顧客もどこかの社員であり、社員もどこかの顧客である

司会者1:残り5分間ぐらいなんですが、この話をさせていただきたいなと思っていて。しゃべりきれないと思うので、あとはアフタートークでお願いしたいなと思っているんですけど、よろしいでしょうか。

松下・上田:はい。

司会者1:それぞれの先生の本は、どちらかと言うと従業員の方に向けて、どう働くかということにフィーチャーされているのかなと思うんですけれども。私たち会社員が働くにあたって、やはり「顧客との関係性」は切っても切り離せないことなのかなと思っているんですね。

プレイフルでありたいと思っても、お客さまもプレイフルじゃなかったら、その場がプレイフルにならなかったり、チームの中に社外の人を取り入れることを考えないといけないとか。

そういった意味で「顧客の視点」を取り入れた時に、先生方の提唱されている概念はどう伝えられるのか、働き方をアップデートする時に、顧客という存在をどう捉えるのかについてお話しいただけたらなと思っています。お願いしてもよろしいでしょうか。

上田信行氏(以下、上田):どうしましょう、みなさん。

松下慶太氏(以下、松下):これは3人がそれぞれしゃべるってことですか。

司会者1:順番はランダムで大丈夫かと思っています。

松下:では口火を切らしていただきます。僕は2018年、ドイツのベルリンに1年間滞在をしたんですけど、そこですごく感じたことは、顧客も社員ということ。目の前の顧客はどこかの社員であり、自分は社員だけど、どこかの顧客だという。

だからクリスマスや年末に店が閉まっていても、「しょうがないか、自分もそうだもんな」みたいな。その感覚ってけっこう大事なんじゃないかなという気がしていて。だからあまりにも「顧客を目の前にして」と考えすぎない。

一言で言うと「お互いさま」ということです、人生100年時代で、ずっとみんなが働き続ける想定をしていく時代。副業も広がっていく時代であれば、やっぱりお互いに働き方に関しては「お互いさま」の関係を築いたり寛容になるということが、ワークスタイリングで重要なポイントになってくると思っています。

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顧客とサービス提供者の境界線が溶けてきている

田中聡氏(以下、田中):「顧客」という概念が、もっというと、「顧客」と「サービスを提供する側」の境界線がどんどん溶けてきているなと感じるんですよね。以前のように、顧客が答えを知っているとか、明確な問いを持ってオーダーをしているケースって、ほとんどなくなってきているような気がしていて。

成し遂げたい大きなものはあるんだけど、それがまだふわっとしいてて言語化されてない。だから一緒に考えてくれませんかと。一緒にそのお客さんの持っている夢とか目的を達成していくために、パートナーになってやってくれませんかという関係性に、最近のサービスって近づいてきている気がするんですよね。

要するに、「顧客に何を提供するのか」というよりは、「顧客と一緒に作っていく、関わっていく」みたいなものが、チームワークという視点からみると大事になってくるのかなって思ったりしますけどもね。

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司会者:上田先生はいかがですか。

上田:『プレイフル・シンキング』の本の中にも書いたんですけれども、「バイピープルデザイン」。つまりすべて、顧客も一緒になって考えるという。

プレイフル・シンキング[決定版] 働く人と場を楽しくする思考法

例えば、僕は今建築プロジェクトのためのワークショップをさせていただいているんですけども、このワークショップは、顧客の方、つまり施主ですね。施主と建築家が一丸となってどうやって新しいものを作っていこうかと考えるのです。

今までは、例えば施主の方から設計与件が出ていて、この与件を満たすために、「こんな感じでどうですか」って建築家が模型を見せながら提案をして、施主はそれを「じゃあここはこういうふうに変えましょう」と作り直していく感じだったんですけど。

今、その与件といいますか、実は施主自身がなにを作りたいかが、はっきりわからないということが多い。だからそれを一緒になってジェネレイトしていくというワークショップをやっているんです。

DXも、顧客とサービス提供者の「共同作業」に

上田:そういう、みんなで同じ未来を共同注視して建築を作っていくスタイルが「当事者デザイン」って呼んでいます。建築家は単にファシリテーションをして、顧客からいろんな情報を引き出そうとするんじゃなくて、いろいろな立場の人が協同で、未来を作っていこうという場をジェネレイトするのです。

目的を生成しながら、それに向かってみんなでわいわいがやがや言いながら作っていこうという。特にそういうingの場にはプレイフルなスピリットがないと、なかなかうまくいかないなぁと感じています。

ですから先ほどの顧客という存在をどう捉えるかというご質問に関しましては、やっぱり当事者全員が仲間になって、ゴールを共に生成しながらものすごくおもしろいことにチャレンジしていくという。そういう場づくりが、これからの大きな課題になるのかなと思います。

