2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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原隆氏(以下、原):小泉さんのところはどうですか? PRとして中澤(理香)さんが入って。ミクシィ時代からでもいいですけど。
小泉文明氏(以下、小泉):僕たちでいうと、この前『めざましテレビ』で、メルカリとリアルのリユースショップでどこが一番服が高く売れるかという、「これ、テレビでやっていいのかな?」みたいな企画をやって(笑)。
原:それ、企画書かなにか持ち込んだの?
小泉:ある程度、向こう側とは事前に話していました。
やってみると、メルカリのほうが50倍くらい高値で売れるわけですね。リユースショップだったら100円とか数十円なのに、メルカリだと千何百円で売れますみたいな。「それ、朝から10分やっちゃうんだ!?」を、けっこう強烈にやって。それ以来、めちゃくちゃダウンロード数もアップしていくわけですよね。
このあとも話をするかもしれないですけど、広報のKPIの議論として、露出の金額換算をやる会社とかあるじゃないですか。
原:その露出を広告に換算するとどのくらいの価値があるか、ですね。
小泉:あれは本当に意味がないと思っていて。
僕たちPRが持っているKPIって、ダウンロード数やDAUなど、企業広報側なら採用数。大きくいうと、これだけです。だから、ユーザーが動くところに対して、ダイレクトに僕たちの仕事が結びつくことが一番テンションが上がりますよね。
あとは、ネガティブな報道もそうなんですけど、ポジティブな報道のなかでも、外の意見を社内にどうやってフィードバックしていくかもすごく大事だと思っています。要は、伝達役みたいなところですよね。
ネガティブなことがあっても、言っていることに一理あると思うんです。その内容をきちんとプロダクト側に伝えて、改善していく。もしくは「そういう勉強会もやっていこうね」とか。
外の声について、自分たちからすると当然ながらすごく嫌な思いもするんですけれど、そのなかでの学びをちゃんと社内にフィードバックしていく気持ちを持たないと、その場限りで、逃げて終わります。広報の悪いクセは「嵐は過ぎ去るものだろう」みたいな(笑)。
原:待てばね。
小泉:ネガティブモードも、とにかく過ぎ去るのをずっと待つ。あれは、すごくイケてない。
結果、それでラッキーなこともあるとは思うんですが、本質的な壁に向き合う広報ができるかどうかで、その会社が筋肉質になれるかどうかの差が出ると思っていますね。
原:今、ちょっとKPIの話が出たけど、LINEには、PRチームのKPIとかあるんですか?
矢嶋聡氏(以下、矢嶋):うちもないですね。
原:本当にないの?
矢嶋:本当にないです。僕も広告換算は無意味だなと思っていて。もともと、私もPRエージェンシーにいたのでわかるんですけど、どうしても手段が目的化するというか。
結局、広告換算に到達させるために、「別に質は問わないから、とにかくメディアに露出させましょう」みたいな話になってくるんです。そこは本質的じゃない。
今うちのチームでは、明確なKPIみたいなものは正直ありません。ただ、なんとなく思っているのは、先ほどの話に関連して「出したいタイミングで出したいメッセージをどう出すか」「出したいメディアにどう出すか」「仕掛けたとおりにちゃんとまわるか」ですね。
あるいは、世の中全体への影響力で考えたときに「じゃあ、どのメディアを通すと一番広がっていくのか」みたいなところの連鎖とか。そのへんを考えて、「じゃあ、ここ落とそう」「そこを狙いどおり落とせたね」の部分が一番大きいかなと思っています。
現状では、広報メンバーは8人くらいしかいないので、各メンバーが何をしていて、どういった取り組みをしているのかがなんとなく見えています。
ただ、これから人数が増えてきたときに、個人ごとの目標設定をしていくのは必要になるかもしれないです。現状では、まだ私ががんばればなんとか見られる範囲と思いますね。
原:ダーッと歴史があって、最初のソーシャルメディアからすごく力を入れていて。いわゆるフェーズによるPR戦略みたいなところを簡単に話してもらえますか?
