車好きの間で“名車”のシェアが流行中?
DeNAの「Anyca」がつくる新しい価値

シェアリングエコノミーのビジネスチャンス #4/5

IVS 2015 Fall Kyoto
に開催

2015年12月10日、「IVS 2015 Fall Kyoto」が開催されました。Session7A「シェアリングエコノミーのビジネスチャンス」には、モデレーターを務めるマカイラ・藤井宏一郎氏、akippa・金谷元気氏、スペースマーケット・重松大輔氏、DeNA・大見周平氏、UBER JAPAN・髙橋正巳氏の5名が登壇しました。本パートでは、シェアリングエコノミーが生み出す新しい社会をテーマに語り合いました。

車好き同士で“名車”をシェアリング

藤井宏一郎氏(以下、藤井):次に、単純に効率的に物を使って儲けようという話じゃなくて、社会の在り方が変わるという話。

効率的に物を変えるだけだったら縮小経済なんですけど、そうじゃなくて、さっき髙橋さんがおっしゃったように広がっていく部分があると。

単なる経済的価値だけじゃなくて共感価値だとか、どちらかというとフィナンシャルなバリューだけじゃなくて、ユーザーにとってはエモーショナルなバリューが大きいんじゃないかという話。

「シェアリングエコノミーがもたらす新しい社会」について議論してみたいと思うんですけど、どうですか?

大見周平氏(以下、大見):共感経済みたいな話でいうと、「Anyca」はけっこうちっちゃいんですけど、事例はかなり出てきていると思ってます。

まず車好きって変に熱量が高かったりしますが、同じ者同士が出会った瞬間に、なんか5年前からの知り合いよりも一気に仲良くなっちゃうみたいなことが実際にあって。

この前も、成田のほうに住んでて、たまたま平日に暇ができたから、「マツダのRX-7みたいなちょっとトガった車に乗りたいです」と言ってきた方が、ANAかどこかのパイロットさんで。

オーナーさんはふだん土木関係のお仕事をやっている方だから、パイロットの人なんてもう普通に暮らしてたら一生会う可能性がなかったみたいな話で。

その後もけっこう仲良くなって、シェアが終わった後も、一緒にカフェに行って、家に送りに行って、「ちょっと僕はGT-R持っているんで乗り換えませんか?」と最後はクルマの交換までしていて。

そういった幸福感はお金で買おうと思ってもなかなか買えなかったりするので、シェアリングエコノミーの1個重要なコアの部分になり得るなとは思っていますね。

幸福感を提供するプラットフォームの役割

藤井:ちょっと意地悪なことを言うと、貸主、借主、プラットフォームの3人で成り立つのがシェアリングエコノミーだという話だったじゃないですか。

ただ、今の話で、エモーショナルバリューをサービスに感じているのって、借主と借主だけですよね。じゃあ、プラットフォーム事業者は、「私はみなさんを幸せにして、このコミュニティに入れたら幸せを感じるから、バリューを還元して料金下げますよ」とか、そういうのありなんですか?

大見:ちょっとそれをやっちゃうとヤバいんですけど。「1個あるかな?」と感じるのは、Airbnbもすごく工夫していると思うんですけど、ぶっちゃけプラットフォーマーのダブルスタンダードは十分にあるかなと。

マーケティングメッセージはひたすら「コミュニティのために」とか、Airbnbは「お帰りなさい」とか言ってますし、「Anyca」も(表立って)「儲かります」って言わないんですけど、そういった言葉でまずエンドユーザーさんの気持ちを掴みきる。

「こういった素晴らしいコミュニティを壊しちゃダメなんだ」みたいな感覚を持たせつつ、一方で数を稼がないといけない、効率的に回さないといけない、手数料をもらわないといけない。

プラットフォーム側でも見せ方と実態というのは、けっこう切り離しながらうまくやってかないとなと個人的に思っています。

藤井:そうですね。あとで規制や課題のところで話せたらと思うんですけど、「プラットフォーム自体がバリューを分かち合ってシェアリングエコノミーに参加する」という可能性ですよね。

共感経済の中にプラットフォーム自体が入り込んでいる以上、「共感経済でみなさんが幸せになるんです」というのが、プラットフォーム側ののポジショントークだけじゃいけないような気もしていて。

一方、ディズニーランドだって夢をシェアしてるんじゃなくて、夢を売っているんです(笑)。そういうドライなポジションでも経営的にはぜんぜん成り立つわけで、ちょっとそんな話も頭の裏に入れつつ。

