車好き同士で“名車”をシェアリング

藤井宏一郎氏(以下、藤井):次に、単純に効率的に物を使って儲けようという話じゃなくて、社会の在り方が変わるという話。

効率的に物を変えるだけだったら縮小経済なんですけど、そうじゃなくて、さっき髙橋さんがおっしゃったように広がっていく部分があると。

単なる経済的価値だけじゃなくて共感価値だとか、どちらかというとフィナンシャルなバリューだけじゃなくて、ユーザーにとってはエモーショナルなバリューが大きいんじゃないかという話。

「シェアリングエコノミーがもたらす新しい社会」について議論してみたいと思うんですけど、どうですか?

大見周平氏(以下、大見):共感経済みたいな話でいうと、「Anyca」はけっこうちっちゃいんですけど、事例はかなり出てきていると思ってます。

まず車好きって変に熱量が高かったりしますが、同じ者同士が出会った瞬間に、なんか5年前からの知り合いよりも一気に仲良くなっちゃうみたいなことが実際にあって。

この前も、成田のほうに住んでて、たまたま平日に暇ができたから、「マツダのRX-7みたいなちょっとトガった車に乗りたいです」と言ってきた方が、ANAかどこかのパイロットさんで。

オーナーさんはふだん土木関係のお仕事をやっている方だから、パイロットの人なんてもう普通に暮らしてたら一生会う可能性がなかったみたいな話で。

その後もけっこう仲良くなって、シェアが終わった後も、一緒にカフェに行って、家に送りに行って、「ちょっと僕はGT-R持っているんで乗り換えませんか?」と最後はクルマの交換までしていて。

そういった幸福感はお金で買おうと思ってもなかなか買えなかったりするので、シェアリングエコノミーの1個重要なコアの部分になり得るなとは思っていますね。

幸福感を提供するプラットフォームの役割

藤井:ちょっと意地悪なことを言うと、貸主、借主、プラットフォームの3人で成り立つのがシェアリングエコノミーだという話だったじゃないですか。

ただ、今の話で、エモーショナルバリューをサービスに感じているのって、借主と借主だけですよね。じゃあ、プラットフォーム事業者は、「私はみなさんを幸せにして、このコミュニティに入れたら幸せを感じるから、バリューを還元して料金下げますよ」とか、そういうのありなんですか?

大見:ちょっとそれをやっちゃうとヤバいんですけど。「1個あるかな?」と感じるのは、Airbnbもすごく工夫していると思うんですけど、ぶっちゃけプラットフォーマーのダブルスタンダードは十分にあるかなと。

マーケティングメッセージはひたすら「コミュニティのために」とか、Airbnbは「お帰りなさい」とか言ってますし、「Anyca」も(表立って)「儲かります」って言わないんですけど、そういった言葉でまずエンドユーザーさんの気持ちを掴みきる。

「こういった素晴らしいコミュニティを壊しちゃダメなんだ」みたいな感覚を持たせつつ、一方で数を稼がないといけない、効率的に回さないといけない、手数料をもらわないといけない。

プラットフォーム側でも見せ方と実態というのは、けっこう切り離しながらうまくやってかないとなと個人的に思っています。

藤井:そうですね。あとで規制や課題のところで話せたらと思うんですけど、「プラットフォーム自体がバリューを分かち合ってシェアリングエコノミーに参加する」という可能性ですよね。

共感経済の中にプラットフォーム自体が入り込んでいる以上、「共感経済でみなさんが幸せになるんです」というのが、プラットフォーム側ののポジショントークだけじゃいけないような気もしていて。

一方、ディズニーランドだって夢をシェアしてるんじゃなくて、夢を売っているんです(笑)。そういうドライなポジションでも経営的にはぜんぜん成り立つわけで、ちょっとそんな話も頭の裏に入れつつ。

ネットに強くないユーザーが「akippa」に見出す価値

金谷元気氏(以下、金谷):素晴らしい話をしているところに申し訳ありませんが、「akippa」はぜんぜん共感バリューを求めておりません(笑)。

相互レビューがないですし、お互いが会うこともないですし、ドライバーが予約してオーナーに通知がいくだけで、メッセージをやり取りすることもないのです。

ただ単にコインパーキングを便利にしただけで、使った後も、何もしなくていい。そういう状況を作っているので、共感のバリューはほとんどない。

藤井:それはそれで、ある意味すごく潔くて気持ちいいビジネスモデルですよね。

金谷:結局「akippa」の場合、ユーザーのほとんどがネットに強くないんですよ。PR戦略をめちゃくちゃ頑張ってやって、テレビにいかに出れるかと、ほとんど広告を出さずにやっていたので。

