外部メディアを通じて社内にも発信

原隆氏(以下、原):そろそろ疲れてきたので、Q&Aをちょっと……アイタタタタ。

小泉文明氏(以下、小泉):(笑)。

矢嶋聡氏(以下、矢嶋):お酒は大丈夫ですか?

:お酒、はい、飲みます。

事前に、参加者のみなさんにいただいた質問がいろいろあるんですが。じゃあ、1つだけ。「『この企業のPRはすごい』などと注目している企業がもしあれば教えてください」と。

小泉:これちょっと答えになっていないかもしれないんですけど、企業というよりは、僕は最近、社長の山田進太郎をけっこうメディアに出しているんです。

昔の経営といえば、社員に向かって、いわゆる「エイエイオー」的なことをやると、社員がモチベートされる時代だったと思うんですね。それは半分誤解もあるのかもしれないですけど。でも、もう完全に通じなくなってきているじゃないですか。要は情報がすごく多いので、演技だけでテンションが上がる時代ではないですね。

そうなったときに、社員はソーシャルメディアで自分たちの会社がどう言われているかで、むしろモチベーションが上がったりするんですよね。

まさしく孫さんやノムさん(野村克也)は、わざとメディアに言わせるんですよ。メディアに言わせて社員や選手をコントロールするんですよね。僕、直接言われないで間接的に言われたほうが響く時代になっているんじゃないかという気がしています。

どちらかというと山田も、お2人とも性格を知っているとおり、みんなの前で「エイエイオー」する社長じゃないんですよ。すごく本質的に語るタイプなので。

彼をわざと定期的にメディアに出させて、将来を語らせることによって、社員はその記事を見て、「ああ、うちの会社ってこうなんだ」と理解してもらうコミュニケーション設計をしています。あと、それらの記事がソーシャル上で社外の人からもポジティブに評価されて社員のモチベーションが上がるように設計していますね。

:ある意味、言葉を選ばずに言えば、外部のメディアを通じて社内にも発信をする……みたいな。

小泉:そう、そういうこと。まさしく、このなかだと広報からお願いしてTechCrunchに書いてもらって、社員が「TechCrunchを読んだら、うちの会社が載ってて、こうだよね」と話す。

でも、それでぜんぜんいいと思っています。そのTechCrunchの記事をみんながFacebookでシェアして、「メルカリっておもしろそうだよね」と言っているほうが、社員からすると承認欲求みたいなものがすごく満たされて、「うちの会社のやっている戦略はすばらしい」と、満足度が高い状態になる。

今後の広報はそこまで考えたうえで、マネジメントをどう扱うかがすごく大事だと思っていますね。

会社の活動と社会性あるテーマをリンクさせる

:LINEはどうですか?

矢嶋:うちもそうですね。最近でいくと……。

:今、注目している企業とか。ここのPRすごいうまいな、とか。

矢嶋:個人的には、サイボウズさんですね。サイボウズさんは基本的に、BtoBで法人向けグループウェアをやっていらっしゃるので、僕ら広報やマーケティングの立場からすれば、別に関係ないわけじゃないですか?

ただ、単純に製品や機能を訴求するのではなくて、「チームワーク」など、大きなテーマを設けて、最終的に「チームワークのためにグループウェアが必要だよね」という落としどころに繋げていく。そのためにアワード、あるいは働き方を改善しようとか。

最終的にはブランディングなんですけど、社会性のあるテーマや課題に対して、どう会社の活動をリンクさせて、今は男女共同参画社会といったテーマに対して、「会社としてできることがあるよね」と、自社のサービスと社会性とのリンク、接点みたいなところをつくっている。

例えば、今、広報の立場の方でも、将来的に社内のIT部門や、あるいは起業しようとなって、グループウェアを検討する状況になったら、選択肢の1つとしてサイボウズさん検討しようという話になっていくと思うんです。

そういった、単純にBtoBのマーケティングだけやっていたらリーチしない人、あるいはもうちょっとパブリックに対して会社の知名度を上げるなど、非常にうまいなと思っています。たぶん、なかで働いている社員の方にとっても、それでモチベートされている部分は大きいという気はしますね。

枠組みにはまらず、広報を広くとらえられるか

:小泉さんに聞きたいのが、さっきエージェンシーの話あったじゃないですか。エージェンシーに長くいると、そういう受け身みたいなところが染み付いちゃうと。

例えばエージェンシーで2〜3年くらい経験を積んで、まだそういう意識がついていない人と、PR未経験だけどすごくやりたい・やってみたい人、どっちがいいですか?

