アップデートしていける組織の共通項

沢渡あまね氏(以下、沢渡):もう1ついいますと、成長していく組織、アップデートしていける組織の共通項を見ていくと「制約条件の強い人」かつ「成長欲求が高い人に合わせている会社」。例えば、育児しながらで時間の制約はあるけれども、でも活躍したい。もっと高みのある仕事をしたい、責任を全うしたいと考える人たちに合わせていくと「じゃあリアルな会議はやめて、リモートにするか」とかね。そういう話になっていくわけですよね。

もうメールじゃなくてチャットですぐつながれるようにして、それこそお迎えに行く途中でもレスできるようにするかとかね。これが制約条件がなくダラダラ残業し続けている人、さらに会社に長居することによって“仕事した感”に浸っている人たちに合わせていくと、そういう人たちは活躍できなくなって、どんどん不幸になっていくと思います。

もう1回言います。制約条件が強い人、かつ、成長欲求が高い人に最適化していくと、組織はどんどん健全化されます。

斉藤知明氏(以下、斉藤):なるほどなぁ。おもしろいですね、ありがとうございます。

組織にリスペクトを醸成していくための“下支え”

斉藤:では次の質問に移らせてください。こちら、たまたまいただいておりますが「沢渡さんから見ても、Uniposのようなサービスはすぐ導入すべきだとおもいますか?」という。私から聞くのは、ちょっとはばかられるんですけれども。

沢渡:導入したほうがいいでしょう。Uniposさんのサービスって、結局、組織の中にリスペクトを醸成していくための“下支え”なんですね。オープン&コラボレーション、オープンにつながって価値を発揮していく、世の中に変えていくためには、それぞれが「私はこれが得意でこれが苦手で、でもあなたにこれを期待する」「私はこれができる」というリスペクトがないと崩壊するんですよね。

リスペクトって、気持ち悪く、単にベタ褒めし合おうではないんですね。正しく期待する。あるいは、お互い何者かを明確にしていく。私は「日本の組織って、妖怪カオナシだ」という話をします。東京の大手町の駅に朝行くと、みんなグレーのスーツ着て下向きながら暗い顔してビルに吸い込まれていくじゃないですか。もう、個性を奪われているんですよね。みんな同じ働き方、動きをすることを強要されていく中で、魂を奪われるんですよ。

そうではなくて。環境は自由でもいい、どこで働いてもいい。ただし「私はこれができる」「あなたにこれを期待したい」「だからつながって、こういう価値を出そうぜ」というような“顔を取り戻す世の中”にしていくためには、根底に必要なのは相互リスペクトがある状態。

相互リスペクトは健全な組織を作っていくエンジン

斉藤:そうですね。「リスペクトの行動」といいますけど。(スライドを指して)これは実際に我々の社内でやってるUniposの画面なんですよね。褒め合うというのは、別にベタ褒めする、馴れ合うということが目的では、まったくないです。

沢渡:そう! そう! 

斉藤:「あなたの行動、イケてるよね」というのと「会社にとって重要な行動」を結びつける行為だと思っているんですよ。

沢渡:いいことおっしゃる、さすが(笑)。

斉藤:ありがとうございます(笑)。これ、ちょうど今朝に送られていたエンジニア同士の投稿で。

会社で使っている外部のライブラリにほしい機能がないとなった時に「なんでこれないの?」って作った人に直接聞いたり「作ったら歓迎だよ」って言われたらどんどん「じゃあ自分も作るわ」というように、会社内で閉じずに外まで広げてコミュニティに貢献しよう、なんならアウトプットしようという姿勢が素敵だし。

それって、うちの会社が掲げている「自律的に行動するプロフェッショナル」という行動指針があるんですよ。「これと一緒だよね」「あなたは体現できているよね」って言うことによって、自分がやったチャレンジが会社にとって重要だし、みんなにとってもいいものだって受け入れられているという、リスペクトの精神が中で生まれているっていうのは本当に素敵だなぁと思いながら、今日出社しながら見ていたので。

