2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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程近智氏(以下、程):みなさま、こんにちは。お昼のあとに、「ゲームオーバー」という、非常に重たいというか、守りのテーマですけれども。テクノベート、ゲームチェンジではなくて、「ゲームオーバー」。どちらかというと守りのテーマで、ちょっと地味ですけれども、しっかりと議論していきたいと思います。
最近、ドラマでも『ハラスメントゲーム』という作品がありました(笑)。もうすぐ最終回になるかもしれませんけれども、ご存じですか? 一部の経営者、または法務関係者、パブリックアフェアーズの関係者でなく、全社の活動としてハラスメントが注目を浴びるとともに、非常に重要な経営テーマになってきていると。
そんななか、今日はご専門の方々にそれぞれの視点からいろいろとおうかがいしたいんですけれども。まずはみなさん、自己紹介を含めて、ハラスメントというのをどのように捉えられていらっしゃるか、また、どういう問題意識があるのかについて、ぜひお話をうかががいたいなと思います。
程:まずは岩田さん、よろしいですか?
岩田喜美枝氏(以下、岩田):岩田です。私は、労働省、株式会社資生堂、公益財団法人「21世紀職業財団」というようなところで仕事をしてまいりました。今はフルタイムの仕事はしていないんですが、先ほどご紹介いただきました東京都の監査委員や、いくつかの会社の社外取締役などをやっております。
私がハラスメントをどう捉えているかということについて、リスクマネジメントであるということはそのとおりなのですが、私は「成長戦略としてのダイバーシティマネジメントの一部としても捉えるべきである」ということを、今日お話し申し上げたいと思います。
まずリスクマネジメントです。これは非常に頻繁に起こるリスクであると、認識すべきであると思うんですね。
企業に対して「過去3年間にハラスメントがありましたか?」と聞くと、4割近い会社が「そうだ」と言います。働いている人たちに「自分は3年間にハラスメントを受けたと思ったことがありますか?」と聞くと、やっぱり3分の1の人は「そうだ」と答えています。このリスクは非常に頻繁に、日常的に起こる可能性があると認識したほうがいいと思います。
被害者個人・加害者個人がこれでいろいろとダメージを受けるのはもちろんです。けれども、例えばそのハラスメントを見た人たち・同僚たちは、自分も同じように精神的なダメージを受けたり、自分がそのことの手助けがなにもできないことについて罪悪感とか無力感を感じたり、逆に見て見ぬふりをして、それがもう当たり前のような風土になったりということで、職場全体にもいろいろ問題を及ぼします。
「職場の風土を悪くする」、そして「生産性を落とす」「みなさんのモラルを下げる」ということになりますので、これはやっぱりリスクだと思います。
なによりもやっぱり、人材を失うことのリスクが大きいです。被害者も加害者も会社を去るかもしれないし、残ってても元のようには活躍できないかもしれない。同僚たちの人材流出があるでしょうし、これが社会的に知られることになると人材の確保も難しい。ということで、人材に対するリスクも大きいと思います。
企業としての社会的な責任を問われる。これは外に情報が出るとレピュテーションリスクになります。そして、被害者が加害者個人を訴えるときは、通常はそれだけではなくて、「予防対策を十分取らなかった」とか「事後の対策が悪かった」ということで企業も法的責任を問われることになります。そういう意味で、企業の社会的責任が問題になることがあると思います。
なによりも、私も経験しましたけど、いったん起こると解決のために、大変な時間とエネルギーと、そして場合によってはお金がかかるということがあります。そういう意味でリスクです。
あの、もうちょっと……あと1分ぐらい、いいですかね?
