「人事部にハラスメント調査をさせてはダメ」
不測の事態が起こった場合、企業は何をすべきか?

ハラスメントリスクでゲームオーバー?~そうならない危機管理と広報~ #3/4

G1経営者会議 2018
に開催

日本や世界の政治・経済・文化・技術・環境などを学び、リーダーシップを発揮するための知恵やネットワーク基盤を提供する「G1経営者会議2018」が開催されました。そのなかで行われた分科会「ハラスメントリスクでゲームオーバー?~そうならない危機管理と広報~」に、東京都 監査委員・岩田喜美枝氏、『The Japan Times』編集局長・大門小百合氏、弁護士・永沢徹氏、ウェーバー・シャンドウィック会長・西谷武夫氏、アクセンチュア株式会社相談役・程近智氏が登場。ハラスメントリスクに対して、企業が本質的に解決すべき問題は何かをディスカッションしました。

Googleでのハラスメント事例

程近智氏(以下、程):あと十数分ありますけれども、ちょっとテーマを変えていきたいと思います。

いろんな施策や考え方を導入しても、パワハラであろうとセクハラであろうと、ハラスメントが起こってしまうと。先ほど岩田さんから、Google社について話がありました。まだ20年の会社だそうですが、非常に立派で、今でもまだ創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジという2人がいます。金曜日にTGIF(注:「Thank God It's Friday」の略)ということで、物理的に出てきて、世界同時につなげて社員と対話をしていると。

そんななかAndroidをGoogleが買収したんです。Androidを作ったアンディ・ルービンは、その時にCEOでしたが、4年前に退任されました。正直、私も「なんか急だな」と思ったんですけれども、今報道されているのは、セクハラがあって解雇されたと。これは報道ですので、本当の中身はまだわからないです。

それにもかかわらず、会社のトップは彼の離職の時に賛辞を送って、かつ、退職金も巨額を払ったと。これが本当かちょっとわからないですけれども、いくつか問題をはらんでいると思うんですね。まず、アンディの個人としてのイメージに対するダメージ。あとは、会社としてのダメージ。そういった風通しのいい会社であるのに、そういうことが起きてしまう。

ただ、Googleらしいなと思ったのは、すぐ会社でデモが起きて社員がみんな立ち上がったと。あと、僕はラリー・ペイジとかセルゲイ・ブリンじゃないですけれども、そういう人たちに対して、まさしくきっと、経営者は悩んでいると思うんですよ。「こういうことはどうしようか。過去にも起きてるし、これからも起きるだろう」と。

そのへん1つの例として踏まえると、会社として、どんな予防保全策ができるか、または起きてしまったときにどうしたらいいかという、その両方の視点でみなさんからお話を聞かせていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか?

「社長教育」が最善の策である

西谷武夫氏:私は最善の策はやはり、社長教育だと思うんですね。いかにこの問題が重要であるかを、社長にしっかりと認識してもらう。社長が「この問題は自分の問題なんだ」「経営と同じ問題なんだ」ということを、意識してもらうことが非常に重要だと思います。

その上でやはり、防止が最善の策だと思うんですね。防止策をきちっと作る。とくにこの防止策は、法的措置をとっても「その法律が言っているものを揃えておけばいいんだ」という考え方に走りがちなんですけど、作った措置が機能するかしないかが問題なんだと思うんですね。

ですから、いろいろ資料を作ったりトレーニングをしたり、みなさんたぶんやられると思うんですが、定期的にトレーニングもする。あるいは、世の中は変わってますから、ハラスメントの要件も変わってくるわけですね。それをいかにアップデートしていくかは、非常に重要だと思います。

それから、みなさんたぶん海外でもいろんな事業所があったり、海外の案件はマスコミにもしょっちゅう出てるわけです。そういうものを丹念に拾い上げて、ハラスメントの案件と要素にはどういうものがあるんだということを調べあげて、データベースを作って、自分の会社でもそれは起こりうるということを準備しておく。

いわゆるイシューマネジメントというかプリディクションというか、そういうある一定の予測をして備えておくことが、私は非常に重要なんじゃないかなと思っております。

それから、これはご専門の方がいらっしゃるのであんまり大きな声では言えないですが、社内のアラートラインとか、やっぱり相談できる相手ですね。アメリカのファイザーの例が有名なのですが、オンブズマン制度というのを社内に作っているんです。そういった例もありますので、防御をする措置はたくさんあると思います。

「判断をして公表すること」が防止策になる

:なるほど。永沢さんは、実際にハラスメントが起きちゃってる事例を、たくさん見てると思うんですけれども。

永沢徹氏(以下、永沢):そうですね。やっぱりこれは徹底的に調査をしてきちんと処分をする。それを公表することに尽きるんだろうと思うんですよ。つまり、「見て見ぬふりする」「臭いものに蓋をする」という姿勢は、そういうところに申し出ても無駄なんだと思われてしまうので。

そういう点では、起きたことについて徹底的に調査をして、場合によるとアンケートを付随して行うと。そうすると、その背景事情もよくわかってくることがありました。その上で経営者に理解いただくと。

始めから、経営者がもう徹底的にやると腹をくくってくれればいいんですけれども、そうではないケースにおいてどうするかは、なかなか悩ましいところです。やっぱり数字とかデータを見せて、その上で決めてもらうことが大事。

