「一発逆転を夢見て…」というのが1番危険

藤田晋氏(以下、藤田):失敗したことはやっぱり組織の財産になってきているので、6割成功して4割失敗して、4割は必ずしも無駄ではない。そのために、制度面と風土面の両方で可能になるように一生懸命やっております。

制度面ではCAJJ制度というのがあって、撤退ルールが最初から決まっている。失敗してもいいけど、これ以上失敗したら打ち止めなっていうルール、ある一定の年数を過ぎて黒字化できないとか、何四半期連続減収減益であるとか、そういうルールが決まっていて、それに抵触するとアウト。失敗してもいいんですけど……。

会社は飲み食いでつぶれないけど事業でつぶれるというふうに言いますけど、1番危険なのは駄目な博打打ちの最後みたいに、もう今度これで逆転できるはず、できるはずって投資を膨らませていったときが1番危険なんですよ。

これ、個人でもよくありますけど。今シャバにはいませんけども(笑)、大王製紙の井川さんとかも、カジノで最後一発逆転を夢見て賭け続けていってしまったんですけど、やっぱり事業でもそのようなことが十分起こり得て、それはもう驚くような桁に最後なっていくので、それが起きないようにストッパーを作る意味でCAJJ制度っていうのを作っているんです。

挑戦した敗者にはセカンドチャンスを

藤田:風土面では、まず、会社の価値観を示す尺みたいなもので、「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを」とうたっていて、挑戦して駄目だったとしても、次もまたセカンドチャンスあげるよというふうなことを言っているんです。

これはそういう言葉で言っても、実際にそういう失敗した人を批判したり、昇格者から外すような風土があると、みんなやっぱりビビって縮こまってしまうので、トップである私も、自分が言っちゃうんですけど(笑)、っていうか人のこと言えないですけど、ネット上で炎上して会社のブランドに傷をつけたとか、全然、大丈夫。

最近も「会社は学校じゃねぇ」ってブログを書いた新入社員の社長が炎上したのを、僕もブログで「全然問題ない」というふうに書いて擁護したりとか。

要は、そういう新しいチャレンジをして失敗した人を責めないという空気を一生懸命作るというのは、その一方で一生懸命やっております。

岩本隆氏(以下、岩本):ありがとうございます。

失敗は必要だと認識すること

岩本:それでは会場から質問をお受けしたいなと思います。

質問者:お三方にお伺いしたいんですが、失敗力ということで、失敗をたくさんされてきたかと思うんですが、失敗されたときに、もし何かぶれないものであったりとか、揺るがないものがおありでしたら、お伺いさせていただきたいなと思います。よろしくお願いいたします。

岩本:じゃあ、今回逆で兼元さんからお答え頂けますか?

兼元謙任氏(以下、兼元):やっぱりミッションだと思います。自分達の会社。個人と会社と一緒だったり分かれてるところがあるんですけれど、それをやっぱり定めて皆さんと共有して、失敗したことが、それにどう違ったのか、今度はそれに必ず合わせていくようにしたら良いと思いますね。

ミッションをどう共有して、そのミッションとどうブレてて今度はどういうふうに方向調整をしたらというように。

車の運転もそうなんですけど、ハンドルが止まってたら倒れちゃうっていうか、真っ直ぐ変なほうに行っちゃう。自転車もそうなんですけど、ゆっくりこんな感じで動かしたり、この遊びと、ゆっくりある方向に向かっているっていうところで、必ず真っ直ぐっていうんじゃなくて、やっぱり失敗は必要だということも認識しながらやられるといいかと思います。答えになってますでしょうか。

岩本:ありがとうございます。

ミッションからブレるくらいなら死んだ方がマシ

石渡美奈氏(以下、石渡):はい。ちょっとスライドを映して頂いてよろしいですかね。ありがとうございます。

我々経営者は、かなり強いミッションを持っているので、そんなことではブレないというか、ブレるんだったら死んだほうがましと多分思っているんですね。

それで、課題は社員達が日々ぶつかる時にどうするかだと思います。それで、私は今、岩本先生がいらっしゃる大学院の2階下の3階のシステムデザイン・マネジメント研究科というところにいるんですが、そこで幸せ、幸福論を研究しているんですね。

で、うちの研究科委員長の前野隆司先生の研究によると、人間が幸せを持続する1番は自己成長感を積み重ねることだって言っています。

そこから得て、私は弊社の組織が、社員達が安心して自己成長に挑み続けられる環境を作りたいっていうことがひとつの社員との約束なんです。

その中で今、若い社員達の基礎力を付けるということをやっているんですが、そのひとつの手法がですね、このスライドに映されたとおり、リアルタイム1,001本ノックと言いまして、失敗とか成功ではなくて、ことを起こして、出た結果、成果について私たち先輩が気付いたらそれをリアルタイムでギフトするという。

例えば日本語おかしいんじゃないとか、そういう方法でお客様に持っていくと伝わらないよというようなですね、それをリーダー側は相手が分かるまで、行動が変わるまで1,001回ノックする。

ノックというのはギフトするということで、そういうことを約束しています。取り入れています。これなんで1,000ではなく1,001かと申しますと、ここの1にものすごい意味があって、自分も含めて社員の行動が変わらないと分かったことにはならないという過程なんですね。

頭で分かった気になっているだけではダメ

石渡:それをコップに入れた水に例えると、1,000本というのは表面まで水が入ってひたひたになった状態です。それだと分かったうちに入らない。脳みそで分かっているだけ、分かった気になっているだけなんですね。あと1滴、あと1本ノックを打った時にコップから水が溢れる、それが行動が変わる、それが分かったという。

1,000本までは分かった気になっている世界で、1,001本になると、それが本当に分かった、だから行動が出来る。で、行動が出来たことで、その成果を例えば進化させられたり、乗り越えられたりというですね。

その次の成長が来るということだと考えています。なので、何があっても揺るがないようにぶれないように、私たちとしては若い社員が安心して自己成長に挑める組織を作る。

その中の手法のひとつが、リアルタイム1,001本ノックという。はい、というご紹介でございましたが、お答えになりましたでしょうか。ありがとうございます。

岩本:ホッピーの会社らしく(笑)。

過度に悲観していないか、開き直っていないか

岩本:じゃあ、藤田さんお願いします。

藤田:はい。失敗したら、本当に大事なのは、その後も過度に悲観してびびって足が動かなくなるというのがまず危険なことと、もうひとつ危険なのはすごく開き直って楽観視していてもやっぱり危険で。

やっぱりぶれないこと自体がすごく大事だし、あとしっかり失敗を1回受け止めるということも大事なんですけど、ちょっとゴルフをしてない人にはわかり辛い例えかもしれないんですけど、ゴルフのどっかのホールで思わぬミスをして、それを次のホール引きずってるとガタガタになっていくんですよ。

これは誰でもそうだと思うんですけど。これはやっぱり過度に悲観したり、また同じミスをするかもしれないというような状態で、楽観的にもう大丈夫ってやってても、やっぱりミスしたのにはなんかフォームが崩れてたり原因があるので、楽観視してる人はまた同じようなミスをするという。

なんでミスしたのか、今どこが崩れたのか、1回そのものを受け止めて、そして次のゴールに向かわなきゃいけないんですけど。さっき挑戦した敗者にはセカンドチャンスをというように言いましたけど、次のチャンスを与える時に見ているところが、自分の力がもう相当駄目なんじゃないかと過度に悲観していないか、開き直っていないか、失敗したという事実をちゃんと受け止めているかというようなところはチェックポイントにしています。

制作協力:VoXT