2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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働く人と会社のつながりや、生きることと働くことのつながりについて考えるイベント「Lifestance EXPO」。本セッションは「どうすれば『やりたいこと』が見つかりますか? 読書と雑談が『はたらきかた』にもたらすものとは」と題し、桜林直子氏、三宅香帆氏、佐々木康裕氏の3名がトークセッションを行いました。本記事では、仕事をするうえで「やりたくないこと」を尊重することの重要性について語ります。
桜林直子氏(以下、桜林):私は子どもが小さい時から「どうしたいか言って」と、ずっと言っていたんですよ。突然、大学生で「どうしたい?」と聞かれるのではなく、本人が「私はどうしたい。あれは嫌だ」と常に知っている状態でいればいいと思いました。
だから、仕事に特化した話ではなく、自分がどうしたいか、欲を知っている状態を作ってあげたいというのはありました。
佐々木康裕氏(以下、佐々木):それはすごいと思います。あえて一般化して言いますが、母親って、家庭において社会的規範を子どもに教える役割を持たされがちだと思っています。うちもそうだったんですよ。だから、「挨拶しなさい」はもちろん、例えば「学校を休んじゃいけない」というのもありました。
その中で桜林さんはまったく違うアプローチをされて、「あなたはどうしたいの?」と問い続けられてきました。それはすごくユニークではないかなと思いましたね。
桜林:勇気がいるかもしれません。「あなたはどうしたいの?」と聞くのとセットで、「お母さんのせいにしないで自分で決めて」と思っていました。「『親のせいであれができなかった』と言われたくない」というのがすごく強かったんです(笑)。
たぶん、私が親のせいにしていたからだと思います。家族環境のせいでできなかったことがたくさんあるから、同じことはしたくなかったんです。
佐々木:お子さんはそのように問われると、自分の内面に問いかけることになります。それでアウトプットできるようになるのは、すごくすばらしいと思います。
佐々木:あともう1個、この本(『世界は夢組と叶え組でできている』)を読んですごいなと思ったのが、「今、目の前にある物が、誰の手によってここに運ばれてきたのかを想像しよう」というゲームをお子さんとやっていた話です。あれはすごくいいなと思って、この本を読んでから自分もそれをやるようになりました。
職業を想像したり、「世の中にはこういう職業が存在する」ということを知識として獲得したりするために、すごくいいゲームだと思いました。
桜林:ありがとうございます。あれも反面教師で、私が中学生の時に将来の夢を書けなかったのは、仕事のことを知らなかったからなんですよ。どんな仕事があるかを知らずに、知っている中から書いてしまうのはよくないと今でも思っています。
誰も教えてくれなかったからだと人のせいにしていました(笑)。だから子どもにはとにかく「仕事って何だろう?」と一緒に考えたり、少なくとも「あれもこれも全部仕事でできているんだよ」と知ってもらっていたほうが、「親が教えてくれなかった」とは言われないだろうと思ってやっていました。
佐々木:おもしろいですね。
桜林:だから、「やりたいこと」と「はたらく」を直でくっつけなくてもいいような気がします。「やりたい」「あれしたい」「これしたい」「あそこに行きたい」は、楽しいからあったほうがいい。だけど、それと「はたらく」をつなげるのって、けっこう無理がないですか?
