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『ミッション』を語り続けるリーダーが組織を変える~「ついていきたい」と思われるリーダーになるには~(全6記事)

「人事」こそが、会社から従業員への最大のメッセージ 元スターバックス代表が「経営=人事」「究極は人事」と語るワケ

多くのビジネスパーソンは、上から「ミッション」が落ちてくるものの「なぜ、今それをすべきなのか?」「その中で自分の活躍がどのように作用するのか?」を考えず、与えられた仕事を淡々と処理しがち。そのような会社では社員に「ミッション」が浸透しません。すると行動是正や行動強化に繋がらず組織文化が根付かないため、「世の中をよくするために会社があり、その一員として自分がいる」と理解するのは難しいと考えられます。そこで、スターバックスコーヒージャパンの代表として業績向上・ブランド定着に多大な功績があり、著書『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方』が35万部を超えるベストセラーとなっている、株式会社リーダーシップ コンサルティング代表取締役社長・岩田松雄氏が登壇したウェビナーの模様を公開します。

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なぜ今、会社は改めてミッションを作らないといけない?

斉藤知明氏(以下、斉藤):ありがとうございます。今回はミッションをテーマに掲げているウェビナーなんですけど「ミッションにも複数ある」というお話をいただきました。「個人のミッション」と「組織のミッション」っていうのがあります、と。

その中で、多様な働き方を選べる世の中になってきたからこそ、会社にとって「なぜミッション」が必要なの?」と改めて考え直した時に。(スライドを指して)こちらがすごく大事なのかな、と思ったんです。なぜ今、会社は改めてミッションを作らないといけないんでしょうか。

働き方が多様になってきたから必要になってるのか? それとも80、90年代からずっと必要だと言われている、普遍的に必要なのものなのか? いかがでしょうか。

岩田松雄氏(以下、岩田):まず、このミッションというのは以前から大事です。呼び方はいろいろあります。「経営理念」「社是」とかね。例えば、これは『ビジョナリー・カンパニー1・2』やドラッカーの本にも書いてありますけれども、アメリカの企業で「いい企業」「エクセレント・カンパニー」と言われている企業は、みなそういう「経営理念」。「ミッション」という言葉じゃないかもしれませんが、そういった哲学をもっていて、それをとても大切している。

日本だったら、例えば有名なのが松下幸之助さんの「水道哲学」。つまり「電気製品を水道の水が如く世の中に大量に安価に世の中に供給する」のが松下電器(現:パナソニック)の使命。稲盛さんだったら「フィロソフィ」とおっしゃっている。そういうしっかりした理念を持ってる会社が成功してるわけですよね。ですから、これは昔から必要だと。決して今だから必要というわけではありません。

ミッション=「求心力の中心にあるべきもの」

岩田:僕は10年ほど前に『MISSION』という本を書いたんですが、現在は当時以上に、その必要性が大切になっているというんですかね。僕は「来た、来た!」という感じです。

なぜかというと、今はコロナ禍ですよね。つまり、今は「遠心力」が働いてるんです。うちの息子は今、隣の部屋で仕事をしてますけど、もう会社に行かないんですよね。会社に席そのものがない。アフターコロナでも会社に行かないんですよ。基本的には仕事はもうオンライン、リモートでやるんです。

つまり、世の中的に遠心力が働いてますよね。遠心力の反対の言葉っていうのは「求心力」です。それで、求心力の中心にあるべきものがミッションなんです。だから今まで以上に、コロナ禍だからこそさらにミッションが必要になっている。つまり、ここでみんなもう1回ギュッとミッションを中心に固めないと、遠心力でみんなバラバラになってしまうと。そういうふうに思うんです。

ですから、今はさらにそういったミッションの必要性が今まで以上に高まってるんじゃないか? 社内でもう一度ミッションを確認する必要があります。さらに「自分は何のためにこの会社で働いてるのか?」という自分のミッションも、改めて考えないとけないと思います。

単に「お金儲けの手段」とかそういうことになっちゃうと、仕事に対してやりがいも意義を感じないですね。自宅で仕事そしているとまさしく、アウトソーシング化されてるわけですね。