矢嶋:フェーズでいくと、2011年6月にサービスをスタートして、当時はスタンプもなかったし、無料通話もなくて、いわゆる「クロスデバイスで使えるメッセンジャー」というサービスだったんですね。
機能面でいえばもうSkypeもあるし、海外でもカカオトークもあるし。正直言って、メディアさんが食いつくようなポイントってあまりなかったんですよね。
「どう戦おう?」みたいな部分があったときに、冒頭でもちょっとお話をしましたけれど、やはり「自分たちのコアバリューなど、ちゃんと思いを伝えていくのが大事だよね」と。我々の例で言えば、「人と人との大切なクローズドなコミュニケーションを実現する場になります」をひたすら言っていくことでした。
今ではマスのサービスになっていますけど、1人ひとりの共感が積み重なってマスになっていくものだと思うので、「どうやったら自分たちの価値が伝わるか」という、エッジを立てることが非常に大事なんですね。
最初からマスを狙おうとすると、メッセージも丸くなって誰にも刺さらないとなっちゃうので、まずはちゃんとメッセージや、僕たちがどういう価値を伝えたいかをしっかり伝えていく。情報発信をし続ける……。
原:伝えたい対象も、当時、明確に持ってた?
矢嶋:そうですね。当時でいえば、ちょうどガラケーからスマートフォンにデバイスシフトが起こるタイミングだったので、まさに10代・20代の、とくに女性層に対して、いかに共感してもらえるかを大事にしていました。
わかりやすい機能的特徴があるわけではないので、メディアサイドからすると、なかなか理解されづらい部分はあったと思うんです。でも、今となっては地道に言い続けてきたこともそうですし、海外を中心に着実に利用者数が積みあがってきたというファクトがあったこと、あとはソーシャルメディアを通じてユーザーさんとコミュニケーションしてきた下地があったことも大きかったです。
「ベッキーのCMで伸びたんでしょ?」と言われますが、どちらかというと、最初の下地の部分で僕らが伝えるメッセージに対して共感してくれるユーザーさんがいました。CMがきっかけで、もともと使ってくれていた人が周りの友人や家族に「LINEという無料通話アプリがあるんだよ」とバイラルしていった部分が大きいんです。
ベンチャーの広報は、新しい価値を世の中に提示していく、その価値をブラさずメッセージを明確に切れ味鋭く伝え続ける。そして、ファンができてきて、徐々に拡大させていくところが非常に重要かなと思いますね。
原:メルカリに対していうと、先ほどの話では2,000万くらいまで広報がいないなかで……。
LINEとメルカリをパッと見たときの共通項は、やはりテレビCMがフックですごく伸びたであろうところ。メルカリも初期段階でCMをやっていますし、なんとなく「CMで伸びたんじゃないか」みたいな意識、たぶん外から見ているとあるんですね。
メルカリは今までずっと広報がいなくて、最近になって広報が入ったとなると、本当にPRになにを求めているんだろうと思います。さっきの採用とか、そういったところがあるにせよ……。
小泉:矢嶋さんも僕もペイドとノンペイドを両方見ているんですよね。要は、広報とプロモーション、特にテレビCMの両方を見ているんですよ。
メルカリに関していうと、最初のCMが始まるまでは、どちらかというと、ずっとオンラインの広告出稿をしたり、仙台にカスタマーサポートセンター作ったり、ずっとサービス拡大の準備をしていた感じなんですよね。
テレビCMのタイミングで、初めてある程度マスに打って出たんですけれど。そのときも、テレビCMは一般的に考えると、ターゲットとしては全体を狙いたくなるじゃないですか。金額も数億かけるので。
でも、当時の僕らはFrilにちょっと負けてたんですよ。僕らのやっているサービスのジャンルは、トレンドを作ってくれるのが20代・30代の女性だから、もうそこだけ狙ったら僕らが勝てると思って。だから最初に、『テラスハウス』の2人を起用したんですね。
これ、テレビCMのセオリーだと真逆なんですよ。だって、『テラスハウス』を起用することは、完全に40代以上は対象外でですから。下手したら30代以上も知らない。
ただ、僕としては最初に20代女性がほしかったんですね。そこさえとっちゃえば、Frilを含め、他社に圧倒的に勝てると思った。セオリーと間逆なCMの戦略だったんですね。
そのとき、PRや広報系でなにをやったかというと、もう手が回らないので、採用系しかやらなかったんです。なにかというと、外に対して、社長の山田進太郎に中長期のビジョンをずっと語ってもらっていたんですよ。
