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シェアリングエコノミーのビジネスチャンス(全5記事)

フリーランスは本当に自由? 日本が直面する「ギグ・エコノミー」の問題点

2015年12月10日、「IVS 2015 Fall Kyoto」が開催されました。Session7A「シェアリングエコノミーのビジネスチャンス」には、モデレーターを務めるマカイラ・藤井宏一郎氏、akippa・金谷元気氏、スペースマーケット・重松大輔氏、DeNA・大見周平氏、UBER JAPAN・髙橋正巳氏の5名が登壇しました。最終パートの質疑応答では、シェアリングエコノミーの国内の成長速度やクリアしないといけない安全性の問題について語り合いました。

アメリカで論争が起こる「ギグ・エコノミー」

藤井宏一郎氏(以下、藤井):おっしゃる通り、日本は規制が厳しいとか、当局の動きが若干外国に比べて遅いとか、杓子定規なところがあるんですけど、結局外国でも同じなんですよね。最初からタクシーやホテルが完全に「何をやってもOK」みたいになっている国はなくって。

ただ、諸外国が日本よりも比較的早く法改正をやって、(いろんな問題を)解決しているっていうのと、あとはグレーゾーンに関する適用が柔軟に行われている面があるというところなんだと思います。

日本も早いところ、Win-Winのかたちで解決できればと思っているんで、このなかで誰か政府の方が見てたらいいなと思いつつ、規制の話を締めくくりたいと思います。

最後の論点なんですけど、欧米は解決が早いということで、とくにアメリカとかを見ていると、この業界で守らなくてはいけない安全性とシェアリングエコノミーのプラットフォームの和解という意味で(うまく)規制しつつあるんですね。

彼らが日本よりも先に新しく直面しているのが「ギグ・エコノミー」の問題ですかね。ギグ・エコノミーってわかる人います? 

要するに、「日雇い経済」のことです。シェアリングエコノミー(の世界)では、(登壇者の)みなさんは「マイクロアントレプレナー」と呼ばれます。

個々の人たちがプラットフォームとの関係で、従業員じゃなくて、フリーランスとして稼ぐ事業家、しかも(自立した)小さなアントレプレナーなんだって言い方をするんですけど、欧米で起きている議論は「(決して)そうじゃないだろう」と。

確かに法律的にみると、個別の契約ではフリーランサーかも知れないけど、実態上は巨大なプラットフォームにからめ取られちゃってて、そこの従業員のように働かざるを得ない。

しかも長期保障があるわけでもなくて、明日の仕事があるかないかわからないような、まさに「日雇い経済」と言ったほうが正しいんじゃないのかというのがギグ・エコノミーの議論なんですね。

「ギグ」というのは、ライブハウスとかでバンドがその夜だけ一発やる演奏を指すんですけど、(いうなれば)「一発仕事経済」です。

これはアメリカの大統領選の争点にもなったりしていることなんですけど、これについてどなたか言いたいことがあったら。2人ぐらいコメントをいただいた後、Q&Aに入りたいと思います。

UBERのドライバーの働き方

髙橋正巳氏(以下、髙橋):先ほどの三方よしの話になると思うんですけど、ドライバーさんも結局好きで何か価値を感じて(我々のサービスに)ジョインしているわけですよね。なにか強制しているわけでもなければ、好きな時間にいろんな他の夢を追いかけている人とか、家庭がある人とかが自由に稼ぎたいときに稼げるという、ちょっとした理由から参加しています。

本当にそれで家計を支えている人もいて、先ほどお見せしたデータの一部で、実に81パーセントのドライバーさんが非常に満足しているという結果だったり、97パーセントの人はフレキシビリティに満足しているという結果が出ています。

結局、どこかの企業に勤める従業員にはそんなにフレキシビリティはないわけですね。何時に会社に来て、何時までいて、こうこうこうしなさいというのがあるなかで、UBERの場合はやってもやらなくても、また何時間やってもいいですよと。