程:はい(笑)。
岩田:今はなぜこれが経営のリスクになるかというお話をしたんですけれども、「なぜこれを成長戦略として捉えられないかな?」と思ったのは、Googleのお話を聞いたときなんですよ。Googleのダイバーシティマネジメントは4つの標語を抱えていたんですね。これは「Equity」「Diversity」「Inclusion」「Integrity」です。
とくに「Integrity」というのを聞いたときに、「ああ、そうか。多様な人たちが活躍できる会社づくりをするというのは、ハラスメントがない職場を作ることと同じことなんだ」と。だから、広義のダイバーシティの一部をハラスメント対策というのは、そういう位置づけとしても捉えられるんだとそのとき気がついたわけです。
ですから、リスク対策でもあるんですけれども、広い意味で成長戦略としてのダイバーシティ対策でもあると思います。
程:ありがとうございました。岩田さんは、行政におられての視点と、民間企業の経営者の副社長をやられて、今はハラスメントというものに対して、同じものを見てるんですかね?
岩田:私は、その乖離はあまり感じませんね。
程:なるほど。わかりました。
程:じゃあその「ハラスメント」という言葉なんですが、いろんな種類があると思うんです。このへんは西谷さんに、パブリックアフェアーズをやっている視点からご説明いただければと思います。「ハラスメント」という言葉は日本と海外でまたちょっと違うと思いますけれども、そのへんの視点も踏まえて自己紹介をお願いいたします。
西谷武夫氏(以下、西谷):西谷でございます。広報を専門にしております。
まず、今回この場にお招きを受けて、アメリカとヨーロッパで「パワーハラスメントというのはなんだ?」と単純な質問をしたんですね。そうしたら「パワーハラスメントってなんだ?」という答えが向こうから返ってきたんですね。すなわち、「パワーハラスメント」という言葉はアメリカにはないんです。
だいたいセクハラから派生してきて、パワーハラスメントになっている。アメリカの法律上も、雇用均等法のなかに「セクシャルなイシューで」ということを一言入れたために、セクハラという法律もできたんですね。ですから、このセクハラもパワハラも、考えてみると「公正か、不公平か」というところが一番の肝になっていると、私は理解しております。
今回こういうテーマを、この場で取り上げる。それから新聞によりますと、来年パワハラの法的措置をとろうということで、厚労省が準備をしているようです。私は非常にタイムリーじゃないかなと思っております。
なぜタイムリーかと考えていますかと言うと、来年、ラグビー(注:ワールドカップ2019日本大会)がありますね。そのあとはオリンピックがありますね。このパワハラは、とくにスポーツ界では非常に昔から起きています。日本では、相撲でもそうですけど、スポーツ界に行ったらパワハラがないところはないんじゃないかと。今の我々の理解する目で見れば、たぶんそういう面があるんじゃないかと思います。
それから今、外国の移民の問題、労働者の問題が出ています。外国の方がたくさん日本で働くようになった場合、すなわち文化が違う方々がたくさん入った場合、これは誤解とか、文化制度もみんな違いますから、ますますこの摩擦というか、いわゆるパワハラが起きるケースはものすごく増えてくるんじゃないかなと思っているんです。
また、技術的にもインターネットとかSNSが非常に発展してきています。今度は訴えるほうが、「社内でほかに人に言う」、あるいは「上司に言う」ということじゃなくて、社会にもうそのまま出していっちゃうということが非常にやりやすくなっているわけですね。しかも、それは文字だけじゃなくて映像でもできという非常に怖い時代になっていて、訴えやすくなっている。
それから、マスコミというか、情報も今グローバルになってきています。「日本では当たり前のことなんだけど、海外ではこれはパワハラですよ」という海外の事例(も伝わる)。要するに、我々がぜんぜん知らないことですね。これも新しいパワハラとして出てくるんじゃないかなと、思っております。
程:なるほど。いろんな次元の話があるということですね。
程:永沢さんは、企業の弁護士さんとして、いろんな企業側からの視点も見られたと思います。そのへんのご紹介も含め、自己紹介お願いします。
永沢徹氏(以下、永沢):弁護士の永沢と申します。
我々は、通報窓口をさせていただくことがけっこうあります。そうすると、被害者からヒアリングをして、そのあと加害者から言い分を聞きます。それで会社に報告をして、というような手続きをとるわけです。非常に特徴的なのが、加害者の加害意識がまったくない。これがほとんどの案件に共通することです。