ユーザーさんのほとんどが、「スマホ使ってますけどLINEぐらいです」みたいな人が多いので、(実際のところ)シェアリングエコノミーが好きな人は少ないんですよ。

(会場笑)

藤井:私もこないだ知ったんですけど、シェアリングエコノミーが好きな人って、今「シェアラー」と言うらしいですね(笑)。

金谷:シェアのサービスを知ってるんじゃなくて、駐車場が予約できて便利だから、安いからということできてるかたちです。

藤井:なるほど、わかりました。共感経済が関係しているようなモデルもあれば、あんまりそうじゃないドライなビジネスモデルも(各社)あって、それぞれ素晴らしいなと思うんですけど。

そういったエモーショナルな話は離れて、もうちょっとマクロ経済、マクロインフラ政策的な視点からどういうふうにシェアリングエコノミーで社会を変えていくんでしょう? 交通政策とか、保険政策とか、厚生労働関係の政策とか。

UBERを使うことで得られる恩恵

髙橋正巳氏(以下、髙橋):弊社の考え方としては、三方よしと。

先ほど、貸し手、借り手、プラットフォームと言いましたけど、実は我々の考えは乗る人、乗せる人、そして都市全体なんですね。それぞれに対して恩恵があると考えています。

乗る方は、世界中どこに行ってもボタンを押すとすぐ車が来てくれて、非常にサービスとしての透明性が高いから安心で、後でトラブルがあってもちゃんと連絡する相手がいて、そういったところを評価しています。

場所によって非常に安く乗れるといった、本当に便利で、安全で、経済的負担を抑えて移動できる交通手段が得られるということですね。

ドライバーからすると、好きなときに好きなだけ仕事ができる。私がこの間乗ったのはシングルマザーの方で、朝10時に子供を預けて、そこから数時間UBERのドライバーをやって、午後コミュニティカレッジに行ってから、子供を迎えに行くという生活パターンとのことでした。

海外に行くと、役者を目指してますとか、PHT取っているとか、起業しようとしているとか、UBERがいろんな方たちのライフスタイルに合った収入の機会を与えているということがわかるんですね。

マクロ的な観点からすると、こういったことがどんどん起こり、さらに効率化が図られてくると、単純に1対1のマッチングではなくて、複数のお客さん同士のマッチングにできるんですね。

それを弊社は「uberPOOL」と呼んでいるんですけど、同じタイミングで、同じ方向に向かっている人をマッチングさせて、Aさんを迎えに行ってから、Bさんを迎えに行って、Aさんを降車させて、Bさんを降車させるということをすれば、物理的に今までは車が2台必要だったところが1台で済むというようなことができるんです。

今、サンフランシスコでは、UBERの乗車の約4割はプールなんですね。こうすると、乗る方も半額で乗れると。

都市全体への恩恵としては、渋滞がやっぱり減ります。ロサンゼルスでuberPOOLを開始してみて、だいたい今1ヶ月間160万kmぐらいの交通の渋滞が削減できていると言われています。本当に超効率的に利用することによって、そういったこともできたり。

後は自分で運転する代わりに、安く便利に移動できるから飲酒運転の事故が減ったと。シアトルではUBERが入って、10パーセント減ったと言われているんですけど、そういった社会全体が抱える渋滞だったり、安全性だったり、そういったところへの効果はあり得ると考えています。

カーシェアリングは渋滞問題を軽減する

藤井:なるほど。昨日の自動運転のセッションでは、車がどんどん自動化していって、もしくはカーシェアで安く誰でも乗用車に乗れるようになっちゃうと、渋滞するんじゃないかという話がありましたけど、実態上は逆だということですね?

髙橋:1対1でマッチングしてたら、使う人が増えるから物理的に渋滞も増えるんです。東京も実は渋滞が非常に問題でして、平均速度が非常に低いとも言われているんですけど、今後2人、3人、4人とどんどんマッチングして、それが自動運転とかになると超効率的にできるようになるかもしれません。

流動性というのは供給と需要両方の絶対量を指しますが、これが高まれば高まるほど、マッチングはより効率的に図れます。ほとんどロスなしで目的地に行けるようになってくるから、渋滞というのは(今後)軽減していく方向だと思います。

藤井:個々の車だとか、家だとかを単純にシェアするってことで考えるんじゃなくて、もう ちょっとシステムとかマスとか面で考えていく。

ネットワークとして社会がどういうふうに仕組みを組み替えていくポテンシャルを持ったサービスなのかというところを考えていくところなんでしょうね。わかりました。