「LINEいじめ」「反韓ブーム」批判が高まる時期に、LINE広報が貫いたスタンス

LINE×メルカリがほしい”新しい広報像”とは #3/6

グローバル展開を進めているLINEとメルカリが、自社の急成長を支える企業広報、広報戦略について話すミートアップイベント「LINE×メルカリがほしい”新しい広報像”とは」を開催。本パートでは、LINE・矢嶋聡氏にメルカリ・小泉文明氏によるトークセッションが行われました。サービスが成長し、社会性を帯び始めるにつれて避けられなくなる「批判」ですが、両社はどのように切り抜けたのでしょうか。

LINEが求める、広報の役割

原隆氏(以下、原):組織図ってなかなか私も見る機会がなかったので、「こういうふうにやってるんだな」と思って見てたんですけど。

まずLINEにおうかがいしたいんですけれど、さっき広報8人って……。

矢嶋聡氏(以下、矢嶋):はい。

:あと何人ほしいんですか?

矢嶋:えっと……。

(会場笑)

矢嶋:今、私の部署には2つの役割があります。1つはマーケティングコミュニケーションですね。個別のサービスをどうやってグロースさせていくか、そのなかでどうPRを絡ませていくか。その部分でのサービス広報ですね。

あとは、会社のブランドや採用、あるいは会社のビジョン・ミッション、戦略みたいなものをどう伝えていくかというところ、いわゆるコーポレート・コミュニケーションですね。この2つがあると思っています。

直近でいくと、コーポレート系、いわゆる報道対応の人材は非常に拡充していて、優秀な人間も多いです。一方で、先ほどのスマートポータルの展開を推進していくうえでは、個別のサービスをよりグロースさせていかないといけない。例えばLINE MUSICやLINE Pay、最近できたLINEモバイルもあります。

LINEという会社やアプリ自体はブランドですけど、個別のサービスももっと積極的にメディアさんに取り上げていただきたい。我々がどういう価値を提供しているかをちゃんと伝えていかないといけないという部分では、現状ではやはり人が少ないんですね。

どちらかというと、LINE自体が良くも悪くも注目いただいているので、インバウンドの対応ばかりになっている部分が正直あります。我々としてはもう1回、このフェーズで攻めていかないといけない。結論としては、あと3人くらいほしいかなと(笑)。

小泉文明氏(以下、小泉):3人くらい(笑)。

反韓ブーム時、LINEが貫いたスタンス

:LINEは当初、一生懸命にソーシャルメディアを使って地道なところからやってきていて。途中からは、「CMを打ってガーッと伸ばす」をすごく戦略的にやってきたと思うんですけれど。

覚えているのは、当時、けっこう反韓ブームみたいなものがありましたよね?

矢嶋:はい。

:韓国に親会社があって、けれど日本でサービスを企画開発していて……みたいな環境で、ああいったときに、なかなかCMでは対応しきれないところがあったかと。そういうときは、やはりPRならではの対応があったんじゃないかとも思うんです。

決してずっとバラ色できたわけではないわけじゃないですか。ああいうときってどういう対応を心がけていたんですか?

矢嶋:そうですね……。でも、結局、国籍でいろんなことを言う人は言うので、そこに関してはもうしょうがないかなというか。どちらかというと、「中庸な人たちに対して変に色がついちゃうのはよくない」という考えはありました。

大事なことはやはり1つ、我々のサービスのコアバリューや、どういう価値を提供できるのかをちゃんと伝えること。LINEは、FacebookやTwitterのようなオープンなコミュニケーションに対して、「もっと大切な人とのコミュニケーションはFacebookやTwitterだとしづらいよね」というところを担っていく。これをちゃんと伝えるということです。

あとは、いわゆる誹謗中傷やノイズに対して、ソーシャルメディアの活用では、直接個別に「僕らはこういうスタンスでやっているんです」と対応していくこと。

実際、中庸で揺れている人たちは、個別にちゃんとコミュニケーションするとわかってくれたりするんですよね。そこは避けて通らず、「ちゃんと話せばわかる」と、地道にやる。僕たちとして、自分たちのバリューをちゃんと伝えていくことが大事かなと思いますね。

サービスが社会性を帯び始める「過渡期」

:例えば、メルカリも取り扱う商品によっては、「ねえ、こんなものが取り扱われていいの?」みたいなケースってたぶんあると思うんですね。そういうときってどういう対応をするんですか?