三宅香帆氏(以下、三宅):みんな、「はたらく」と「やりたい」というプラスの感情と、「これはやりたくない」(というマイナスの感情)を持っているじゃないですか。例えば「こういう環境では働きたくない」とか。それこそ私は本が好きだけど、飲み会に出続けるのが無理なので、編集者は無理だろうなと学生時代に悟りました。
桜林:編集者は飲み会ばかりなんですね(笑)。
佐々木:(笑)。
三宅:今考えてみると、必ずしもそうではないと思うんですが(笑)。本が好きな人は、就職活動で「編集者」を選択する人もいると思います。でも自分の場合は、夜は本を読みたい、だから飲み会が多すぎるとつらい、だから編集者は選ばないという思考になりました。
三宅:やっぱり自分を守るためには、やりたいことと同じくらい、やりたくないことを尊重することが大事です。そういうことは案外世間で言われていないな、と思う時がありますね。
桜林:ありますよね。
三宅:やりたいからと言って、無理せざるを得ない環境に入ると、メンタルをやられがちな気がしますね。
佐々木:すごくわかる……。
桜林:すごくわかってる(笑)。
佐々木:少し引いた目で話すと、「自己実現」と「働く」、あるいは「働く場所を選ぶ」というところがかなり重ねて語れるようになっています。それで幸せになっている人もたくさんいると思います。
三宅さんは本の最後に『疲労社会』という本を紹介されています。この本が何を言っているかというと、昔は外からのプレッシャーで働いているから、監視の目が外にあったんですよね。現代は監視の目が自分の中にある。なぜなら、自分が「これがやりたいことだ」と言って働く場所を選んだから、すごくがんばってしまうんですよね。
そしてがんばった結果、本の題名になっているとおり疲労してしまう。その先でバーンアウトしてしまうことがあるので、「自分のやりたいこと」と「働くこと」を重ね合わせすぎる危険性に触れられていて、すごく新しい視点だと思ったんですよね。
僕も「やりたいことを仕事にしたい」と今でも思っているんです。だけど先ほども言いましたが、カウンセリングを受けたのは「バーンアウト寸前だな」という自覚があったからです。知り合いのとても成功しているビジネスパーソンの方も心を病んでお休みしていて。それで考えたことがありました。
三宅:みんなが仕事にやりたいことを求めてしまうのは、仕事のモチベーションが欲しいからだと思っています。例えば桜林さんは、やりたいことじゃないところで仕事のモチベーションをどうやって持たれていますか?
桜林:私はけっこう段階があります。2011年に会社員から独立して、自分でクッキー屋さんを作りました。そのとき動けたモチベーションは「会社員だと給料が足りない」の1点だったんですよ。
1人でたくさん稼がなきゃいけない。だけど、時間はみんなより使えない。だから「半分の時間で2倍稼ぐ」が本当に必要なことで、それだけがモチベーションでした。モチベーションというか、それを叶えなければならない。それが「やりたいこと」だったんですよ。私が一番やりたいのは「半分の時間で、2倍稼ぐこと」だから、やることは何でもよかったんです。
佐々木:なるほど。
桜林:「何の職業に就く」「何の作業を毎日する」とかではなく、もっと手前に、欲や困っていること、叶えたいことがある。それこそ「満員電車に乗りたくない」「広い家に住みたい」「毎日お家でご飯を食べたい」とか、そういう小さな欲を無視して、突然「職業につながるやりたいこと」を考えるのは無理じゃないかなと思っています(笑)。
小さな欲を無視していると、「何か違う」という感覚を体で感じると思います。
三宅:就活の時はめちゃくちゃ大きい志望動機を語らされますが、自分の中の「本当はどういう生活をしたいのか」「どういうふうに生きたいのか」まで落とし込む作業は、個人だと難しいですよね。
それこそ、親御さんに訓練されている子や言語化が得意な子だったらいいと思います。でも大学などで教えていると、「そうじゃない子にはどうやって深掘っていったらいいのかな?」と思う時がありますね。
佐々木:桜林さんのお子さんだったら、「あなたはどうしたいの?」と、子どもの時から問われているからわかる。でも、就活の時に急に問われてもわからない。
著書にも書かれていますが、「自分のサイズと持ち物を知る」ことと、「自分と仲良くなる」トレーニングがまったくできていないまま労働市場に投げ込まれる感じが、どうしても出てしまいますよね。
桜林:やったことがないからだいたいできないですよね。今、結果的に好き勝手やって、勝手に仕事を作っていますが、「結局やりたいことをやってるじゃん」と気づいたのは段階を踏んでいるからです。
先ほど言ったように、クッキー屋さんを自分で作ったことで経済的・時間的な余裕ができて、「半分の時間で2倍稼ぐ」ことができました。それでようやく次の段階です。「日々の仕事は、もうちょっと楽しい方が続けられるんじゃないかな?」とわかったというように、段階がありました。
佐々木:なるほど。確かに。
桜林:毎日の作業がつらいと、無理があるから続けるのがしんどいじゃないですか。「楽しいことをやっていないと、10年続けるのがしんどいから」という単純な理由で、自分が楽しいと思えることを選べるようになったのは本当に最近ですね。やっぱりそれは贅沢なことだと思ってしまっていました。
佐々木:それも、ご自身で蓋をしてしまっていたということですよね。
桜林:思い込みですね。
佐々木:思い込みがあったと。
佐々木:先ほど三宅さんから「今、自分がやりたいことをやっているのは時代の流れでそうなったからだ」というお話があったと思います。時代の流れとは何か、そこをもう少し教えていただいてもいいですか?