プロダクトのことは、正直Frilなどの競合があるなかで、そこを話してもそれほど差別化されず、むしろ、わけがわからなくなる。そのため、中長期の大きなことを資金調達のニュースと併せてたくさん出して、そこで優秀な社員を採るほうに割り切っちゃっていました。
PRは採用にフォーカスし、プロモーションは完全にテレビCMだけに集中してユーザー数を増やすという、けっこうわかりやすいことをやって両立させていました。それがずっと続いていた感じですかね。
プロダクトのほうのPRに関していうと、基本的に依頼が来たものしか受けないという感じで、あまり僕たちから出していかないようにはしてましたね。できなかったというのが正しいのかもしれないですけど。
原:そういうことなんですねえ。
小泉:CMの最初の振り切り方は、個人的には読みが当たった意味でいうと、けっこうよかったかなと思ってます。
原:さっきのLINEの「メッセージを……」の話でいうと、両者ともに共通しているのは、PRと経営陣の距離がすごく近い会社だなっていう感覚があるんですね。
我々も取材をしていて、PRと経営陣の距離があいているところは、本当になんかちょっとかわいそうな……こっちがかわいそうになるくらいなときもあります。逆に、「すごく連動しているな」と感じるときもあるわけであって。
なぜLINEは、経営陣とコミュニケーションの距離がまだ近いのか。経営陣とのやり取りのなかで……例えばPRチームから経営陣に対するフィードバックみたいなものを定期的にやっているんですか? 経営陣とメッセージのすりあわせをどうやっているの?
矢嶋:うちの場合は、事業戦略とマーケティングの担当している舛田(淳)という役員がいるんですけど。前提として、彼がそこの部分に理解が深いところが大きいですよね。
会社によっては、広報が総務付や社長秘書付とか、いわゆるバックオフィスとして「かたちが決まったものをどう露出させていくか」しか担えない会社も多いと思うんですが。うちの場合は、舛田の考えもあり、事業戦略とマーケティング・広報はセットだという認識があります。
先ほどのお話にも関連しますけど、いかに自分たちの価値観やバリューを伝えていくかについて、プロモーションも大事です。そこから「広報は、やっぱり大事だよね」という理解が前提としてあることは大きいかなと思いますね。
その流れから、じゃあどういったプロダクトならメディアに取り上げてもらえるのか、ユーザーさんに喜んでもらえるのか。そういった上流から入っていける部分もあるので、我々としては非常にやりやすいです。
あと、例えば取材を受けるときも、我々の方向性に対して理解を示してくれる部分が大きいので、そういう意味でもやりやすいかなと思ってますね。
原:それは単純に、最初からそういう理解をしてくれてたところが大きくて……。
矢嶋:そうですね。
原:メルカリはなにか? ミクシィ時代でもいいですけど。
小泉:そもそも僕、直接PRを見ていますけどね。
原:そうですよね。
小泉:僕、今は中澤の隣の席にいます。丸テーブルに人事と広報を集めているんですね。
どうしてやっているかというと、結局この2つは、人件費と広告宣伝費じゃないですか。会社のPLの「2大でかい項目」なんです。これ以外のコストって、実はあまりないんですね。
しかも、この2つはブランディングしなければいけない。でも、そのブランディングが空気を扱うようなもので難しいんですよ。結局、誰かが腹決めないといけないんですね。
CMのクリエイティブ1つとっても、広報の打ち合わせを見ても「腹を決めるの誰か」というところで、経営陣に理解がなかったり、決めてくれなかったりするのが、とても怖いんですよね。CMなんて数億かかるから、誰も決められない。
そうすると、「誰かが決めなきゃいけないところ」は、経営陣が絶対に見ないといけない。
メルカリは、その一番わかりづらいところを、ほぼ感覚に近いときもありますけれど、僕が見ることによって、責任を取ろうと思ってはいますね。それを経営陣が見ないとかわいそうだなっていう気がするので。
広報は「会社を代弁する」という非常に難しいことをやっていると思うんですけれど。中澤もそうで、僕たちがどう考えているかをすごく聞きたがる。なるべく近くに座って、些細なことでも伝えるようにはしてますね。
原:逆にちょっとうかがいたいんですけれど、みんながみんなそういう会社じゃないので。経営陣がPRの重要性みたいなことを理解していない会社もあるわけじゃない? そういう状況だったら、どうすればいいですか?
