どうなる? 議員の育休

安藤哲也氏(以下、安藤):お時間になりましたので始めたいと思います。今日はファザーリング・ジャパンの緊急フォーラムにお越しいただきましてありがとうございます。私、代表理事の安藤です。よろしくお願いします。

今日のテーマは皆さんご存知の通り「どうなる? 議員の育休」ということで、テーマを設定しております。ファザーリング・ジャパンは今年で活動10年目に入ります。

この10年でいろいろ変わってきたこともありますが、まだまだ今回の案件を見ると非常に根強く残っている問題をなんとかしたいと思っています。

議員だけではなく、その背後には何万人という「育児をしたい!」「育休を取りたい!」という男性がいることが我々の日々の活動からわかっていますので、こういった男性のメリットだけではなく、女性活躍推進あるいは少子化対策、そういったものについても幅広く皆さんと議論していきたいと思っています。

ですので、今日は議員の育休の是非を問う会ではありません。皆さんここだけ押さえておいてください。それが良い悪いはネット上で散々繰り広げられています。あえてこの場でするつもりはまったくございません。

議員の育休がその先にどういう日本社会の変化をもたらすのか。それが我々にとってどういう意味があるのか。それぞれの立場でいろんな課題に向かって活動中の皆さんにお越しいただいていますので、それぞれのご意見うかがいながら一緒に考えていきたいと思っています。

前方に12名いらっしゃるのですけれども、まだ空席がありますが、一応、今日の主役なのかな? 自民党の宮崎議員が、恥ずかしがって入れないので、皆さま拍手で迎えてください。どうぞ宮崎議員! 

(会場拍手)

まずは宮崎議員の言葉から

宮崎議員がいらっしゃいました。よろしくお願いします。今日は2時間くらいで、登壇者も多いので、どんどん進めていきます。まずは始めるにあたって、宮崎議員から一言あるようなので、お言葉いただきたいと思います。

大丈夫ですね!? いいですか? 僕が言いましょうか?

(会場笑)

宮崎謙介氏(以下、宮崎):後にします……。

安藤:進めていいのですか? 

宮崎:皆さん、はじめまして!

(会場拍手)

衆議院議員の宮崎謙介でございます。今の状況は凄く非常に複雑でして、世の中に賛否両論あるなかで物議を醸して、大変多くの皆様に迷惑をおかけしていることを実感している日々でございます。また、一方で応援してくださる方も多くいるので、それはそれでありがたいなと思っています。

これからの日本のなかで少子化が進んでさらに女性の社会進出もしなきゃいけない。両方頑張っていかなきゃいけないなかで、男性の育児参加。何が何でも進めなきゃいけないというなかで、今はちょっとですね、あまりこう人前で話をしてはいけないという状況になっておりまして……。

安藤:いや、話していますよ!

宮崎:流れでこうなってしまっており、大変悩ましい状況なので、ぜひメディアの皆さま、私のところだけこうなんとかしていただけないかなというのが本音のところでありまして。

安藤:それは、どこかからのプレッシャー?

宮崎:いやいや、そういうわけではなくて、私が目指すものは日本の風土を変えること。雰囲気を変えることと、制度をより充実させていきたいということの2つでございますので、ぜひ、メディアの皆さま、ご配慮いただけると大変ありがたいです。

本当に今、この1時間くらいの間で、いろいろ私も困惑していて、こんなに頭が真っ白になったのは、初めての選挙と同じくらいでして。そういうことでございます。本当はここで退席をしなきゃいけないぐらいなのですけど……。

安藤:話を聞いていけばいいのでは?

宮崎:聞かせて頂きますね。とりあえずそういうことでございます。よろしくお願いします。

AERA読者の反応は?

