。問題点多くあるなかで、やっぱりここまでこぎつけたってことは1つのステップかなというふうに思ってるんですが。

やっぱりぜひ課題っていうものを認識、いいことばっかりじゃなくて課題を認識していただきたいなということで、あえて課題を申し上げたいと思います。

こちらに書いてあるように映像コンテンツとか音楽とかあるいは映画とか各分野で日本のコンテンツが注目はされているんですけども、基本的に漫画も含めてどんどん出していこうという政府の姿勢そのものはもう非常に良くて。

じゃあ、具体的にどうやるんだって議論が行われてるわけなんですが。ちょっと冷静に考えてみると、「じゃあ、誰が求めてるの?」という議論をもっと深めるべきで。特にコンテンツホルダーの方がよくターゲットを狙わなきゃいけないっていうことを僕は非常に思っております。

夏野氏が考える3つの課題

3つの課題があるなというふうに思っているんですけど。

1つはコンテンツの類型別に戦略が違うんじゃないの、という話です。これは何かというと、例えば漫画とか映画とかが典型なんですが、まず言語依存とか社会環境とか文化に依存している度合いっていうのがコンテンツによって全然違うんですね。

例えばドラえもん関係者いたら、ドラえもんはやっぱり6畳の和室で机を置いて机のなかからネコ型ロボットが出てくる時点で日本なんですよね。そうするとそこは話を聞くと、アメリカ版ではかなりのび太の登場回数が減っているとかいろいろあるものの、やっぱり文化的背景があるもので。

しかしながらファンにすごく深く刺さるもの。これは言ってみれば世界のなかの0.1パーセントに深く買ってもらうコンテンツだと思うんですよ。ドラえもんがそうだとは言っていません、例として言っただけです。

この世界の0.1パーセントに深く刺さるっていうと、「0.1パーセントかよ」って思う方いらっしゃいますが、それでも700万人いますから。70億人の0.1パーセント、700万人ね。日本のなかのオタクの割合って考えると700万人もいないかもしれないんで。ということは、今のマーケットの倍いるわけですね。

それともうちょっと広く狙える、例えば世界の人口の10パーセントは狙えるような文化的背景、あるいは言語依存が少ないコンテンツってあるんですね。ゲームなんかに多いですけど、そういうものは7億人がマーケットなんです。

そうするとこれ、攻め方が全然違うはずなんですけど、もしかしたら我々はそれ同一に語ってないか、これ1つポイントとしてあります。つまり誰が欲しているかによってやり方全然違うだろうということをもっと深く深めなきゃいけないだろうと思ってます。

時代にあわせたスピード感を持つ必要性

それから次に大きなポイントは、タイムフレームですよね。タイムフレームは、やっぱり日本の企業っていうのはどうしてもありのままに攻めてくみたいな。無理しないみたいな。特に経営陣の方にそういう意向が強くて、海外狙っているのに経営者英語できないみたいな話はもうあり得ないんですけど。

そういう意味ではコンテンツの時代背景依存度によってはじわじわ攻めるっていうのも効果的な場合がありますが、時代背景が大きいもの、例えばドラマのなかに携帯電話が出てくるものは、もう5年間でものすごく古く見えちゃうんですね。

僕が言うのも何ですけど、いまだにガラケーじゃドラマは成り立たないので、そういう意味で言うと時代背景依存度が高いコンテンツはやっぱり早めに広げなきゃいけない。時間は待っていられない。

一方でじっくりじわじわ、例えば歴史ものとかこういうのはじっくりじわじわ広げてってもいいわけで。そうするとここ戦略が変わるわけですよね。

それから最後に体制の構築。体制の構築でどうしても日本企業は同じ釜の飯何十年っていう人たちだけで海外展開もすませようとするんですが、時代はやっぱり使えるものは何でも使うっていう時代になっていて、そこに国籍、ジェンダー、そして年代といったものは基本的に関係ないはずなんですが、どうしても同じグループの人たちで固まって、なかなかやらないという傾向があります。

これは既存組織拡大型。これで間に合うコンテンツがあればそれでも結構なんですけど、間に合わない場合だったらむしろ自分たちでやらないってことを早めに宣言してパートナー探すこともあっていいはずなんですね。

というように、大きく3つ今考え方を変えていかなきゃいけないポイントがあって、まず自分の持ってるコンテンツはどういう類型なのか。そして次にタイムフレームはどれぐらいを目指してどれぐらいの成果を上げようとしてるのか。

そして体制はどういう体制でいくのかっていうことをよくよくここにいらっしゃるコンテンツホルダーの方々考えていただいた上で、ぜひいい相手をここで見つけてっていただきたいなとそういう思いも込めて、我々の有識者会議ではこういうかたちのプラットフォームに会議全体を進化させて、皆さんにこういう場を提供していると理解しています。

以上です。

制作協力:VoXT