半分の人は1週間10時間以内、(それこそ実稼動時間が)1日1、2時間ですよね。それぐらいしかやっていないという、そういったチャンスがあるのにそれを取っちゃうというのは、新しい経済価値を生み出そうとしている人たちに対する機会損失になってしまいます。

どういう人たちがなぜ実際にこれをやっているのかってところをちゃんと理解した上での議論が必要なんじゃないかなと思います。

プラットフォームにも選択肢が必要

藤井:まさにおっしゃる通りだと僕も思うんですよね。やっぱりこういったプラットフォームがなかったら、今のような働き方ってできなかったと思うし、使う側にしても、僕なんかもそうだけど、本当にブートストラッピング(自己資金)で仲間数人で起業した人たちって、クラウドソーシングだとかそういう人たちのお手伝いがなかったら立ち行かないわけですよ。

非常に恩恵をこうむっている人間として、そこは髙橋さんのおっしゃる通りだと思います。1つあるとしたら、たぶんプラットフォームのチョイスを残していくっていうのは重要で。

例えば、UBERが完全独占しちゃうとか、どっかのクラウドソーシングの会社が市場を完全独占しちゃったら、(フリーランサーやフリーのドライバーとしては)もうそこの企業の言いなりになって働かざるを得ないわけですよね。

フリーランサーとしては、そこしかチョイスがなくなる。プラットフォームに対する交渉力がゼロになる。そうならない、という状況だけ確保しなくきゃいけないかなと思っています。

最後の1つだけ欧米の動きを言うと、まさにこの秋ぐらいから議論が立ち上がっているのが、「プラットフォームコーポラティズム」ってやつですね。労働者側が自分たちでお金を出し合って、組合みたいなかたちで、みんなでアプリ作ってプラットフォーム作ってやっていこうっていうのが、新しい動きになっています。

だから、そういったプラットフォームコーポラティズムみたいな動きっていうのも見守っていきたいなと思いながら、ディスカッションを終わらせたいと思います。

シェアサービスの協業関係

ちょっと時間短くなっちゃいましたけど、Q&Aに移りたいと思いますのでご質問のある方は手を挙げてください。じゃ、そちらの方。

質問者1:(シェア)サービスのことはいいサービスだなと思うし、シェアリングエコノミー自体も文化になるべきだと思うんですけど。UBERは別かも知れないんですが、みなさんが事業、会社をどれぐらいのスパンで育てようとしているかをちょっとうかがいたい。

やっぱり、BtoCの場合ってとくに変えていくものがユーザーじゃないですか。僕らみたいな、テッキーなリテラシーの高い人じゃなくって、よく言ってるんですけど、イオンに行ってるお母さんたちが使うようなサービスにしていかないとたぶん成功ってないかなと思う。(それにはある程度の)時間がかかるだろうと。

なので、みなさんがどれぐらいのスパンをお持ちなのかと(お聞きしたい)。さっき、重松さんが「DeNAさんは体力があるから」ってお話されましたけど、僕は「そんなことはない。そこまで甘くはない」と思っていて。

僕はサイバーエージェントグループを卒業して、藤田(晋)さんから去年5億円の投資を受けたときに、「この事業はサイバーじゃできない。長すぎる」と、今でも胸に刻んでいる言葉を投げかけられて。

(向こうは)上場されてますし、CAJJプログラム(サイバーエージェント事業&人材育成プログラム)とかすごい厳しい仕組みの中で、(この事業は)1年間で単月黒字にもっていけるような事業じゃない。でも、「だから投資をするんです」と。

藤田さんらしい言葉で「ゆっくり、のんびり、比較対象を間違えないように頑張ってね」って言われたのが、僕のなかで今でもすごく胸に残ってて、誇りにしているんですけど。

そのへんどうお考えかという1点と、もう1つが、みなさんのなかで短期的にうまくいくという視点があればぜんぜん問題ないんですけど、(サービスの運営期間が)長くなる場合にみなさんちょっとくっついてみるとかそういう発想があるかどうかを知りたくて(笑)。