「そんなつもりはなかったんです」「別に悪気があってやったんじゃないんです」「いやならいやと、もっとはっきり言ってくれれば、直接言ってくれれば、すぐにやめたのに」という言葉が、違う会社で、違う場面で、まったく同じように交わされるんですね。
要は、被害者に被害意識があるのにもかかわらず、加害者にはまったく加害意識がないと。ここがある面で、「パワハラ」、あるいはほかのハラスメントの特徴なのかなと。つまり、嫌がらせをしているという意識があれば、それをやめなきゃいけないというのは、本人の自制本能が働くわけでしょうけれども、まったくそういった加害意識がないにもかかわらず、被害者はずっと被害感情を抱いている。
おそらく昔からあったことではあるんでしょうけれども、昔は我慢していたのが、今はそれを我慢せずに外に出せるようになったと。これが「ハラスメントが非常に多くなってきた」といわれる理由なのかなと思っております。
程:どうもありがとうございました。
程:それでは、大門さん。マスコミということで、その視点も含め(お願いします)。
大門小百合氏(以下、大門):はい。Japan Timesの大門と申します。
私はとくにパワハラとかセクハラの専門家ではないんですけれども、「なんでここに呼ばれたのかな?」と考えていました。実はみなさんご存知の、財務省のテレビ朝日の女性記者の問題があったとき、あの話は私にとってすごく身近だったんですね。私はいろいろな記者クラブに行っているので、女性記者の友達も多いですし。
男性の反応と女性の反応が、すごく違ったんですね。(男性からは)「あんなこと、あるわけない?」とか。「いや、これは氷山の一角で、本当はまだまだたくさんあると思うよ」と言った時に、「そんなの証言とか取れない。記事にならないよ」と言われたんですね。
私はちょっと気になって、女性記者のネットワークがあって、メーリングリストがあるんですけれども、そこにメールを出しました。「もしそういうことがあったのなら、匿名でかまわないので、どういうことだったか教えてくれ」と投げかけたんですね。
1日目はなにもなくて、2日目もなにもなくて、「やっぱりこういうことは言いづらいんだな」と思いました。そうしたら、3日目にすごく長いメールが届き始めたんですね。事細かに「なにがあったか」「どういう状況だった」というのを、みなさん赤裸々に書かれていて、私としてはちょっとびっくりしてしまいました。
最初は「そういう事例をちょこっと記事の中で紹介しようかな」ぐらいに思っていたのですけれども、あまりにも内容がヘビーだったので、「これはがっつり取材をして書かなければ」ということで、原稿にしたんです。
そこで、一例で言うと、みなさんの会社もそうだと思いますけれども、女性記者が広報に挨拶に行きます。広報室長から「いつでも連絡できるように名前と連絡先を書いてくれ」と言われて、「わかりました」と書きました。その日のうちに夜電話がかかってきまして、「今マンションの外にいるんだけど、ちょっと出てこない?」と言われた、とかですね。
もうびっくりするようなことがたくさんあったので、これはやっぱりまだまだ問題は深いなというのがあります。
2016年に厚生労働省が実施した「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」というのがあります。あれも(パワハラを)受けた4割ぐらいの人は「なにもしなかった」と(答えています)。つまり、私は今年(2018年)は、表カードにできた年だと思っているんですね。内面化している問題がおもてに出ると、はじめて「じゃあどうしようか」という議論になると思うんです。
セクハラもそうですけれども、パラハラもそうですよね。じゃあ「規定というのはあるのかないのか」という議論になって、各社やってるところとやっていないところがけっこうバラバラ。じゃあ規定を作って、もっと議論していくんじゃないか。そして、その厚労省の今の政策の話になっていると思うんですけれども、そういう表カードにしていってぜひ議論したいということ。
それから、やっぱり企業にとって、外に(ハラスメントがあったという情報を)持っていかれるのが一番きついと思うんですね。テレ朝のケースも、中で処理されていたら、あんな大きな話にはならなかったんです。逆に言うと、メディア的には「表カードにできてよかったな」という。
あとは、あれはやっぱり社内で処理するべき問題だったと思うので、そういう危機管理みたいなことも、今日話し合っていけたらと思います。
程:なるほど。ありがとうございました。
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