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『ミッション』を語り続けるリーダーが組織を変える~「ついていきたい」と思われるリーダーになるには~(全6記事)

50代でスタバの社長を辞めて気づいた、2つのこと 意思決定にブレを生まない「個人ミッション」の大切さ

多くのビジネスパーソンは、上から「ミッション」が落ちてくるものの「なぜ、今それをすべきなのか?」「その中で自分の活躍がどのように作用するのか?」を考えず、与えられた仕事を淡々と処理しがち。そのような会社では社員に「ミッション」が浸透しません。すると行動是正や行動強化に繋がらず組織文化が根付かないため、「世の中をよくするために会社があり、その一員として自分がいる」と理解するのは難しいと考えられます。そこで、スターバックスコーヒージャパンの代表として業績向上・ブランド定着に多大な功績があり、著書『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』が35万部を超えるベストセラーとなっている、株式会社リーダーシップ コンサルティング代表取締役社長・岩田松雄氏が登壇したウェビナーの模様を公開します。

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「ミッションの体現度」で評価していなかった、大企業

斉藤知明氏(以下、斉藤):では、Q&Aのコーナーに移らせてください。最初のご質問なんですけども、これは確かに気になるなと思うんですよね。

「10年前に岩田社長が本を書かれたり、ドラッカーさんが主張されたりと『経営理念やミッションが大事だ』と言われ始めてきているなと思います。では、なぜいまだにこれが確立できていないんでしょうか?」

という問いですが、いかがですか?

岩田松雄氏(以下、岩田):いろいろあると思いますけど。経営者自身がそういうことを考えてこなかった、ということがあると思うんですよね。大企業の場合は、頭がいいとか学歴がいいとかが重要で、あまり「ミッションの体現度」で評価をしてなかったわけです。いわゆるエリート官僚的な人がどんどん偉くなったけど、そういう人はあまりそういうことをもともと感じていなかった。

創業者系の人たちはそういうことを実感として感じてるから、わりと言ってるし、そういう会社が今は好調ですよね。いわゆる「創業オーナー系」が調子はよかったりするわけです。つまり「誰が社長になるか?」って一番大きな影響度があるわけで、その社長自身がそういったこと(ミッションや経営理念)をあまり意識してこなかった。

とはいえ最近見てると、経営者の方がそういうことを言い出してる。例えば、みずほ銀行さんで何年か前に講演させてもらったんだけども、みなさんご存知のように、もともといくつもの銀行と銀行がひっついてできた会社なので。

銀行って、なんとなく「お金、お金!」って言ってるのかと思ったら、前の佐藤(康博)社長が「One MIZUHO」って言葉を出して。「3つが一緒になろう」っていうことを言い出した時に、ちょっと意外だったのは、役員以下も全員が同じことを言うようになりましたっていうことを聞いたんです。

そういう経営者も増えてきてるわけだけども。じゃあなんで確立されてないか? というのは、やっぱり今まで経営理念が大切だってことをちゃんと実感・体現してる人が社長になってないから、ということなのかなって思いますね。

やっぱりトップですよ。みんなが一所懸命にミッションを語ったり、やっていこうと思ってるのに、トップが「いや、ミッションで飯は食えないぞ。それより売上だ。営業行ってこい!」って言ってたら、しらけちゃいますよね。やっぱりトップがそれを体現しないと、本気になってないとダメだと思います。

「ミッションで飯を食えるようにするのが、経営者の仕事」

斉藤:ありがとうございます。ミッションの大切さについて語られ始めてきてから、代替わりも含めて、なかなかまだそこを信じきれてないというか。徐々に徐々に変わっていってるのかな、というかたちなんですかね。

岩田:もう1つ言うなら。「ミッションで飯は食えない」ってことについても、私は「ミッションで飯を食えるようにするのが、経営者の仕事」だと思うんですよね。一見すると相反することに折り合いをつけることが「経営」だと思うんですね。つまり「長期と短期」とか「ミッションと明日の売上」とかね。