安藤:わかりました。ありがとうございます。日本の制度を変えたり、皆さまのブログを読んだりすると、戦うべきは少子化だとおっしゃっていまして、そういった日本の構造的な問題に、今回のアクションがどうなるのか。まさに今日は話し合いたい思っています。

それでは、たくさんいらっしゃるのですけど、どんどんいきますよ。『AERA』の浜田さん。

先週号でこの問題を取り上げていましたけど、今この状況ですね。議員育休に寄せられる世論はどうなっているのか。浜田さん個人の考えで、宮崎さんに言えるようなことがあればお願いします。

浜田敬子氏(以下、浜田):こんばんは。AERA編集長の浜田です。宮崎さん! うちのインタビューに出て頂いたのにどうしたのですかという感じなのですが、この問題については先週号で、ご夫妻にインタビューをさせていただきました。

AERA読者は基本的に育休をぜひ取るべきというような読者が多いので、反響としてはやはり頑張れということが多かったと思います。個人的にも宮崎さんのような立場の方が取っていただく、宣言していただくことは非常に意義が大きいと思っています。

もちろん国会議員の立場ということが、問題になっているわけですけれども、それについてもうちのインタビューで「休むわけではない」と。「きちんと仕事をするのだ」ということを宮崎さんもおっしゃっているので、そういったことに対しての理解が広まればいいんじゃないかと思っています。

「国会議員の評判を落とす」と言ったのは誰かと。本当にぜひ聞きたかったのですけども、こういう人こそ本当にいなくなってもらわないと困る。日本の政治はよくならないと個人的に思っています。

日本における男性の育休の現状

安藤:ありがとうございました。ではここで、日本の男性の育休がどういう状況になっているのか。ファザーリング・ジャパンの調査結果からお話したいと思います。モデレーターの塚越さん、よろしくお願いします。

塚越学氏(以下、塚越):ありがとうございます。ファザーリング・ジャパンの理事をしておりまして、男性の育児休業促進の事業リーダー「さんきゅーパパプロジェクト」のリーダーをやっております。

こちらでも皆さん今日来ていらっしゃる方々ご存知の通りですけども、日本の男性の育児休業取得率になります。左側は男性になります。まるで右肩上がりに見えますが、女性と比べると地を這っている状況でございます。

これがまず現状。このなかで「少子化社会対策大綱」。2015年3月に決まったものですが、2020年までに13パーセントまで持っていくということですね。これはだいぶ前から13パーセントの目標に持っていくために、いろいろな政策をしているわけですが、男性の育児休業取得率は上がらないということです。

「少子化社会対策大綱」のなかで、新しく挙がった数値があります。産後8週間内の男性の休暇。これは育休、有給、両方入りますが80パーセントにするという数値目標が初めて入りました。現状いくつかというところは、あまり調べられていないかなと思いまして、ファザーリング・ジャパンで調査をいたしました。

「6割の男性が育児のために休暇を取りたい」と回答

こちらを2015年の6月に我々が発表したわけなのですけれども、我々「隠れ育休」という名前をとっています。これは育児休業制度ではなく、有給休暇や特別休暇を利用して休暇を男性たちが、子どもやパートナーのためにどのくらいの比率で取っているのかということです。

それが現状46パーセントでございました。実はこれ4年前にも調べていまして、4年前が47パーセントでした。つまりこの4年間でほとんど変わっていないという数値です。

さらに、こちら感度の高い方はすぐにわかるのですが、この数値は有給休暇取得率とほとんど一致しています。ということは子供が生まれたタイミングですら、男性たちは育児休業ではなくて、有給休暇も取れていないということです。半数が取りたくないということではなくて、6割が取りたいと言っています。

さらに希望としては、一か月程度は取りたいということですね。取っている人たちをみてみますと、3日以内で7割です。取ったタイミングは、産後1週間以内、つまり入院中です。このタイミングって本来、休みが必要なのでしょうか?

