一軒家の自宅にいるようなオフィス

石川善樹氏(以下、石川):脳のトリートメントってさっきおっしゃってましたけど、社員の脳の中のケアって今まで考えたことありましたか?

千葉功太郎氏(以下、千葉):やっぱりリフレッシュだと思うんですよね。我々の仕事って営業がほぼいない会社なので、朝来て夜帰るまでずっと会社にいるんですね。全く外回りとかないので、いかに社内で気分が変えられるかっていうのを頑張ってて。社内の写真、もしよければ。

今恵比寿ガーデンプレイスにいるんですけれども、(2014年)9月に32階から11階10階9階にビル内移転をして、全部オフィスの空間を塗り替えたんです。

今回テーマが「一軒家の自宅にいるようなオフィス」っていうのを、オフィスデザインも僕が創業以来担当していて、6個目のオフィスなんですけれども。悩んだ上にやっぱり気分がいろいろ変えられるものが必要かなと思って、これ社員が使う専用のスペースなんですけど、

こういうリゾート風の場所があったり、あと緑がいっぱいあったりとか、

嘘っこのビーチがあって、ボールプールなんですけど、足突っ込むと意外とリラックスするんですよね。初めて知ったんですが。

あとあちこちで遊ぶ場所みたいなのがあったりとか。

あとこたつですね、ほっこりするんですよね。これ掘りごたつで、足が中に入れられるんです。

光の色を変えるだけで、頭の切り替えがしやすくなる

家みたいな、リビングみたいなスペースもオフィスの中で同居してるんです。ここでガツガツ働いて横のソファスペースでちょっと移動してご飯食べたりとか。

見ていただくと、オフィスエリアは白い蛍光灯なんですけど、ここ(ソファスペース)はオレンジ色の暖色系のダウンライト入れてるんですね。

これFacebookさんのオフィスに行ったときに教わったんですけども、同じ空間で光の色を変えてあげるだけでも圧倒的に切り替えがしやすい。

自分が働いてる中で、短い距離の中でいかに切り替えができるかっていうのがすごく重要だっていうのを教わって、やってみたりとか。

会議とかも、会議室にこもってやるっていうよりはこういう階段状のギュッとした空間で皆で立体的にやってみて気分を変えたりとか。

これ大人気なんですけど、高さがかなりある階段状の。30~40人ギュッと入れるんですけど、こういうのがあったりですね。これは3Dデザイナー用の。

皆で会議するところでちょっと遊んでみたり、色のついた部屋とか。黄色い部屋、青い部屋。あと図書館みたいな感じで。

テーマは本当にどれだけ歩かずに(切り替えられるか)。やっぱり社内にいるので、3フロアの空間の中でちょっと30秒移動すると全く違う空間がいっぱい点在していて、Wi-Fiがどこでも飛んでるんで、Mac1台あればどこでも仕事が同じ環境でできる。

逃げ込むこともできるし、オープンな環境でも仕事ができる、というのがあったほうが切り替えができて、精神集中ができるんじゃないかなと。

川上全龍氏(以下、川上):立ってやるデスクありましたよね? あれって最近増えてるんですよね。例えば東京のデンマーク大使館とか、高さが変えられるようになってて、午前中立って仕事してあと座ってできるようになってたりとか。

確かスイス銀行なんかもそういうシステム導入してるはずなんですけど、あれはもともと腰痛を防止するためにやったらしいんですけど、それがストレス軽減にすごく働いてるらしいんですよね。やっぱり姿勢を良くするところ。

千葉さんのオフィス見て、すごく綺麗だしごちゃごちゃ感もないし。禅の観点から、そういうところが落ち着かせる環境ってすごく出てると思いますよね。

なぜ健康にならなければいけないのか

石川:為末さんどうですか、今のオフィスをご覧になられて?

為末大氏(以下、為末):刺激があって。人間って環境との関係性に自分がいるじゃないですか。だから環境が変わると自分が変わるんでしょうね。それで自分も環境変えるみたいな、そういうことが行なわれてるって感じですね。

なんとなく僕、健康になるって「なんで健康にならなきゃいけないの」っていうのが、実は世の中で1番大きな問いなんじゃないかと思うんですよね。

国の観点からしたら健康でいて下さいっていうのはわかって、会社からしてもそれはわかるんですけど、個人の観点から「いや俺いいよ」と。

個人の価値観で健康じゃなくてもいいよっていう人に、健康になりたくなるような説得の仕方って何だろうなって今日ずっと考えたんですけどね。

千葉:長生きじゃないんですか?