ネットに強くないユーザーが「akippa」に見出す価値

金谷元気氏(以下、金谷):素晴らしい話をしているところに申し訳ありませんが、「akippa」はぜんぜん共感バリューを求めておりません(笑)。

相互レビューがないですし、お互いが会うこともないですし、ドライバーが予約してオーナーに通知がいくだけで、メッセージをやり取りすることもないのです。

ただ単にコインパーキングを便利にしただけで、使った後も、何もしなくていい。そういう状況を作っているので、共感のバリューはほとんどない。

藤井:それはそれで、ある意味すごく潔くて気持ちいいビジネスモデルですよね。

金谷:結局「akippa」の場合、ユーザーのほとんどがネットに強くないんですよ。PR戦略をめちゃくちゃ頑張ってやって、テレビにいかに出れるかと、ほとんど広告を出さずにやっていたので。

ユーザーさんのほとんどが、「スマホ使ってますけどLINEぐらいです」みたいな人が多いので、(実際のところ)シェアリングエコノミーが好きな人は少ないんですよ。

(会場笑)

藤井:私もこないだ知ったんですけど、シェアリングエコノミーが好きな人って、今「シェアラー」と言うらしいですね(笑)。

金谷:シェアのサービスを知ってるんじゃなくて、駐車場が予約できて便利だから、安いからということできてるかたちです。

藤井:なるほど、わかりました。共感経済が関係しているようなモデルもあれば、あんまりそうじゃないドライなビジネスモデルも(各社)あって、それぞれ素晴らしいなと思うんですけど。

そういったエモーショナルな話は離れて、もうちょっとマクロ経済、マクロインフラ政策的な視点からどういうふうにシェアリングエコノミーで社会を変えていくんでしょう? 交通政策とか、保険政策とか、厚生労働関係の政策とか。

UBERを使うことで得られる恩恵

髙橋正巳氏(以下、髙橋):弊社の考え方としては、三方よしと。

先ほど、貸し手、借り手、プラットフォームと言いましたけど、実は我々の考えは乗る人、乗せる人、そして都市全体なんですね。それぞれに対して恩恵があると考えています。

乗る方は、世界中どこに行ってもボタンを押すとすぐ車が来てくれて、非常にサービスとしての透明性が高いから安心で、後でトラブルがあってもちゃんと連絡する相手がいて、そういったところを評価しています。

場所によって非常に安く乗れるといった、本当に便利で、安全で、経済的負担を抑えて移動できる交通手段が得られるということですね。

ドライバーからすると、好きなときに好きなだけ仕事ができる。私がこの間乗ったのはシングルマザーの方で、朝10時に子供を預けて、そこから数時間UBERのドライバーをやって、午後コミュニティカレッジに行ってから、子供を迎えに行くという生活パターンとのことでした。

海外に行くと、役者を目指してますとか、PHT取っているとか、起業しようとしているとか、UBERがいろんな方たちのライフスタイルに合った収入の機会を与えているということがわかるんですね。

マクロ的な観点からすると、こういったことがどんどん起こり、さらに効率化が図られてくると、単純に1対1のマッチングではなくて、複数のお客さん同士のマッチングにできるんですね。

それを弊社は「uberPOOL」と呼んでいるんですけど、同じタイミングで、同じ方向に向かっている人をマッチングさせて、Aさんを迎えに行ってから、Bさんを迎えに行って、Aさんを降車させて、Bさんを降車させるということをすれば、物理的に今までは車が2台必要だったところが1台で済むというようなことができるんです。

今、サンフランシスコでは、UBERの乗車の約4割はプールなんですね。こうすると、乗る方も半額で乗れると。

都市全体への恩恵としては、渋滞がやっぱり減ります。ロサンゼルスでuberPOOLを開始してみて、だいたい今1ヶ月間160万kmぐらいの交通の渋滞が削減できていると言われています。本当に超効率的に利用することによって、そういったこともできたり。

後は自分で運転する代わりに、安く便利に移動できるから飲酒運転の事故が減ったと。シアトルではUBERが入って、10パーセント減ったと言われているんですけど、そういった社会全体が抱える渋滞だったり、安全性だったり、そういったところへの効果はあり得ると考えています。

カーシェアリングは渋滞問題を軽減する

藤井:なるほど。昨日の自動運転のセッションでは、車がどんどん自動化していって、もしくはカーシェアで安く誰でも乗用車に乗れるようになっちゃうと、渋滞するんじゃないかという話がありましたけど、実態上は逆だということですね?

