「学生の声」を一番多く持つWebメディア、ワンキャリア

寺口浩大氏(以下、寺口):一旦、秋山さんからは頭出しのほうをいただきました。寺口からは続けて、かなりシンプルに要点だけお伝えしてから、先ほどのお話もできればと思います。改めて、よろしくお願いします。ワンキャリアでPRディレクターをやっております、寺口と申します。もともと金融畑出身で、20代はいろんな業界にいて、2017年の1月からワンキャリアにジョインしています。

ワンキャリアがそんなに有名じゃなくて、まだ10名ちょっとぐらいの時に入って、そこから3年間くらいで、少しずつ学生や人事の方々に知っていただけるようにはなってきているのかなと思っています。

採用マーケットが、この数年間でどのように大きく変わってきたのか? みたいなお話ができるかなと思っています。仕事としてはいわゆるPRですね。ライブ関連の企画であったりとか、あとはソーシャルムーブメントというか。それこそSNSも使いながらやっていく、他の企業さんとのタイアップとか、あとは自社でもブランドコミュニケーションみたいなものを専門にやっています。

PRの仕事をしていると、採用に活かせることがかなり多いなと思っているので。僕がPRの仕事をやって、PRの業界とか広告の業界とかで得たノウハウを、どういうふうに採用に活かせるのか? というところを、今日はお話できればなと思っています。

ワンキャリアですが、一言でいうと「学生の声のデータを一番多く持っているWebメディア」です。「就活クチコミサイト」と言ってるんですけれども。他の業界でいうと、ぐるなび、ホットペーパーがもともとあったところに、食べログがすごく伸びてきたように、ユーザーからの支持を集めています。

価格comさんだったらコマースで、@コスメさんだったら美容業界ですね。いわゆる「体験者の声」というものが、SNSやクチコミメディアの発達で法人の発行する情報よりも、個人の発行する情報のほうが整理されてきたので。エンゲージメントが高いというか、信頼され始める時代になってきました。

実は就職活動とか新卒採用のマーケットというのは、企業のみなさまが発信する情報と、あとは掲示板のような、本当かどうかわからない“釣り”もけっこうあるような情報の、両極端のところしかなかったんですけれども。個人発信の、ある程度は確からしい情報が溜まっているメディアって、これまであまりなかったんです。

それを「必要だよね」と。「個人の仕事選びにとっても企業さんの採用にとっても、本当に良い採用をやっている企業さんとか良い体験をしてもらっていて学生からの評価がすごく高いのに、知名度がないから知られないとか。そういうのってなんかおかしいよね」ということで、こういうものを作り始めました。ずっとデータを溜め続けて、それを整え続けて。数年経って、やっとちょっとずつ注目されてきているのが、今の状態です。

こんな感じでやっているんですけれども、もともといわゆる僕ら、対策コンテンツとか準備コンテンツを揃えていて。本当にその企業さんに行きたい学生さんがしっかり準備してから望みたい、というようなニーズがかなりあるので、そういうコンテンツを配信していました。

そうしたら、始めにそれを利用してくれたのが、いわゆる上位校の学生さん。その中で、クチコミでどんどん広がっていって。今はマーケットの半分弱ぐらいの学生さんには、使われるようになってきました。

採用市場で勝つための、候補者体験

寺口:スパイスボックスさんとも、大型の採用ブランディングの案件を、一緒にサポートさせていただいていることもあります。(スライドを指して)左側、コロナの影響で企業説明会がほとんどオンラインになった。合説も全部できなくなってしまった。

我々もエキスポをやっていたんですができなくなったので、3月から企業さんをお呼びして企業説明会をやっています。僕らは30万件の「学生の声」を持っているので、そういった「学生さんが本当に聞きたい本音」を代わりに聞きつつ、企業さんから「それはぜんぜん違うんだよ」というなど話に答えてもらっていました。

「なぜならば実は、こうだ」みたいな感じでインタラクティブにやってもらう。ワンウェイの説明会がなかなか難しいなという企業さんが、うちの司会者と会話形式でトークするというのが、うちのYouTubeの説明会です。

(スライドを指して)今日はこれだけ伝えたかったんですけれども。先ほどの秋山さんの話とちょっと似ているんですが。基本的にこれは何かというと「入社企業の魅力を見聞きした情報源」というところで。学生さんがどんなところで、誰から一番始めに情報を得ているのかという話です。

この赤で囲っているところが、実際の体験をもとにしたものなんですね。「社員、店員などを通して」というところと「インターネット上でのクチコミ評判」。あとは「身近な人との会話」。これは近しい人、オフラインのクチコミですね。