為末:長生きもいいよと。俺は太く短くでいいよと思ったときに、なんとなく僕らの世界では、勝負がつくのは人生の後半だよっていう競技であればあるほど、体に気を使う傾向にあるんですよね。

だから20代前半で勝負がつくような競技って言うのは皆結構何でもOKなんですけど、工藤公康さん(福岡ソフトバンクホークス 監督)も20代後半くらいから、俺これ40くらいまで投げれそうだって思ってから急に健康志向に切り替わってるんで。

「戦いは長いぞ」っていうことを皆認識するっていうことが実は健康の意識を高めるのにすごい重要なんじゃないかっていう気がするんですよね。

石川:目先じゃなくって長期的に。

為末:長期的に勝負しないと人生っていうのは勝てないぞ、そして意思決定の質も落ちていったらダメだぞっていう。後半に対してもっと質を上げていかないと、それが致命傷になるぞみたいなことを皆が認識する。

健康な状態ってつまり「正常な状態」っていうことだと思うんですけど。意思決定にしろ何にしろ。

そういう状態が実は勝敗を決めるぞ、みたいな感じのことなのかどうかわからないんですけど、そういう認識が高まると実は健康でいるっていうことが、結果として「人生の戦略としても重要だ」みたいなふうになっていかないかなと。僕らはスポーツだとそうだったんですよね。

千葉:今日のテーマであるビジネスパーソンの健康って考えると、普通に考えると22歳くらいから60、65歳くらいまで働くと、やっぱりロングですよね。非常に長距離走だと思うんです。

死について考えることも大事

石川:社員の方見られててどうですか? そこらへんの40年間働くんだぞっていう意識ってどういうふうに感じてらっしゃると思います?

千葉:20代の前半の子たちにこの話すると、極めてハード(笑)。「そうすか」って。でも35~40歳くらいの方だと労わりながら、細く長くっていう。

急にカチッと切り替わっていって、やっぱ皆口を揃えて言うのは35~40歳超えた瞬間にガクッとくるってお話をしていて、そこらへんから異常に意識高くなるんですけど。

でも結局それって20代の積み重ねがやってくる話なので。うちの新入社員とか若い子たちには、そうならないためにも、何もしなくて雑な生き方でも20代乗り切れるけど、あとで30、40なったときに……ビジネスパーソンでいえば20代の知見が30代40代に一気に開花してくるわけじゃないですか。

そこのときに体がついてこなかったらもったいないよ、みたいな言い方をすると結構理解してもらえたりするんですよね。

石川:損しちゃうよということですね。川上さんは健康ってことについてはどういうふうに考えられてます?

川上:そうですね。健康ってことに関していうと、僕の仕事上やはり死が迫っている人のお世話をする機会が多いわけですよね。

石川:健康のその先に行った人ですよね。

川上:健康って、その先にいくとどういうふうに死を迎えるかっていうところになってくると思うんですよ。やっぱり人間の終焉って死なんですね。

そういう方たちと最後の段階で接してるときに、やはり健康で重要だなって思ってるのが、幸せにある程度の高齢になって亡くなるって方はいますし、それか途中で最後の人生の10年間ずっと寝たきりでおむつ換えてもらってっていうところですよね。

自分はそういう生き方したいかって、太く短くでいいって言い切る人も結構いるんですけど、結局そういうところって私なんか目の当たりにするわけですよね。

本当に60代くらいから突然寝たきり状態になって誰かがおむつを換えてくれるっていうものを見てると、自分こういう死に方はしたくないなっていう部分に気付くと思うんですね。

健康ってことを考えるときは自分がどう死にたいかっていうのを考えてみるっていうのも、やっぱりいいかもしれないですよね。

石川:かなり深いところまできましたね。ありがとうございます。やっぱり健康を考えるっていうと運動とか栄養とかっていうことだけを思いがちですけど。

今日お話を伺って日々のメンタリティというか、努力するためには毎日の疑問が大事だとか、死を考えること、あるいはコロプラみたいな環境作りですよね。いろんな視点があるんだなっていうのを私自身学びました。

制作協力:VoXT