卒業文集で宣言しても本田圭佑にはなれない--為末氏が語る「努力するためのコツ」

健康経営のススメ #2/5

IVS 2014 Fall Kyoto
に開催
コロプラ副社長・千葉功太郎氏、一般社団法人アスリートソサエティ代表理事・為末大氏、宗教法人春光院副住職・川上全龍氏と、異業種の面々が「健康経営のススメ」について意見を交わしたセッション。現役引退後もスポーツの発展や選手の育成に関わる為末氏は、努力し続けられる人の特徴として“自分を飽きさせない努力を知っている人”をあげました。(IVS 2014 Fallより)

姿勢の乱れが身体の不調をまねく

石川:やっぱり人生長いですから、長く働いてもらうために本当にいろんな取り組みをされていて。インフルエンザみたいなのを100人100人で調査するのがおもしろいなと思ったんですけども。

為末さんは陸上選手でも、長くできる人と選手生命短い人がいるわけですよね、そこって体作りなんかで違うところって、見られてて気付きました?

為末:癖でしょうね。結局車20年乗ってたら、例えば片方の車輪が小さかったとしたら10年くらいはもつんですけど、だんだんその歪みが出てきて、経年劣化して壊れていくじゃないですか。

人間の体も基本的には経年劣化するものなんで、腱なんか回復しないものなんで、右ひざに掛ける歩き方をしていくと、40代くらいから壊れてきたらそこから元に戻ることはないんでそれでアウトになる。僕らの場合はもうちょっとペースが速いので、20代後半くらいから、10代から抱えてる癖みたいなものが痛みを生んでくる。

結局質問のところに戻ると姿勢ですね。姿勢が乱れていることが最終的にはインパクトに出てくると。

石川:今日来てる方見てどうですか? 姿勢は。

為末:急に何か背が伸びたなみたいな(笑)。

千葉:会場が暗いから見えない。

為末:特に僕らは二足走行の世界だったんで、立位ですよね。立ってる状態の姿勢でしたけど、座ってる状態も腰痛とか関係あるんでしょうね、それが大きかった気がします。あとはわかりやすく腹筋背筋っていうか、コアの強さっていうのは関係あると思います。

石川:ありがとうございます。ちょっと皆さん、せっかくなので姿勢良くしてみましょうかね。姿勢を良くするときに、大体皆さん背中を伸ばされると思うんですけども、そうすると背中を多分痛めると思います。

姿勢を良くするときには、まず骨盤を前にぐっと出してみるんですね。ぐっと出してみて、腹筋に力を入れてみてください。背中を意識せずに骨盤を前に出して腹筋に力を入れると、自然と姿勢が良くなると思います。これが本来の正しい座り方なんですね。川上さんってこういうふうに教えられてますか?

川上:座禅を教えるとき足組むってことはあまりやらせないんで、私のフォーカスしてるのは、日常生活でそういうものをいかに取り組めるかっていうことを教えてるんで、こういう椅子に座ったときの正しい姿勢。今まさにおっしゃったとおりで、やはり一緒に教えてますね。

石川:僕らの体って重力がすごいかかってて、それがやっぱり姿勢が悪いと腰にきたりして良くないってことですよね。皆さん、このセッション中はどれだけ姿勢を良くできるかってちょっとチャレンジしてみてください。

千葉:この場合って背もたれは触れない感じなんですか?

石川:触れない感じですね。

千葉:きついですね。

石川:多分触れてると楽なんですけども、これはこれで腰が痛くなってくると思うんですね、最終的に。なので触れずにお腹に力を入れるのをやってみてもらえると。

“悟り”は自己申告制

千葉さん今回、自社の健康づくりの取り組みをまとめてみて改めて気付いたことってありますか?

千葉:そうですね、何がどれくらい効いているかっていうのは我々IT業界って数字、可視化が大好きですけど、見えないですよね。

石川:なかなか見えにくいと。

千葉:どの施策がどう効いているかっていう、1個1個の切り出しと検証っていうのができないので、非常にロングタームですよね。ただ我々しかサンプルがないんで、他社との比較ができないからそれが結果5年後、何%良かったのかっていうのが見えてこないので不安はありますよね。

為末:健康を数値化した、健康のKPIってどんなものなんですか?

千葉:それを知りたいです。

為末:それが難しいですよね。

千葉:KPI化できれば、例えば業界平均いくつのところを弊社はこのくらいですとかできる気がするんですけど、そういうのがないので、いろいろ試行錯誤はしてるんですけど見えないっていうのが一番やっぱり、気がついたというか気がついてるんですけど。

石川:そうですよね。KPIもよくわかんないし、いいと言われていることをやっても……例えばさっきのインフルエンザみたいに本当にいいのかよくわからないっていうのが、難しさを感じてるということ。

千葉:間違いなく、さっきの栄養の話とかにいくといいだろうなとは思うんですよ。風邪も確かに少なくなった気もするんですね。気もするんですけど、本当にそうなのかなって因果関係が証明しにくいっていうのがあってですね。

多分IT業界の経営者って、数字を見てデータで改善していってまた投資をするっていう思考の経営をしてるので、やっぱり苦手ですよね。こういうのって見えないので。

川上:「気もする」ってやっぱり大切じゃないですかね。病は気からっていう感覚とかもあって、うちらのやってることも結構数字にはならないっていうこと多いんですけれども、前向きな精神に人を持ってくっていうところも大切なんで、こういうことしてるってことも大切ですよね。

石川:素朴な疑問なんですけど、お寺の世界では例えば悟りを開いたかどうかって数値化したりできるものなんですか?