小泉:どっちでもいいんですけど、僕が大事にしているのは、いろんな部署であるんですけど、半分は未経験者にしているんですよ。例えば、人事は今5人いるんですけど、3人は未経験なんですよ。広報の中澤も未経験なんですよね。

僕は、未経験者と経験者のバランスをすごく大事にしようとしていて。やはり経験者ばかり揃えると、本当にセオリーどおりやるので超つまらなくなるんですよ。そんな会社、僕はつくりたくない。でも、未経験者だけだと、お作法がわからないなど、いろんな問題が起きるので(笑)。そのバランスをとろうとしています。

タイミングによって……という気はしているんですけど、今の2つだとそんなに差はないんじゃないかなという感じはしますね。そもそも本質的なところでは、けっこう変われるんじゃないかと。

:LINEはどうですか?

矢嶋:うちでいくと、そうですね……さっきのエージェンシー批判じゃないですけど。ちょっと悪く言いましたけど。

:エージェンシー出身じゃんね。

矢嶋:私もエージェンシー出身ですし、うちの広報のメンバーも、エージェンシー出身者がけっこういるので、必ずしも否定しているわけではないです。

どちらかというと、僕が今の会社のフェーズのなかでほしいと思うのは、それこそ2〜3年くらいエージェンシーで働いて、その立場の限界、あるいは広報というファンクション自体の限界を知っていて、事業会社のなかでもうちょっと広いフィールドでやりたい、トータルのコミュニケーションのデザインをしたいなど、志を持っている人とは、一緒に仕事をしたいと思います。

実際、今なかに入ってきたメンバーは、そういうエージェンシーやアウトサイダーの立場の限界を知ったうえで、「事業会社の広報を通じて成長したい」という想いを持ってジョインしてきています。

そこで「なかに入ってコミットしたい」、あるいは「もうちょっと広く広報というのを捉え直してみたい」という思いを持っている人は、一番うちとフィットすると思いますね。

広報は、会社にとっての顔

:会場からもぜひ質問をお受けしたいと思うんですが、なにか聞いてみたいこと……はい、どうぞ。

質問者1:メルカリさんで、カスタマーのフィードバックをどんどんプロダクトにあげるというお話があったと思うんですが、具体的に数字を持って話をしにいくっていうところ、どのような内容を数字として持っているんでしょうか。具体的に教えていただければと思います。

小泉:基本的に問い合わせ件数です。警察にいく場合であれば、警察事案の件数とか。

いくつか切り口はあると思うんですけれど、そういうのはなるべく全部取れるようにしてますね。相手によってどの情報を出すかは、ある程度は決めています。数字がないと感覚で議論するので、そこは避けたいですね。

基本的にはゼロになることはないんですよ。当然、いろんな問題が起きる。だから、カスタマーサポートにはたくさんの問い合わせがあるなかで、そのトレンドがユーザーの伸びに対してどうなのか、実数が減っているのかは議論なので。

コンプガチャ問題や出会い系サイト規制のころからずっと言われていたので、ある程度それを見越して、材料になりそうなデータを取りまくっているという感じですね。

:大丈夫でしょうか。

質問者1:はい。

:そのほかご質問ある方、いかがでしょうか? 私が答えるわけじゃないので、なんでも聞いてください。

小泉:逆に原さんに質問でもいいんじゃない(笑)。

:いやいや、俺はいいよ(笑)。

小泉:じゃあ、「原さんから見て優秀な広報とは?」いう、ざっくりした質問ですけど。

:えー……、優秀な広報……矢嶋先生じゃないですか?

