2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者1:トークテーマ1にいくまでの間にちょっとだけ時間があるので。各先生方の自己紹介をお互いに聞いて、いきなりフリーで申し訳ないんですけど、先生方同士でちょっと質問しておきたいとかってあったりしますか(笑)。
司会者2:ちょっと私から1つ質問してもいいですか?
上田信行氏(以下、上田):どうぞ。
司会者2:ありがとうございます。先生方のお話にもあったとおり、働き方とか人のモチベーションとかチームの課題って、コロナの影響もあってすごく顕在化してると思います。一方で、Appleが週3日オフィス勤務の要請に、一部従業員グループが異議を申し立てた事例にあったみたいに、「オフィスに戻ろう」という。
働く場所の話ではなくても、働き方を元に戻そうという動きもあったりして。変わろうとしているけど、戻ろうとする力も働いている。そういう状況を、先生方はそれぞれどうご覧になってるのか。これからこういう方向に向かっていくんじゃないかみたいなところで、もしなにかお考えがあればお聞きしたいなと思いました。いかがでしょうか。
松下慶太氏(以下、松下):さっきAppleの事例が出たと思うんですけども、Googleも基本的にはオフィス勤務3日とリモート勤務2日のハイブリッドですよね。僕がいつも言ってるのは、1週間の7日間を「2・2・1・2」って、2日休み、2日働く、1日フリー、2日働くにするという考え方です。この「2・2・1・2」をどう組み合わせるのか。例えばGoogleは、2と1を足して(3日を)オフィスにして、2日はリモートにして2日休み、みたいなかたちです。
あとは週休3日制が議論されてるっていう意味では、1を2の休日に含めるとかですね。あと副業をするとか。結局いくら「重ねる」といっても、やっぱり24時間で限られてる部分はあるので。「2・2・1・2」をどう振り分けていくのか、これは国とか企業とか業種とか、立ち位置によって変わってくるのかなと。
それを今みんなで議論したり、どうやって可能にするのかというテクノロジーを開発したりとか、そういうトレンドになっているんじゃないのかなって個人的には思っています。
司会者2:なるほど、ありがとうございます。1週間を7日の枠で考えるのは、すごくわかりやすいですね。1のゆとりというか余白があるのも、確かにそうだなと思いました。ありがとうございます。
田中聡氏(以下、田中):働き方を戻すとか、あるいはそのまま今の働き方を継続するとかって、いろんな議論あると思うんです。松下先生の本にも書かれていると思うんですが、やっぱりそのスタイルというか、それぞれの会社なり個人なりが意思を持って方針を定めることがとても大事な気がします。
逆に言うと、一番良くないのは方針をまったく出さないことだと思うんですよ。どっちも示さない。緩やかに「個人が好きな働き方を会社として尊重したい」って言いながら、会社として自分たちはどっちの方向に進むのかをを明確に示さない組織って結構あると思うんですけど、そこで働いてる社員のみなさんが一番つらいのかなと思っています。
いろんな仕事とか事業の兼ね合いでリモートから出社に戻したほうがいいとか、それぞれの会社ごとに結論は分かれるとは思いますけど、まだ日本企業で明確にそういう指針を示せている会社って、実はそんなに多くないですよね。経営層のみなさんは何をされているのかな、いつまで様子見されているのかな、なんて思ってます(笑)。
司会者2:(笑)。働き方ってある種の手段なので、何のためにという意味とか目的をちゃんと明確にするのは、すごく重要ですもんね。
上田:みなさんに先ほど見ていただいた梅光学院の授業の風景なんですけれども、90分の授業でも、同じ場所でやってると空気が澱んでくるんですよね。僕たちはだいたい授業中に、1、2回は場所を変えていくんです。みなさんには映像で『プレイフル・シンキング』を読むっていう最初のセッションを見ていただいたと思うんですけれども、4人ぐらいでオンサイト(現場)でブレイクアウトルームスペースに行くんですね。
教室全体で100人ぐらいいるんですけど、16人のSAが4~5人を引き連れて、いろんなところに行くんです。この建物はThe Learning Station CROSSLIGHTと呼ばれていて、20ぐらいの教室がつながり合いながら重なっているような立体的なクラスルームで構成されています。
教室だけではなく、廊下や階段なども含めて、まずどこでディスカッションしたいかを、歩きながらみんなで探るんです。「ここなんか良さそう」とか「このコーナー、なんか心地がいい」とか。そうやって場所を決めて、そこでディスカッションをするんです。
ここの場所でどううまく対話ができるかなとか考える。そうすると、その場所をうまく使って、例えばガラスの壁にポストイットを貼ったりとか、見ているとその風景がとても美しいのですよ。
CROSSLIGHTのいろんなところをグルグル回って、自分で学ぶ場所を探していく。そういう「動きながら学ぶ」とか、「動きながら働く」とかを今日話したいですね。