どこの会社で働いているのか? 何やってるかわかんない。ふだんの会話とか、ちょっとした飲み会とか、昼飯とか、タバコ部屋でちょっとしゃべるとか。例えばね。そういうみんなのつながりが「face to face」から「画面の向こうの人たち」というかたちになってますよね。

同じ内容を話していても「オンライン」よりは、やっぱり息吹だったり温度感を感じないと、どうしても気持ちが離れていってしまいますよね。そんなふうに感じます。

社長室に掲げてるだけでは、ミッションは絶対に浸透しない

斉藤:ありがとうございます。だからこそミッションの3つの軸って、すごく大事だなと思って、お話を聞いていたんですけど。会社にとってのミッションを考えた時に、なにも「“エモいこと”だけを言いなさい」というわけではないんですよね。

ちゃんと経済的原動力になること。つまり、人・社会に求められていて、ちゃんとゴーイング・コンサーンできるものでもあるし。なおかつ、それが情熱を持って取り組めて、かつそれが世界で1番目になりましょう。どんな領域であれ「世界で2番目になりましょう」より「世界で1番目になりましょう」って言ってるところに人が集まるってシンプルな話だから、世界で1番になれることをしましょう、と。

ここがまず、定義をする段階だとすごく重要なのかなと思ったんですけれども。実際に、コメントでも続々といただいてるんですけれども「大切なのは重々理解しました。本当にそうだなと思いました」となった時に、会社としてどうやったら浸透させていくことができるのか? って、すごく難しいと思っていて。

例えば、スターバックスさんの場合。みなさん、共感した人が集まってこられたのか? 「ビジョン教育・ミッション教育も重要だ」と、岩田社長はおっしゃっていたんですけれども、これはどういうふうに浸透していくものなんでしょうか?

岩田:大きく2つあると思っていて。まずはトップ。社長がまずミッションを実現しようという気にならないとダメです。社長が、例えばコンサルティングに頼んでミッションを作ってもらうとか、あるいは社長室にそれを掲げてるだけとか。それでは絶対に浸透しないわけですね。

だから、トップは心から「言い続ける」。私はもう本当に何十回と、表現の仕方は違ってるけれども「スターバックスのミッション」について言い続けました。「これのためにやってんだ」っていうことですね。「人々に潤いを与える(to inspire and nurture human spirit)ために我々は事業をしているんだ」ということを言い続けました。トップ自身がまずそれを体現しないといけないと思います。

「人事」こそが、会社から従業員に対する最大のメッセージ

岩田:2つ目が、会社から従業員に対する最大のメッセージは「人事」ですね。つまり「誰を偉くするか、誰を偉くしないか」という意味の人事です。究極は社長ですよね。

社長というのは究極だけども、人の評価をする時に、一般的に売上とか利益とか「定量的な評価」だけをしますよね。売上をあげると「じゃあ部長にしてあげよう」とか。もちろんそういった能力や実績も必要なんだけれども、それだけじゃなくて。それプラス、その人のミッションの体現度、あるいは会社の行動指針を守っているのか。上に行くほどその重要性が高まります。

ミッションはちょっと大雑把なので、より具体的な行動指針みたいなもの。それを体現してる人が評価されないといけない。つまり売り上げとか利益とかの定量評価だけではなく「定性的な評価」もちゃんとしないといけないってことです。

例えば新橋の飲み屋なんかに行くと、サラリーマンの話の7割ぐらいは人事の話してますね。「なんとか部長が飛ばされた」とか「なんとか専務が今度は社長なるぞ」とか、そういう話。その時「やっぱりあの人が偉くなった」っていったらみんな安心できるけど「なんであんなやつが偉くなったんだ?」ってなったら、みんな不信感を持ちますよね。

例えば「和をもって尊し」と言ってるのに、仲間の足を引っ張って数字を上げる人っていますよね。「お客さま第一だ」って言ってるのに、お客さま騙して数字をあげる人もいますよね。そういう人を偉くすると「うちの会社、なんだかんだきれいごと言ってるけど、結局は数字さえ上げれば偉くなるんだ」という(会社からの)メッセージになるわけです。

もっと言えば「採用」ですよね。これベンチャー企業にありがちですけども、ベンチャー企業はなかなかいい人を採れないから、学歴だったり経歴だけ見て採っちゃうんですね。「うちの会社にこんな立派な人が来てくれた!」って。