小泉:まず1つ重要なのは、違法かどうなのかという議論があると思うんですよね。違法なら、それはまずいと思うんですよ。当たり前だと思うんですけど。ただ、メディアが飛びつくのは違法かどうかではなく、モラル的な線引きのなかで「どうなんですか」みたいな。

:「いかがなものか」みたいな。

小泉:「いかがなものか」みたいなことですよね。

でも僕たちとしては、違法じゃないなかで、その次になにがあるかというと利用規約なんですよ。利用規約のなかでどう判断していくのか、という議論です。

僕たちとして言っているのは、「利用規約のなかで、すべてのユーザーに対して透明性がある立場でやらないといけない」「個別対応するのはよくない」。そこの一点張りですよね。

利用規約の判断基準のなかで議論が分かれるところについては、僕たちとしてはそれ以上メディアと話しても答えが出ない問題なので「僕たちは利用規約で、ここで安全性を確保してる」と言い続ける。そこしかないかなと思っています。

矢嶋:でも、基本スタンスをちゃんと明確にするというのはけっこう大事で。そのへんの細かい各論になっちゃうともう収拾がつかないので、そこを言い続けるしかない。

小泉:一方で、利用規約では「わかりづらいよね」ということもあると思うので、ガイドのような、もう少し噛み砕いたもので誤解がないようなかたちでユーザーコミュニケーションを図っていったほうがいいんじゃないのか、みたいな発展系をどうやっていくかということはあると思います。

:まだ会社が小さいとき、自社サービスをPRするようなフェーズから、規模が大きくなるにつれて、社会性を帯びてくる部分もあるので。おっしゃるとおり、モラル的な部分であったり、そういったところをメディアが書き始めると思うんですよね。

LINEが犯罪で使われたときに「LINEを使って……」みたいなことを、やはりよく書かれるじゃないですか?

(会場笑)

ああいうのって別に「メッセンジャーを使って……」と書けばいいんですけど、単純に文字数の問題で「LINE」のほうが短いから、みんなタイトルに入れるんだと思うんですよね。でも、ああいうふうに出るのは嫌だったんでしょう?

矢嶋:嫌か・嫌じゃないかと言われれば、嫌ですよ(笑)。

小泉:(笑)。

:すいませんでした(笑)。

矢嶋:ただ、新しい価値観や新しいサービスが出るときは、メディアや一般の理解が追いついていない部分もあります。過渡期の部分に関しては、それはしょうがないという割り切りは必要です。

そこに対しては、1つひとつクレームをつけてもしょうがないですし、どちらかというと、我々が会社としてやるべきことをちゃんとやる。

例えば、LINE上のやりとりでいじめや事件などの問題があったとき。今、我々がやっているのが、全国の学校を回って、LINEアプリの使い方や相手との距離感や、どういった言葉で傷つくのかを理解してもらうためのセミナーやワークショップを年間1,000回くらいやっています。

そもそも人と人とのコミュニケーションの問題で、それがデジタルになっただけなので。

:それ、さっきの組織図でいうと、どのチームがやるんですか?

矢嶋:マーケティングコミュニケーション室とは別に、CSRのチームがありまして。そこが担当しています。「それって直接的にどれだけ効果があるの?」と言われるとなかなか難しいところがありますが、やり続けることに意味があるかなと思っています。

あとは、当然、LINE自体が普及するにしたがって、一般の方あるいはメディアの理解も追いついてきます。おそらく車が登場したときも、同じような議論が最初にあったと思うんですよね。

普及してくると、だんだんとみなさんの理解が追いついて「こういうものだよね」となってくると思うので。それまでは過渡期のようなものだと思うので、そこは抗ってもしょうがないかなと思いますね。