「どういうところで、自分はどういう働き方をしたいか」っていうことを、「どういうところで、どう学びたいか、誰と学びたいのか」っということに重ねて、大学での授業を考えたら面白いと思っています。
司会者2:ありがとうございます。確かに自由に働けるってことは、同時に本人の主体性とか責任が伴いますもんね。より高いものを要求されてる感じはしますよね。ありがとうございます。
司会者1:ありがとうございます。先生同士での質問は大丈夫でしょうか。
松下:mctのCMじゃないんですけど(笑)。ちょうど先日、上田先生と司会者のトークイベントの中で、メタ認知の話をされていたと思うんですけど、ぜひあとで上田先生とのセッションの中では、この「メタ認知」と「重ねる」のお話ができるとうれしいなって思ってます。
上田:おもしろそうですね(笑)。
松下:メタ認知の「自分がその場にいつつ全体も見る」って話を聞いた時に、まさにこれは「重ねている」ってことなんじゃないのかなって気がしたんですよね。あんまりしゃべりすぎるとあとのセッションの時間がなくなっちゃうので(笑)。
司会者1:ありがとうございます(笑)。メタ認知はおそらくチームワーキングのところの、「自分自身がチームをどう見てるのか」ということとも関わってくるのかなと思ってたので、あとでお話できるとうれしいです。
ここで一度、岸さんのグラレコを見ていただいて、第1部の振り返りをさせていただけたらなと思うんですけれども。岸さん、よろしいですか?
岸:はい。miroボードに1枚目を貼っておりますので、それを共有いただくといいかなと。
司会者2:今の話をまとめるのって、めっちゃ大変ですよね(笑)。
岸:3人の先生方のお話をお聞きしながら描いていて、なんとなく今日のキーワードは「重ねる」なのかなと感じました。いろんなことを重ねていったり、変化に対してどうやって対応していくのか。その時のキーワードというか、ポイントになるのが「プレイフル」。本気でトライするとか、おもしろがる、楽しむってことなのかなと思いました。このあとの話がとても楽しみです。ありがとうございます。
司会者1:ありがとうございます。すごいですね。
上田:こうやって可視化していただいて俯瞰するって、すごくいいですね(笑)。
田中:これがもうメタ認知になってますよね(笑)。
上田:これを見ると、「あぁ、そういうふうに言ったんだ」と、自分でけっこう納得するんですよ(笑)。すごくおもしろいですね。よくスクライビングをやっていただく方には、最後にまとめて見せていただくんですけど。こういうふうに、1回立ち止まってちょっと俯瞰して次にいくっていうのは、とてもいいですよね。とても素晴らしい方法だと思います。ありがとうございます。
司会者1:先生方のイラストもちょっとかわいいですよね、上田先生なんかそっくりですね(笑)。
上田:みんな似てますよね(笑)。僕こんな顔してんだって思いましたね。田中さんかわいいですね(笑)。
田中:目がパッチリになっちゃってます(笑)。
上田:松下さんも似てるじゃないですか。
松下:特徴を捉えてくれて、ありがとうございます。
上田:楽しいですよね。見ていても飽きないです。これを見て、またディスカッションしていくとおもしろいと思うんですよね。
司会者1:上田先生は「プレイフルはスピリット!」って強調をされていたり、松下先生は「重ねる」ですかね。暮らしと仕事、全部重ねて考えていく。田中先生は「チームを前に進める方法」に言及しています。ありがとうございます。
司会者1:それでは、トークテーマ1に進んでいきたいなと思うんですけれども。第2部はパネルディスカッションということで。先生方のそれぞれの本は、概念やフィーチャーしてるところが違っていて、独立した概念として読むことができるんですけれども。この概念と概念を掛け合わせることで、働き方をアップデートするアイデアが何か生まれないだろうかと思い、このセッションをご用意させていただきました。
例えば、「プレイフル・シンキング」と「ワークスタイル」を掛け合わせた時に、どんな働き方のイメージが湧いてくるのか。「プレイフル」と「チームワーキング」を掛け合わせた時に、何が生まれるのか。最後に「チームワーキング」と「ワークスタイル」を掛け合わせた時に何が生まれるのか。1個ずつ、この掛け合わせでお話をうかがっていきます。
最初の「ワークスタイル」×「プレイフル」では、まず松下先生と上田先生でディスカッションしていただき、残りの5分で田中先生にお二人のお話を聞いてのコメントをいただけたらなと思っています。よろしくお願いいたします。
では上田先生、松下先生、さっそくなんですけれども。なにか思いつくところからでも構いませんので、スタートしてもよろしいでしょうか。
上田:はい。じゃあ松下さん、ぼちぼちやりますか。
松下:そうしましょう、よろしくお願いします(笑)。
上田:僕はなんとなく形容詞の担当で、例えば「プレイフル」を頭につけたらどうなるかなと。「プレイフル・ワークスタイル」とか、もしくは「プレイフル・スタイリング」「プレイフル・ワークプレイス」とか。松下さんは「プレイフル」ってついた場合のイメージをどう持たれますか?