(一同笑)

いやいや、まあ(笑)。けど、なんだろうな……。

その人が優秀かどうかもあるんだと思うんですけど。記者って、けっこう急いで問い合わせしたり、相談させていただいたりすることが多いので、そのときの反応が早い会社は「経営陣も含めて、近い距離なんだろうな」と、見ていてわかると思います。

問い合わせして、……まあ最悪なのは、まったく返事がなくて。ずっとね。そこまでの会社じゃなくても、やはり時間がかかってしまうのは、社内のコミュニケーションがあまり円滑じゃないんじゃないのかな……という印象があります。

だから、広報としてというよりは、その会社。我々からしたら、広報って会社にとっての顔なので。その顔となる人を最初の窓口にして、その会社を知るところもあるので、そこでの判断というところが出てくると思います。

他業種の広報から学べること

矢嶋:原さんから見て、広報がうまい会社ってどこなんですか?

:昔、『日経デジタルマーケティング』という媒体から『日経ビジネス』に異動になったときに、突然だったのですごく嫌だったんですよね。立ち上げから2年、これからだというときに異動するのが嫌で、へこんで飲み歩いてた。

そのときに、当時の編集長が「『日経ビジネス』でIT分野を強化したい。だからぜひ、がんばってくれ」と言われて。編集長にそんなこと言われたらもう「がんばります」と言うしかない。でも、担当表を見たらビール担当だったんですよ。ITぜんぜん関係なくて。

(会場笑)

「すみません、編集長。これちょっと話が違いませんか?」といくと、「原ちゃんビール好きだからいいでしょ?」みたいな話になって。

(会場笑)

そのとき、ある意味初めてIT業界ではない広報と接する機会を持ったんですね。これ、実は自分のなかですごくいい経験だったなと今でも思っていて。

すごいなと思ったのが、ビール会社が4社あって、「ビール担当になりました」という話を別にしてないにも関わらず、向こうから電話が来るんですよ。「原さん、ビール担当になられたと思うんですけど、お時間いただけますか?」と言って、1時間でビール業界にくわしくなる資料を持ってきていただけるんですね。

それは決して、自分たちの会社のPR、「こういう商品出して」とか、そういうことじゃなくて。まったく知らないわけじゃないですか。ビール好きだけど、ビール業界のことはあまり知らないわけじゃないですか?

税制の話とか、例えば、「実は第3のビールをつくったのは、サッポロビールで」「最初にイノベーティブなことをやるのは、ここなんですよ」など、そういうことを客観的にちゃんと隠さずに説明してくれるんですね。

おそらくビール業界全体で、例えば税制の問題などに対して一緒に共闘しなきゃいけない部分もある。だから、右手で握手しながら左手で殴り合うところもある。「そういう説明をする業界なんだな」と思ってふと考えてみたんです。

テレビはちょっとわからないですけど、新聞も含めて担当記者は変わっていくじゃないですか。

小泉:うん。そうですよね。

:新聞なんて、本当にすごく早いですよね。そうすると「ようやく理解できました」みたいなときに、記者が異動になって担当が変わるケースもあるんです。ほかの業界のPRがやっている「1時間でわかっちゃう」なものがあるって、すごいと思いました。

小泉:ミクシィのときにやっていましたね。新聞記者向けのレクという形で。

:そういうの、すごいなって思いますね。

小泉:それをやっていると、年末年始の業界特集があるじゃないですか。

:はいはい。

小泉:あれの相談に来るんですよ。ぜんぜんミクシィに関係なくて「こういう特集を組もうと思うんだけど、この業界を見ていて小泉さんどう思う?」と。ニートになってからも日経の記者が来ましたよ(笑)。

:ああ、そうですね。けっこう他業種から学べるところはあるし。ミクシィがいろいろあったなかで、そういう記者に対しても短時間でレクチャーをするところは、すごく学べるところだなと。