例えば、Anyca(で調達した車)が出ると、そこは(自然と)「akippa」(が用意する駐車場が必要)になるじゃないですか。仕組み的にもすごく似ているし。

前提として、いわゆるサービスとしては入り口は分けていくべきだと思うわけですね。ユーザー向けには。

とはいえ、例えば、金谷さんとかすごく営業が得意なのでどんどんいい材料を仕入れてくると思うんですよ。だから、一緒になると強くなるんじゃないかなという気もしていて。その辺も含めてお聞かせいただけると助かります。

シェアリングエコノミーの成長速度

藤井:じゃあ、重松さん、そして金谷さんお願いします。

重松大輔氏(以下、重松):そうですね。シェアリングっていうのは大きなトレンドとしてきていて、社会的な認知もさることながら、1回使ってみるというユーザー体験があるとリピート率もかなり上がってきまして。

なので、あと2年ぐらいでけっこう見えてくるような気がしています。でも、5年、10年で本当に世の中が変わるなと私的には思っています。想像以上に速いスピードだなと。

今民泊のニュースの動きを見てても、みなさんわかると思うんですけど、想像以上に速いスピードで動いていきますし、私も海外でUBERとか1回使った後、「ベトナムでこのオジさんの車、何で俺乗ってるんだろう?」ってよく思うわけですけど、利便性と安さ、快適さって1回体験しちゃうと忘れられなくなっちゃう。

やっぱり、シェアリングには共感のところとか、人間の本能に訴えるようなものがいっぱいある。共感を通して仲良くなっちゃう、この「すげぇんだよ」っていう感覚はたぶん1回やってみないとわかんないんで。みなさんもぜひこのサービスを体験していただければ。

ちょっと「akippa」さんはまた違うけど、ぜひ使ってみていただければと思います(笑)。あともう1つ何でしたっけ?

合従連合的なところはあるような気がしていまして、やっぱりどんどん領域が広がっていくので、連携とか一部一緒になるとかいうのはどんどん動きとしてはあるんじゃないかなとは思っています。

藤井:(金谷氏に対して)はい、どのぐらい育てるかっていう質問に関して。

金谷元気氏(以下、金谷):まずその件に関しては、「akippa」はけっこう短期間で勝負つけようと思っていまして。ここ2、3年でもう一気にいこうと思っているところでやっています。

というのも、もともと駐車場という既存の産業で、みなさんがもともと駐車場に停めていたものを置き換えているだけなんで、展開は早いんですね。

例えば買い物代行のシェアサービスって、今まで買い物代行なんてなかったものなんで1から作っていかなきゃならないから、(軌道乗せるまで)時間かかると思うんですよ。

駐車場に停めるという行為は、やっぱりUBERのタクシーとかAirbnbのホテルに泊まるとかと同じで、もともとあったことなんで、こういったのを置き換えるのは早い。なので、ここ2、3年でTimesさんの拠点数を超えて勝負つけようということで資金調達も頑張ってやったりしています。

もう1つの(どこかと)組んでいくかどうかですが、Anycaさんはもちろんそうなんですけど、例えばホテルって駐車場ないところほとんどないんですが、Airbnb(が扱っている家屋)だと駐車場がなかったりするんですね。

そういうところで、Airbnbさんのところでオーナーさんを紹介していただいて、そこに駐車場を用意するということをやったりとか、もちろんそういうところで組んでいく可能性は出てくると思います。

質問者1:ありがとうございます。

Airbnbの問題点は解消できる?