今、沢渡さんがおっしゃったリスペクトっていう……

沢渡:それこそ、健全な組織を作っていくエンジンですよね。さわやかな組織。

斉藤:そうですね。こういうところが認め合えると。

沢渡:褒めるっていうと「褒めるの苦手だし」「そんなキャラじゃないし」というネガティブ層って、けっこういるんですよ。そうではなくて「リスペクトする行動、リスペクトし合う行動をしましょう」だと思っていて。そのためにもUniposさんがやっているようなサービスって、すごく私は大事だと思いますよ。

斉藤:ありがとうございます。

沢渡:日本人ね“褒めなさすぎ”なんですよ。仕事はつらいもの、あるいは、厳しいものに耐えてオッケー。叱る時、揚げ足取る時しか出てこない人とかいると、気が滅入りますよね。話しかけたくもないですよね、そんな人。

会社に来ることが仕事だと思っている人たちに、改善余地は?

斉藤:そうですね。では次の質問に移らせてください。「改善はその担当者が困ることから始まりますが、会社に来ること、その作業をすることが仕事だと思っている人の意識を変えないと、問題の見える化ができない。その傾向はシニアに多いように感じていて、なぜかというと、定年のタイミングが見えていて、現状維持で良いと考えているからではないだろうかと思っています。いかがお考えでしょうか?」と。

沢渡:うーん、半分はイエスで半分は改善余地があるかなと思っていますね。確かにもうゴールが見えて動かない人、変わらない人は変わらないんですよ。だからなるべく、そういう人たちとモチベーションがある人を混ぜない。

それは組織を変えたりだとか異動によって、あるいはそういう組織にいる人の中でもプロジェクト活動みたいな、ほかに活躍する領域を作ってあげるというのも、大事なのかなぁと思いますよね。

人事評価する立場にいる方は、そういう人たちはやっぱり評価を下げていくしかないと思いますね。人事評価って、社員に対する会社のメッセージですから。どういう人を優遇するというような。

ただ、そうはいっても、いろんな改善活動だとか改革活動なんかをやっていくと、その中でシニアな人がいいノウハウを出してくれたりだとか。それによってまさに相互リスペクトが生まれて、一体感がある職場に変わったという事例を、私はこの半年で見ていまして。

斉藤:へ~、素敵。

沢渡:今までにない強みとかが言語化されるきっかけって、今までとは違う仕事をやらないと見えてこないんですよね。それは改善活動でもいいですし、なにか新しいことをやってみる活動でもいいですし。

その中でシニアな人の意見だとかノウハウだとかを出せる場を作って、そこによって若手も「この人、いいこと言うんだなぁ」と、お互いのリスペクトが生まれていくような景色の変化を作っていくのも、私は1つかなと思っています。

「今の行動が生まれた背景」から生まれる、改善行動

斉藤:ありがとうございます。まさに「現状維持でいられる」という考え方が前提にあると難しいかもしれないんだけれど。その人たちが今までやり続けてきたものにも、それはそれで理由があるからこそ、そこの理由を紐解いていくとどういう改善が生まれるか。どういう改善ができ得るのかっていうところも、いっぱい話せると思うんですよね。

いろんな組織のみなさんをご支援させていただいてますけれども、改善行動を起こそうとした時に、改善するっていう“先の未来の理想”を語るんですけど、今の行動が生まれた背景をめちゃめちゃ考えている人って、あんまりいなかったりするんですよね。

沢渡:あ~、ありますね。

斉藤:改善行動を考えていった結果「だから今ってこうなってたんだ。意外といけてるね」ってあとで気づくことが何回かあったりして、すごくもったいないんですよね。

沢渡:あとはやっぱり考えるきっかけとか、もちろんスキルアップも大事ですね。特に製造業型、統制型に慣れてしまった人って、ふだん考えたり思考したりする習慣がないことが多いと思います。

そうすると、思考の仕方の武器がないっていうのもありますから。例えばロジカルシンキング、クリティカルシンキングだとか、あるいはファシリテーションとか。そういったものの育成をするところも、非常に大事なのかなと思っています。