川上:多分無理ですね。悟りを開いたって言ってる人に限って疑問を感じる人が多いんで(笑)。

千葉:あれって自己申告制?

川上:自己申告、あるいは昔から言われてるある程度のお題っていうか、どれだけ修業を積んでるかとかそういうとこになってくるんですけど、結局のところは数値化できない世界になってくるんで、どうなのかなといつも疑問に感じております。

日常の努力に労力を感じないことが大事

石川:なるほど、ありがとうございます。ここで体は終わりにして、次に心についていってみたいと思います。心の鍛え方というところで為末さんにお話いただくんですが、まずちょっと調べてみました。

心の健康度っていうのは、これ厚生労働省のほうで決まってます。疲労とか不安とか落ち込み度っていうのを取る方法が決まってて、一応数値化されるんですね。来年度から労働安全衛生法が変わって、こういうの取らなきゃいかんってことになってるんですけど、千葉さん、全国のビジネスパーソンと比較してどうだったか。中位です。

千葉:セーフ。

石川:下位ではなかったです。為末さん、非常に心は健康ですね。上位すぎると能天気な人って言われるんですけど、上位と。川上さんも上位ということです。

川上:どっちかっていうと能天気なほうです。

石川:能天気なほうに近いと(笑)。為末さんにこれからお伺いしたいのは、健康作りって効果がなかなかすぐ出るものではないんですよね。多分そこがゲームとかと違うのかなと思うんですけど。

結果がなかなか出るかどうかわからないときに、僕らはそれでも努力をしなきゃいけないんですけども「どうやって努力をすればいいのか」っていうのは、どういうふうに考えてらっしゃいましたか?

為末:多分努力っていうと目標を決めてそこに向かっていくっていうことですよね。石川さんと選手にインタビューしていて2人の間の仮説があって、それは大目標を人生の早い時期に打ち立てることがオリンピックやワールドカップやメジャーリーグに行く秘訣であるというのが、どうも正しくなさそうだっていうとこはわかってきているんですよね。

それはよくネット上で本田(ACミラン・本田圭佑選手)の小学校の作文とか、あの時期にあれだけのビジョンを立てたから彼はそうなったっていうのは、実は例外値で。というのも同じような作文を書いた、オリンピックに行けなかった選手を僕たくさん知ってるんで。

だからビジョンを早い時期に描くことが、関係あると思うんですけど、努力をできることとはあんまりそこまで相関はない気はしていて。それよりは日常の努力自体にさほど労力を感じないっていうことが結構重要じゃないかと思ってて。

簡単に言うと、何か改善していったり成長していくっていうことに対して、喜びをうまく感じられるような仕組みを組み込める人が、努力し続けられる人かなと思います。

努力し続ける方法は「自分を飽きさせない」

石川:為末さんは毎日走ってたわけですよね。どういう工夫をされてたんですか?

為末:陸上競技の練習って結局実験なんですよね。まあほとんど外から見たらわかんないんですけど。

AとBって2つあるとして、例えば腕振りを大きめに走るのがA、小さめに走るのがB。1週間Aをやって、1週間Bをやってみると、どっちがどんな効果が出たかっていうのを僕らはやっぱり体感と、あと数字にも若干出るんです。「あ、Aのほうが良かったな、腕振りは大きく振ったほうがどうも良さそうだ」という実験をずーっとやっていくんですね。

それがおもしろいですね。検証すると、こうやったらいいんじゃないかっていうことを考えながらやっていくので。

だから陸上競技に関して言うと喜びっていうのは2つあって、1つは達成される喜び。これは勝つ喜びですけど、一方で改善される喜びというのと仮説が当たっていく喜びっていうんですかね。

この2つの喜びをうまく行き来しながら、気がついたら10何年頑張ってる、みたいなのがパターンじゃないかと思います。

石川:何も考えずにやらないっていうよりかは、ちょっと疑問を持ってみてそれが解消されていくのがいいっていうことなんですかね?

