大赤字を経験し、萎縮している組織を活性化させるには?

斉藤知明氏(以下、斉藤):では、Q&Aのところに入っていってもよろしいでしょうか。

沢渡あまね氏(以下、沢渡):はい、いきましょう!

斉藤:あ~、すごく大きな質問ですね。「過去に大赤字を経験し、萎縮している組織。けっこう動きづらいです」と。「1回大赤字してしまったから、ここでカチッと作っていかないといけないという組織にとって、いい変化を及ぼす、活性化させるような方法ってあるのでしょうか?」という質問が来ています。

沢渡:手短に3つだけお答えしましょうか。1つ目がけっこう荒治療なんですけれども、トップとか部門長に外の激しい人を呼んできて、ガラッと変えることです。。今、いろんな問題がありますけれども、まさに私もカルロス・ゴーンさんが来て変わった、日産自動車にいたわけです。

そして例えば、最近で対談したのは渋谷区。東京都渋谷区の副区長の澤田(伸)さんは、元は広告代理店にいらした方で。そういう外の人が副区長に来て、今、ドラスティックに人材の評価制度から働き方までデジタルに舵を切っているんですよね。要は「外国人が来た!」みたいな状態(笑)。それを作ってしまうという荒治療が1つ。

2つ目が、チャレンジする領域を作る。例えば、なにか新たなビジネスを作るでもいいです。既存の問題課題を部門横断で解決するプロジェクトチームを作る。

行政なんかでも、それによって横通しで解決する機会を作ることによって、そこから「あ、チャレンジできるんだ」あるいは「自分たちでもできるんだ」という成長体験を身につけて、自走しているところがあります。

3つ目が繰り返しになりますけれども、まず半径5メートル以内の自分たちの問題課題を言語化して、それに取り組む機会を作っていく。もしくはそれを評価するという、身近な業務改善から始めていくということです。大きな話から小さな話までしました。

仕事としての自由度が低い職種での、職場活性化

斉藤:ありがとうございます。そんな中で、仕事として自由度が低い職種という話で「いわゆるオペレーティブな人材の中でも、職場活性化や改善、コラボレーションが起こっていくようなものって、そもそも必要ですか? 必要であればどう起こしていくのが良いのでしょうか?」。

沢渡:どのように移行していくべきか? まず大事なのが、オペレーティブな現場においてもクリエイティビティを求める機会を作っていくことだと思うんですよね。例えばなにか新たなこと、ITをオペレーション現場の問題・課題を解決するために取り入れてみるとか。今までの会議のやり方を変えてみるとか、なんでもいいんですよ。なにか問題・課題を解決する。

あるいは成長するテーマを決めて、それにチャレンジする機会を作っていくだけでも、実はいわれたことしかできないと思っていた人が、いきなり新たなアイデアを生み出したりとか。外に出て行って勉強して、それが気持ちよくなって「こんなにこの人オープンだった!?」みたいに変わる人って、間違いなくいると思います。私もいろんな企業で、そういう人材を今年(2020年)1年だけでも20名くらい見ていますから。

だからオペレーティブな部分を否定するわけではなくて、オペレーティブな業務においても改善余地だとか成長余地、課題ってあるので。その課題に名前を付けて、そこで新たな取り組みをしてみる機会を作ってみる。もちろん機会を作っただけではダメで、例えばなにか新しい武器が必要であれば、教育の予算を付けて教育をしてあげるとかね。

あるいは、なにかITツールを導入するための予算を付けてあげるとか。それも、組織としての後押しは間違いなく大事ですけれども。クリエイティビティを発揮できるような場を作っていく、というのが私は1つ大事なのかなと思っています。

それが例えば「仕事としての自由度が低い職種での職場活性化」というのもそれかなと思っています。問題や課題、テーマはどの職場にも必ずあると思います。

斉藤:これは「オペレーティブな要素が多い職種」という意味だと思うんですよね。絶対にこなさないといけないこと、ないし「Aというインプットに対して、しっかりとBというものを出さないといけない要素が多いけれど、その時間を短縮する」だったりとか。別のインプットにも対応できるようにするだとか。改善できる余地はたくさんあって。

でもそのオペレーティブなところに集中してください、それだけをやってくださいってなると、なにも変化が生まれないし。改善できないようになってしまっているということなんですかね。

沢渡:おっしゃるとおりだと思います。自由度が低い職種の活性化方法はぜひ『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』に詳しくに書いてますので。これを読んでいただきたいなと。