松下:そうですね、なんでしょう……なんか上田先生としゃべる時、急に関西弁になっちゃうんですけど(笑)。
上田:(笑)。
松下:「ワーク」と「スタイル」と「プレイフル」って、3つあるような気がするんですね。「ワークスタイル」に「プレイフル」をつけた時に、僕の中で「スタイル」っていうと、ある種「見え方」というか。外在化した時にどうなるのか、その人が仕事してる姿がどう見えているのか。で、「プレイフル」って内在的なものな気がしててですね。
自分の中にプレイフルなOSがあると。そういうプレイフルなOSで仕事をして、それがどう見えてるのかとか。もうちょっと言うと、周りにどういう影響を与えてるのかとか、どうつながってるのかっていうのが「スタイル」だと、整理できるんちゃうかなって思ってるんですね。
自分の中の「どうやって仕事するのか」っていう、内面から出てきたものが、周りにどう影響を与えてるのか。内面と外面にどうやって影響を与えてるのかを、どっちかじゃなくて両方見ながら。それがさっき言った、メタ認知になってるんちゃうかなって。
自分がこうして働いてるってことと、自分が働いていることによって、チームとか組織とか会社とか社会に、どう影響を与えてるのかってことを、同時に見ながらやっている。そう捉えたらいいんじゃないかなって気はしてますね。内面的なものと周りへの影響の2つを見ながら作っていくのが、僕が言う「重ねる」になるかなって理解してます。
上田:今の話を聞いて、「重ねる」っていう言葉と、「循環する」っていう概念も重ねてみると面白いかもしれませんね。例えば場をプレイフルにしようと考えた時に、矢印を自分に向けるよりも「この場をどうやったらもっとプレイフルにできるんだろうか」って場に矢印を向けると、場がだんだんプレイフルになってくる。それでまた自分の中のプレイフル・エンジンが活発になって、グルグル回っているという。
それが対話を通して複数の中で行われていることで、その場のプレイフルな雰囲気を作り出せる。そういうような状況や風景と、すごく関係があるような気がするんですけど。
松下:本当に先生おっしゃるとおりで、自分のメモ帳にもそう書いたんですよね(笑)。自分の中に起点があって、他者とか状況への働きかけがあって。逆に外側の他者とか状況を起点にして、自分が働きかけがあって。そのサークルをグルグル回していく、循環させていくのが、一番最初に出た「ing」の世界観なのかなと思っています。進行形でいく、今この瞬間をそうやって循環させているというのが、「ing」をつける意味なのかなって気がしています。
メタ認知とか「重ねる」って、時制で言うとやっぱり「今」に関わる事だと思ってるんですよね。どういうことかというと、例えば振り返りって「過去」を振り返ってどうなのかという話だったりするし、キャリアをデザインするって、「未来」に関わることなんですけど。
メタ認知とか「ing」とかって、「今」、この瞬間、チームにどうするのか。W. ベンヤミンが言ういわゆる「アウラ(一回性)」に関わる話だと思います。今このプレイフルな場で自分はどうするのか。それが先生の言う「真剣勝負」とか、ライブ感とかにつながると思うんですよね。
上田:「reflection-in-action」って、MIT(マサチューセッツ工科大学)のドナルド・ショーンが言ってから、1980年代に省察という言葉や省察的実践家(reflective practitioner)ということが意識され始めました。reflectionもin actionも、行為の中で振り返っていくという、つまり「ing」なんですよね。
終わったあとで振り返るのももちろんあるんですけれども、やはり物事をやっている間に、メタレベルでコントロールしながら、どんどん変わっていく。その変わっていく姿をまた楽しむ。非常に複雑な感じかもわからないんですけど(笑)、意識してるかしていないかだけで、実際にはそうやってるんじゃないかなと思うんですね。
松下:本当におっしゃるとおりですよね。教育でも、僕もPBL(課題解決型学習)をいろいろさせてもらうんですけど、最後に振り返りって言った時に「前のことを」ってけっこうやりがちなんです。そうじゃなくて、振り返りながら、in actionでやっていかなあかんなと思います。
