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味の素×出光×パイオニア パネルセッション(全6記事)

入社時に告げられた「スーツ着用NG」、面接官もTシャツで参加 創業70年以上の企業3社が語る、DX推進における採用の変化

コロナ禍で、企業におけるデジタル化への対応は急務となり、大手企業でもDX人材の採用・DX化を推進する組織が強化されています。そのような中で行われた株式会社ビズリーチの主催イベント「創業70年以上のCDOが語る DX人材を活かす真の人事・組織戦略とは」に、味の素、出光興産、パイオニアの3社のDX推進部門の責任者が登壇し、パネルセッションが行われました。本記事では、DX人財を獲得する上でどのように採用を行っているのか、その手法を明かしました。

外部から採用した社員とプロパー社員の関わり合いとは

多田洋祐氏(以下、多田):先ほど、経営チームを外部からも登用するという話もありましたが、味の素さまと出光さまの話にもあったとおり、社員のみなさんを巻き込みながらというところでは、(パイオニアでは)どのように関わっているんでしょうか?

石戸亮氏(以下、石戸):今日は比較的、ITバックグラウンドで外部から入社したCDOという立場でのお話をメインでさせていただいたんですが、専門性の高い外部から入社した社員は少数なので、9割以上はプロパーの社員になっています。かつ、プロパーの社員もたくさん活躍していまして。

関わりでいうと、先ほどお話しいただいたような体系的なものがあるわけではないんですすが。(外部から)入った人間はだいたいみんな、50人から100人ぐらい1on1をしているんじゃないかなと思ってます。

私も最初は2ヶ月で100人ぐらいと1on1をしました。自分の近いビジネスだけではなくて、川越の工場や財務経理、人事など、やっぱり人間関係を作るということをやりました。

「外部から来た人間がわちゃわちゃしているんじゃないか」とか「いろいろと要職に就くんじゃないか」みたいなのは、ぜんぜんヘルシーだとは思いませんので。そこもやっぱり人と人と(の関係)を、最初にこうやって持とうとしたところが1つですね。

2つ目は三枝さんに近いかもしれないんですけれども、「how to」。どちらが良いかは別として、Web系の会社は仕事のサイクルが(速くて)、デイリーや週次がけっこう当たり前で。製造業は3年でモノを作るとすれば、それはすごく速かったりする。

そこでお互いに「これ速いね」「いいね」と関わり合いながら一緒にやっていくと。パイオニアは車載器を作るしっかりとした技術力がありますので、ソフトウェアやサービス開発の「how to」だったり、スピード感がわかると、それがどんどん速くなる。外からの人間と中からの人間が混ざり合うことによって、いろんな回転が速くなるんじゃないかと。

そういうイメージを持ちながら外から来た人間はやっていると思いますし、社長からのメッセージも「融合しよう」で、こんなかたちで動いています。

面接時もTシャツで、経営陣のラフな服装がもたらす効果

多田:今、石戸さまのお話の中で、「外から来た人が」というところで三枝さまが頷いていらっしゃいました。そのあたりで気を付けていたことはありますか?

三枝幸夫氏(以下、三枝):そうですね。やはり同じ船というか、仲間になっているんだというのは気を使いましたね。

冒頭で「DXとはみんなでやる活動なんだ」と定義していると話しましたが、やはり「外から突然人が来て、CDOになってデジタル部隊を新しく作ってやっている」「あの人たちがやっているんだ」となると、一番よろしくないので、相当現場に行きました。コロナ禍であんまり現場に入れてもらえなかったんですが、近くまで行くようにはしました。

多田:なるべく社員の方に近くに感じていただくように、最初は人間関係を作っていくということですね。

石戸:ちなみに、ちょっとオフトピックかもしれませんが、私はパイオニアのTシャツを着ているんですけど。これまでベンチャー企業にいたので、会社を知ってもらうために(会社のロゴ入り)Tシャツやパーカーを着ていたので、スーツを持っていなかったんです。