なので「誰にどう言ってもらうか」というのが、実は自社(からの働きかけ)がどうのというよりも、明らかに多く学生にインパクトする時代になってきています。なので、求人広告はもちろんしっかりやる。自社の採用サイトももちろんしっかりやる。ただ、インパクトさせるためにふだん接する……これをCX(キャンディデート・エクスペリエンス)と呼んでいるんですけれども。

今、候補者体験をいかに良くするかというところを改善している企業が、採用でめちゃくちゃ勝っているんですね。いい認知につながっていて、SNSでめちゃくちゃ拡散されるので。ワンキャリアのようなクチコミメディアにも体験の情報はけっこうストックされるので、こういったところをうまく活用していきましょうという話を、企業さんと一緒にしているというような感じです。

広告費の減少につながる「体験者の推薦」

寺口:次は「クチコミが今なぜ注目されているのか」ということなんですが。

SELECKさんの記事で、脱自画自賛の採用というテーマで取材いただいたことがあるんですよ。これもトレンドだと思っていて。今までって、みんなが「自分の会社ってとても良い会社だよ」と言っていた。僕らも、もちろん言っているんですけれども。

でもみんなそう言っている状態だと、差別化がなかなか難しいですよね。これをPR発想で「誰にどう言ってもらえばいいんだっけ?」という発想にして。それで、実際にインターンに行った先輩に学生がけっこう聞くわけですよね。そうしたらインターンに行った先輩に、レコ(推薦)してもらったらいいんじゃないかとか。あとは3年生の5〜6月に動いている人たちって結局、就活におけるインフルエンサーになるので。

10月、11月から動き始めている人は、5〜6月にすでに動いていた人に聞くんですね。じゃあ5〜6月に動いている人たちに良い体験をしてもらったら、10月、11月から動き始める学生にレコしてもらえるんじゃないか。こういうふうに、体験者に推薦してもらえると、広告費がどんどん減っていくんですよね。

なので認知形成のやり方が、良い体験をしてもらって第三者のレコメンドで良い認知をとっていくと。これはトレンドとして、この2年くらいで一気に変わり始めてきています。

昔とは様変わりした、クチコミの質

寺口:次のページで、クチコミというもの……基本的には認知と体験のギャップというものが、ある程度、確からしいファクトのもとにこういったかたちでレコメンドされていく。というものになっています。

(私は)2010年から社会人になったので、2008年ぐらいに就職活動やっていたんですけれども。その時のクチコミって、真偽不明の噂話みたいな感じだったんです。でも今のクチコミというのは、けっこう確からしいファクトになっているので。「じゃあこれにどうやって書いてもらったらいいんだっけ?」というところを、うまくマーケティングに使っていきましょう。というのが、僕らが今日伝えたいことです。

(スライドを指して)みなさんもすると思うんですけども、学生さんもリファレンスチェックしますよということですね。

(スライドを指して)これも先ほどお話したとおりかなと思います。「クチコミの評価が高いからインターンに行きました」というように。

この間もインターンに参加した学生さんに「なんで来てくれたんですか?」と聞いたら、多くの学生さんに「クチコミがめちゃくちゃ良かったんで」と言われました。うちも平等に、レーティングを載せているんですけども。「説明会が5点満点で、体験が何点、インターンが何点、本選考が何点」となっています。

うちは「4.7点」くらいあるんですが、そこで知ってもらっていたりとか。去年ご支援させていただいた企業さんとかも、クチコミアワードを取っていらっしゃる企業さんは「ほとんど広告を打たなくてもたくさんエントリーが集まった」とか。あと、SELECKさんの取材を受けていたユナイテッドさん。「SELECK、ユナイテッド」で検索したら出てくるかなと思うんですけれども。

「クチコミのマーケティングをうまく使って、インターンで人を呼んでいる」みたいな話もかなり出てきているので、ぜひ覚えていただきたいなと思います。細かい話は後ほど、できればと思っているんですけれども。この辺りが最近のトレンドではありますので、トレンドが変わってくる時にうまく乗っていただければなと思います。

「学生の声を意識したコミュニケーションが重要ですよ」ということを今日はひたすら、あと1時間言い続けたいなと思うんですけど(笑)。みなさんの質問に、できるだけインタラクティブに答えていきたいなと思っております。

オンライン化で採用担当者がハマリがちな“落とし穴”

寺口:ではパネルディスカッションに移っていきたいと思うんですけれども、6個テーマがあります。

秋山さん。これからこのテーマについて、ふだん人事・採用担当をされていらっしゃる方々が、なかなか知りにくい情報をできるだけ出していきたいなと思っているので。随時、お互い画面共有しながら進めていければと思っています。