もちろん能力があるに越したことはないけども、(大切なのは)いわゆるカルチャーフィットですよね。会社の価値観に合っているかどうか。「会社のミッション」なり「行動理念」なりにちゃんとフィットしてる人を採用しないと、後で困る。私はいろんなベンチャー企業のお手伝いをしていますけど、私自身が何回も失敗して、本当に痛い目にあってきたので、そういうことを実感持って言うんだけども。でもやっぱり、ついつい採っちゃうんです。

結局は後で、社長の足の引っ張るとか他の社員と融和できないとか。例えば機械とかコンピューターの場合だったら、それが壊れたら「0」ですよね。でも人間は「マイナス」になるんです。嘘を言ったりお客さん困らせたり、社内をぐちゃぐちゃにしちゃう人もいるわけです。

だから人の採用では、私はベンチャー企業といえども、ある程度は会社が動き出したら新卒採用をやるべきだと思います。新卒は「ミッション」「ビジョン」「バリュー」が染み込みやすいですよ。もちろん中途の即戦力も必要だし、会社にないスキル。例えばボディショップでもスターバックスでもeコーマスを始めた時に、やっぱりeコーマスをできる人って外部にしかいないわけだから、そういう人を採用したわけです。

そういうのはしょうがないので、やっぱりその人が本当に会社にフィットするかどうか? がすごく大切だと思うんですね。だからベンチャー企業に限らず……これは大企業も同じですけど、中途採用に気をつけないといけない。基本的には誰かの紹介とかがいいと思うんです。

新卒採用して、カルチャー教育・ミッション教育をしっかりやること。それが大切だと思います。

カルチャーに合わなそうだが「優秀なスキル」を持つ人材

斉藤:人事って、最重要な意思決定じゃないですか。

岩田:そうですね。私は「経営=人事」だと思います。戦略、マーケティング、財務といろいろあるけど「経営=人事」です。人事が一番大切です。斉藤さんがうなずいておられますが、究極は人事ですよ。本当に。

斉藤:中途採用で「採りたいな!」って思っても「ぐぬぬ……」って思って落としちゃうとかって、やっぱあるんですよね。「カルチャーが合わなそう」とか「ミッションに共感されない人」とかって、どれだけ優秀であっても「採れない」っていうのは、すごく大事な縛りとしてありつつ。(優秀な人は)最後まで「採りたいな」って思うけれども、(カルチャーに合わなそうなら)我慢しないといけないところではあると思ってますね。

岩田:1つヒントを言えば。その優秀なスキルを採ろうと思っても頭が付いてくると困るから、腕だけ採用する=外部化すればいいんですよね。要するに、アウトソーシング先にすれば、その人のカルチャーまでは関係ない。スキルだけ提供してもらえばいい。社員にしちゃうと、それは問題があります。簡単に首を切れないからです。

もし「どうしても」となれば、契約社員にするなり外部化するなりして、そのスキルを買えばいいと思うんです。もちろん、カルチャーがフィットして、かつスキルもある人を採るのが一番いいんですけどね。

斉藤:「固定費・変動費率」の、変動費のほうで扱えばいいという話ですね。

岩田:要するに「切りやすくする」ってことです。

斉藤:レジリエンスの観点で考えると、まさにそうだなとすごく思います。

「好きで」「得意で」「人のためになること」

斉藤:経営の話もおもしろいなと思いつつも、みなさんがチャットで興味を持っているところでいうと「個人のミッションを作るべきだ」って岩田社長おっしゃってらしたじゃないですか。

(スライドを指して)このスライドをよく見たら、タイトルが「個人のミッション」ってなってるんですよね。会社として「情熱を持って取り組めて」「世界一になれることで」「かつ経済的原動力になるもの」を掲げれば、人がついてきやすくなる。もしくは(自社に)合った人を引き寄せることができるようになる。

これはわかりやすいなと思ったんですけれども、改めて岩田社長。これを見た時に、個人のミッションってどう培われていくものなんでしょうか?

