2016年版のソーシャルマーケティングは?

江端浩人氏(以下、江端):本田さんからコトラー先生への質問は?

本田哲也氏(以下、本田):そうですね。コトラー先生の『ソーシャル・マーケティング』という本があるんですよね。

1989年だったと思います。マーケティング3.0、4.0と来たんですけれど、今日話したことの一部も『ソーシャル・マーケティング』という本の中に書いてあることがかなり含まれています。

そっちのほうのアップデートで、本当にコトラーさんに聞けるんだったら、今、現在こういう世界環境、社会環境になって、コトラーさんご自身が、あそこで提唱されたソーシャル・マーケティングを考えたら……、もう2016年バージョンで。

江端:27年後のソーシャル・マーケティング。

本田:どうなのかな、と。

江端:そう考えるとすごいですよね。その時にすると。

本田:余談ですけど、PR業界に入りたいなと思った時に、いろいろとPRの本を読んだんですけれど、コトラー先生の『ソーシャル・マーケティング』には、けっこう影響受けました。モノを売るだけがマーケティングじゃないと。

社会的プロダクトという言葉があるんですけれど、それが今もやっている仕事にもつながっているので、それを聞いてみたいですよね。

かっこいいほうに逃げた?

庭山一郎氏(以下、庭山):僕も、若い頃に、ハウトゥーがほしいじゃないですか。ハウトゥーセルみたいなことがほしいと思っている時に、その『ソーシャル・マーケティング』を読んで、「なんだよ。なんかかっこいいほうに逃げたな」と思ったのが、まさにその本なんです。

(会場笑)

本田:かっこいいほうに逃げた(笑)。

庭山:そんなこと思ったんですけど。

徳力基彦氏(以下、徳力):なんか恨みでもあるんですかコトラーさんに(笑)。

山口有希子氏(以下、山口):おもしろい(笑)。

江端:山口さんは、なにかありますか。

山口:私が以前、コトラー教授のインタビュー記事かなにかを見ていた時に、「日本はまだまだマーケティング1.0じゃないか」ということをコメントされていたんですね。

「すばらしい製品を作って、売ればそれでよいと思っている」という感じのことを言ってらっしゃっていて。私、マーケターとして海外の会社に勤めているので、アメリカとかでのマーケティング組織のやり方と、日本のマーケティングの状況とかギャップというのはすごく意識するわけですよね。

そうした時に、コトラーさん自身が数年前、「マーケティング1.0だよ、日本は」っておっしゃっていたところが、今はどのように見てらっしゃるのかというところと、あとはそれをどのようにして……。

やはりマーケティングは世界的にすごく重要になっている機能だと思うんですね。でも、それをどのようにして、日本という、ある1つの文化で構成されている社会の中で、エレベートしていくのか、変えていくのかというところを、今の教授はどのように見ていらっしゃるのかは聞きたいと思います。

江端:確かに、それは本当聞きたいですし、2年前も、「日本のマーケティングはもっと進化できるところがある」「逆によいものを作りすぎていたために、そこに行っていない」みたいなこともおっしゃっていたような気がします。徳力さんは?

コトラー教授の後継者はいるのか

徳力:いや、庭山さんに影響されて、そっち側の質問しか思い浮かばなくなってしまったんですけど(笑)。

個人的に、コトラーさんが、跡継ぎというと変ですけど、この人が自分に一番近いなって思っている人が誰なのかというのと。

逆に、さっきの庭山さんに影響されてあれなんですけど、マーケティングの概念を毒してしまったやつは誰だと思っているのかというのは聞いてみたいですね。こいつのせいで、俺のマーケティングがねじ曲がっちまったというのは誰なのかと(笑)。

本田:本当に最期の瞬間じゃないとね……。

(会場笑)

山口:なかなかね(笑)。

徳力:いや、案外酔っ払ってたら、ポロッと言ってくれそうな気はするんですけどね。

江端:カクテルパーティもありますけどね。

(会場笑)

徳力:江端さんにすべて託しました(笑)。

山口:ぜひ託されて。託しました(笑)。

徳力:「お前、すごいこと聞くな」と言われて下さい(笑)。

江端:私、それを聞く勇気はないと思いますけれど。すみません、いろいろ脱線しちゃいました。平和のマーケティングのことでもけっこうですし、マーケティング4.0でもけっこうです。なにか会場の方から、質問を1つ、2つお受けしたいと思っております。いかがでございましょうか?