そのためのヒントとして、今日3人が生成したコンセプトを重ね合わせることによって、新たなヴィジョンが見えたような気がしています。どうもありがとうございました。

司会者1:ありがとうございます。従業員と顧客という存在も重ね合わせていって、そこにどんなものが、どんな未来があるといいのか。そこに向かって、みんなで共同作業していく。そういうイメージなのかなと聞いていました。

田中:最近、経営だとデジタルトランスフォーメーション、DXみたいなキーワードってすごく出てきますよね。「なんかDXしたいんだ」みたいな。だけどそれは単なる手段です。それを通じて何を会社として成していきたいんだっけっていう顧客側の意思というかスタンスが求められてきているのかなと思うんですよね。

キーワードは「重ねる」

司会者1:ありがとうございます。最後に、岸さんのグラレコもお願いできたらなと思うんですけれども、岸さん、大丈夫ですか?

司会者2:(miroボードは)最後に頂上に登るという構図なんですね。

司会者1:一応、山の頂上に登った感じになってます。岸さん、最後に少しご紹介いただいても大丈夫でしょうか。

:はい、今日はありがとうございました。すごい楽しく、あっという間な2時間半で、楽しく描かせていただきました。

3人の先生方が何度も何度もおっしゃってましたけど、「重ねる」「重なる」というのがキーワードで。私がお話を聞いていてとても印象的だったのが、「重ねていくと一番上しか見えない。せっかくそこまで積み重ねてきたものが見えないから、むしろ重なったのりしろが大きくても少なくても、重なってないところのほうが、もしかしたら大事で。そこから新しいものとか、おもしろいものが生まれるかもしれない」というお話がすごく印象的でした。ありがとうございました。

「スーパーインポージング」という言葉も覚えたので、この後意識しながらたくさん使っていこうと思います。

司会者1:ありがとうございます。最後に少しだけ、mctの取り組みもご紹介させていただければと思っています。 

司会者2mctは主にFacebookのグループページでコミュニティを作っていて、そこでいろんな情報のやり取りをしています。今日話にあったような働き方やチームを通じて、ビジネスをいかに成功させるか、成長させるか、みなさんと一緒に考えていきたいなと思っています。ブログとか、動画配信とかもやっているので、ぜひ興味があったら見てもらえるとうれしいです。

みんなで話せばおもしろいアイデアが出る

司会者1:ありがとうございます。本編としては以上で終わりにしたいと思うんですけれども、先生から一言ずつ、今日参加されてどうだったかをお話しいただいて、クロージングしたいと思っています。上田先生、いかがでしたでしょうか。

上田:やっぱりライブっておもしろいなと思いました。なかなかこういうものって計画ができないし、僕たちもみんなで話せばおもしろいアイデアが出るんじゃないかなという気持ちでスタートしたので。いつもそうなんですけど、だからすごくおもしろかったです。

いろんなかたちでスーパーインポーズしながら、私たちだけじゃなく聞いてくださっている方も含めて一緒にCo-editing(共編)、Co-designing(協同デザイン)していくようになってくればおもしろいなと思いました。ありがとうございました。

司会者1:ありがとうございます。松下先生、いかがしょうか。

松下:先生方とMC方と視聴者のみなさん、本当に今日はありがとうございました。最後の話じゃないですけども、今日は事前に打ち合わせはしたものの、ぜんぜん違う内容になっていて。自分も参加者でありながらしゃべるという、まさしく「顧客って一体なんなのか」という境界線がなくなってるなと感じたイベントで、本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。

この緊張感と一緒に、プレイフルで真剣に打ち込むことができた時間だったなと思って、感謝しています。ありがとうございました。

面倒くささの先にある、チームで「重ねる」ことの楽しさ

司会者1:ありがとうございます。田中先生お願いします。

田中:まずこの会を運営してくださったみなさん、本当にありがとうございました。まさに脱予定調和のイベントだったと思います。「重なる」というよりは「重ねていく」という、能動的な感じが僕はいいなぁと思いました。

さっきも言いましたけど、「重ねていく」って耳障りの良い言葉ですけど、コンフォタブルゾーン(気持ちの良い場所)から一歩抜け出すってことでもあるわけですから、いざ実践しようとすると、やっぱり面倒くさいですし、違和感を感じることもあると思うんですよね。

時には痛みを伴うこともあると思うんですけど、その先にある楽しさとかプレイフルを、チーム全体で共有できるような機会が、まだ世の中的に足りてないと思います。そんなことを感じていけると、きっと世の中はよくなるんだろうなと素直に思いました。とても楽しい時間をありがとうございました。

司会者1:ありがとうございました。

司会者2:なかなか予定どおりにいかないですね(笑)。

司会者1:すみませんでした(笑)。先生方、本当に長時間、どうもありがとうございました。

一同:ありがとうございました。