髙橋:1対1でマッチングしてたら、使う人が増えるから物理的に渋滞も増えるんです。東京も実は渋滞が非常に問題でして、平均速度が非常に低いとも言われているんですけど、今後2人、3人、4人とどんどんマッチングして、それが自動運転とかになると超効率的にできるようになるかもしれません。

流動性というのは供給と需要両方の絶対量を指しますが、これが高まれば高まるほど、マッチングはより効率的に図れます。ほとんどロスなしで目的地に行けるようになってくるから、渋滞というのは(今後)軽減していく方向だと思います。

藤井:個々の車だとか、家だとかを単純にシェアするってことで考えるんじゃなくて、もう ちょっとシステムとかマスとか面で考えていく。

ネットワークとして社会がどういうふうに仕組みを組み替えていくポテンシャルを持ったサービスなのかというところを考えていくところなんでしょうね。わかりました。

シェアビジネスが避けて通れない“規制”の壁

最後に(シェアリングエコノミーの)課題と規制の話をさせていただいて、みなさんからのQ&Aにしたいと思います。

規制の話について、簡単に状況を申し上げますと、みなさんご存知の通り、日本にはUBERとAirbnbという世界の2大シェアリングエコノミーサービスに対して2大規制があります。

1つは民泊の問題ですよね。お金を取って宿泊を業としてやると、これはもう旅館業法違反になってしまうと言われていると。

ライドシェアに関しては、免許なくして有償で人を乗せると白タクに当たってしまうということですね。簡単に言うと、道路運送法という問題があって、今まさに安倍政権が(この両分野の)規制緩和を検討しているわけなんですね。

この話は長くなるし、してもものすごく個別の話なので、あんまり深入りするつもりもないんですけど、なんか「Anyca」について、知らないところでいろいろ聞いたんですけど。

大見周平氏(以下、大見):(笑)。そんなに大きい動きってわけじゃないんですけど。一応国内事業者って適法の範囲でサービスやらないとすぐ怒られちゃって。

例えばちょっと前の話だと、他社さんなのでアレですけど、ヤフーが軽井沢でAirbnbライクなサービスを始めたら、ものの1週間で業務停止命令が出て、止めないといけないみたいな感じなので、その二の舞には絶対になりたくないなと。

「Anyca」って「当然レンタカーなんじゃないんですか?」というところで、レンタカー業法における「わ」ナンバーにしないといけないみたいな規制が当然あったわけで。

そういった意味でいうと、本当に監督官庁である国交省の方とある程度コミュニケーション取らせていただきながら、「このサービスだったら適法なんじゃないか」というところは一定の認識合わせをさせていただきつつやってきてるので。

国内のベンチャーがやるってなるとけっこうそこらへんは必須というか、グレーゾーンに突っ込むと普通にグシャって刺されるっていうような気はすごいしますね。

藤井:法のあり方は行政というより国会で作るんですけど、そもそも法律は行政がドラフティングしている部分もあるので、ちょっとイノベーティブなサービスに対して、適用の在り方などの点で双方の立場が違っていくと日本のサービスにとっては辛い部分もあるよねってことだとなんだと思うんですよね。

とは言いつつ、やっぱり安全衛生とか理由があってもともとできた規制だと思うんですよ。だからたぶん、今問題になっているのは、(こうした規制が)今の時代に合っているのか、合っていないのかという話だと思うんですよね。

合っていないときに、(法律を)杓子定規に適用するのかという話。もともと旅館業法や道路運送法の話でも、旅館の衛生状態が極めて悪い、もしくは車の整備状況が極めて厳しい戦後の実態を踏まえているわけで。

しかもレビューシステムだとか、さまざまな個人をトラッキングするような方法もなかったようなテクノロジーレベルの時代のものなので。早く安全衛生とか確保しながらうまい解決になればと思うんですけど。もし何かあればひと言。

国内で必要な新しいルール

髙橋:これは日本特有の議論ではなくて、本当に今藤井さんがおっしゃった通り、このルールができたのって何十年も前なんですよね。

スマートフォンなんてもちろんのこと、インターネットだって想像できなかった時代に書かれたもので、それに当てはめようとすると、どうしても無理があるんです。

さっき、1ヶ月の利用が1億回ってお話しましたけど、海外で普及している理由というのは、みなさんにとって安全だから。

海外なんかだと、よっぽどこういうシステムを使ったほうが透明性が高いし、安全だといった形で使われている実態も実際ありますので。

無理やり昔の仕組みに当てはめようとすると、結局どこにもフィットしないということになってしまいます。

実際、乗車前からドライバーの身元がわかり、料金も全部システムを通して透明に行われるような、今まででは考えられなかった安全性の担保が可能になってきています。

そういう議論が海外ではかなり進んでいて、実際にアメリカでは州の半分以上にあたる26州でライドシェアのルールがちゃんとできています。ちょうど昨日ニュースで、ジャカルタのほうでもルールができたことを報じられました。

フィリピンやオーストラリアのキャンベラでもどんどんこういう議論が進んで、ちゃんと制度ができていっている。やっぱり新しい技術をベースにしたルール作りが重要なんじゃないかなと思っています。

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