入社した時に「スーツを着たら変革感がないから着るなよ」と言われたんです(笑)。「すみません。(スーツを)持ってません」みたいな感じで(笑)。そして「パイオニアのTシャツ欲しいです」と言ったら、売ってるんですよ。

それで、私が(パイオニアの)パーカーとかを着ていたら、社員から「石戸さんってパイオニアの(プロパーの)社員よりパイオニア好きっぽいね」みたいに噂されたりとか(笑)。最近は人事がTシャツやパーカーを着て面接をしているようです。

格好だけってわけではないですが、Tシャツとかパーカーを着てると、当社にスタートアップにいるような人財に来てほしい時に、なんとなく距離感が近くなったりして。意識はしていないんですが、Tシャツを着た時の採用はけっこう良いものになったかなと思ったり。

多田:「how」としてはおもしろいですね。「スーツを着るな」というメッセージを経営陣からいただくと。

三枝:すばらしいですね(笑)。

石戸:半分冗談だと思うけど、半分本気だと思うんですよね(笑)。

多田:私も昔から石戸さまを存じ上げているので、ずっとTシャツを着ているので変わらないなと感じています。パイオニア様でも同じスタイルでやっているんですね。

DX人財の運用における、内部登用と外部登用の使い分け

多田:福士さまにおうかがいします。DX人財に関して採用計画も相当多く、今後も組織が拡大していくと思いますが、デジタル化に取り組む人材の組織運営やマネジメントをするにあたって、横串でどのように関わっていますか?

福士博司氏(以下、福士):デジタル人財とは、要するにビジネスを知ってデジタルリテラシーが上がった人財のことです。これは絶対的に必要で、要するに既存の社員ですよね。

当初はそれを3年間で、200人ぐらいの規模感で作ろうかなと思っていたら、なんとみなさんデジタル熱にうなされたように、1年目でもう1,000人を超えたんですよ。それぐらい、やる気を掘り起こすと応えてくれる人たちがいるんだなって、逆に私や社長がびっくりしましたね。

それとシステム開発者。これについてはやっぱりある程度の専門能力(を持つ人財)がおりまして。たまたま関連会社もあるんですけれども、ここについては棟梁クラスじゃなくて、いわゆる独り立ちクラスですかね。そのクラスの人たちが20~30人いたんですが、これを3年間で倍増しようということで、外からの採用も含めて着実にやっています。

いわゆるデータサイエンティストは、やはり棟梁クラスのトップクラスの人。経産省に言わせれば一部上場企業に1人ぐらいいるとのことなんですが、たまたま味の素にも1人います。石戸さんもそうかもしれないですが、こういう人たちは1つの企業に一生いるとは限らないので、プロジェクトベースで入っていただくかたちでマネジメントをしていますね。

ですから、デジタル・トランスフォーメーションはデジタルを用いたレバレッジで、新事業をやったりいろんなことをしなきゃいけないんですが、目的に応じて内部調達もするし、外部からも持ってくる。ある程度フレキシブルな運用をしています。

多田:味の素さまが、どの部署でも外部登用と内部登用をバランス良くやっていく方針だったのか、それともデジタル推進における福士さまのチームだからこそ、そのような組織運営になっていらっしゃるんですか?

福士:CDOである程度社長のサポートも得て、ある意味自由にやらせてもらっています。予算から人の集め方から全部任されていますので。そこは私の裁量でやっていますね。

多田:なるほど。ありがとうございます。

社員の「デジタル熱」を上げるには?

多田:その他にも、みなさま同士でお話を聞かれていて「ここが気になった」というところがあれば、ぜひご質問を投げ合っていただたらと思います。

石戸:福士さんのお話で気になっていて。社員のデジタル熱が良い意味で想像以上に上がったと。うちもいろいろデジタルに取り組んでいる社員がたくさんいるんですが、スイッチの入れ方やそのあとのやり方は聞いてみたいなと思いました。

福士:「DX1.0」はオペレーションの変革なんです。ここに実は1つの仕組みがありまして。社長が言っている目標ついて、半期に一度部長から組織に下ろして、組織から個人に下ろして、個人が逆に組織に対してプレゼンする機会があるんですね。「私はこういう目標に対して、これをします」と。