メルカリに「敵」が少ない理由

小泉:ちょっとそれに近いんですけど、ミクシィ時代にまさしく同じことがめちゃくちゃあったわけですよね。

メルカリ入社後の初期になにをやったかというと、おそらく、そういう問題は起きると予想はしていました。CtoCなので。そこでやったことは2つです。

まず、カスタマーサポートに数値をめちゃくちゃ取るようにしてもらったんですよ。数値でエビデンスをもって説明しないと感情論になるので、最初の設計からカスタマーサポートでかなり数字を取るようにしたんですね。

もう1つは、自分たちのほうからその数字を持って説明していくんですよ。警察や主婦団体、教育団体などに自分たちから行きます。当然、ミクシィ時代にも散々お世話になっていることもあり、カウンターパート(担当者)を知っているので(笑)。

自分たちから数字を持っていって「こういう体制でやっています」と伝える。彼らにとって、自分たちが知らない会社や知らない人たちがカスタマーサポートをやらずに野放しになっていて、「なにか問題が起きてるんじゃないか?」ということを1番嫌がるんですね。

ですが、「この人たちはわかってくれてる」となった瞬間に態度が変わったりします。あと、メディアもそういう人たちに取材しに来るんですよ。僕らは最初にそこへ行って、仲間になるということをやっていました。

メルカリが今の規模にしては比較的ネガティブな報道が少ないのは、そういう仲間づくりを創業期からこまめにやり続けて、毎回数字を出しているからですね。

:ちなみにミクシィにいたときに、1番嫌だったことはなんですか?

小泉:ミクシィにいたときに1番つらかったのは「業界団体として動かなきゃいけない」ところですね。

これはおそらくインターネットの黎明期からでいうと、何回かあったんですけど。私がいた時期の中でも、まず2008〜2009年は、いわゆる出会い系サイト規制法とか、青少年の出会い系っぽい使い方についての規制がありました。もう1つが2013〜2014年の「コンプガチャ」。大きくこの2つの1番矢面に立っていたんです。

業界のなかで足並み揃わなきゃいけないというところに対して、なかなか各社の利害の関係性でバランスが崩れるという。

:一緒にやらなきゃいけないですもんね。

小泉:現場がいがみあっているのに、コーポレート部門は握手をして「一致団結しなきゃいけない」というのは、おそらく今後のインターネット業界がどんどん大きくなる過程において起きてくると思うんですよね。

会社のステージ毎に、広報の課題も変わる

:LINEはどう? これまでを振り返ってみて1番つらい時期みたいな。

矢嶋:う~ん……つらい……。

:まあ、つらいことも忘れそうな感じのタイプですけど(笑)。

(一同笑)

ちょっと思い出してみて……。

矢嶋:結局、サービスの利用者が増えると注目度が上がります。それによって、なにかが引き起こされる。先ほどのいじめや、なにか事件が起こったときに紐付けられる回数が正比例していくものなので。そこは、そういうものだと思ってやっていくしかないです。

あとは、リスク対応みたいなところでは、我々も最初からすべてわかっていたわけじゃないです。ある種、場数だったりします。そこらへんはもうそういうものだと思って、地道にやっていくしかないかなと。「つらい」というのは、もう通り越しましたね(笑)。

:達観しちゃった感じ?

矢嶋:会社のステージが上がってくると、先ほどの社会的なイシューの問題など、広報に求められることも変わっていきます。そこに対して、いかにアジャストしていくかというのは、本当に大事かなと思いますね。

:逆に今のPR室で、もうみんなでガッツポーズしたくなる瞬間、上場以外のタイミングで、「これは俺がんばったね」「できたね」「やったね」みたいな瞬間って?

矢嶋:一義的には、いかにメディアに取り上げてもらうかというところを、我々はゴールにしています。自分たちが狙って仕掛けたとおりにうまく露出があったりすると、やる意義があるというか。結局、我々のサービスは良くも悪くも注目していただいているので、自発的にテレビで取り上げていただく機会は多いです。ただ、それはそれで、ありがたいことなんですが、

広報の醍醐味って、自分たちで仕掛けて、それによってユーザーやメディアが動くところが1番だと思っています。

「じゃあ、みんなでその放送見ようか」となると、みんな「やっててよかった」となるので。イベント系も、広報チーム勢揃いで一致団結してやっていく部分もあるので、そういう意味でのチームワークや結束が強化されていると思いますね。

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