為末:好奇心とか、わかっていくってことですよね。なんとなくやったらわかっていくことの喜びとか、僕さっき(千葉さんの話)聞いてておもしろかったんですけど、それもわかっていくおもしろさがあるじゃないですか。

「あ、どうもインフルエンザの予防接種は効かないんじゃないか」とかね。もう1歩突っ込むと、じゃあ何でこんなシステムになってるんだろう? とか、いや本当は何かに効いてるんじゃないか? とか。そういうことの連続ですね、グラウンドは。

ただ、そういうふうにグラウンドが見えてない選手はやっぱり早く引退しますね。反復だけに見えてる人は、何万回も人って反復だけはできないんで。

あれが実験の繰り返しだと思っていくと、何万回何十万回できるんですけど、ただの素振りは反復だと思ってる人は、やっぱ何千回くらいいったところで飽きちゃって引退していく。

僕こないだテレビ見ておもしろいこと言ってるなと思ったのが、志村けんさんに、ダメよ〜ダメダメっていう人たちいるじゃないですか。あの人たちが「私たち来年飽きられちゃうんじゃないかって不安なんです」って相談をしてる番組だったんですけど、そしたら志村けんさんが「アンタ自分で飽きたらお終いだよ」っていうのを言ったんですよね。

自分を飽きさせない努力を知っているか知っていないかが、努力をし続けられるかどうかの境目じゃないかと思います。

ゲーム開発もスポーツの練習も実験と検証が重要

石川:深いですね。てことは、外から見ると同じようなことをしているつもりが、自分の中では小さな疑問を持って仮説を検証し続けるっていうのが続くコツなんですかね?

為末:そうですね、やっぱり自分がとった行動で外的環境も変化するじゃないですか。こういう場所に来たとき、人間って案外同じ場所に座るんですね。いつも(フロアの)右前に座る人って右前に座る。

石川:前に座る人、後ろに座る人。

為末:ちょっと違う場所に座って見ようというと見え方が違ったり、もしくは小さな教室だったりすると、壇上にいる人からの印象が変わったりとか、そういうことをずっと繰り返していくっていう、働きかけをやってみるっていうことですよね。

それで、どうもここにいると目が合う確率が高いとかっていう違いに気付いて。でもどうして目が合うんだろう? と。

「講師の人は前の人に注目する傾向があるのかな」ということをグラウンドの中でずっとやっているかどうかっていうのと、ただ漫然とグラウンドに来ていつもと同じ場所に座っていつもと同じことをする人は、やっぱり全然違うんじゃないかなっていう気は。

石川:そんなにいろいろ考えてやってるっていうのは(笑)

為末:まあ、好奇心が強いから。

石川:例えば、毎朝家から会社に行くわけですよね。仕事場まで。その途中ってどんなこと考えてるんですか?

為末:ミーティングのときに最初から僕がバーッてしゃべってみたミーティングと、ゆっくり聞いてみたミーティングでは、どっちのミーティングが。

僕まだこっちのほうは素人なんで、引退したの2年前なんで、仕事っていうのを今掴もうとしているんですけど、ミーティングの始め方をどうやって始めたらいいのか。15分で設定してみたり、1時間で設定してみたり。

部屋も、広い部屋があってもう1個は古い部屋があるんですけど、どっちのミーティングのほうがより盛り上がったのかなっていうのを、ずっとAとBっていうのをやって、どっちが良かったていうのをずっと、今繰り返して実験してる。そういうことを「今日はどの実験しようかな」って感じですね。

石川:そうなると毎日が楽しくなりそうですね。

為末:時間かかるんで、きっともっとうまいやり方あるんでしょうけど、僕の場合現役時代はそういうやり方してたんで、それで気がついたら時間が経ってるみたいな感じですかね。

石川:ありがとうございます。千葉さん今、為末さんのお話聞かれてすごい頷かれてたんですけど、何かヒントになったことってありましたか?

千葉:確かにそれって、我々のゲームとまったく一緒の運営の仕方なんで、おっしゃる通りだなと。

同じものを漫然と運営しているわけではなくて、ずっと様子を見ながら仮説を立てて実験して、新しい試作やって良ければそれをもっと大きくしたり、悪ければちょっと引っ込めてもう1回やり直してみたりっていう試行錯誤してるんで。

我々結構長生きのゲーム作って、3年目4年目のゲームとかやったりするんですけど、ゲーム業界の中で比較的長寿なほうだと思うんですけど、本当に毎日漫然と同じことはやってなくて毎日違うことやってるんですよね。

石川:ゲームをそうやっていろいろ疑問を持ちながら作ってる人たちは、自分の生活習慣とかに対しても同じようにやっぱり実験を繰り返してるんですかね?

千葉:ないと思いますね。

為末:そっち側に興味がいくとね。練習の話をゲーム作る方と聞いたときにすごい似てるなと思いましたね。そういう感じですよね。

千葉:仕事として、為末さんはプロで選手としてそれがメインでやられていて。ゲームクリエイターはゲームクリエイターがメインだからという自分の持ち場の話であって、例えば我々だったら、健康にも意識向ければ同じやり方は絶対行けるはずですよね。

石川:そうですよね。

川上:私も為末さんの言ってることがすごくわかります。私も言ってみたら伝統産業の一部っていう感覚じゃないですか。結局伝統産業の中でも残っていくとこ、残っていかないとこがどんどん生まれてくるわけですよね。

伝統だからってそれをルーティン化して何も考えずにずっとやってるってところは潰れちゃうんですね。やっぱり疑問を持って、次の世代にこれはどう残こしていくべきかっていうことをいろんなプラン立ててやって行って。

それで「これが通るんでこれをやってみよう」とか、そういうふうにどんどん周りに合わせて変化して行ったとこが残ってくっていう感じですよね。

制作協力:VoXT

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