「然るが故に私の目標、あるいは組織の目標はこうですからこうやってください」とリクエストもできるし、逆に組織から「あなたはこれが足りないからこういうこともやりなさい」と言うことができる。楽しい雰囲気の中で、辛辣とまでは言わないけど真剣に議論がされる場を作ったんですね。それが(スイッチの入れ方として)1つ大きいかなと思います。

それともう1つ。我々のパーパスは「食と健康の課題解決企業」なんですが、これを達成するにあたっては、到底1社だけでは解決できない問題も非常に多いので、他社やアカデミアやNGOとか、いろんな人たちと協業するという話になる。

そうすると、内向きだけになりがちな会社のエネルギーが外に向かうわけですね。どちらかというと「社内正義」よりも、「社会正義」に移るわけです。そういうところに、人間が本来持っているエネルギーを発散しやすい環境が自動的にできてくるんですね。その2つが我々の特徴なんじゃないかなと思います。

デジタル変革を進める上で必要なスキルとは

多田:三枝さまにも、組織についてもうちょっと掘り下げてお聞きしたいと思います。ご参画された時点でのデジタル変革室よりも、人数は更に増えているのかなと思うのですが、そのあたりについて「組織運営上、こうやって成長させてきた」「ここに気を付けている」という点があれば、ぜひおうかがいしたいです。

三枝:スライドを使わせていただきます。「デジタル変革を進めるにあたって、どういうスキルがいるの?」というところで、欲張ってDを4つ付けました。

Dの4つ(の1つ目)は「Design」。と言っても、絵を描くことではなくて、ビジネスをデザインする「ビジネスデザイン」や「デザインシンキング」ですね。それからマーケティングのスキルも非常に重要です。でもデジタルでやるんだから「Digital marketing」のD。

それから下の2つの「Data science」と「Development」、ここはよく言われるテック側です。このテック側ばかりに寄ってしまうと、事業部門がデジタルと縁遠いところにいる場合に会話が成立せず、しっかりビジネスにつなげるのが難しくなってしまいます。

やはり、ビジネスデザインができる人やマーケティングのスキルがある人も入れて、デジタルチームを作っていくことを進めました。

ビジネス人材とテック人材の同時育成による相乗効果

三枝:組織の運用の仕方は完全なプロジェクト型です。上に並んでいるのは「スキルCoE(Center of Excellence)チーム」という箱です。下にあるのが「Mission Base Team」というもので、「この事業部でこういうことをやろう」というタスクができたら、そのために必要なスキルを持つ人をそれぞれの箱から集めてきます。

もちろん、事業部からも事業ドメインを知っている人を集めてワンチームにしています。「100日スプリント」という名前を付けて、「100日で課題解決をして解散だ」とスタートしたんですけれども、まったく100日では終わらずに解散していないものがたくさんあります。

考え方としては先ほどの福士さんと同じだと思うのですが、いろんなタスクによって必要なスキルは違いますから、それに合わせてチームを作って、解決したら次へというのを目指しています。けれども、実際は始めるとなかなか課題が解決しなくて、まだすったもんだやっている感じです。

多田:御社の規模を考えると、デジタル人財を集めてもそのような方々は希少性が高いので、セントラルからチームのプロジェクトにアサインされているイメージでしょうか。

三枝:はい。例えばプロジェクトで、どこそこのこんなビジネスを立ち上げようとなった時に、最初からデベロッパーとかデータサイエンティストとかも入れちゃうんですね。そんなに最初は仕事がないかもしれないですけど。

ビジネスを一緒に立ち上げようということで、前半部分ではテクノロジーの人たちがビジネスのことを覚えてくる。後半になって実際にいろんな開発をしてスタートしてくると、ビジネスの最前線の人たちがテックのほうにも詳しくなってくる。そういう運用を狙ってOJTを兼ねて、人が足りないので「一緒にやろう」ということでやっています。

多田:なるほど。ありがとうございます。

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