小泉:いやでも、スマートフォンのアプリは差別化が超難しいと思うんですよね。ファンクションの差って、本当に出づらいので。
そうすると、プロモーション勝負はぶっちゃけあるなと思っていて。ファンクションとプロモーション、この2つをどう設計するかだと思うんですよね。いいものを作ったからといって絶対にユーザーはお金を払うわけではないですし。
アメリカなんかいい例で。最近、セレブがVC投資しているのがいい例ですよね。けっこうそのくらいの勢いになっちゃってきているわけですよ。
そこをわかっていない経営陣は、僕からすると、そもそも「勝つ気がないな」って感じですよね。1つの打ち手として、一番重要なものを無視している感じがします。
原:そういう会社の場合は、辞めたほうがいいですか?
(会場笑)
小泉:まあ、辞めたほうがいいですね(笑)。でも、それは本当にヤバイと思いますね。勝てないですよ、絶対に。「なにかいいものさえ作ったら絶対にいける」という時代は、けっこう昔に終わっちゃったなという気はしてますね。
当然、いいプロダクトだという前提はあります。でも、伝えるというところをやらないと、アプリはこんなに溢れているので。アメリカなんかでやっていると、もう量産されるアプリとかがハンパないわけですよ。そうすると、僕たちと同じようなサービスなんて死ぬほどあるわけで。
プロモーションとか、僕たちがどれだけユニークで、どんなメッセージを込めてやっているのかを言えないと勝てない、というのはすごくあると思います。
原:LINEさんはどうですか?
矢嶋:実務的なところでいえば、広報に理解がない会社でやっていくのはなかなか難しいところではあるんですけれど。特にROIなどに厳しい経営者であるほど、意味のある露出をちゃんと取っていくこと……例えば、実際どれだけユーザーが増えるのか、売上が上がるのかをシビアに見てくると思います。
単純に露出を積み上げていくだけじゃなくて、意味のある露出をどうとるか。それは採用効果かもしれないですし、実際のユーザー獲得効果かもしれないですけれど。広報としては、それがすべてではないですけれど、担える部分ではあります。そういう露出を積み重ねていって、実績あるいは理解を深めていくしかないと思います。
会社や事業部と一緒にどうやっていくかに関して言うと、我々も必ずしや広報に対して理解がある場合とない場合があったりします。そこに対しては、もう地道に結果を出して示していくしかない。
原:記者の仕事をしていると、当然、最初の窓口であるPRなので、「すごいなぁ」って思うところもあって。PRは外のネットワークを持っているだけでもダメだし、なかのネットワークだけ強くてもダメ。両方のネットワークを持って初めてできる仕事というところもあるので。なんか、コミュニケーションの本当のプロフェッショナルなんだろうなという感じはしますね。
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