一見すると相半対するようなことに、折り合いをつける。つまり、会社が潰れかかってる状態の時にミッションを語ったってしょうがなくて、いかにキャッシュを集めてくるかっていうことですね。でも会社が順調な時、みんなの求心力を求めるためにミッションの必要性が出てくる。

ミッションだけで飯を食えないのも事実。でもミッションを達成しつつ、それがちゃんと収益につながってる。今はSDGs投資とかって言いますよね。「また変なこと言ってるな」と私は思ってるんだけど。私は、企業活動そのもが社会貢献であるべきだとずっと主張してきています。

結果的にSDGsをしっかりやってる企業は、収益がよくなっていて、株価も上がってるんですね。だから今、そういう投資が始まってる。これって結局はミッションですよね。ミッションを愚直にやってることで、結果的に業績もよくなってるということに投資家も気がついてるんで。SDGs投資しているファンドは、今はけっこう業績がいいんですね。でも「なに言ってんだ。私は前から言ってるぞ」みたいな気持ちでいるんですけどね。

斉藤:(笑)。

岩田:経営理念とかミッションというのは、事業そのものですよね。それと企業の社会的責任っていう言い方で「CSR」というのが一時流行りましたよね。私は、あれはちょっと「ノー」なんですね。ノーっていうか、別にやってもいいんだけど。

「事業そのものが社会貢献である」と私は思ってます。でもなんとなく今は「社会貢献=どこかに寄付をしたり木を植えたりすること」。それが社会貢献という言い方になっている。もちろんやっていいんですよ。否定しないし、スターバックスもボディショップもやってるんだけど、私はスターバックスの事業そのものが社会貢献だと思うんですね。もちろんお金はいただいてるけれども、疲れた人があそこに行ってほっとすること自体が社会貢献になっています。

スターバックスもお金儲けをその目的としていないはず? そこは、経営者が胸を張って言うべきなんですよ。「自分の仕事は本当に世の中の役に立ってるんだ」って意識を持っていれば、そう言い切れる。余裕があれば、そういった寄付行為やボランティアをもちろんやればいいけど。私は、経営者は胸を張って「自分の事業そのものが社会貢献だ」って言い切らないといけないと思うんですね。そこが大切だと思うんです。

自分たちの事業そのものが社会貢献

斉藤:まさに「個人のミッション」「会社のミッション」を考えた時、スライドに「経済的原動力になるもの」「なにか人のためになること」と書いてらっしゃって。これがまさにSDGsですよね。

岩田:そうですね。今は「SDGs=環境」とか「地球」とか、そういう話になってるけど。でもスターバックスも世の中の役に立ってるし、松下電器の電球も役に立ってるし。

斉藤:SDGsにウェルビーイングの項目とかも出てきてますもんね。

岩田:だから「なんでそんなこと言ってんだ?」という感じがあって。それよりも社長が「そもそも事業がそう(SDGs)だ」って言い切れないといけないと思うし、そう言い切るべきだと思います。

「いくらか寄付してます」とか「こうやってボランティア活動に精を出してます」とか、別にやってもいいんですよ。でも、それ以前に「事業そのものが社会貢献だ!」って言い切ってる人って、あんまいないんじゃないですかね。なんかギルティを感じちゃってる。利益出ちゃってギルティを感じたので「じゃあどっかに寄付しましょう」みたいな。

CSRのRは「Responsibility」ですよね。Responsibilityっていうのは「責任」。でも、なんとなく責任って「本当はやりたくないんだけどやらなくちゃいけない」っていうニュアンスを感じますよね。そうじゃなくって、自分たちの事業そのものが社会貢献だと私は思うんです。

自動車部品のギアだって世の中の役に立ってるわけです。もちろん、車っていうものがあってお金をいただくんだけど、でも車がなかったらどんな社会か? って、想像もできないですよね。そこを胸張って言うべきじゃないかなって思うんです。