ここはウォーターフォール市、アジャイル町 ストーリーで学ぶアジャイルな組織のつくり方

斉藤:ありがとうございます。まさにそこがオープンとコラボレーションというところで。

クリエイティブな人を活かす、育てるための4つの要素

斉藤:そういえば「4要素の話」間に合わなかったですね。

沢渡:あ、そうだ。じゃあ、その話しましょうか。

斉藤:ぜひぜひ。

沢渡:クリエイティブな人を活かす、育てるための4つの要素というのがあります。1つ目が「情報を与える」。2つ目「権限を与える」。3つ目「環境を与える」。4つ目「報酬を与える」。この4つです。

人って情報を与えられないと、悪気なく目線が低くなるんですね。悪気なく受け身になります。だから例えばサイボウズさんは、議事録なんかをイントラネット上で社内に全公開しているわけですよね。

それによって「私はここにいていいんだな」「私は信頼されているんだな」という気持ちになりやすいんですよね。10人いたら10人が全員そうなるとは限らないですよ。「2:6:2の法則」がありますから。

2つ目の権限を与える。決済権限は与えられなくても、仕事のやり方を任せる。この領域は仕事の進め方に対しては口出ししない。任せた。これって権限を与えるという話ですよね。

3つ目の環境を与える。テレワークでパフォーマンスを上げられる人は、テレワークという選択肢を使ってもいい。私もそうですけど、別にダム際で働いてもいい。主体的に勝ちパターンを実践できる環境を与えるというのは、その人の組織に対するエンゲージメント「私はプロとして認められているんだな」って気持ちになりますよね。

私、最後の転職でちょっとミスして。自由な環境から固定的な製造業的な環境に行ったら、モチベーション下がりました。なんかね、人って自由な環境を経験するとアレなんですね。堅苦しく感じるようになるのかな。「自分って信頼されてないんじゃないかな?」って気持ちになるんですよね。

斉藤:ん~、なるほど。

沢渡:環境の選択肢を与える、環境の自由度を与えるというのは、エンゲージメントと表裏一体なんです。プロがプロとしてパフォーマンスを発揮できる、環境の選択肢がある。

4つ目、評価・報酬ですよね。改善しても改革しても、評価されなければバカらしくてやっていけなくなりますよね。日本の組織は、改善とか改革を“気の利いたボランティア”に依存しすぎだと思います。

斉藤:はいはい(笑)。

沢渡:きちんと評価してあげないと。その評価の材料を集めるために、Uniposさんが提供されているツールを使ってもいいと思いますし。

斉藤:ありがとうございます。環境を与えるとか、権限を与える、情報を与えるという書き方をしていますけれども、これが選べるようになるっていうことですね。

沢渡:そうそう! 選択可能であること。

みんなが決定して、自分の意思で掴み取れるような環境づくり

斉藤:「オペレーティブな人材、イノベーティブな人材」みたいな、言葉の使い分け方をしていましたけれども。一人ひとりがどういう人材か規定されているのって、たまたま新卒の時の配属がそうだったとか、そういうところに異動したというきっかけがあっただけで。

沢渡:8割が運だったりしますよね(笑)。

斉藤:そうですよね。という中で、例えば「あなたはマーケティングに配属されたんだから、マーケティングのことばっかりしていないさい」ではなくて、マーケティングに配属された中で会社全体のことが見えて、事業全体のことが見えて。例えばサイボウズさんもそうですけど、我々も経営会議の議事録ってフルオープンにしているんですよ。そうすると、見る人と見ない人に分かれるんですよ。これは自由だと思うんですよね。

沢渡:はい、権利を放棄しているだけです。

斉藤:そうです。それを見る人に「いつでも言ってきていいよ」という権限がともなっていて、自由な働き方、ないし、オープンに発信できる権利・環境があるという状態で、言ってくる人が出てくるんですよ。

そうすると実質的に「あなたはもうマネジメントしてるよね。リーダーとして業務を遂行しているよね」という人が生まれてきて。その人を次のリーダーに抜擢するみたいなこともやれるようになるということが、この「情報を与える、権限を与える、環境を与える」ことだと思っていて。

「あなたはこういう人材だからこうしてね」と一辺倒に出すのではなくて、みんなが決定して自分の意思で掴み取れるような環境づくりというものが、これから「オープン×コラボレーション」という意味では求められてくるのかな? というのは、沢渡さんの話を聞いていて思いましたね。