三宅:日本のキャリア教育や仕事の教育って、昔は「みんな、立身出世を目指しましょう」という流れがありました。例えば明治時代には「官僚になる」「軍人さんになる」という道があった。
その流れで戦後は、とりあえずいい大学、いい会社に入って、会社のために尽くすのが一般的な立身出世だとされました。いわゆる昭和型の「大企業に入る」「マイホームを買う」「みんなで年金をもらう」という流れですね。しかし平成に入って、そこに外圧が入ってきました。欧米から「新自由主義」といった考え方が日本に流入したのが1990年代くらいです。
それによって、ゆとり教育とセットで「個性を伸ばして仕事に活かしましょう」といったキャリア教育が流行しました。働き方も、派遣だったりフリーランスだったりと多様になった。それに合わせて、個人の自由で、自分の意思に合った仕事選びをするのが最善のキャリア教育という価値観が、学校や就活の現場にもできてきたんですよね。
平成以降、就活で志望動機を語らされることと、「自分のやりたいことをして、自己実現して、仕事で自分のやりたいことを成功させましょう」という時代の流れがセットになった。ざっくりとまとめるなら、これが戦後のキャリアの流れだと思っています。
私は平成初期生まれなのですが、自分が小さい時から派遣やフリーランスなど働き方も多様になっていました。なおかつ当時は「自分の意思なく大企業で働くのは違うよね」と社会が言った時代。でも、本当にそれでいいんだっけ? と。
派遣やフリーランスは、福利厚生が弱い面があります。令和になって以降、「やりたい仕事だからといって、無条件に会社員を辞めていいんだっけ?」という揺り戻しがあって、現代では小学生の夢の第1位が公務員になっているのかなと。私はそう理解しています。
佐々木:確かに。
佐々木:この本(『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』)で紹介されているフレーズで「自己実現系ワーカーホリック」という言葉がありますよね。
三宅:今でいえば「Uber Eats」ですが、Uber Eatsが出てくる前に「バイク便ライダー」と言われていた人たちがいました。自分でフリーランスになって、やりがいを仕事に求めるようになるけど、実はけっこう危うい働き方です。
バイク便は事故もすごく多いです。でも、「ちゃんと保険はあるんだっけ?」とあまり考えず、やりがいだけで仕事をしてしまう若者がいる。社会学では昔からこのような議論がなされていました。
佐々木:揺り戻しがあるのもおもしろいし、その結果、小学生のやりたい仕事ランキングの1位が公務員というのもおもしろいですね。でも……ずっと振り子が動き続けているということなんですかね。
三宅:問いに戻りますが、みんな今は「『やりたいこと』だけで人は幸せになれるのか?」という問いをすごく考え始めているんじゃないかと思います。働き方の問題もホットで、やりたいことをやっていても、バーンアウトして精神がすごく苦しい人がけっこういることが、社会の中で認知され始めていると思いますね。
佐々木:確かに。
三宅:桜林さんが雑談しているお相手で、やりたいことをやりすぎて苦しんでいる方はけっこういらっしゃるんですか?
桜林:例えば転職希望の方が、「今の仕事が違うということはわかっているけど、何をしたいかわからない。自分って何をしたいんだっけ?」と、一緒に整理整頓したいという方が多いですね。
また仕事だけではなく、「何が好きだっけ? 自分は何をしていると楽しいんだっけ?」という自分の欲がよくわからなくなっている。鈍感になっていると言いますか、うっすらと膜が張っていて、「めちゃくちゃ楽しかったことってなんだっけ?」と。それくらい、わからなくなっている方がいます。
「一回いろいろ巻き戻して整理整頓したい」という方が多いですね。はじめからその必要があるとわかっているわけではありませんが、そういう作業をする羽目になる方が多いです(笑)。
佐々木:おもしろい。
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