経営学のなかにPRを位置付けしてほしい

江端:もしくは、藤井さんにコメントを。いただきましょうか。

藤井宏一郎氏(以下、藤井):僕がコトラー先生に聞いてみたいなと、平和とはぜんぜん関係ないんですけどいいんですか?

私もフライシュマン(フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社)で本田さんの後輩で、PR業界の端くれにいると思っているんですけれど。

PRを経営学のなかでちゃんと位置付けてほしいなと思っていて、ビジネススクールでPRって教えないんですよね。なぜかと話をしたんですけど……、例えば、ノースウェスタン大学にはケロッグというコトラー先生がいるビジネススクールがあって、その隣に、メディルというジャーナリズムスクールがあるんですよね。

ケロッグで、なぜうちはPR教えないのかって言ったら、「いや、ジャーナリズムスクール、メディルで教えているから」って言われて。

「一体にしてやらないと、インテグレイティッド(統合型)マーケティングコミュニケーションにならないでしょ」って言ったら、「インテグレイティッドマーケティングコミュニケーション、あれはメディルで教えているんだ」という話があって。

そういった、単にコンシューマーだけじゃなくって、株主から、地域コミュニティから、いろんな国から、行政から、NGOから、そういった多数のステークホルダー全員との関係を構築するというのは、MBAに必要ないのかというと、それはまた別に、最近流行の非市場戦略みたいな領域というのは、ノンマーケットストラテジーみたいなものがあって、それは別のクラスで教えていたりするんですけどね。

パブリッカーフェアーズ、パブリックリレイションズと、いわゆるノンマーケットストラテジーみたいな領域という「非市場戦略」、そこらへんを早く、学会のなかで統合してほしいなというのが僕の希望ですね。

江端:ありがとうございます。去年のワールドマーケティングサミットでそういう論点の話がけっこうありましたよね。平和学とマーケティングをどうやって融合していくかみたいな。だから、今まさに議論されようとしているところなのかもしれませんね。

会場の方で、これを聞いて見たいという方はいらっしゃいます? はい、よろしくお願いします。

どうすれば戦争をなくせるのか?

質問者1:今日はいろいろとお話していただいてありがとうございます。1つ質問があります。平和の反対で、戦争ってあると思うんですが、どちらかというと、戦争をマーケティングして稼いでいるというか、ビジネスとしてやっている人たちもいるのかなと思うんです。

戦争をすることが金儲けにならないマーケティングというか、そういうことができるかわからないですけど、なんとなく平和の反対側のところをなくす、無力化するためにはなにができるといいのかな、と。なんとなくお話を聞いていて思いました。そのヒント、こうしたら、ひょっとしたらというようなお話を。

江端:どうやったら戦争をなくせるのか?

質問者1:そうですね。ひと言いただけたら。

江端:徳力さんから。

徳力:さっきの話にもつながるんですけど、今、世界はけっこうISISのPRに負けていると思うんですよね。結局、その国で職がなくて鬱屈している人が、ISISのPRビデオとかを見て、「ここに俺の生き場所がある」と言って、わざわざヨーロッパからシリアの戦地とかに行くわけじゃないですか。それで、現地に入れないと、母国でテロを起こしてしまうという展開になっているわけです。

あれを見ていると、僕はどうしてもオウム真理教を思い出しちゃうんですよね。ある意味、若い有能な人たちをどう洗脳して戦争に誘導するかというほうの勢力に、今、僕らは負けているんだと思うんです。“僕ら”という表現がいいのかどうかわからないですけど。

結局それに対して、トランプみたいなのが出てきちゃって、またヘイトを煽るんですよね。そうすると僕、黒人に対する警官による発砲事件とかトランプの発言がすごく影響していると思いますけど、憎しみを煽る人が出てくれば出てくるほど、そういうことって増えてしまうと思うんです。

やっぱり、ヨーロッパの若者が戦地に行ってしまうのは、たぶんその国のなかで彼らが活躍の場所が見い出せてないからじゃないかなと。やはり彼らが行かないように、もっと彼らが本来活躍してほしいところにうまく誘導するという戦いをしなくちゃいけないんじゃないかと、個人的にはけっこう本気で思っています。