岩田:この3つの輪は『ビジョナリー・カンパニー』という本から引っ張ってきてるんです。もともとこの本は、企業の経営戦略策定のヒントとして書かれたものです。だけど、私ははこの3つの輪っていうのは「個人ミッション」を考える時に非常に参考になると思ったので、引用しているんです。あくまでも、言葉を言い換えて「好きで」「得意で」「人のためになる」こと。つまり「情熱を持てる」って「好きなこと」ですよね。それから「得意なこと」で世界一になれるわけですね。

「経済的原動力になるもの」というのは、企業にとってゴーイング・コンサーン。つまり継続するために必要なように、個人にとってもボランディアではやっていけないわけです。「なにか人のためになること」だったら、その対価としてお金をいただけますよね。例えば、みなさんが勤めている会社であれば給料がもらえるので、逆に3番目(経済的原動力)はあんまり関係ないです。25日になったら給料が振り込まれるから。

私は人生100年時代で、60歳なり65歳なりに今の会社を卒業した後も、長い人生が待っています。その時に改めてこの3つの輪を思い出してほしいと思います。もし今でも自分のミッション、あるいは自分のやりたいことが見つかった。会社を辞めて独立しようと思った時に「好きで」「得意なこと」はいいけど「それは本当に人のためになりますか?」っていうことですよね。それが人のためになってお金をいただけるから、ビジネスになって継続できるわけです。

だから「個人ミッション」というのは「好きで」「得意で」「人のためになること」をヒントに考えたらどうですか? ってお勧めしています。結局、個人のミッションを達成しようと思った時に、今の会社のプラットフォームをうまく利用することもあれば、自分で起業することもある。その時は、会社のミッションと自分のミッションはイコールですよね。そのために作るわけだから。

だけど、それは単に「好きなだけ」ではダメで「得意なだけ」でもダメで。やっぱり、それがなにかビジネス行為にならないとダメなわけですよね。つまり「人のためになればお金を稼げる」という意味で、こう書いてるんですね。

斉藤:全部揃ってないといけないと。

岩田:「好きで」「得意で」「人のためになること」。この3つをヒントに、自分のミッションを考えてくださいね、と。でももしサラリーマンを続けるんだったら、3番目はそんなに気にしなくてもいいですよね。給料日にちゃんとお金が振り込まれているわけですから。自分の、会社の事業そのものが世の中の役にためになっているから、売り上げが立って利益が出て、その一部を給料としてもらっているわけですから。

雇った人が、自分と100%同じミッションを持てるか?

岩田:自分のミッションと会社のミッションが100パーセント一緒になれば、一番理想的ですよね? でも実際、これは非常に難しい問題だと思うんです。「100パーセント」って言われるとね。だけど、会社が向かうだいたいの方向(ミッションやビジョン)、あるいは会社の考え方(バリュー)にアグリーしてるなら続ければいいと。でも、どうしてもダメだったら自分で会社を起こすしかない。

でも自分で会社を起こしても、人を雇った瞬間に同じ問題が起きますよね。雇った人が100パーセント自分と同じミッションやビジョンを持てるか? って。もちろん、そういう人がいたらいいんですよ。いたらいいけど、いなければまた同じ問題が出てきます。

だから私は、ある程度その会社の方向性に自分がアグリーできるんだったら、それでいいんじゃないかと。例えば、自分が会社を起こしましと。当然、1人でやれることの範囲は狭いので、人を雇いましょうと。その人が100パーセントまったく一緒っていうのはありえないけど、だいたい自分の考えてること、あるいはミッション・方向性に賛成してくれる、一緒にやっていきたいって言ってくれるなら、それでいいと私は思うんですね。

あるところで、やっぱり考え方が違ってきて別れていくっていうのは、それはしょうがないと思います。ベンチャー企業でよくあるのは、ある程度会社が動き出してお金が入りだした頃に、創業者とナンバー2が喧嘩して別れちゃうみたいな。よくある話ですね。

それまでは食うに困っていて、売り上げを立て、キャッシュを作ることで精一杯なんですよ。だけど、ある程度の余裕ができてくると「自分がこういうことやっていきたい」とかが当然、ナンバー1とナンバー2で違ってくることもありうるわけですよね。その時は、別会社にするとか、小会社を作るとかしか方法はないですよね。喧嘩別れが最悪です。

斉藤:僕自身も「mikan」という英単語のアプリの会社を、学生時代に友人と立ち上げたんですよ。今では400〜500万ぐらいダウンロードされてるアプリになってきたんですけど。