例えば先ほどのグラレコも、まさしくin actionで生成されていくライブ感があって。それって、すぐ編集できるようになったとか、すぐ描けるようになったっていう、メディアテクノロジーとすごく関係してるんちゃうかなっていう気もするんですよね。メディアによってin actionできるように時間が微分化されてきたというか、圧縮されて可能になってきたのかなって気がします。
上田:ライブとか即興っていうのが、テクノロジーによって、不思議な世界を生成していきますよね。ライブなのに過去の出来事が重なってきたり、違った場所のものが入り込んできたり。結局「今、ここ」っていうライブ感はすごく大事で、これはプレイフル・スピリットと非常に近い感覚なんですよね。だから「ing」もライブそのものだし、それがおもしろい。
実は今日の打ち合わせもやったんですけど、そこではいろんな話をしただけで、別に細かくアジェンダを決めたわけではなくて。むしろ毎回毎回が変わっていくおもしろさ。今日聞いてくださってる方も「この話はこの先、どこにいくんだろう」と一緒に不安がっていただけるので、すごくおもしろいんじゃないかと思うんですけどね(笑)。
松下:なるほど。ちょっと自分の「重ねる」に引きつけて言うと、「重ねる」って何かと考えた時に、英語で言う「オーバーレイ(overlay)」って思いがちなんです。つまり「積み重ねていく」ってイメージなんですよね。どんどん地層として重なっていく。そのイメージでいくと、重なると前のものが見えなくなるんですね。
でも「重ねる」はオーバーレイじゃなくて、「スーパーインポーズ(superimpose:重ね合わせる)」だと。例えばテレビも、現在では字幕なしのバラエティとかってほとんどないですよね。しゃべってるセリフは下の字幕に出ているし、映像を見ている出演者の表情なんかも出す私たちはそれを観ながら映像を見ることもやってるし、なんならTwitter見ながらテレビ見るみたいなこともしている。
僕たちはなんとなく、カルチャーとかエンターテイメントっていう文脈では「重ねる」ことが自然にできてきているのに、これが仕事になった途端に、「仕事はそういうもんじゃない」みたいになる(笑)。重ねるのはけしからん、と。
例えば家でオンライン会議をやっていて、子どもが入ってきて「すいません」って謝っちゃうとかですよね。......今もちょっと都議会選挙の選挙カーの音が重なっちゃいましたけども(笑)。そういうことで「すいません」と言っちゃう。
「仕事だとなんで仕事以外のことを切り離していくのかな」ってところは働き方を考える上で非常に根深いと思いますし、逆に若者がずっと「重ねる」生活をしていく中で、そうした切り離す世界観の会社なり働き方に入っていけるんだろうかとか、本当にそれが大事なんだろうかって、今問い直されているだと思いますね。
上田:その話を聞いていて、(持ち合わせで新しいものを作り出すという)ブリコラージュの考え方は、スーパーインポーズじゃないかなと思ったんです。
例えば缶詰を使って小さなハープのような楽器を作る時に、普通は(缶を)全部黒く塗りつぶして、もともとこれが何だったのか隠してしまうんですけれども。そうではなくて、(缶を全部塗り変えらずに楽器を作ることで)「魚の缶がハープになるんだ」っていう、元のものが見えながらスーパーインポーズされるんですよね。
音楽で言う「対位法」のようなもので、メロディにもう1つのメロディが重なって、なにか新しいものを作っているような。「ing」で考えると、「スーパーインポージング」は、そういうことをやってるんじゃないか。新しい発想というのは、そういうところからくるんじゃないかな、という感じはするんですけどね。
松下:そうですよね。今先生がおっしゃったようなブリコラージュとか、マリアージュ(組み合わせ)とか。
料理のメタファー(隠喩)って、けっこうそうだと思うんですよね。単純に材料を足していくんじゃなくて、それが両方味わえるんだけど、重なることでおいしい、感動を得るという。こうした料理のメタファーってけっこう「スーパーインポーズ」を説明するのに良いのかなって思いました。
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