ミッションは「生まれ持って背負った“十字架”」ではない

斉藤:ありがとうございます。他にも続々と質問をいただいていまして。「『個人のミッション』というお話がありましたが、多くの人が現時点で明確になっていないですよね?」と。

先ほど岩田社長は「徐々に徐々にアップデートされていくものだ」とお話いただいたと思うんですけれども。その時々に応じて、ある程度は明確化していくほうがいいものなんでしょうか? どういうふうに解像度が上がっていくものなんでしょうか? という問いをいただいてます。

岩田:「好きなこと」って変わってきますよね。「得意なこと」も、例えば勉強すれば増えてきます。この3つの「好きで」「得意で」「人のためになること」。ある女子大で、ずっとミッション研修をやっていまして。学生さんに就職前にこれをやってもらうんですね。「自分のミッション考えてください」と。

就職活動するとみなさん、売上とか知名度じゃなくって、自分のミッションを考えた上で「御社のミッションに共感したから応募しました。なぜなら私のミッションは○○だから」と語ると、採る側からしてもすごく説得力がありますよね。

でも学生さんの発言のレベルって、働いたことがないからやっぱり漠然としてますね。しかし働き始めると、本当は「自分はこういうことやりたい」って思っても、そうじゃない別の仕事させられることもありますよね。それでいいと思います。そこでまたあらためて、自分のミッションを考えればいいと思うんですね。

ミッションという言葉って「生まれ持って背負った“十字架”」という感じがあるけど、そうじゃなくて。なんとなく考えて「こういうことやっていきたいな」ってことがだんだん明確になってくる。私も50代でスタバの社長を辞めて、それを振り返ってる時に「あっ、こういうことは企業にとって大切だ」とともに「個人のミッションも大切だ」って気がついたんです。

「個人ミッション」があれば、意思決定もブレない

岩田:今の私は「人を育てること、リーダーを育てること」というミッションを持ってるわけです。例えばちょっといやらしい話で、学校とか公共機関(公務員研修)での講演料は時給5,000円とか10,000円とか、そんな程度なんですよ。

これはどう考えても、ビジネス的に言ったら「マイナス」とは言わないけど、受けるべきじゃないんですね。要するに、オポチュニティロス。時間コストがかかりますから。でも私の中に、自分のミッションとしては「そうやってわざわざ声をかけてくれてるんだから、行こう」とか。

最近だと、自衛隊。自衛隊のみなさんって、命をかけてがんばってくれてるわけですね。やっぱり(払える講演料に)自衛隊の規定があるし、講演すると1日潰れるんだけど、私はそれに喜んで行くわけです。でもそれだけだったらやっていけないから、大手企業の講演の場合はちゃんとたっぷり? お金をもらうわけです(笑)。

斉藤:(笑)。

岩田:そうしないと継続できないですからね。それはそれで、自分の中でバランスできるわけです。「自分のミッション達成するために、これをやってるんだ」っていう。経済的には成り立たない、本当は断ったほうがいいような仕事を、その趣旨に賛同できれば、できるだけ私は受けるようにしています。まさしく「仕事そのもののミッションに自分が共鳴できれば」っていうことなんですね。

そうやって意思決定、あるいは自分の仕事でやってることの意味・意義を知るっていうんですかね。「個人ミッション」があれば、意思決定もブレないということになるかなと思うんですね。

斉藤:ありがとうございます。みなさん、岩田社長のご活動を応援される方はご著書を買っていただけるとありがたいなと。(スライドを指して)このあたりが岩田社長のご著書の紹介ですかね。

岩田:ありがとうございます。この中ですと『MISSION』が一番いいと思います。売れてるのは『「ついていきたい」思われるリーダーになる51の考え方』。この1冊が処女作なんですね。結局、処女作が一番売れるんですかね。2つ同時に出したんですけども、いまだにこの2冊は売れている本ですね。これの文庫本がつい最近出たので、そちらを買ってもらってもいいと思います。

斉藤:ありがとうございます。ぜひみなさんもお買い求めいただければと思っています。

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