秋山真氏(以下、秋山):そうですね。よろしくお願いします。

寺口:お願いします。(テーマの中で)「これを聞いて帰りたい」というものがあったら、どんどんチャットに入れてみてください。多いものからいこうかなと思います。

秋山:そうしましょう。

寺口:ありがとうございます。できるだけ全部の内容を含みながらいきたいなと思うんですが、明らかに多いのが「オンライン採用のあるあるギャップ」「順調な母集団形成、実は練習台に」というところと、採用術のところ。そうですね、多いものから言っていきましょうか。じゃあ「オンライン採用のあるあるギャップ」からいってみましょうか。

秋山:そうしましょう。

寺口:秋山さん、こちら、どうですか?

秋山:そうですね。僕らはまさに、マーケティング視点になるんですけど。学生の声で直接的なギャップを見い出していくというよりも、全体的にマーケティング、学生の声を立体的にSNSでも聞く中で「どういうメディアをもともと見ているんだろうか?」とか「どういうソースから情報を収集しているのか?」とか。そんなことを見ながら、気づいていることをシェアしたいと思います。

よく僕らが「採用マーケティングが必要な理由」という話の中で、市場背景の整理をするんですけど、(スライドを指して)これがまとめなんです。今年に入って特に「22卒の採用コミュニケーションを考えていく上で、このポイントは絶対に押さえてください」という。他のセミナーでも使っているんですけれども。あるあるギャップでいうと、この上2つ。

「デジタル・SNS発展」と「採用市場での接触メディア・行動変化」の2つは、けっこう人事さんでギャップを持っている方がいます。このギャップって何かというと、今年一気にオンライン採用とか、Webで採用しなければいけないという環境になってしまったということもあって、一気にオンラインシフトしたような企業さんって、すごく増えているんですけど。

オンライン=Webサイトとか自社の採用サイトとか、あとはSNSアカウントを立ち上げるとか“点”でWebのパーツを実施していく企業さんが多いのですが「立体的にどこでどう伝えていくか」をしっかり設計していかないと、落とし穴にハマると思っています。

発信者が増えると、スルーされる情報も増える

秋山:先ほどもお話ししましたが、上の部分の文章だけ抜粋してお話をすると。SNSとかデジタルって、情報量が増えると何が増えるかというと、マスメディアに比べて発信者が増えるので、スルーされる情報が今すごく多いんですね。

SNS上のデータで例えば「就活」というキーワードを含む情報って、この1ヶ月だけでも、30万以上もアクション(いいねやシェア)されているんですよ。ということはつまり、見られている数ってもっと多いんですね。もちろんスルーされる情報も多いです。

特に企業発信のものでいうと、これは広告コミュニケーションも同様ですが、スルーされる情報がすごく多い時代なんていわれています。

一方でナビサイトさんは、使われる時期も変わってきています。まったく使われていないわけではありませんが、さきほど申し上げたように検索数が、バーっと減っていってる。

だけど、世の中の情報は増えてくるということは、SNS含めた、Web上に他の採用情報もかなり散らばっていることが伺えるんです。なのでSNS以外にも、Webメディアや、オフラインも含めたコミュニティに分散しているという点もあります。

例えばパナソニックさんでいうと、SNS上に広告も含めてかなり出していってるとか。メルカリさんでいうと「メルカン」というオウンドメディアを使いながら、自社サイトも含めて立体的にやっているということを、図として示しています。

広告やメディアタイアップを活用して、学生さんが見ているメディアとかプラットフォームに情報を置いていくということが今、重要になってきています。なので、これは採用コミュニケーションの一事例、フレームワークではありますが。

このフレームワークを整理しないまま「採用・インターンをとりあえずオンラインにします」とか「面接・面談をオンラインでします」というだけだと、情報の流通構造というのを無視した施策になってしまいます。

これはオフラインも含めた一例ですが。認知や興味の段階で「どこでアプローチして何の情報を置いていくのか」「興味〜共感醸成の段階で何を使っていくのか」など、ファネルごとのツールの整理というのをしていかないと。「エントリーはめちゃめちゃ集まったけど、採用できなかった」「結局、採用テーブルに乗らなかった」といったことも、けっこう起きてしまうのかな、と思っています。

マーケティング視点からいうと繰り返しになりますが、「今までと同様の施策をオンライン化しただけ」というのは落とし穴かなと思っています。まだオンライン採用初年度の企業さんも多いので、成功・失敗、結果としてぜんぜん出てないかもしれませんが。この辺は今出来ている企業さんとそうでない企業さんで、今後差が出てくると思います。