どうしても「聖域化する人に対してなにもしない」ということが、一番悪いメッセージになるかと思います。そういうものこそ、きちんと対応するべきだと思いますし。「そんなに深刻なものでなくても、ちゃんと会社は判断をして公表するんだ」というルールを作っておくことが、少なくとも大きな問題を生じさせない防止策にもなるのかなと思いますね。

:なるほど。先ほどの例で、私も1ヶ月前にGoogleへ行ったときに、もう1つキーワードが出てて「Transparency」とあったんですよ。だから、セルゲイ・ブリンもラリー・ペイジも、毎週出てきて課題に対面すると。今回「どうしてそれができなかったんだ」という落胆があったと思うんですけれども。

私も自分の会社も含め、あと社外取締役でいくつかのケースを見てるときに、じゃあ事実がそうだとしたら、その被害者と加害者をそれなりに両方守らないといけないと。そのへんの微妙な判断が、正直、会社によっても違うし、弁護士さんでも見解が違うと思うんですけれども、例えばどこまでそれを公表するかという、なにかうまいガイドラインはないですか?(笑)。

永沢:セクハラに関しては、非常にオープンにしづらい部分があるんです。逆にセクハラに関しては、やはり被害者の感情をすごく重んじるとルールづけされていることが多いものですから、そういう点では、やはり被害者がセクハラだと感じたんだったら、それは改めるべきであると。処分するかどうかは別にしても、少なくともいいことではないと。

これがパワハラに関しては、やはり客観的にハラスメントといえるかどうか、指導とか命令の範囲を超えているかどうかがありますので、周辺事情を調べなければいけないと思いますね。

企業のトップが説明責任を果たすことが重要

:なるほど。そうすると、今度はマスコミとして、そういうことあったら何が知りたいですか? どうやってくれたら、取り上げないですか?(笑)。

大門小百合氏:いや、取り上げないということはないかもしれないですけど(笑)。ただ、起こってしまったことに対してどう対応するかがすごく大事です。

とくに、普通の会社の中でなにか問題が起こったら、その対応策を協議して対応策をやりますよね。だから、やっぱりそれを表カードにする。「今回こういうことが出ました」と、トップがみなさんの前で謝罪をして説明をするという説明責任が、すごく大事かなと思っています。「こういう対応をしました」というようなことを話す。

Googleのケースとかよくあるケースで、セクハラとはちょっと違うかもしれないですけれども、パワハラに関してけっこう多いのは、やっぱり権力の集中してる人のケースが隠れて見えないことですね。

日大のアメフトの話のようなスポーツ界もそうですけど、その人たちがいることによって組織が回ってきたというのに対して、きちんとした処分が取りづらくなっていることがあるんじゃないかなと思うんです。

ですから、そこはやっぱりトップの人がもう本当に自分たちの周りを見て、組織が「この人がいなくなっては困る」という人こそ、ちゃんと見ていただいてやらないと、逆にその事実が発覚したときのダメージもすごく大きいと思うんですよね。

例えば、社長の側近だったとか責任者で大きな事業を動かしていたところを、やはり注意深く見ていただきたいなと思いますし、それができるのはやっぱり経営者の方々だと思うんです。

人事部に調査させてはダメ

:なるほど。岩田さん、いかがでしょうか?

岩田喜美枝氏:そうですね。まず、事実関係をちゃんと調査することが大事なんですよ。なかには、「セクシャルハラスメントだ」と訴えたんだけれども、調査をすると、本当は合意でいい関係にあったのが、それが破綻したあと、その恨みを「ハラスメントだった」と持ってくるケースもあるんですよね。

それから、パワーハラスメントは「本当にこれがパワーハラスメントといえるかどうか」は、なかなか判断が難しいケースが多いと思います。いずれにしろ、やっぱり事実関係をちゃんと調査をするということです。

その時に私が資生堂で心がけたのは、人事部に調査をやらせたらダメなんですよ。人事部は人事権を持っているので、なかなか本当のことを言ってくれなくて建前のことが多いです。そうではなくて、法務部やリスク管理部に調査をしてもらうことがいいと思うんですね。

調査結果ではっきりしたハラスメントがあったとわかったあとは、もう徹底的に被害者に寄り添うことだと思うんですよ。

今もずっとお話が出ましたように、加害者はけっこう権力を持っていて、実力もあるんですよ。仕事もできる。ハラスメントが起こると、とにかく2人を物理的に離さないといけない。この人を切るのは会社としてはつらいことなので、かつてどの会社も多かったのは、仕事ができる加害者のほうはそのまま置いておいて、被害者のほうをどこか別のところに異動させる。

「これは逆でしょ?」と私は思いました。(やるべきは)加害者のほうをどこか外に出すということだと思いますね。

それで、どこの会社もどの程度だとどうなるという、懲戒規定に照らしてきっちり処分をする。ハラスメントで解雇も、もう珍しくありません。それらを社員は見てるわけですよ。どれだけ公平な会社かというのを見てるので、そういうことかなと。

そして、もう1つ私が思ったのは、被害者はつらい立場にあって、1日も待てないんですよ。もう1日我慢するのが、とってもつらいんですよね。ですから、問題があったとわかったときには、調査も早くする。それから処分というのか、その対応策も早くする。そして、本人に「こういう結果だった」と、1日も早くフィードバックしてあげる。そういうのが大事かなと思います。

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