実際は家に帰ってきてからの育児のところをもっと男性ができてくるとよいのですが、希望通りになっていないということになります。

育休取得が前提としての働きかけが理想

そこで我々はこれを想定して、2年前と違う1つの設問を設けました。「あなたが育児休業制度を利用するとした場合、最も利用しやすい条件・環境と思うものを一つだけ選んでください」という質問をしました。

そしたら、1位は「妻の妊娠を伝えると上司が必ず『育休はいつ取る?』と確認し、取得できる環境を整えてくれる」。これが1位です。つまり、「上司からの働きかけ」。しかも、その働きかけは「育休取るの?」ではありません。

「育休取るの?」と聞いてしまいますと踏み絵かと思われて、「取る」と言ったらまずいのではないかと思われてしまう。なので「いつ取るの?」というように取ることを前提に聞いてほしいということですね。これがかなりの比率を占めています。

またはその下、「人事部がそうしてくれる」とか「職場の仲間たちがそうしてくれる」といった周囲からの働きかけが、どうやら男性の背中を押すようだということです。

そして、もう1つ、決まりごとです。つまり、子どもを授かった自分の会社の男性が全員希望日数の有給、育休の父親時間として取ることになっている。または日本の男性全員が、取ることになっているという決まりごとであれば取りやすい。この辺りも本当に周囲を気にする国民性が出ていますね。

この想定は父親の「日本版クオータ制」。いわゆる父親たちに育児休業を割り当てるということができると、この辺りも決まりごととして、皆が推進しているということになりますので、そのあたりも想定しながらこの設問を出したということでございます。

今現状、希望通り叶っていない、有給休暇すら取れていないという状況。この辺りが5年10年、いや20年変わっていかないということです。私からは以上です。

「パタハラ」の現状と課題

安藤:ありがとうございました。では実際に育休を取った男性の声を聞いてみたいので、全日本育児普及協会代表の佐藤士文さん、お願いします。サラリーマンでありながら、7か月の育休を取った2児のパパです。今現在、パタハラ対策プロジェクトの運営をされています。今の日本のおかれているパパたちの現状と課題についてコンパクトにお願いします。

佐藤士文氏(以下、佐藤):パタハラ代表の佐藤です。よろしくお願いします。パタ二ティハラスメント、略して「パタハラ」と呼んでいるのですけれども、ご存知の方もいらっしゃいますし、まだご存知じゃない方もいらっしゃると思います。

育休を申請した40人に聞いたのですけれども、申請した段階でなんらかのハラスメントを受けた。パタハラにあたるハラスメントを受けた人が4割近くいるんです。

これは調査にいたっております。育休を申請したら結構な割合で、否定的な発言をされる。「そんなことしたら、昇進に響くよ」とか、同僚から「それ、迷惑なんだけど」みたいなことを言われるのがパタハラなのですけれども、それを受けた人が4割ぐらいいる。

そんななかで今のデータでもあった通り、周りの制度などが変わらない限り、日本のサラリーマンを変えていくことは難しいと思うんです。

私も育休を取ったときに、元々いた会社で育休を取ったのですけども、男性では初めてでした。40年以上歴史がある会社で、男性の社員も1,000人以上いる大企業でしたけれども、初めてでした。

なので、宮崎議員と共通するところはそこなんですよね。パイオニアだったということです。育休を1番初めに取った、第1号のパイオニア。パイオニアになるとやっぱり賛否両論ある。私もいろいろ言われました。賛成してくれる方もいましたし、反対する人ももちろんいました。

安藤:なんて言われたの?

佐藤:「男性でも取れるんだ」みたいな、取れることをもちろん知っていて言ったのか、恐らく、からかって言ったんだと思うんですけれども、「帰って来たら席ないんじゃないの」とかの脅しも……。

安藤:立派なパタハラだよね!

佐藤:立派なパタハラです。私はそういうのを気にしなかったのですが、ただパイオニアになる方はやはり賛否両論があっていいと思うんです。パタハラはいけないですよ!パタハラはいけないですけれども、賛否あるのは当然だと思います。

宮崎議員が今回育休を申請したいと言ったことで、やはりこういった議論が起こるわけですし、このようなイベントが開催されて、世の中に認知されていきます。

官民一体となって、男性の「働き方改革」をやっていかないと、スピードはさっきデータに出た通りずっと2パーセント。育休なんて伸びないです。20年までに13パーセントなんて達成できないですよ。

なので、宮崎議員が今日ここに来ていただいて、こういやってイベントに参加していただいたことも、すごく意義のあることだと思います。以上です。