そこに僕は「CTO」という、開発側の責任者として入ったんですね。でも、1年ぐらい経った時に“抜けた側”なんですよ。その時、個人のミッションというものは、まだぜんぜん言語化されてなかったです。

今はFringe81に入ってUniposを立ち上げて。立ち上げからは5年ぐらい、この事業をやらせていただいてる中で、個人のミッションの言語化ってなかなか難しいなと。しかも流動的だな、とも思うんですよ。

「ミッションは進化させていい」

斉藤:たぶん個人のミッションという観点でいうと、僕が去年言ってたことと今年に言ってることって少しずつ変わってるんですよ。岩田社長は長くさまざまな企業を移られて、経営されている時もあれば、プレーヤーをされてらっしゃる時もあった中で。個人のミッションって、どう言語化されてきましたか?

岩田:私は「ミッションは進化させていい」と思ってるんです。私はもともと、日産時代は「経営者になりたい。社長になりたい」って思ったんですね。で、実際に3社の社長をやりました。そういう意味で私のビジョン(ミッション)は達成されたんですね。

その後、今の私のミッションは「経営者やリーダーを育てること」です。だから「日産の社長」「専門経営者」、そして今は「専門経営者やリーダーを育てること」って、ミッションを進化させています。

これは私自身、最初からそんなことを思ってたんじゃなくて。いま思い返せば、日産の社長になることは本当にミッションか? って言われると、そうじゃないと思います。それは「ビジョン」ですね、私の存在理由は「日産の社長になる」ことではないですからね。こういうものは、作っていって手を加えていくうちに、本当に体内化してくるものです。

最初はやっぱりわからないですよ。さっきのミッション・ビジョン・バリューだって、非常に抽象的な話なので。まず作ってみて「自分はこういうふうにやっていく」「でも違うかな」と思って修正していく。この繰り返しだと思います。斉藤社長も、実際に事業をやっていくうちに自分の方向性なりなんなりが変わっていくわけですね。

ひょっとしたら、得意なことが増えてるかもしれない。あるいは、自分が気がつかなかった得意なことが見つかったかもしれない。あるいは「こういう問題意識で困ってる人が多いんで、こういうことをやってみよう」というのも、出てくるはずです。

だから、私はミッションは進化させていいんだと思うんですね。つまり、変わってもいい。でもそんなにコロコロ変わるもんじゃないと思うんです。「会社のミッション」も、あんまりコロコロ変わると、みんなも驚いちゃう。

会社の話に戻っちゃうけど、損保ジャパンさんのもともとの理念・ミッションは「安心・安全」で、その手段として保険をやってるわけです。ほとんどが自動車保険。でもAIが発達して自動運転がどんどん進んでいくと、自動車保険のニーズなくなりますよね。だって自動運転だったら事故が起きないから。

そこで何をしたかというと、国内の生命保険会社だったり、海外のこれからモーターリゼーションが起こる企業だったりを買収したんですね。さらに何をやったかっていうと「安心・安全」に「健康」を付け加えました。ミッション・経営理念そのものを見直した。要するに「企業のドメイン、事業のドメイン」を増やしたんですね。

そこで行ったのが、ワタミさんの介護グループの会社の買収です。こういうことで、環境の変化に応じて「ミッションそのもの」を見直した。個人の場合だって、僕自身もともと「日産の社長」。それから「専門経営者」。そして今は「専門経営者を育てること」って進化させてるわけです。それでいいと思うんです。

僕もこうやって偉そうに言ってるけど、50歳を超えてスターバックスを辞めて。1、2年経って『MISSION』っていう本を書いて。それで自分の中の考え方が整理されて、こうやってお話しできるようになったんです。

斉藤:長い道のりだなあ……。

岩田:日産の社長って「ミッション」じゃなくて、どっちかというと「ビジョン」です。それは途中のものですよね。今は「人を育てること、リーダーを育てること」っていうミッションを持っていて、その手段として本を書いたり、講演をしたり、ビジネススクールで教えたり、経営者のコーチングをやってるわけですね。

ミッションを達成する手段はいくつかあって、それで自分で会社立ち上げてるわけです。だから、私は「進化」。変化というより、進化と言っていいと思ってます。

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