藤井:ありがとうございます。あと4分なんで、できれば2問いきたいんですけど、(正面を指差して)一番前の方! 簡潔に質問して。1分で2往復したいと思います。

質問者2:重松さんに質問なんですが、三方よしの話が出て当事者はいいと思うんですけど、例えばAirbnbさんとかだと、第四極としてそこに住んでいる他のマンションの住人とかそういうところからの不満みたいなのがありますよね。

そこもアップデートしてかないといけない場面が出てくると思うんですが、仮にそういう場面が出てきたときに、どういうふうに対処していかなきゃいけないかとか、ほかの方々ももしそういう面が仮にあるとすれば教えていただければと思います。

重松:やっぱり今Airbnbとかで今問題になっているのが、集合住宅とかタワーマンションとかで中国人の旅行客の方が大勢来てみたり、毎日入れ替わり立ち替わり海外から(客がひっきりなしに)来ているみたいな(状況ですね)。

当然隣の家がそうだと不安ですし、ある意味財産的な価値毀損もあると思っています。その辺はマンション管理組合の規約を作るとか、プラットフォームサイドとしても周辺住民からのクレームが来たらちゃんとフォローするとかは当然あると思ってます。

我々としても、オーナーさんや周囲の方と継続的にうまくやれないと長続きしないし、結果的に儲からないと思ってますんで。

やっぱりうまくやられているオーナーさんっていうのは、周辺の方も巻き込んで、非常に良好な関係を作ってますね。例えば、たまにスペースを開放して、「地元の寄り合いでタダで使ってください」ってやってるところもあるんですね。

そこがうまくいかないで、例えば1人酔っ払ったお客さんが大声で「わぁ」って騒いでしまうとと、それは(一発で)アウトな感じがします。飲食店とかでもそうだと思うんですけど。そういうところだと思うので。

そこらへんはうまく気配りというか、Airbnbでも、うちのスペースでもいいんですけど、周辺を巻き込んでコミュニケーションを取るっていう文化を作っていくことが必要ですね。

そこまで含めて貸し出し主、プラットフォームもサポートするっていう仕組みを作っていきたいなと思っています。

シェアリングエコノミーのすべてがグレーではない

藤井:ありがとうございました。あと1問、30秒質問で、30秒回答でお願いします。……大丈夫ですか? じゃあ、お願いします。

質問者3:とくに「uberX」とAnycaに聞いてみたいんですけど、CtoCってセラーとバイヤーがどれだけ転換するかっていう転換率が成長スピードにもたらす影響が大きいかなと理解していて。

とくにuberXの数値がもしあればですし、感覚でもいいんですけど、先に提供している人が利用者になるとか、あるいは利用目的でやってた人が提供するようになるみたいな転換率が、感覚値でもあれば、ちょっと聞いてみたいなと思います。

髙橋正巳氏(以下、髙橋):転換率ではないんですけど、最新のアンケートで1/4のドライバーが月に1回以上ユーザーとしてUBERを使っているというデータがあったので、今はそれぐらいです。

質問者3:提供している人自身が乗る人としても1/4ですか?

髙橋:そうです。

質問者:月に1回、1/4。高いですね。

大見:Anycaは今、けっこう車好きの人がコミュニティに入ってきてくださっているので、5パーセントぐらいは将来的に転換するじゃないかなって感覚ありますし、Airbnbとかはだいたい2、3パーセントはゲストからホストに転換するみたいなので、やっぱり10パーセントはいかないけど数パーセントらへんでうろちょろするのかなって気はしますね。

質問者3:ありがとうございます。

藤井:ありがとうございました。本日は時間がなくなっちゃったんですけど、最後に「これだけは言い残した!」って人いますか?

金谷:日本でシェアリングエコノミーって報道されると、AirbnbさんやUBERさんの規制とかのことで取り上げられることが多いですけど、実際のところ、国内のサービスは法律にひっかからず、業界団体にも何も言われないサービスがけっこうあるんで。

そういったサービスがこれから伸びていったときに、「シェアリングエコノミー=グレー」だと思われるとちょっと怖いので、そのあたり、インターネット業界の方々には「シェアリングエコノミー=すべてがグレー」ではないと言っていただけたらうれしいと思っています。

藤井:まさにおっしゃる通りで、グレーなのは一部だけですし、それも今後変わっていくと思いますので。ポジティブなかたちでシェアリングエコノミーを、これからもみんなでプロモーションしていきたいと思います。本日はみなさんありがとうございました!

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